ドラゴンは、考える
そこには一人の少年が居た。
ただ少年は何処を見るでもなく、下をぼーっと見ていた。
「不思議だなぁ、何百、何千と生きても死なないのは」
少年――竜族はそれだけを呟いて、家へと戻る。
竜族にとっての生活は特に無い。
起きて、その辺で遊んで、帰って、ぼーっとして、寝る。
竜族には食事の概念が無い。
正確には食べられるが必要が無くてしない、と言った所だろう。
常に空中に漂う魔力――正確にはマナと呼ばれるそれを吸収している。
「暇、だなぁ」
竜族のする事は殆どない。
どの位かと言われると困るが、人族にとって必要なもの、ほぼ全て、だろう。
――食事、運動、読書、風呂、そして睡眠。
実を言うなら全て必要ない。
彼は人族のように寝て、起きて、体を動かし、ぼーっとして、帰って、寝てと、常に規則正しい? 生活をしているが、全てしなくても何も問題は発生しない。
「……人と会うべきなのかなぁ」
この場合の人は人族を含めた人型の生物――もちろん知性を持った――森人族や小人族といった生物だろう。
「やっぱ長寿の森人族とかが合うのに良いのかなぁ、でもなんか竜って場合によっては敵だし、神聖視されてる場合もあるし、面倒だなぁ……」
基本的に下位の竜は知性の無い魔物のことを言うが竜族などの知性のある生物は上位の竜と言われやすいが……やはり竜は竜、話が通じないのもあれば、人助けをして神だなんだと崇められているのも居る。
「どーすっかなぁ……」
当然竜族に親を殺されたなどと同じ種族だから嫌われる場合もあり、正直彼からしたら頭悪いんじゃないかとちょっと呟きたくなったりした。
そもそも竜族は竜族でも全くの別人怨んでもしょうがないだろうと思ったりもしている。
竜族の所を人に置き換えれば、きっと分かりやすいだろう。
人と同じで性格もそうだが色々な竜族が居る。
十人十色とは人だけではなく森人族や小人族、当然竜族だって同じだろう。
やんちゃなのが居れば冷静なのも居る。
無口なのが居ればお喋りなのも居る。
戦闘狂が居れば、平和好きなのも居る。
そうやって人と同じなのだから同じ竜族だからって怨まれるのはおかしいだろう。
そもそも全くの別人の罪を擦り付けられても、と言った所だろう――この場合は別人ではなく別竜、と言った方がいいかもしれないが。
「まぁ、また今度考えれば良いか」
竜族には、寿命がない。
当然といえば当然だが、マナをエネルギーとして動き、足りなければマナを補充する、そしてそのマナは無限エネルギー、しかもマナが寿命を伸ばし、結果として寿命がなくなっている。
どれだけ時間が経とうと、不老である竜族にとっては昨日と変わらない。
この後と書いて数年後と読んだっておかしくないのが竜族なのだから。
だからこそ、元人間である彼にとっては暇であり――
――ドラゴンは、考える