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悪役令嬢だから、ついに攻略キャラに一目惚れします!

 

 桜茉莉に告白されてからずっと待ち望んでいたその日が──ついに来た。

 様々なメジャー施設やショッピングモールやらが並ぶ中心街に画材やスケッチブックを買いに来た時だ。

 チャラチャラした若い男共にナンパされた。


「なぁなぁ、俺達と遊んでよ~? 俺達、女の子いなくて寂しくてさぁ?」

「すっげぇ可愛いね君! ほら、こっちにおいでよ」


 うわ。こういうナンパしてくる奴、夢やら少女漫画やら乙女ゲームやらでよく見るけど……実際に見るとちょっと引く。

 しかし私の心は花畑だった。

 ついにこの時がきた。

 これこそ、私が求めていた「嬢坂サラが小鳥遊一に一目惚れするイベント」である。

 中心街でナンパされたサラが小鳥遊一に救われて一目惚れする。

 でも私、青空学園に乗り込んだ時に小鳥遊一に会ってしまったので、一目惚れではないのだけど。

 まぁ、そこはゲーム補正とかなんとかで知らない振りをしよう。

 ナンパ男の一人に腕を掴まれて、私は叫ぶ。


「ちょっと! 離してよ!」

「いいじゃんいいじゃん。絶対楽しくなるって! ね? ね!?」

「──おい」


──来た!

 私は勢いよく振り向いた。

 そこにいたのは──やっぱり小鳥遊一!

 桜茉莉のせいで小鳥遊一の存在感0だったけど、やっぱりこの世界は小鳥遊一ルート!!

 ならばまだ来世の期待はできるはず!


「嫌がってんだろうが、離してやれよ」

「あ? な、なんだてめ……」

「やんのか? あ?」


 小鳥遊一に動揺するナンパ男共に小鳥遊一は口角を上げた。


「そりゃこっちの台詞だ。やんのかよ。やるんなら……喰われても文句言うんじゃねーぞ!」


 小鳥遊一がみるみる狼に変化していく。

 小鳥遊一の能力は原作通り、狼に変化するものらしい。

 ようやく原作らしい展開に私は安堵しっぱなしだ。

 情けなく逃げ出していくナンパ男達に小鳥遊一は変化の途中で人間の姿に戻る。

 あぁ、狼姿も見たかったのに……モフモフ……。

 

「あ、ありがとう」

「ん。別に、当たり前だし。……つか、お前……」

「っ」


 小鳥遊一はまじまじと私を見る。

 え、なに? なに?

 何で匂いとか嗅がれてるの私。


「……やっぱり似てる」

「は?」


 思わず素のリアクションをしてしまった。

 というか、普通に攻略キャラにも悪役令嬢語を話さなくてもいいんだ。

 桜茉莉がいないとここは裏舞台になるからだろうか。


「てめぇの事は大嫌いだ。茉莉にいちいちちょっかいを出してきやがる」

「……えっと、」


 どうしよう。

 私は彼に今一目惚れしたのだから「私は今あなたを好きになったわうっふん」ぐらい言っておくべきなのだろうけど──タイミングが分からない。

 いや、今しかない! 今でしょ! もうやけくそだ!


「わ、私は……今、貴方の事がす、好きになって、しまったのだけれど……」

「…………」


 は、恥ずかしい!  告白しちゃった! 小鳥遊一に!

 うわああああ! 生前も告白なんてした事ないから恥ずかしさがMAX!

 嬢坂サラはもっと大胆な言葉で彼を翻弄したんだろうなと思いながら顔を上げると──。

 小鳥遊一は何故か腹を抱えて笑っていた。


「ぶっ……お前、わっかりやすいなぁ!!!」

「え? え!?」

「そんな棒読みじゃ嘘だって分かるっつーの。ぶぶっ。おっもしれぇ」


 小鳥遊一はひときしり笑った後、私の頭を撫でる。

 その顔は少しだけ寂しそうだった。


「あいつにすっげぇ似てるよ、お前」

「え? あいつ? 桜茉莉の事?」

「いや──」


 その時だ。

 中心街の思い切り人混みの中だったので、私は向かいから足早にやってきたサラリーマンとぶつかってしまい、持っていたトートバッグを落としてしまった。


「あ、」

「おい、大丈夫かよ? ……って、スケッチブック」

「っ!」


 運悪く、スケッチブックの中身が開いて丸見えの状態になってしまう。

 私は慌ててそれを拾ったが、小鳥遊一はバッチリ見えただろう。


「あ、あの、今の絵は──」

「奈々?」

「えっ!?」


──今、こいつなんて言った!?


「奈々だろ? お前」

「え? え? なんでその名前──」

「俺だよ、俺!」


 小鳥遊一が私の両肩を掴んで迫ってくる。

 何この展開!!?


「俺、奈々の幼馴染の、沖津真琴おきつ まことだよ!!」

「────」


 私は頭が真っ白になった。

 沖津真琴。

 それは確かに、私の生前の幼馴染の名前だ。

 小さい頃から女の子(ここ重要)のくせに乱暴で、やんちゃで、口が悪かった。

 しかし今、彼女は私の前に小鳥遊一の姿でいるという。

 小鳥遊一──いや、真琴は強く私の身体を抱きしめてきた。


「会いたかったぜ……奈々ぁっ!」


 男の子らしくわんわん泣く真琴に私はもう脱力だ。

 なんかもう、ツッコみが追いつかん……。

 私の嬢坂サラ人生、一体どうなるんだ。

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