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1話 満たされた瞬間
それは酷く寒い真夜中だった。
真冬の中、僕はただ1人、夜23時に人っ子一人いない殺風景な公園にいた。
僕が座るブランコは、さびついた鉄同士が擦り合い酷く嫌な音を奏でた。
薄気味悪い公園に不快なブランコの音は似合いすぎている。
そんな薄気味悪い公園の脇に、今にも凍え死にそうな小さな猫が、尻尾を丸まった体に無理やり押し込め小刻みに震えていた。
それを見た僕は首に巻いていた安物のマフラーを、偽善ではなく純粋な気持ちで子猫に巻いてあげる。
「これで少しは暖かくなったかな」
微笑む僕。
まだ瞳を開けれなくて視界が見えないはずの子猫は、すりむいた僕の手をぺろっと小さな舌で舐めた。
「君も一人ぼっち?」
僕が首をかしげると子猫も首をかしげた。
それが何だかおかしくてクスッと笑う。
自分の中にぽっかりと空いた穴が初めて満たされた瞬間だった。
この後、子猫に赤い毛糸のマフラーを巻いたまま我が家へ持ち帰った。
帰ったらすぐに名前を付けた。
会ったときから決めてたんだよ、リリ。