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日米蜜月  作者: 扶桑かつみ


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フェイズ24「WW2(18)プエルトリコ島戦3」-2

 この時ドイツ艦隊は、空母 《シュトラッサー》《リヒトホーフェン》、戦艦 《ビスマルク》《テルピッツ》を中心に重巡洋艦1隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦7隻で編成されていた。

 軽巡洋艦2隻と駆逐艦のうち4隻がイギリスからの賠償艦で、空母を含めた艦隊の半数近くがイギリス製というところにドイツ海軍の本来の規模を見て取ることが出来る。

 

 艦載機総数は、2隻で合計約90機。

 《リヒトホーフェン》は《イラストリアス級》の改良型で、防御を減らして格納庫を1段のみから一部2段として搭載機数の増加を図っていた。

 そしてドイツ艦隊は「Fw190 T」戦闘攻撃機、「Ju87D」急降下爆撃機の海軍型を搭載していたが、「Fw190 T」は32機、「Ju87D」は60機搭載していた。

 初期の日本海軍並に攻撃重視で、このうち40機を第一波としてアメリカ艦隊に向けて飛び立たせ、防空にはわずか8機しか配置していなかった。

 慌てて、次の攻撃隊用に待機していた残りも防空のため飛び立たせたが、それでも16機しかない。

 これに対して、アメリカ艦隊の第一波だけで約120機もあった。

 しかもアメリカ艦隊の第二派80機、日本艦隊の第一波70機、第二波40機と続いていた。

 いかに「Fw190」が優れた戦闘機でも、どうにもならなかった。

 防空任務の「Fw190」は制空戦闘で数の優位に押し込まれ、最初からフリーハンドとなった各攻撃隊は思い思いの場所からまずはイギリス生まれの丈夫な空母に殺到した。

 

 また敵の大規模な空襲に際して、ドイツ艦隊の陣形は不十分だった。

 艦隊前面に「囮」もしくは「盾」となる大型艦を並べ、空母の脇に巡洋艦や駆逐艦を置いていたが、陣形としては「T字」状で防空に適した輪形陣とは言えなかった。

 

 連合軍が行う輪形陣を取らないのは、知らないからではなく、取れないからだった。

 というのも輪形陣は当時としては特殊な陣形で、一般的にはアメリカ海軍が艦隊用に開発した対潜水艦用の陣形の一つだった。

 そしてアメリカ海軍と日本海軍は、対潜水艦用の陣形として輪形陣の訓練を古くから実施していた。

 そして半ば偶然に、防空陣形として優れていることを発見し、実戦へと取り入れていった。

 だが、ここ20年ほど大規模な艦隊陣形を組んだことのない(組みたくても組めない)ドイツ海軍では、輪形陣というのは未知の陣形でしかなかった。

 しかも訓練自体が出来なかったので、したくても出来なかったのだ。

 加えて言えば、輪形陣の訓練は専門的に行う必要があるので、短期間で修得することが難しかった。

 

 加えて、対空射撃自体はそれなりに優れていたが、各艦の連携が甘かった。

 何よりドイツ海軍自体が大規模な艦隊運用の経験が乏しく、高速での空襲回避運動の経験が不足するため、攻撃が始まるとすぐにも陣形が乱れてしまった。

 ドイツ艦とイギリス艦を合わせて運用していた事も、微妙な旋回半径、速度変化などの問題で艦隊運動に影響していた。

 

 これに対してアメリカ側は、先の戦闘の教訓を反映していた。

 

 まずは「ドーントレス」急降下爆撃機が、空母の側の護衛艦へのダイブを実施する。

 本来なら輪形陣の外周を潰す積もりだったが、ドイツ艦隊には外周も何もないので空母の側の艦艇を潰せば良かった。

 そして約40機の爆撃機は任務を果たし、空母の両脇にいた艦艇のうち3隻に命中弾を浴びせて、うち1隻をすぐにも艦隊運動から脱落させる。

 1000ポンド爆弾をほぼ同時に2発も受けては、駆逐艦ではどうにもならなかった。

 

 そして隙のできた陣形の脇を縫って、低空から頑丈さで定評のある「アヴェンジャー」雷撃機が強引に突進していく。

 ドイツ側も懸命の防空砲火を浴びせるが、20mm機銃程度では新型の雷撃機に致命傷を与えるのは難しかった。

 37mm機銃だとかなり有効だが、この時は敵機の速度を誤って訓練していたので(旧式のデバステーターに合わせていた)、ほとんど追随出来なかった。

 

 そして重防御でトップヘビーなドイツ人が初めて持ったイギリス製空母の両脇に、魚雷が次々に命中した。

 命中したのは《シュトラッサー》が3発、《リヒトホーフェン》が1発で命中率は10%を越えているのでかなり優秀だった。

 

 この間、敵を引きつける筈の戦艦や重巡洋艦は、アメリカ軍編隊が無視したため、高角砲で空母上に不完全な弾幕を張る以外で役に立たなかった。

 


 そして約30分後、アメリカ軍の第二派が襲来する。

 第一波が去りつつある段階で、航続距離に余裕のある戦闘機はまだ制空戦闘を続けている状態だった。

 このため第二派は、余裕をもってドイツ艦隊上空へと至り、空母に止めを刺すべく陣形を組み直していった。

 

 この攻撃を、速力が大きく落ちていた《シュトラッサー》は全く回避出来ず、次々に魚雷が命中して攻撃隊が去る頃には総員退艦が命令され、その後1時間足らずで横転沈没した。

 最初の攻撃で魚雷1発の被弾で済んだ《リヒトホーフェン》も逃れることは出来ず、さらに魚雷2本を受けて大破し航空機運用能力を失った。

 

 急降下爆撃機隊は、損傷の大きな護衛艦艇と前衛で横陣を組んでいる戦艦をターゲットにする。

 《ビスマルク型》はアメリカ海軍にとって恨み昔年の戦艦の一つであり、苛烈な攻撃が行われた。

 《ビスマルク》《テルピッツ》は同じ外観でこの時は塗装も統一していたので、見た目での違いは分からなかった。

 だが、急降下爆撃の洗礼を受けたのは何の因縁か《ビスマルク》の方で、「ドーントレス」は次々に1000ポンド爆弾を見舞った。

 

 《ビスマルク》は直撃4発、至近弾3発を受けて小破。

 しかも直撃を受けた3番砲塔が旋回不能になり、艦中央部の直撃と至近弾で防空能力がほぼ半減した。

 破片と爆風でレーダーの半数も使用不能になった。

 

 そしてアメリカ軍の第二派が攻撃の最中、日本軍編隊が到着する。

 日本軍編隊は直ちに攻撃隊形を取り、速力が落ちて大きく傾いた《リヒトホーフェン》と、米編隊が集中爆撃を行っている《ビスマルク》へと殺到した。

 この時、アメリカ軍編隊の攻撃隊長と日本軍編隊の攻撃隊長が合流して近距離無線で連絡を取り合い、現状の報告と攻撃のアドバイスを日本側は受けている。

 その最後にアメリカ軍隊長は、「出来れば、あの《ビスマルク級》は残しておいてくれ。

 多分あれには借りがある」と伝えた逸話が残されている。

 

 頼まれたからではないが、日本軍攻撃隊はまずは空母へ集中攻撃を実施した。

 他の姉妹3隻に比べて防御の軽い《リヒトホーフェン》は、既に3発の航空魚雷を受けていた事もあり、《シュトラッサー》同様に次々に被弾した。

 最終的に魚雷8本、爆弾5発が命中し、日本軍攻撃隊が攻撃中に総員退艦が命令された。

 

 これでもまだ半数が魚雷や爆弾を残していたので、黒煙を吹き上げる《ビスマルク》へと殺到する。

 アメリカ人には悪いが、日本海軍としては航空機による作戦行動中の戦艦撃沈が欲しかった。

 4月のインド洋のアッズで旧式戦艦 《ラミリーズ》をめった打ちの形で沈めたが、これは環礁から出たばかりのところだったので、作戦行動中とは言い切れなかった。

 このため、今度こそという気持ちがあった。

 しかも獲物が1年前の5月に暴れ回った《ビスマルク》とあっては尚更だった。

 

 だが、空母の完全撃破を優先したため、《ビスマルク》への攻撃は中途半端となってしまう。

 《ビスマルク》と両脇の艦艇からの激しい対空砲火もあり、魚雷を2本、爆弾の直撃3発、至近弾多数で攻撃を終えなければならなかった。

 このため日本側は第二波40機に期待をかけたいところだが、他の艦艇からの砲火が激しく十分な打撃は与えられず、攻撃機24機による攻撃は命中率15%以上、魚雷2本、爆弾2発を追加で浴びせるも撃沈には至らなかった。

 このため日本軍の攻撃隊長は、「予定通り《ビスマルク級》1隻を大破せり」と打電した。

 


 そして午後3時、約90機のアメリカ軍第三波攻撃隊が殺到する。

 目標は損傷した《ビスマルク級》戦艦。

 既に空母を失ったドイツ艦隊は、損傷した《ビスマルク》を中心に置いた陣形を組み直していたが、対空砲火をものともせずに突撃し、かなりの損害を受けるも《ビスマルク》に遂に致命傷を与えるに至る。

 

 戦艦 《ビスマルク》が最終的に受けた命中弾は、魚雷14本、爆弾13発で最後は行き足が止まったため速度差から護衛もうまく出来ず、めった打ちの状態になった。

 しかも攻撃の最中にアメリカ軍の第四波攻撃隊が到着し、護衛の駆逐艦1隻が直撃弾1発を受けて大破し、その後沈没する損害を受けている。

 またそれまで無傷だった《テルピッツ》も、魚雷1本、爆弾1発の直撃を受けて小破。

 魚雷による損害が意外に酷く、ギアナにいる工作艦(特設工作艦)の修理では間に合わず、本国に回航される大損害となった。

 

 これで日本軍の第三波、第四波攻撃があれば、ドイツ艦隊の全滅も夢では無かったかも知れないが、昼以後の日本艦隊はイギリス艦隊との戦いに忙殺されていた。

 

 イギリス艦隊は、とにかくドイツ艦隊を救援するため危険を承知で、攻撃機のみによる攻撃を日本艦隊に差し向ける。

 その様子は張り付いている偵察機から続々と送られてくるため、日本側は自らのレーダー情報などで微調整しつつ万全の体制で迎撃戦を展開した。

 この結果、イギリス軍攻撃隊は80%以上が撃墜される事となる。

 だが、低空で侵入した布張りの「ソードフィッシュ」6機を見逃してしまい、しかも機銃ではなかなか落とせないため《翔鶴》が雷撃を受けて1発を被弾し、小破の損害を受けてしまう。

 

 これが日本軍の攻撃隊が帰ってくる前で、攻撃を受けたことで日本艦隊はイギリス艦隊の総攻撃を決意。

 「シーファイア」と航空管制の脅威をアメリカ軍から耳にたこができるほど聞かされていたが、日本側はマレーやインド洋の対戦でたいした相手ではないと考えていたので極端に恐れはしなかった。

 ただし相手が装甲空母なので、空母の攻撃は雷撃によるものと決め、アメリカ側の攻撃ドクトリンを採用することとした。

 

 

 空母 《イラストリアス》《ヴィクトリアス》、戦艦 《プリンス・オブ・ウェールズ》《デューク・オブ・ヨーク》を中心としたイギリス軍空母機動部隊は、攻撃隊から伝えられてくる無線に絶望していた。

 そして自分たちが殴りかかった以上、自分たちより優勢な空母3隻、戦艦2隻を有する日本艦隊の苛烈な攻撃を予測する。

 だが先の戦闘でのアメリカ艦隊との対戦から、防戦なら大丈夫という雰囲気もあった。

 それに「シーファイア」は、36機のうち33機が飛行可能だった。

 

 日本側は、相手の攻撃を完全に防いだと考えていたので、防空任務の戦闘機隊も最初に随伴させることとする。

 この時《翔鶴》《瑞鶴》は、それぞれ戦闘機36機、急降下爆撃機18機、攻撃機18機、偵察機3機、軽空母《瑞鳳》は、戦闘機9機、急降下爆撃機9機、攻撃機12機、合計で戦闘機81機、急降下爆撃機45機、攻撃機45機、偵察機6機、総数180機を定数として搭載していた。

 しかも《翔鶴》《瑞鶴》用に、交代用の同数の航空機とパイロットがアメリカに渡って訓練していたので出し惜しみする気もなかった。

 そしてこの時はまだ80%以上が戦闘可能で、戦闘機隊は無傷だった。

 

 一度に飛行甲板に並べられる機体数は1隻当たり40機程度なので、2隻から一度に送り出せるのは80機程度となる。

 この時日本艦隊は、戦闘機45機、急降下爆撃機18機、攻撃機24機をイギリス艦隊への第一波として送り出した。

 軽空母《瑞鳳》も攻撃隊を出すので、規模自体はドイツ艦隊に対するより大きくなっていた。

 

 午後2時半頃、日本軍攻撃隊がイギリス艦隊に接近した。

 日本軍攻撃隊は、様々な偵察機からの情報を得て案内まで受けていたので、イギリス側が不意打ちすることは不可能だった。

 自然、正面からの激突となるが、日本側はまず27機が制空権獲得競争のため突出する。

 これに対してイギリス側は21機が対応したが、やはりここでもイギリス軍機は日本軍の「零戦」に対して果敢に格闘戦を仕掛けた。

 アメリカ軍機相手なら正しい戦法だが、アジアからの情報を得て危険と分かっていても、彼らはまずは自分たちの得意とする戦いを仕掛けてしまう。

 そして相手が熟練者が多く数が多い上に改造型の「零戦」だったこともあり、ほとんど一方的展開となった。

 多くのシーファイアがダイブして逃げるしかなく、挑んだうち半数以上が最初の10分程度の戦闘で撃墜された。

 

 そして残りの防空隊と護衛戦闘機隊との戦闘もイギリス軍の不利のまま推移して、日本側は90%以上の攻撃機が突破に成功する。

 数に勝る相手と正面から戦ってしまうと、航空管制の魔力も効果は殆どなかった。

 

 日本攻撃隊は、定石通り急降下爆撃隊が護衛艦艇を狙い、雷撃機が空母を狙った。

 空母で狙われたのは《イラストリアス》で、外周の艦艇を抜けた20機近い雷撃機の攻撃を左右から受け、全てを避けきることが出来ずに2本を受ける。

 1発はそれほど大きな損害を出さなかったが、もう1本は艦首近くに命中したため、高速が発揮できなくなってしまう。

 

 そして約50分後、午後3時も回って帰投後の着艦を考えるとこの日最後の攻撃隊が、イギリス艦隊上空に現れる。

 

 戦闘機同士の戦いは、やはり格闘戦を仕掛けた「シーファイア」の敗北に終わった。

 奇妙なので、この時も日本軍のパイロットが首を傾げたほどだった。

 とはいえ第二波は攻撃隊の機体数自体が少ないため、相手に致命傷を与えるには至らなかった。

 

 《イラストリアス》にさらに魚雷2発を与えて大破状態に追い込むが、護衛艦艇の奮闘もあってこの日の攻撃はこれで終えなければならなかった。

 


 しかし24日の戦闘はこれで終わりではなく、枢軸側が多数展開していた潜水艦による戦闘が日米機動部隊で終日展開されていた。

 この結果は、日本艦隊が午前中に1隻を完全撃沈し、1隻を撃破した。

 軽空母《瑞鳳》航空隊の対潜戦闘の熟練度合いは、流石としか言いようがなかった。

 これに対してアメリカ艦隊では、空母 《サラトガ》が魚雷2本の雷撃を受けて中破。

 航空隊を強引に比較的近かったタークス・カイコス諸島の飛行場に送り届けている。

 

 なお、朝に飛び立った筈のドイツ軍攻撃隊は何をしていたのか? 答えは単純で、空で迷子になっていた。

 当然ながら攻撃どころではなく、何とか燃料切れ前に友軍艦隊まで帰投するも、母艦が全て傷ついて離発着不能だった為、何もしないまま全機失われていた。

 全ては地上目標のない洋上での航法が全くなっていなかったからで、洋上戦を空軍パイロットに行わせた弊害が如実に現れていた。

 大型機や偵察機なら洋上訓練も積んでいたが、島影一つない場所での遠距離戦闘は全く初めてだった事もこの時の戦闘に影響したと言えるだろう。

 この時は誘導に偵察機を用いなかった事も大きく原因していた。

 

 そしてその後ドイツ空軍の空母艦載機部隊では洋上航法の訓練を強化したかというと、そうではなかった。

 実戦どころか訓練に使える空母すら無くしてしまったからだ。

 しかも今後1年近く空母を持つことはなく、戦場も変化したため結局洋上航法は重視されないままだった。

 この単発小型機の洋上航法訓練不足は、その後も度々ドイツ空軍を悩ませる事になる。

 そしてドイツ海軍はともかくドイツ空軍は、最後まで洋上での戦闘の特殊な技術について本当に理解することも無かった。

 これは中佐以上の高級将校が、作戦行動中の空母に乗ったことがないためと言われている。

 


 9月24日「中部大西洋海戦」の結果、欧州枢軸側は空母2隻撃沈、1隻大破、戦艦1隻撃沈、他撃沈、損傷多数という大損害を受ける。

 これに対して連合軍側は、空母1隻が戦線離脱をしたのみだった。

 ドイツ艦隊が大損害を受けたのは、結果として連合軍の集中攻撃を受けたからだが、ドイツ海軍の艦隊行動、機動部隊運用の訓練不足が大きく原因していると言わねばならないだろう。

 

 そして戦略的には、拮抗していたはずの制海権は完全に連合軍優位となり、しかも圧倒という形で連合軍に傾いた。

 

 だが、補給と補充、可能なら修理を行うため、連合軍艦隊は一旦根拠地まで引き返す。

 これほど欧州枢軸艦隊が食いついてくるとは考えていなかったからで、上陸作戦についても予定が繰り延べされた。

 

 対して欧州枢軸側は、ドイツ海軍が主に政治的に大混乱に陥っていた。

 

 理由は言うまでもなく、空母2隻に加えて昨年5月に欧州各国が全力を挙げて救った戦艦 《ビスマルク》を、殆ど無為に失ったからだった。

 その他、随伴した艦艇の損害も加えたら、ドイツ海軍の洋上作戦部隊は壊滅状態だった。

 カリブに艦隊として駐留させ続けることすら難しい状態で、以後ドイツ海軍は本国で改装中の艦艇、建造中の艦艇が揃うまで大型艦の出撃が禁止されてしまう。

 この時のヒトラー総統の怒りは非常に激しく、一時は大型艦全てを解体してソ連との戦いに役立てるとまで言ったほどだった。

 だが、大西洋の戦いに大型艦が必要だという理解もあったので、冷静さを取り戻した後に出撃禁止だけを改めて命令している。

 

 だが、海軍のレーダー元帥は、大敗の責任を取る形で辞任せざるを得ず、後任にデーニッツ提督(当時大将)が就任した。

 デーニッツ提督の就任には、多分にヒトラー総統が影響していると言われ、潜水艦作戦がまだ順調だったことが後押ししていた。

 だが、その9月のドイツ海軍の潜水艦の損害は極めて深刻で、海軍のトップに就任した時点でのデーニッツ提督は、得意とする潜水艦による作戦のピークが過ぎてからの就任という、かなり皮肉な人事交代でもあった。


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