予兆
幻想の終わり迎えしとき
他の国より使いありけり
地を揺がし天をかき乱す者
彼技をもってこれを防ぐ
今国の終わりを迎えん
ーーーーーーーーパタン
紫は本を本棚に戻さずに着物の内に収めた。
(……もう随分経つわね)
ここは博麗神社の倉庫。
霊夢に半ば脅迫に近い形で倉庫の整理を頼まれその最中懐かしい物を見つけてしまい知らず知らずの内に読み更けてしまった。
バシッ!
「いたっ!」
振り返るといつもの箒を持った霊夢がこちらを睨んでいた。
「何サボってんのよ」
「私も年かしら……この程度の攻撃も避けれないとは」
ここは日本のどこかに存在する都。
名は幻想郷。
ここに来るのは皆外界から忘れ去られた者や物ばかり。
居住者は人だけではなく妖怪や神様まで多種多彩だ。
「とにかくやる事はまだまだあるんだからね。次サボってたら夢想封印をお見舞するんだから」
「貴女も言うようになったわね。つい最近までベソかきながら私に抱きついて来てたのに」
「……何十年前の話よ」
「私にとってはほんの十年前の事よ」
二人はお互いを見合い笑った。
私はいつも思わされる。
人間の成長は早い。
ーーーーーーーーそして衰退も
私からすればほんの一瞬を人は懸命に生き、そして凄いスピードで文明とやらを創り上げてきた。
文化、伝統、工芸、など様々なものを。
人間は誕生してまだ2〜3000年ばかしだというのに私達妖怪では築けなかった物を次々と築き上げてきた。
この者達が妖怪のように寿命が長かったならばーーーー
考えてみだが頭が痛くなるだけなので止めた。
「……言ってる側からボーッとして」
「ああ……ごめんなさいね。じゃあ続きを」
境内の掃除へ戻ろうとした その時
「紫さまーー!!」
私の式 八雲 藍がこちらに向かって走ってくる。
「どうしたの藍……はしたないわよ」
「すいません。ハァハァ……じ、じつは……外来人が……ハァハァ……迷い込みまして」
「少し落ち着きなさい。解る話も分からないわ」
藍は息を整え再び語りだす。
「外来人が迷いの竹林に迷い込みました」
「あらそう。その者は今どこに?」
「今はアリス マーガトロイドの家で救護されていると聞きました」
「ヘェ〜まぁ今の所興味はないわね」
「どういたしましょう?」
「放っておきなさい。興味が湧いたら行ってみるわ」
解りました、と告げ藍は姿を消した。
外来人……この言葉を聞くのは久方ぶりね。
近年は結界の強化により私が意図的に連れてこない限りは入れるはずがないのだけれど。
「まぁなんにせよ……只者じゃないわね」
突如発生した突風が私を神社の階段へと誘導する。
よく風の便りだとか虫が知らせるというが本当にその通りなのかもしれない。
時期ハズレな北風が私を急かしているようにーーーー