出会い5
一枚手に取ってみたけど、専門用語ばっかりでさっぱり分からなかった。
でも、こうして明るいという事は人が居るかもしれないという事。
カプセルとかは一先ず置いておいて、まずは人を探してみよう。
流石に大声を出して探すのは恥ずかしいから、普通に一部屋ずつ探すことに。
機械に詳しくないけど、ここはこの世界のどこよりも科学が進んでいた。
もしかしたら俺が元居た世界の何倍も進んでいるかも・・・。
若干興奮気味に歩いていると、住居スペースらしい所へたどり着いた。
ここなら人がいるかもしれない。
まるでSF映画に出てくる宇宙船のような扉をなんとか開けて中に入ってみる。
「失礼しまーす」
一応声を掛けてみたけど、返事が無い。
よくよく考えてみたら俺の姿は今認識出来ないようにしてたんだ。
いつ人と遭遇するか分からないから、ひとまず解除しておくか。
声を掛けても返事が無かったからここにも居ないのか、と思って部屋の中をキョロキョロ見回すと、机の上に本があった。
気になったので手に取ってみると、どうやら本じゃなくて日記だったみたい。
悪いとは思いつつ、ページをめくってみる。
すると、そこにはとんでもない事が綴られていた。
“XX年、X月〇日
実験は順調だった。
しかし、とうとうここが軍の奴らにバレた。
幸い、この施設にたどり着くまでには至っていないようだ。
それで良い。
誰にも邪魔はさせない。”
“XX年、〇月〇日
もう完成したはずだ。
なのになぜ目覚めない!
何がいけないのか分からない。
くそっ!イライラする。
最近あまり体調が万全ではないのもあるのかもしれない。
軍の連中には攻め込まれなかったが、いつの間にかだんだん人が少なくなっているようだが・・・”
そこで日記は終わっていた。
ここは軍に目をつけられるような実験をしていたようだ。
それが、何らかの理由で人が居なくなっていって・・・。
日記の日付を見ると、今この世界で使われているようなものではないので、おそらく旧文明のものだろう。
だとしたら、どれだけ長い間ここは存在しているのだろうか?
気の遠くなるような長い間、人が居なくなってもずっと・・・。
日記を閉じて、さっきのカプセルがあった所まで俺は戻った。
最初は興味半分、面白半分だったのに、なんだかとんでもない事を知る羽目になってしまったなぁ・・・。
それでも俺がどうする事もできないし、ここでどんな実験をしていたのかもよく分からない。
・・・ここは、このままにしておこうと考えた俺は、この洞窟を出る事にした。
しかし、カプセルの前を通り過ぎようとした瞬間、突然大きな地震が起こった。
これはヤバい。
生き埋めとかシャレにならないぞ。
整備されているとはいえ、めちゃくちゃ古い建物だ。
いつ崩れてくるか分からない。
突然の事に立ったままでは居られなくなった俺は、一つのカプセルの前で膝を着いてしまった。
周りの天井にヒビが入り、所々崩れ落ちて来ている。
頭がパニックになって、ここから離れるとか集中できない。
揺れが早く収まらないかな、と思っていると俺の真上の天井が落ちてきた。
あ、死んだ・・・と思ったんだけど。
俺に直撃するはずだった天井の欠片からの衝撃が一向に来ない。
何が起こったのか、ギュッと閉じてしまっていた目を開けると、カプセルに入っていた女の子が落ちてきた欠片を支えていた。
呆気に取られていると、女の子は自分に圧し掛かる天井の欠片を軽々と放り投げた。
そして、俺の方を見るとニコッと微笑んで、その後糸が切れたように気を失った。
「あ、ちょ!大丈夫!?」
慌てて女の子の身体を抱き起し、一先ず呼吸を確かめる。
微かだが、ちゃんと息をしているみたいで良かった。
未だ崩れが止むことは無く、他のカプセルはすでに埋もれてしまっていた。
女の子のおかげで頭が少し冷えた俺は、この子だけでも助けようと外の景色を思い浮かべ、そこに自分と女の子が居るという想像をする。
緊急事態なので大雑把になってしまったが、大丈夫みたいだ。
自分の身体がこの場所から消えて行く感覚がやって来て、俺と女の子は洞窟から脱出することに成功した。