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試された おもてなし

作者: 倉本保志
掲載日:2018/06/17

東京オリンピックが2020年に開催されるころには、外国人の観光客も、大勢 日本に訪れることでしょう、そんな、方々におもてなしの心で親切に接することが、求められます。日本人と、文化も言葉も違う外国の方々、多少の戸惑いは仕方ないとして、広く大きな心で、接することが大切なのではないかと、倉本保志は、そう思っておりやす。っちゅうことで、三島由紀夫云々、倉本保志の、新作短編(今回はお笑いに少しウエイトを置きました)ここに投稿です。

 試された、おもてなし


たくやは駅の北口の広場にいた。

日曜の午後、彼女とのデートの待ち合わせだ。

午前中に振っていた雨もやんで、うっすらと日がさしかかっていた。

「少し早かったかな・・・・」

「暇つぶしに、本でも読むか」

読書好きのたくやは、そういって、肩にかけた鞄から、文庫本を取り出そうとした。

「アノウ、スミマセン・・」

「はい?・・・・」

たくやは、顔をあげて、訊き返した。

外国人、とても背の高い男が、立塞がるように、目の前に立っていた。

「アナタハ、スコシ、デキマスカ・・・?ニホンゴ」

「え、なに、?」

(日本語が、話せるのかって・・・?)

「まあ、日本人ですから・・・」

たくやは、少し、愛想笑いを浮かべて言った。

「ワタシ、チョットシカ、デス。スミマセン」

「あ、いえいえ、いいですよ」

「それで、なんですか・・?」

たくやは、背の高い男の顔を、見上げながら言った。

「ア、スミマセンガ、エテコウマエ、イキタイノダガ・・・?」

「・・・・・・・・」

「えっ・・?」

「エテコウマエドコ?

「エテ公・・・?」

「ドコ、エテコウ」

「どこって、・・・・・動物園に行けばいるとは思うけど・・・」

「・・・・・・」

「キサマ、オシエナイ、キカ?」

「なに、なに、なんで、怒るの・・・?」

「判らないんだって・・言ってることが」

たくやは、相手を怒らせたのかと、少しびっくりしたが、なにせ、言っていることが判らない、言葉が通じていないということを、何とか伝えようと、手振りを交えながらあいてに話しかけた。

「エテコウ、エイガデ、ユウメイ、アメリカ、デス」

「映画・・・?」

「もしかして、ハチ公・・・?」

たくやは、忠犬ハチ公 のストーリーが外国で映画化されて人気になっていたことを思いだした。

「ああ、ハチ公前に行きたいの・・?」

「オウ、イエス、イエス、ハチコウマエ」

「それなら、この駅から、山の手線に乗って・・・」

たくやは、ここは駅が違うことを、身振りをまじえて、丁寧にその男に説明した。

「オウ、ソウリー、アベソウリー ワハハハ」

「サンキューアリゴトゴゼエヤス」

「いいえ、どういたしまして」

背の高い外国人は、たくやに手を振りながら、駅の方へ大股で歩いて行った。

・・・・・・・・・・・

「ふう、なんだよ、もう、・・・」

「疲れるなあ・・」

たくやは、駅の階段から下りてくる人ごみに目をやった。彼女は、まだ、来ない。

「そろそろ、いい時間なんだけど・・」

・・・・・・・・

「バイ、サンキュウー」

「わわ、なに、今度は・・・・?」

「アノ、イイデスカ、」

(また・・・・外国人・・?)

「はい、なんでしょうか、?」

たくやは、少しめんどくさそうに、片言の日本語を話す男に訊いた。

「アナタ、トイレ、イケマスカ、」

「ト、・・・・」

「ああ、いけますよ、もう、高校生ですから、」

まともに、相手をしていたら、きりがない、

そう感じたたくやは、もう、適当に返事をすることにした。

「ワタシ、ドコ、イクキカネ」

「さあ、わたしは、知りませんけど・・」

「ドコイキタイノカネ」

「知りませんよ、今会ったばかりなんですから・・・」

たくやは、少しむっとした顔を相手に見せた。

「・・・・・・・」

「オウ、スミマセン、ニホン、ハジメテ」

そして、すぐに、そのことを、後悔した。

(そうだよな・・・、外国の人なんだから、日本語できないの、仕方ないよ、

それでも、なんとか話そうとしてくれるんじゃないか・・)

たくやは、相手に済まない気持ちになった。

「ハタシテ、ワタクシ、ニホンジン、」

「いいえ、たぶん、外国の方ですよね、それで、どこへ行きたいのですか?」

たくやは、相手が、どこへ行く気なのかを、簡潔に聞こうと思った。

「ワタシノクニ、カバガイマス」

「・・・・・・」

(・・ということは、このひとは、アフリカから来られたのかな?)

「アナタ、カバニニテイマス」

「はい、良く言われるんですよ、おまえ、カバに似てるなって、ははは、」

(冷静に、冷静に・・・)

「オウ、オコラナイノネ」

「コノ、エテコウ」

「ジャパニーズ、モンキー」

「・・・・・・・・・・」

(ふふふふ)

たくやは、ひきつった笑顔で、その男にほほ笑んだ。

「オウ、スミマソン」

「スコシ、ワルノリ、シタデス・・・」

「どちらに、行かれたいのです・・・?」

たくやは、その男にもう一度訊いた。

「オチュウゲン、ハチゴウ、ドコデスノ?」

「忠犬ハチ公・・・ですね?

「なら、ここは駅が違います。ここから、電車に乗って・・・」

たくやは、やっとのことで、その、アフリカから、来たらしい・・?日本語の不得手な男を、駅の方へ差し向けた。

「オウ、イイネ」

(よかった、よろこんでくれて、)

「アナタニ、カンチョウシマス」

(浣腸はしないで、感謝してくださいね・・)

「カンチョ、カンチョ、アナタニカンチョウ・・・」

「サンキュウ、バイ」

またひとり、片言の外国人が、駅の方へと戻っていった。

・・・・・・・

「もう、イヤ・・・」

たくやは、弱音を吐いた。普段、めったなことで挫けたりすることはないのだが、この日は、なんだか、いつもと勝手が違う。・・・・・・・・

「アナタ、イイトシ、コイテルネ」

「あんたよりは、若いつもりだけど・・・」

たくやは、ある意味やけくそだった。もう、相手のことなど知ったことではない、怒らそうが、どうしようが、どうでもいい・・・そう思って、つぎの男に話しかけた。

「マスター、ヘイ、オコッテナイ」

「怒る・・・・とんでもございやせんですよ・・・ハイ」

たくやは、ワザと変な言葉を使って、その男に答えた。

「アノ、キキタイノ、オネガイシマス」

「どうぞどうぞ、なんなりと、わたくしが、どんなことでもお答いたしますで

ございますから・・・」

「アノ、ガブラチョウ、ドコ」

「・・・・・・・」

「はい、?・・・」

「ガブダチョウ、イク、ドコニ」

「あの、教えたいのは、やまやまですが、何言ってんだか、さっぱり、わからないんでロドリゲス」

「・・・・・・・・」

「キサマ、ガイコクジン、バカニスル、アルカ」

「ニホンジン、シンセツ、ウソッパチ、アルカ」

「あら、中国語もお出来になるとは、なんとも、語学の堪能なお方でいらっしゃります」

・・・・・・・・・・

「コノヤロウ、ブチコロス・・」

そう言って、男はたくやの胸座に掴みかかってきた。

強く、押された格好になり、たくやは、後ろに転びそうになったが、なんとか持ちこたえて、相手の両手をふりほどいた。

「・・・・・・・・」

険悪な雰囲気が立ち込めている。

(なんで、こんな目に会わなきゃいけないんだ、ツルはげ芸人の○○じゃないが・・なんて日だ・・・)

相手の外国人は、たくやの尋常でない目つきに、一瞬怯むと、何も言わずにその場から立ち去った。

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・


「あーあ、やっぱ、まずかったかな・・?」

「ふうっ・・・」

暫くして、たくやは、結局は、自分が、悪いのだと、改めて反省し、深いため息をひとつついた。

・・・・・・・

「ごめん、待った?」

後ろで、声がした。彼女の声であった。

・・・・・・・

「あ、そうか、」

たくやは、ふと、思い出したように呟いた。

「どうしたの・・・?」

「なんだ・・・そうだったのか・・・」

「・・だから、何・・・?」

彼女は、たくやに訊き返した。

・・・・・・・・・・・・

「カブラチョウ・・・カブキチョウ・・・歌舞伎町・・・」

「歌舞伎町のことだ・・・」

「落ち着いて考えればすぐにわかることなのに・・・」

「反省しきり、でございやす・・・」

・・・・・・・・・・・・・・

「なに、?」

「一体、何の事・・さっきから・・?」

彼女は再度たくやの顔を覗き込む・・・

・・・・・・・・・・・

「いや、なんでもない、」

「じゃ、いこうか・・・」

たくやは、そういうと、彼女の手をかるく握り、スクランブル交差点を足早に歩いていった。 


おわり



まだ、倉本保志が、若かりしころ、パリのマクドナルド(話せないので普通の店にはいけなかった)に入って行儀よく、順番を待っていました。いつまでたっても、学生風の店員が、自分たちでしゃべくっていて、注文を取り次ごうとしないので、「はよせえや、いつまで待たせんねん っボケが、」と日本語で怒鳴ったところ、慌てて注文を聞いて来ました。やっぱり言葉ではなくて、心で会話するのが大切なんだとこのとき思った次第です。

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