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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
90/97

平和なひと時? 新開発

 あくる日の朝……。


「う、うんんんん………」


 久々のベッドかと思うほど、このただのベッドがとてつもなく悠人にとっては至福のものとなっていた。


 というのもナイルダルクとの戦争でここしばらくまともに寝ていなかった。


 森の中で交代交代に仮眠こそとったものの、やはり地べたで寝るのはそこまでの睡眠効果は得られないし、やはり森の中の夜、ということで少しは意識を現実へと向けなければならず、快適な睡眠はここ最近取れていなかったのだ。


 それが実現した今、悠人は再び睡眠が取れるという幸せを噛み締めていた。


「ってことで二度寝を………って…っっっ!?!?」


 寝返りを打ったところで場違いなものを見てしまったかのように驚く悠人。


 それは確かにここにはいてはいけない者であった。


 いや、確かに来る可能性はあったにしてもこの状態でくるのは健全な男子としてやはり……というのがあったのだ。


「ん? ふあああぁぁぁ……。 もう朝ですかぁ?」


「だだだ、ダメだ! ここで起きたら放送事故だぞ!」


「ふぇえええぇぇぇ? 何言ってるんですか、悠人は?」


 そう言って、体を起こすアーニャ。それを引きつりつつも顔が赤いのを隠しきれない悠人。


「しかも、放送事故なんか言っちゃって……どこにもカメラなんてありませんよ? あ、まさか悠人が盗撮ですかぁ?自分のオカズ用に? それだったら、私は全然……構いませんよ?」


 そう言いながら、はだけた胸を見せつけ悠人に迫る。


 悠人はもちろん後ずさる。単純にそういうことに免疫がなかった。キスにも抵抗があるほどである。


「ほら……ほら……」


 もはや、よく分からん光ばかりが入っているところしか出せない場面になってしまっていた。


 悠人の頭の横にアーニャが手をつけた。


 悠人はベッドに仰向けにされ、動かないように固められながら、アーニャに乗っかられていた。


「いや、アーニャ。 ちょっと……」


「悠人はいや……ですか? こんな、なのに?」


「そこじゃないよ!? そこは立ってないからね!? ね!? もうちょっとちゃんと説明しようね!?」


 アーニャは○○……ではなく、悠人の胸に手を置いた。


「ちゃんと、質問に……答えて……ください」


 悠人はアーニャの目を見た。 その透き通った瞳には迷いなどなかった。いや、そんなものは微塵も感じ取れない。


 逆に悠人自身ここでどうすればいいのか頭がパンクしてしまい、分からなくなっていた。


 これだけ順序を無視したギャルゲーのシーンなんて、悠人のプレイした中では存在しなかったからだ。


(いきなり、いいシーンなんてあり得ないだろう?)


 そう自分に言い聞かせ、期待するなと命令する。


「い……いや、ではもちろん……な、ないぞぅ? だ、だけどな……ちょっと……混乱……してて……な?」


 胸の鼓動が早い。手をそこに当てられているのだからアーニャにもこの感触は伝わっているはずで、恥ずかしい気持ちを抑えきれなかった。


「もう、悠人はそんなシャイボーイになってしまって……。そんな悠人も大好きです」


「////……な、何言ってんだよ!? アーニャ? ごごご、誤解されるぞ!?」


「その誤解でいいんですよ?」


「だっ、たから……ん!? んむむむむむ!?」


 アーニャが悠人の言葉を待たずして口づけをした。


 この時点で皆さんは気づいているだろうか? なぜ、アーニャが口づけしているのかを。


 前回もこのようにアーニャがキスしてくることがあった話を思い出して欲しい(初めての任務より)。


 アーニャが唇を離す。


 悠人は身体の脱力感に見舞われた。


「大丈夫ですか? 悠人」


「あー、悪い。そういうことだったんだな」


 そう、これはアーニャと契約しているからアーニャとたまにはしなければならないことなのだ。


 魔力をアーニャは悠人と契約していることにより悠人からしか、魔力やマナを受け取れなくなるためにこうして戦いなどがなく、魔法を行使する機会が減ると、アーニャは人間の世界でいえば飢餓状態に陥ってしまう。


 だから、こうしてキスをしてきたというわけだ。文献にはなっていなかったので分からないが、キスという名の粘膜接触の方が効率よくそれらを吸収できるらしい。


 今、悠人が少しふらついたのも、マナを取られたことによる軽い貧血のようないわゆる、貧マナ状態になったからである。


 有り体に言えば、アーニャは吸血鬼のようなものだと考えてもらっていい。


「いえ、それだけじゃないんですけど。普通に悠人といちゃいちゃしたかっただけというのもあります」


「もういいな、んじゃ、もう俺は行くから」


「え? ちょ、ちょっとこんな可愛い女の子が迫ってるんですよ。 最高のシチュエーションでしょう? 押し倒したくなるでしょ?」


「はいはい言ってろー」


 そう言い残して悠人は部屋を出て言った。


 ドアを閉めたところで「この鈍感男ーーー!」とくぐもった声が聞こえてきたが、あえて無視して食堂の方へと向かった。






 食堂で今日の朝飯を貰い、席に着く。


 そもそも悠人は鈍感ではないと自負している。アーニャが悠人に向けてくる好意には気づいている。そこら辺のラノベ主人公とは違う。


(伊達にラノベを読んではいない……)


 しかし、相手は精霊だ。妙な期待は後々、自分自身を苦しめることになりかねないと思っている。


 まるで、兄妹の禁断の愛、のように絶対に踏み込んではいけない線だと確信している。


(俺がその線を踏み越えた途端、取り返しのつかないことになるのは明白)


 そもそも、アーニャは精霊なのだ。例え、人間の姿をしていても悠人との間に子供とか結婚とか想像ができなかった。


(結婚……は、形式的に? 出来るかもしれないけど? )


「やぁ、悠人。 おはよう。 随分と黄昏たそがれてるけど……アーニャさんかい?」


 そこへロビンがやって来た。ここしばらく、見かけなかったがやっと研究室から解放されたようだ。


「よう、こっちは戦いざんまいから解放されて羽を伸ばしてるよ。そっちはどうだ? 結構缶詰だったんだろ?」


「ああ、でも少し糸口が見えてきたよ」


「何やってたんだっけ?」


「今は、汎用可能にできる魔法器具を模索中さ」


「へー、例えば?」


「そうだなー。 悠人も使ってるけど増幅器ブースターを少し改良して、安全性にも考慮しつつ、簡単な消費量の魔法だけならいつでも発動できるようなものを考えてるんだ」


 増幅器は魔法力を高め、より多くの魔力を放出できるようにしたものだ。悠人は、もともと魔力量が多いのに加えてその増幅器を使っているために、より大きな魔法を発動できる……筈なのだが、上手く扱えていない。


 理論上はそれで、大魔法も発動できる。


 しかし、増幅器にはそのメリットだけでなく、デメリットももちろん存在する。


 それは、脳への負担が大きいことにある。


 具体的には疲れやすく長時間の連用は出来ない。あるいは、神経が障害されてしまい、麻痺症状が現れるといった不安要素が大きい。


 やはりそれだけ脳に魔法演算領域が広がる分、脳への負担はかなり大きいものとなる。


 だからこそ、増幅器を用いるものは少なく、使っても短命で終わってしまう魔法師はかなり多い。


 悠人にもそのリスクは少なからずある。今のところは増幅器をフルに使っている訳ではないのでそれほどまで脳への負担は少ないと思われるけれども、長期で使っていればいずれ訪れるだろう。


 そのことは悠人自身もよく分かっていた。それなのに増幅器を使っているのは悠人の心にある大切な人を守りたいという気持ちと自身への変革が軸となり、そうさせているのだと結論づけていた。


「あー、それなら出来るんじゃないか?」


「そんなバカな……。 この計画はすでに五年前に十年かけてやってダメだったものを再び再考したものだからそんなやすやすとはいかないよ……」


 悠人の軽々しい発言に異を唱えるロビン。悠人の言葉をやんわりとだけれども否定した。


 ロビンの言うように五年前に頓挫とんざしてしまった計画を再び考え直して実現に漕ぎつけようとしているのであり、その中には大変な苦労の数々があったことであり、それ故にそんな口ほどにもなく簡単にと言った悠人の軽率な言葉には少しロビンもムッとした。


「いや、ごめん。そうなんだとは知らなかった。俺は魔法研究科そっちのことはよく分からないから……」


 このフィアルテーレ魔法学園には三つの科が存在する。先ほど言った魔法研究科、医療魔法に特化した魔法医療科、そして魔法科。

 それぞれに特色が異なるが、やる事は大体文字通りのことを学ぶ。


 人数配分でいえば、魔法科を選ぶ学生が半分を占める。それの半分が魔法医療科に進む。そしてその中でも座学の方に優れたわずか三パーセント程度の学生が魔法研究科に進む。


 魔法研究科には特にカリキュラムはなく、基本的に研究室の教授の講義を聞いたり、また自分でテーマを決めて魔法に関する研究を行える権利を持った生徒達だ。


 魔法研究科へ進むのは並大抵のことではない。それがこの科への低い選択率につながっている。


 単に基本的な魔術の分野において完璧に熟知していることがこの科に進む最低条件だ。それは、それを知らなければそもそも新たな発見など不可能だからである。


「いや、構わないよ。何にしても、そうやすやすとは出てこない。何かいい案はないかな?」


「んー。そもそも増幅器は出した魔力を高める機械だろ?」


「ああ、そうだ。魔力型によって高めやすい魔力があるけれど、最も一般的なアルファ型で1.5倍ってところかな」


 人が出せる魔法には型が存在する。大きく分けて四つというだけで皆、それに完璧に当てはまるわけではない。


 そこで悠人は頭に手を置いた。


「それで、魔力が少ない人にはどれだけ魔力が上がるといいんだ?」


「んー。おそらくだけど、その人が二人いるぶんの魔力があるといいな。ほら、魔力って無くなると逆に生命の危機になっちゃうよね。それは防ぎたいって意味で……」


 魔力は血と同義だと思ってくれて構わない。魔力が乏しくなった魔力欠乏症は悠人もなった病気だ。症状は貧血となんら変わりない。しかし、魔力を持つヒトはこれが無くなると死ぬ。ある意味、死にやすい代物でもある。


 これを外から補うという意味で魔力型の同じもの同士の魔力の受け渡しによって蘇生させることも可能であるし、またそのヒトに魔力を送り、より強大な魔法を創り出すことに使ったりもする。


(という事は……もし、魔力を保存できるタンクみたいなものを作れば……)


「ひとつ思い浮かんだけどいいかな?」


「どうぞ」


 先ほど思いついたことをロビンに話した。


「それはいいアイデアだね。魔力を定期的に貯めておける機械か何かがあればそこから魔力供給を受けることで日常的な魔法なら使えるし、なんならそれ専門に魔力を供給する仕事を設けるのもいい」


 ロビンが興奮した様子で紙を取り出してさっそく、計画を書き出していた。


「これで役に立つんだったらいつでもいいよ」


 悠人はおぼんをもって立ち上がった。そろそろ、学園に行く頃だったからだ。


「ああ、出来れば実験に付き合って欲しいかも、お願いできる?」


「おう、任せとけ」


 悠人は胸を叩いてそれに答えた。

いつも読んでいただきありがとうございます!


ちょっと昨日寝落ちしたのでコメントは控えます。


では、また来週!!


すみません!!

小椋鉄平

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