2話 わたしと先輩と後輩。
主人公の三人です。
会社の先輩後輩。
休みの日にどこか一緒に出かけたりはしないけど、仲が良いと、お互いが感じれている。
うちの社のお昼休みは13時からだ。
私は一階にあるコンビニで買って、デスクでネットサーフィンしながら食べるのが殆ど。
天野は付き合いが悪いとよく言われるが、別にそれでいいと思っている。
でも時々、先輩から『おーい』と社内DMがくる。
そんな時は、屋上でお昼ご飯を3人で食べるのだ。
「今日は〜ちょーいい天気!だから屋上きたかったんだ!」
この人は同じ総務部の松崎 優子先輩。歳は4つ上。
セミロングの気の抜けたベージュ色の髪を一本にくくっている。いつもピッと背筋は真っ直ぐに、笑顔は強く明るい。
課長補佐のポジションで、忙しくてなかなかお昼の時間が合わないのに出来る限りわたし達を誘ってくれる。
仕事の手際が良いのは勿論だが、その人を引っ張っていける性格が社内で尊敬されている。
そんな先輩はこの屋上の鍵を持つ数少ない内の1人だ。
「あははは、でも風が強いです。髪結ばないと…!」
この子は営業事務の佐々木 咲凜。歳は2個下の23だ。
アッシュブラウンのゆるパーマのロングヘアーで身長が平均より低い。
性格は大人しくて、主張も笑顔も控えめだ。
私の入社年に途中から中途採用で入ったのでほぼ同期。なのに少しでも早く入った私を先輩だと立ててくれる優しい後輩。
私と咲凜は入社してすぐに優子さんから厳しい指導を受けたのだ。新人研修の通る道だ。
その中で優子さんを尊敬することになる。
私たち3人はたまにお昼ご飯を食べる関係だ。
私はコンビニ、咲凜は手作り弁当、優子先輩はバラバラ。今日は大きなおにぎりを2つラップに包んで来たらしい。
「味がないかも…」
優子は二口食べたところで首を傾げた。
「えー?先輩、ちゃんと塩振りました?」
「わかんない!忘れたかも!」
優子はゲラゲラ笑って、もう1つのおにぎりも一口食べて無味を確認して、目を細めた。
「私のオカズ良ければ、どうぞ」
咲凛はお弁当を傾ける。
「私も…ケチャップとマヨならあります…」
明日実は申し訳なさそうに優子に調味料を見せる。すでにポテトを食べ終わってしまい、残るはベーグルサンドだけだった。
「ぷっ!はっはっー!二人ともありがとう」
にっと優子は笑ってそれぞれ受け取る。
食後はおしゃべりをしたり、運動をしたり、三人だけで少しはしゃぐ。最近は柔らかい球でバレーボールをしている。
「そ、いえばさ?営業部の新人大丈夫そう?」
優子はパッと指先まで伸ばした手のひらでボールをトスする。
「えーと、…何人かいるんですけど」
ボールの行方を目で追いながら咲凛がボールを返す。
「山口だよ。山口琴南」
明日実から強めに返ってきたので、優子はレシーブをした。
「山口さん?頑張ってますよ人一倍」
「そっか…」
優子は言いたいことはそうじゃないと思ったが、探りは別のやつにいれようと考え直した。
明日実は二人のやりとりを聞きながら、優子と同じようなことを考えていた。
優子さんとは別の、完璧さが咲凜にはあると思う。
影の力持ち、対応力、忍耐…。
徹底して自分は出さない。
こないだの飲み会で『…は、つまんなすぎ』と山口に言われていたのだ。
何を我慢しているのか…。
私はそれがたまに気になるよ。
優子さんには理想を詰めたいと思っています。
明日実はのらりくらりと自分の幸せを探せますが、咲凛はほっとくととんでもないことになるイメージ…があります。