ルイとシュウ
結局ルイはシュウにごはんを奢ってもらうことになった。
色々考えた挙句、全室禁煙でごはんも食べられるカフェに入る事にした。
タバコの匂いが衣服につけば、母親に勘付かれてしまうからだ。
「ルイちゃんは何食べたい?」
別に食べたいものなど無かった。
エリコとだったら何もかもが楽しかったのに、シュウといる時のルイは冷め切っていた。
それでも今この男を手放す事は出来ない。
大事な金づるを逃してなるものかと、ルイは咄嗟に演技した。
「あたし、このパスタが食べたいな!」
ルイはこの店で一番安いパスタを選んだ。
「ルイちゃん、遠慮せずにもっと色々頼んでいいんだよ?」
ルイはイライラした。金づるがあたしに指示するな!
あたしに指図していいのは、エリコだけよ!
シュウの親切心を「うるさい」と思ったルイは、途端に目の前の男がウザくなってしまった。もう金も受け取ったのだ。
この男に構っている暇はない。
「あたし、帰る」
「ええ!?今お店入ったばっかりなのに」
「ごめんね今日ママ帰ってくるの早いの忘れてたんだぁ。」
ルイは嘘をついたが、シュウは気づかない。
「あ、そうなのか」
と、何の疑いもなく納得した。
「それなら仕方ないな!また何か困った事があれば呼んでくれよ」
「うん!シュウくん大好き!」
ルイは貼り付けたような笑顔でシュウに別れを告げた。
(あたしに今必要なのはあんたじゃない)
一方一人ポツンと残されたシュウは、
(寂しいけど仕方ないか、今のルイちゃんには俺しか頼る人がいねぇんだから、ルイちゃんの為なら俺の寂しさくらい、何でもないさ)
などととんでもない思い違いをしていた。
ルイとシュウが相入れる事など絶対に不可能だった。
お互いそばにいて、身体の関係があるにもかかわらず、ルイはシュウを金づるとしか見ておらず。
シュウはルイを通して、恋愛をしている自分に陶酔しているのだから。