出会い1
ルクスさんとルチアさんの結婚式を明日に控え、友人代表としてスピーチをすることになった俺は、緊張しっぱなしだった。
こういうの、慣れてない・・・というか人前で喋るのが苦手なんだよ。
そういえば、元とはいえ許嫁だったクレアさんを結婚式に呼ぶかどうか、ルクスさんとルチアさんは悩んだ。
一応幼なじみでもあるから。
でも、シューさんが言うには結婚の知らせだけで良いそうで、二人はその通りにした。
まぁ、自分が捨てた相手の結婚式だなんて、真面な神経してたら普通は呼ばれなくても文句を言わないだろうけど。
そこで、ルクスさんの家の人がクレアさんが居るであろう勇者の家に結婚の知らせを持って行った時、留守にしていたのか誰も居なかったそうだ。
そんなことを今日聞いた俺は、何となく気になって久しぶりに勇者達を覗き見る事にした。
すると、俺の脳内にダーヴルクスに到着している勇者達の映像が映った。
こんな所に来て何をしているんだ、と思いながら見ていると、勇者達一行はルチアさんのお屋敷があったであろう場所に着いた。
そこはまだ、買い手がつかず、荒れ地のままになっている。
そんな惨状に驚いたのか、勇者が近くの人に話を聞いていた。
勇者の周りの連中も、自分達が原因とは思っていないのか、目を丸くさせている。
声が聞こえなかったので、何を喋っているのかは分からないのがもどかしい。
一体、ルチアさんの事が近所でどう言われているのか。
近所の人と二言、三言交わした勇者が悲しそうにしている様子はなかったから、ルチアさん達一家が死んだとかの噂は流れていないんだろうな。
でも、何が原因なのかきちんと聞いているのか?
その近所の人が詳しく知っているかは分からないから、どの道勇者達一行がルチアさん達のお屋敷を破壊した原因だと気付いていないみたいだし。
どうやら勇者達は移動を始めたようだ。
どこに向かうのかは分からないけど、出来るならこっちに来ないで欲しい。
勇者達の行き先は気になるけど、俺には今明日のスピーチの方が大切だ。
もし、勇者達がここに来る場合はその時対処すればいいか。
やっぱり、二人の友人とはいえ、俺はまだ数カ月の付き合いしかない。
この町での二人しか知らないんだ。
どんな事を言えば良いのか頭を悩ます俺の脳裏に、フッと寄り添う二人の姿が浮かんだ。
本当に、一枚の絵みたいに綺麗で、それだけで俺の心はポカポカする。
勇者を覗き見る時、クレアさんであろう人を見た事がある。
でも、言っちゃ悪いけど、ルチアさんの方がルクスさんとお似合いだった。
俺の贔屓目もあるだろうけど、それだけ二人が一緒に居ることが当たり前になってた。
そう思うと、何だかスピーチの内容が自然と頭に浮かんでくる。
そして、俺は二人の結婚式当日を迎えた。
結婚式は、町の教会で行われた。
ルクスさんの親や親戚も出席するため、ヤズーに到着。
ルチアさんのお母さんも、娘が結婚するということで具合が良くなり、無事晴れ姿を見ることが出来て嬉しそうだった。
あ、あそこで泣いている人って、もしかしなくてもルチアさんのお父さんだろうか?
なんだかもう、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。
「タクミ君」
そんな事を思っていると、礼装でカッコよく決まっているルクスさんが声を掛けてきた。
鎧とかそっち系のものを着てキリっとしているルクスさんは本当に美形だ。
「素敵なスピーチだったよ、ありがとう」
頭を下げながらそう言ったルクスさんに、俺は慌てた。
「いえ、そんな・・・。俺から見た二人を、ただ色んな人に知って欲しかっただけで」
「君には私達二人があのように見えていたのか・・・。君という友人を持てて、私もルチアも幸せ者だ」
にっこりと、嬉しそうに言うルクスさん。
そう言われると、なんか照れるな・・・。
にしても、ちょっと前までは“様”付けだったのに、今は名前呼びが大分板についたみたいだ。
俺としてはもうしばらく時間が掛かると思ってたんだけど、ルクスさんも中々やるな。
「俺も、二人のような素晴らしい友人を持てて、幸せ者です」