出会い2
この世界の結婚式というのは、基本的に両家の親族と新郎新婦がどうしても来て欲しい友人数人という、少人数で行われる。
家同士の結びつき重視の風習があったからだ。
まぁ、最近ではそんなに厳格なものじゃなくて、ただお互い仲良くしようって意味合いで行われるみたいだけど。
結婚式はまず、新郎新婦の簡単な紹介から始まり、友人のスピーチ、新郎新婦の入場、そして誓いの言葉と続く。
ルクスさん達の結婚式も、そんな感じの進行だった。
それぞれの親族からルクスさんとルチアさんの簡単な紹介が終わり、俺のスピーチの番になった。
この日のために、シューさんがわざわざ新しく服を仕立ててくれたのもあり、なんだか申し訳なく思う反面、有難かった。
そんな立派な服に負けないよう、気合を入れてスピーチをしなきゃ。
「俺とルクスさんが出会ったのは、ほんの数ヵ月前。ルクスさんが俺の働いている宿屋に来た時でした」
目を閉じると今でも思い出す。
憂いを帯びたあの顔が、一番最初は気になったんだ。
「ルクスさんはどこか悲しそうで、何でそんな顔をしているのか気になって、俺はルクスさんに言いました。何に悩んでいるか、俺に話してみませんかって」
「ルクスさんは会ったばかりの俺に話してくれました。それはとても辛い事で、でもルクスさんは自分の悲しみの原因を責めることはせず、俺のありきたりな慰めに、本当に優しく微笑んでくれました」
ルクスさんが美形なのもある。
あれは本当にカッコ良かったなぁ。
「それから、ルクスさんと俺は友人になりました。ルクスさんはこの町に来てからの俺の初めての友人で、空いた時間があれば共に過ごし、お互いの事を話し合いました。そんなある日、俺とルクスさんはとある女性と出会いました。それがルチアさんです」
あの時は、二人がこんなに俺と仲良くしてくれるだなんて思ってなかった。ましてや、こうして二人の結婚式に呼ばれるような関係になるなんて。
「当時のルチアさんは、事情があって家族でこの町までやって来て、慣れない生活を強いられていました。それでも、彼女はそんな逆境に負けない強さを、逞しさを持っていた」
今まで裕福だった暮らしから一転、明日食べる物すら無い時もあっただろうに、それに不満を言う事も無く、両親に心配をかけないようにルチアさんはいつも笑っていた。
「そんな二人がいつしか惹かれ合い、一緒に居る時間が増えました。それが本当にお似合いで、俺は二人が一緒に居る姿を見るのが好きになりました」
だって、こうして思い出すだけでもこんなに胸がポカポカする。
そこに、嫉妬とか妬みなんてものは一切生まれなかった。
「ルクスさんは、よく町の人の手助けをします。それが当然の事だと。普通ならその当然がすぐには出来ません。なのに、ルクスさんはさらっとそれをやってのけるカッコイイ人です」
俺も見習いたいけど、中々出来ない。
いつか、ルクスさんみたいになれるよう、少しづつでも頑張らないとな。
「ルチアさんは、誰かを悪く言う事が苦手な人です。相手を責めれば良い時でも、ルチアさんはそれをしません。自分に至らない事があるから責められるのだと、そう考えています。中にはそれを偽善と思う人も居るでしょう。でも、俺は違うと思います。彼女は、本気でそう考えているから」
あの、初めて会った時もそうだ。
自分の何かが癇に障ったから、男達が絡んで来たのだろうと本気で思っていた。
抵抗していたのは、仕事探しという用事があったからだ。
「俺は、そんな二人が大好きです。友人である事を誇りに思っています。出会えて良かったと、心から喜べる存在です。皆さん、どうか二人を見守り、時には助けてあげてください。俺は二人の友人としての手助けしか出来ません。でも、皆さんは二人の親戚です。家族です。新たに増えた家族を、どうか支えて下さい」
俺のスピーチはそこで終わり、扉の前で待ってた新郎新婦が入場。
誓いの言葉が終わって、結婚式が終了した・・・という訳だ。