それに可愛いし
「普通に考えたらさ、犯罪とか大袈裟なものじゃなくてさ、彼氏から放置プレイ中って考えたりするほうが自然な気がするんだけど」
俺的にはそんな非日常的な事が簡単に起こるとは思わないし、面白い事ならともかく、単なる痴話喧嘩や赤の他人の性癖、ましてや身の危険に迫るような事に積極的に参加したいとは思えなかった。
「それは俺も思うけどさ。でも予定調和の中じゃ、結局は考えの及ぶ範囲でしか物事は起こらないわけだし。こういう機会ってなかなかない貴重なものだと思う」
「まぁ暇だからいいけど、やばかったら終わりにするからな」
そうは言いながらも、俺は田中は一度首を突っ込んだ事に関しては、納得が出来ない限りは途中で止めることはないと思う。
その場合、彼一人よりは俺がいたほうが本当に危ない場合に冷静な判断が出来るかもしれないと考えたりもしていた。
「とりあえず、場所を変えよう。この場所だと例の男から俺らが丸見えだし。さっきの行動で認知されてると思から、ずっといるのはよくないと思う」
というわけで俺たちは彼女を監視していると思われる男の姿は確認出来ないけれども、黒髪ロングの彼女の姿は確認出来るドーナツショップに移動していた。
「男の行動は確認出来ないけどいいのか?」
「店の中で電話とかされても内容とか確認出来るわけでもないし、店を出るまでは気にしなくていいと思う。しかし可愛いよな」
「なんかさ、お前が彼女を作るキッカケにしたいようにしか思えなくなってるんだけどさ」
少し呆れ気味な俺に対して田中は悪びれる様子もなく
「それもある」
と答えた。
そんなやり取りをしてすぐに、監視していると思われる男が出て来るのが見えた。