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紅椿  作者: 杉野御天
11/13

江理子の真意

投稿がずいぶん遅れてすいませんでした!

「江理子と会うのは久しぶりだなぁ、何話そうかなぁ」


ウキウキしているシュウとは裏腹に、ルイは浮かない表情を浮かべていた。


ピンポン♪


玄関のインターホンを鳴らす。

ここが江理子の家?

すごい、なんて大きな家なの?


「いらっしゃーい!」


江理子はとびきりの笑顔でルイとシュウを迎えてくれた。

江理子の笑顔を見てほっとしたルイの、さっきまでの江理子に対する不信感や疑問は、もうなくなっていた。


(別に気にすることないわよね、たまたまだっただけかもしれないし)


今日の江理子は特に美人に見えた。


「まぁ適当にくつろいでて、今お茶入れてくるからさ」


広いリビングに通されたルイとシュウはふかふかなソファにそれぞれ離れて座った。


「あ、あたし手伝います!」

「いいのいいの、ルイちゃんは座ってて!」


ルイは言われてストンとソファに腰を戻した。

チラッとシュウの方を見ると、シュウは膝を所在なさげに開けたり閉めたり、パタパタしていた。


(落ち着きのない男...)


ルイのシュウに対する心は急速に冷めていった。

お金目当てで仕方なく会っていたけど、それももう終わりにしよう!

別に今シュウ君がいなくても平気よ、あたしには江理子がいるんだから...


江理子、江理子、あたしの江理子。


「お待たせ」


コトンと、コーヒーとお茶菓子を置き、江理子は自分もソファに座った。


「さてと、まずは自己紹介からかな、シュウ、こちらルイちゃん」


ドキッとした。

江理子はルイとシュウの関係を知らないのだ。


「は、はじめまして...」


ルイはシュウと初対面のふりをしたが、シュウはそうは行かなかった。


「え?ルイちゃん、俺ら会ったことあるじゃん!」


それを聞いて、ルイは怒りで手が震えた。


(この馬鹿男!江理子はあたしたちの事を知らないのよ!)


ルイはつーんとしてシラを切り通した。


「初対面ですよ、シュウさん、よろしくお願いします」


シュウはルイの豹変ぶりに混乱しているようだった。


いいのよ、あたしには江理子がいるんだから...

あなたなんか眼中にないのよ!


しばらく二人の様子を見ていた江理子だったが、突然口を開いた。その表情は真剣だった。


「まぁ、私も意地が悪かったかな。私、二人のこと知ってるのよ、二人が知り合いだってことも。」


それを聞いて、今度はルイが凍りついた。サッと血の気が引き、江理子の顔を見た。


「ルイちゃん、シュウって最低だよね」

「え?」

「え....!」


江理子の言葉に、二人とも面食らった様子だった。


「私、あなたを見損なったわよ、シュウ。信じられない。未成年の子に、手を出すなんて」

「あ、そ、それは...ルイちゃんが、」

「ルイちゃんが何よ、あなたを誘ったって言うの?誘いに乗らなけりゃいいじゃない、それとも何?誰かさんみたいに、欲望を抑えきれなかったとでも言うつもり?」


江理子の顔は、怒りに満ちていた。一方のシュウは江理子の剣幕に、うろたえるばかりだった。


「私、最初はルイちゃんがシュウを弄んでるのかと思ってたの」

「え?」

「でもどうやら違ったみたい」


あの日、私はカフェの帰りにたまたま見てしまった。

ルイちゃんがシュウと一緒にいるところを。

二人がラブホテルに入っていくのを。


最初は、ルイちゃんがシュウを騙してるのかと思って、ルイちゃんに対して怒りが湧いた。

でも


「どう考えても、悪いのはシュウよ。あなたもいい大人なんだから、やっていい事とその逆の区別くらいつくでしょう、恥を知りなさいよ!」

「そ、そんな、俺はただ...」

「いくら言い訳したって無駄よ、あなたがルイちゃんにお金を渡しているのは、明白なんだから!つまり援助交際って事でしょ?」


ルイは驚いた。

確かにシュウにお金はもらっていたが、まさか江理子がそこまで知っているとは思わなかったのだ。


「た、確かにお金は渡してだけど....」

「やっぱりね!だからあなたは馬鹿なのよ!もう顔も見たくないわ、二度とルイちゃんの前に現れないで」


江理子はシュウがルイにお金を渡していた事までは知らなかった。カマをかけてみたのだ。


「そ、そんな...ルイちゃん、何とか言ってくれよ!あれは二人とも合意の上で...大体江理子は関係ないじゃないか!」

「そう?そう思うの?残念ながら関係あるのよ、私とルイちゃんは、友達なんだから」

「江理子さん...」


ルイは感動していた。

未だかつて、自分の事でこんなにも必死になってくれた人がいただろうか?


ああ、やはりあたしには江理子しかいないんだわ。


「友達の痛みは、私の痛みよ、ルイちゃんにつけた心の傷の代償を、今すぐ払ってちょうだいよ」


ここで初めて、ルイは江理子の言葉に違和感を感じた。痛み?ルイはシュウと過ごしていた時、その時間は苦痛ではあったが、痛いと感じた事はなかった。


痛み?江理子は何の事を言っているの?


「ルイちゃんが受けた精神的苦痛よ、どんなに恥ずかしく、辛かったか。シュウは考えた事がある?その代償を、払うべきよ」

「そ、そんな、代償って、今さら何をすれば...」

「あなた馬鹿なの?私が警察に連絡したら、あなたは身柄を拘束されて、一生牢屋の中よ、だからここで払ってチャラにしてあげるって言ってるのよ」

「へぇ?!」


シュウは何とも情け無い声を出した。


ルイは江理子の考えている事が分からず、傍観していた。


(江理子、何を考えているの?)


「ルイちゃんに対し、心から謝罪しなさい。土下座して、そしてもう二度と会わないと約束して、今すぐ。」

「ど、土下座!?」

「何よ、警察のお世話になるよりマシでしょ?一生刑務所と、土下座でなかった事にしてあげるって言うのに、どっちがいいか、その足りない頭で考えてよ」


江理子の凄みに、シュウは情けなく陥落した。


「ど、土下座でも何でもします、それで許してください...でも、俺ルイちゃんの事本気で好きだったんだ!」

「それで?」

「へ?」

「あなたは恋に恋してるだけよ、シュウ。いい加減、夢を見るのはやめなさい!」


シュウはルイを見た。


ゾクッ


極限状態で改めて見るルイの目は、冷め切っていた。その目はまるで、氷のようだとシュウは思った。


俺は、今まで夢を見ていたのか?


涙がツーッと、シュウの頬を伝っていた。


「何を泣いてるのよ、あなたが苦しいの?泣きたいのはこっちなのよ!」


ずっと応援してきた。ずっと心配だった。

不器用なシュウが、いつも危なっかしくて、いつかとんでもない間違いを犯すのではないかと。


予感は的中した。


シュウ、あなたはどうして

そんなに馬鹿なの?

利用されているのが分からないの?

ただその純粋な想いが、時には報われなく、自らの首を締める事になるのよ、分かって欲しい。


法が許さなくても、私は許すわ。あなたの一途な想いを、いつまでも成長できない、その子供のような心を......!


「ゆ、許してください、もう二度と会いませんから!」


ガバッと地面に頭をつけ、シュウは土下座する。


その様子を見て、江理子は静かに泣いていた。


(こうでもしないと、ルイちゃんにいつまでも利用されかねない、ごめんね、シュウ)


一方のルイは感動していた。

やっぱり江理子はあたしの味方なんだわ!

そうよ。シュウ、悪いのは全てあなたよ!


ルイは感動のあまり、江理子の涙に、いつまでも気がつかないでいた。


*****

いきなり佳境に入ってしまってすいません。

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