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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
96/97

似非《エセ》(似て非なる者)

「……っ!?」


 瞬時に登ってくる痛みに顔をしかめる。しかし、そんな猶予は全くもって与えてくれない。


 僅かな時間で見えたが、アンリエッタは悠人と同じ才能開花した魔法師だと分かった。明らかに銃のたまの再充填までの速さが尋常じゃなく速く、かつそこから引き金を正確に悠人に向けて放つまでさえも速い。


 なまじ銃身が短いだけあってなかなか懐にすら入れない。


 せいぜい、さっきのように隙を突くことくらいが今やれる精一杯のことだった。


(いつかはたまの残量がなくなるはずだ!)


 そう信じて、後ろを突くと見せかけて避けるの繰り返し、少しでも隙が生まれればやるという気にさせて銃の連射をやめさせない。


 しばらくそんな攻防戦が続き、よく見ればアンリエッタが息を切らしていた。


(いまだ!)


 瞬間に移動して今度こそ確実にアンリエッタの背後をとる。刹那の世界でアンリエッタの反応が一瞬遅れたのを確認して、剣を振るう。


 その瞬間に横からの奇襲に反応して剣を振るう向きを変えた。


「はあぁっ!」


「ふん」


 ばあぁぁぁん!と衝撃音が大きく鳴り響いた。


 この音だけで悠人は剣を防がれたと認識して、払いのけ一旦距離を取る。


(援軍か? やりづらいぞ)


 煙の中で二人の影が映し出されている。


 目を凝らして誰なのかを見る。


「アイナ先生!」


 現れたのはアイナだった。確かにアンリエッタはアメリカ所属だったので仲間の可能性を考えられなくはないなと悠人は思っていた。


「おう、可愛い後輩にここまで立ち会えるのはお前くらいだ」


「ということは、先生のお仲間……ですか?」


「え? じゃあこの方が……?」


 悠人とアンリエッタがお互いを指差しながらアイナに問いかける。


「紹介しよう悠人。 彼女は我々アメリカ所属の使いのアンリエッタだ。で、こっちが悠人。日本からの能力覚醒者だ」


 アイナがお互いに説明をしてくれた。


 取り敢えず、敵でないことが分かったので剣を収めた。しかし、顔を上げた途端いきなりアンリエッタがスライディング土下座をかましてきた。


「すみませんすみません! また私の早とちりであなたにご迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいですぅ〜」


「や、え、ええと……」


 対応に困り、アイナを見る。


「こういう性格でな。 まぁ、悪いやつじゃないだろ」


「ええ、そうですが……」


 泣きべそをかきながら土下座を繰り返すアンリエッタにどうどうと送る悠人。


 なぜか、悠人が泣き止むのを説得するような形になってしまい逆に疲れがたまってしまった。


「そういえば悠人。 お前、名誉の退学らしいな。学園長から聞いたよ」


「もうそこまで情報が広まってるんですか? 早いですね……」


 アイナは腰に手を当て、悠人にそう言った。


「名誉の退学って、退学することが名誉? ええっと……私にはよく分からないのですが」


 アンリエッタは首を傾けて悠人に向かって尋ねた。


「ええ、自分でも詳しくは分からないのですが、女王直属の護衛に配置されるそうです。アリスフィア女王の意向で」


 その後に詳しく諸々の事情を二人に話した。


 二人とも詳しい話までは知らされていないらしくふむふむと納得しながら聞いてくれた。


「まぁ、自分からの事はこれくらいにしておきましょう。アンリエッタさんはアメリカからの方だと聞きましたがここではなにをしているのですか?」


 悠人はアンリエッタがアメリカ所属の者である事はわかったのだが、実際何をしているのかが疑問になった。


 なにせ、今までちょくちょくアイナ先生とは会うのにアンリエッタここ最近でしか会ったことはない。


 アイナが敵ではないというのだから心配まではいかないけれども、少しの懸念はある。したがって誤解であるのならその可能性はすぐにでも消しておきたかった。


「私は、魔法研究科の教員として働いていますから。普段会えなかったのは当然のことです。私は魔法が遥か昔の人間が使えたという仮説を実証するために研究しています」


 教えてもらった仮説によるとこの並行世界では、対立がありそれぞれ別れたという説があり、その線引きとして魔法があったのではないかと言われている。


 その頃に魔法を使わなくなって世界が分岐したと言われている。魔法を使える者はこの世界へ、使わない者は地球へ別れたと仮説すれば今の地球の人間が魔法が使えないことにも理由がつけられるからだ。


「確かにそれは興味ありますね。やはり、もと地球タリスの人間でしたから」


「そうですよね!! 興味ありますよね、ね!」


 今度は類を得たというような感じで犬のように突っかかって来た。


(あー、扱いやすいかも………)


 そんな目線をあいなに向けると、ため息をつきながらも肯定の表情を見せた。


「で、アンリエッタさんも魔法が使えるようになったんですか?」


 あの剣の速さといい、あれは魔法での加速ではないかと思っていた。さらに言えば、悠人の瞬間移動にもついていける動体反射も普通の人間ではなし得ない魔法わざであると思っていた。


「ええ、私はもともと……ですけれど」


「アンリエッタはアメリカ所属でも出身ではないんだ。もとはここの人間だ」


「あ、そうだったんですか。では、買収ですか?」


 ここの人間が並行世界の地球タリスのことを知っている者は限られている。しかし、アンリエッタがこの世界出身でなおかつ、地球のことを知っているのであれば、そういうことなのだと悠人は思った。


「まぁ、有り体に言えばそうなんだろうな。私が話を持ちかけたのだ。研究資金と引き換えに……ってな」


「そうです。私にとってみればあなた方がいること自体私がこの仮説を立証する強い証拠だと思っていますからとてもありがたい話だと思いました」


 アンリエッタが敬礼するような仕草をして言った。スーツを着ているのにその格好がお子ちゃまがやっているようにしか見えない……。


(私大人ですと言われてもとても信用できない……)


 横を見やるとアイナも苦笑していた。正直、彼女を雇ったことは間違いだったのではと後悔している気がした。


(後悔ではないかもしれない、罪悪感……かな?)


 確かにこの笑みがさらにお子ちゃま感を助長させる。その彼女にそんなことをさせて本当は違うのだけれど少しは思ってしまうのだろう。


「でも、さっきの太刀筋は素晴らしかったですね。ホントに研究者とは思えない動きでした」


 先ほどの剣技を見せられて研究者というのはいるのかもしれないが、にわかには疑いたくなることのように思う。野球に例えるならば、二刀流といったところであろう。しかも、結果もちゃんと出ているような…。


「あれは単にここにいるものであれば身に付けさせられることなのです。すごいなんてことはありません…」


「ああ、軍で鍛えていた私でさえ最初に彼女と会った時は驚いたものだったよ。私たちの研究者の印象はそんなものじゃないからね」


 普通の人…というか、一般の人が想像する『研究者』の印象といえば、頭がいい…しかしひ弱で臆病というところだろう。その理由でも研究というものが部屋に引きこもっているという印象を与えてしまうからであろう。


 アンリエッタに関していえば臆病ではあるもののそれに対処し得る技を持っていると言えた。つまり、悠人の中でのひ弱という部分がないのだ。


「ここの研究者は皆そうなのですか?」


「そうですね、この学園生徒に限って言えば半々というところでしょうか。貴族としてある程度魔法は使えるはずですから、そうなのかもしれません」


「いや、アンリエッタみたいな武術にも特化している者はなかなかいない。私たちはそれを専門とするからできるのだが、魔法と体術の組み合わせは研究科の中ではいないといいた方がいいくらいだろう」




お久しぶりです! これを読んでいただいている方には感謝です。ありがとうございます!


また今日からぼちぼちにはなるかもしれませんが、話を書いていけたらなと思っています。


どうか、今年もよろしくおねがいします!


けれども、試験とかで忙しい時期は勘弁いただくかもしれません。ご了承ください。


ではではーー


今回の題名は『八十亀ちゃん』を読んだからです。あ、ちなみにやっとかめは名古屋弁で『久しぶり』という意味で、人に会う時もそうですが、どこかに行った時も使います。


ただし、今の若い人は使いません(私も含める)。


小椋鉄平

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