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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
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正義と正義

 拳銃から合図もなく、弾がアーニャに向かって放たれた。


 それらは壁に小さく穴を穿った。そう、アーニャには当たらなかった。


「これが精霊……兵器では歯がたたない……」


創造クリエイト!」


「うわあぁぁぁぁぁぁ!?」


 複数のナイフを創り出して、研究員たちにむかってナイフを放ち、研究員たちを次々と刺した。


「こんなん、無理ゲーだろ! 」


 研究員からの攻撃は全てすり抜け、対してアーニャからの攻撃は当たる。研究員たちにとってすれば、攻略法が見当たらないだろう。


 かつ、アーニャは研究員たちを無力化しているのみで亡き者にはしていなかった。それは、悠人からの言伝ことづてに基づくものである。


 ということは、アーニャは研究員に対して手加減していることに変わりなかった。


 それでも、形成は変わらずアーニャ一人に対し人数で勝っている研究員たちがボロ負けしているという有様であった。


「魔術がこんなに恐ろしいなんて……」


 魔法に勝る科学など存在しない……。


 研究員たちは、アーニャにそう言われている。いや、戦争をふっかけたヴィッフェルチア人にそう言われているような感覚がした。


 思わず、スミスは苦虫を噛んだような表情を見せた。


(しかし、こいつが強いのであって戦場では五分五分の戦いをしている。だから、こいつさえ無力化出来れば……っ!)


 スミスはポケットから小さなブロック状の機械を取り出した。


「いいか、精霊どもめ! 我々は魔法を使う必要がないと判断した。それは、科学がより多くの者を幸せにできたからだ! それを知らず、ただ戦いの道具にしかならない魔法を良しとしていいのか! 皆さん、あれをやりなさい」


 スミスの指示で研究員たち全員がスミスと同じ物を取り出した。


「これは!? 増幅器ブースター?」


「いかにも! お前たちのところにもあるから知っているだろう。我々は進化の過程で、魔法演算領域を捨てた。その分を感情や想像イマジネーションに回し、多くの人の役に立つモノを創り出してきた。だからと言って、我々の中に魔法演算領域が消えたわけではない」


 スミスは増幅器を握ったまま、逆の手で力を込めた。


「きゃ!?」


 地面に電撃が走った。


 それをアーニャは避けた。その仕草をスミスは逃さなかった。


「やはりな。魔法なら君にもダメージを与えられるとみた」


「くっ!」


 精霊感知のための機械といい、魔法演算領域覚醒装置。脳への負荷は相当なものだ。


 そのことを知っているのだろうか?研究員たちも含め、アーニャにためらわず魔法を放つ。皆、魔法を学んでいないからであろう、精度があまり良くなかった。


 攻撃を避ける。後ろからの攻撃でも、魔法であれば見なくとも感知できる。これは、初歩の魔法師でも可能なことだ。


 それでもアーニャに有利なのは変わらない。悠人からコピーした瞬間移動の想像を創造し、同時攻撃にも対応し避けるを繰り返ていた。


 ここでもアーニャはあえて手加減しているのは周知のことであろう。


 空間を把握していればどこにでも一瞬で移動できるこの魔法ならば、研究員の背後を取ることなど容易い。それでもやはり無力化に留める。


 最後の一人を無力化し、スミスへと目を向ける。アーニャの表情が分からず、点の集合体が近づいてくる景色にスミスは恐怖を感じた。実際、アーニャはそんな恐ろしい顔なんてしておらず、目的を果たすためだけに集中していた。


「誰!?」


 背後から、研究員のものではない洗練された電撃の魔法が飛んできて、アーニャは電撃を避けたのち、そちらの方へと向かう。


「この者はまだ、利用価値があるのでな。殺すのはやめていただきたい」


「あなたは誰ですか? 私の敵、それとも味方?」


 現れたのは老人だった。しかし、腰がすわっており、さっきの魔法からもただの老人ではなかった。ナイルダルク人にしては魔法のオーラが感じられる。


「私どもナイルダルクはいつでも中立です。あなた方のどちらにも付かない。その代わり少しの恩恵とこの土地を貰い受ける。そういう条約だったではありませんか」


 それは、ヴィッフェルチアとアインツヴェルンのことを指している。その両方の大国のどちらにもつかないという意図なのだろう。


「では、なぜ宣戦布告なさったんですか!? こちらにも少なからず犠牲が出ております。不毛ではありませんか?」


「どうしても見つけ出したかったお方がいるんです。その方はこのナイルダルク……いや、世界すべてを変えることができる救世主なのです! しかし、彼も純粋だ。導かなければ救世主とはなり得ない。だから、一刻も早く確保しなければならないー」


「アーニャ! だ、大丈夫か!?」


「ふん、あんたがこんなとこで死ぬわけないって思ってたわ」


 悠人とラネイシャが色々吹き飛ばして指令室へと入ってきた。それはもう轟音をあげて。


 ラネイシャはあいも変わらず、アーニャに対してはぶっきらぼうであった。それにはアーニャも笑うしかなかった。


「良かった。無事で」


 悠人に肩を掴まれてそう言われた。アーニャは少し伏し目になり照れた。


「うん、ちゃんと無力化できてる。さすがだなアーニャ」


「〜〜もっと褒めて下さ〜い!!」


「うわっ、ちょっ!?」


 悠人が頭を撫でると、お代わりという感じで擦り寄ってくる。


 悠人も最初こそ驚いたが、「はいはい……」といった感じで折れた。それは、ペットに向けるものと同等の愛であったが、アーニャはそれを拡大解釈していた。


「あなた様は……救世主メシア!?」


「ん? アーニャ、あのおじいさんは?」


 悠人がアーニャに尋ねるが、「取り敢えず、敵対心がないので無力化してません」と言った。


「俺のこと救世主メシアって言ったよな? そんなに広まってるの?俺」


 少しおどおどしつつ、嬉しそうななんとも複雑な顔を見せる悠人。


「そうかも……って危ない!」


 ラネイシャが悠人を突き飛ばした。


 そのせいで何かの網のようなものが、ラネイシャの足に引っかかってしまった。


 老人がたまらず舌打ちした。どうやら狙いが外れてしまったらしい。


 その発動スピードといいやはり普通の老人ではなかった。悠人はその網を切って立ち上がった。


「俺は相馬悠人。一応、あんたの言う救世主、らしい……。あなたの名は?」


「我の名はオルトラル・シュミット。 この国の長をしている。我らはあなた様を捜していた」


「だったらさ、この戦争を止めてくれない? 」


 悠人は軽い頼み事のようにさらっと言う。実際に長なのだから出来ると思い込んでいた。


「それは、もう出来ない……私の声だけでは民衆は付いてきてくれなくなってしまった……。 もう既にこの国を動かしているのはあのスミス先生だと言っても良い」


 オルトラルは顔を伏して答えた。言うのを辛そうにしている、そんな表情だった。その目線の先にスミスが横たわっていたのを見て悠人はそいつがスミスだと認識した。


「科学という一見美しそうなものに囚われて、彼らは軽い洗脳を受けたようになってしまった。今まで虐げられていたからというのも背景にあるのじゃろうが、それ以上に魔法よりも優位に立てる……。その夢のまた夢のようなことが科学というものでなされると言われれば、ナイルダルク人はこぞってそっちをとった。私だってそのように思ったりもした。しかし、結果はこの有様だ」


 シュミットは画面を見る。指揮官のいなくなった現場は大混乱に陥り、スミスの声を呼ぶ現地の者の声がけたたましく聞こえてきた。


 その勢力図を見る限り少しずつ、ヴィッフェルチア側が押しているという感じであった。


「私も一瞬、其の者の声に耳を傾けた。できるかもと思ってしまったんじゃ。そのせいで民衆までも巻き込んでしまった……浅はかなのは私だ……」


「俺は……」


 悠人はこの人が……この人だけが悪いとは思えなかった……。この人もいいことと思いそうしている。


 人々の抑圧させた現場。それを良しとしない声。その葛藤の中にいたのだろう……。


 故に、この者にもこの者なりの正義があったのだと悠人は思った。


 悠人は息を吸った。


「俺は、あなたが悪いとは思わない。あなたもそれが正しいと思ってやったことなんだ。悪いなんて言っちゃいけない」


「悠人! この人を許すのですか!? それはー」


「あんた正気? こいつが私達に戦争をふっかけた張本人なのよ?」


 アーニャとラネイシャが抗議の声を上げる。


「それは、俺たちから見たらそうってだけだ。俺たちもこれが正義だと思ってしている。だからこそ、どっちにも悪は存在しないんだよ」


 その悠人の言葉にアーニャとラネイシャは許すという選択をしたと解釈した。


「でも、その正義とのぶつかり合いの場合の優劣は少なからず起きる。ゲームと同じで勝ち負けはあるんだ。それによって勝ったほうが正しくて負けたほうが悪と捉えられるかもしれない……」


「むぅー」


「あなたは負けた。そのことにより敗者、つまり悪と言われるかもしれない……しかし、あなたのやったことは正義だ。何も悪いことじゃない……」


「私はどうなるのですか……? 」


「俺には分からない」


「はぁ!? 殺すに決まってるでしょう?」


 ラネイシャが異議を唱えた。


「それは、ヴィッフェルチアの総意なのか? 」


「それは、ち、違うけど……」


「あなたは正義の名の下にやったことだとは訴えるつもりです。ウチの国の長がどんな決断を下すかによります」


 悠人はそう言って老人の肩を叩いた。画面では敗走している兵たちの姿が映し出されていた。


「悪いのは、あなただ。 スミスさん」


 悠人は動かなくなってうずくまっている彼の前に立って言った。


「どうやってこちらにきたかは知らないけど、科学の良さを広めるならもっと別の方法があっただろう。どうして武器ばかりなんだ」


「それは、彼らがそれを求めたからだ。私はそれに従って武器を与え、製造方法を教えた」


「で? どうしたって?」


「資金を集めていた。 研究費に費やすために……」


「どんな研究だ」


 上から目線でまるで詰問しているように質問した。スミスは少しどころではなくかなり萎縮してしまっていた。


「………」


「はやく言え」


 やはり、言いにくいことなのだろう。スミスは黙り込んでいた。


 悠人は剣をスミスの首に押し当てた。


「ひいぃぃ……」


「はやく……言え」


 もう一度訪ねた。


「……人体実験だ」


「どんな」


「……新たな薬の開発に使った……地球では倫理的な問題が多すぎるからここならやり放題だって……でも、ヴィッフェルチアの何者かがその研究室を破壊して……だから」


「宣戦布告したと? 腹いせに? ふっ、バカだろ」


「あああああぁぁぁぁぁぁ」


 悠人はスミスの首を切った。それを皮切りに他の研究室もアーニャとラネイシャが殺した。


 この者の所業には悪しか見えてこなかった……。





 その後、ヴィッフェルチアの勝ちということで条約が締結された。ナイルダルクはヴィッフェルチアの領土として統一される事となり、多額の資金請求された。


 シュミットは公式には処刑とされているが、女王のお言葉もあり、宰相として屋敷に置かれた。


 もちろんこのことには女王に近しい議員(もとい貴族)から反発の声が上がったが、女王、もといアリスはその貴族の名誉を剥奪した。


 そういうところはまさに恐怖政治だった。

いつも読んでいただきありがとうございます!


コミケの間にちょくちょく書いていて普通に更新できております。


一つ言っておきたいんですけど、コミケが今回3回目なのですけど、決して転売目的で行っていない事はここでしっかりと言っておきたいと思います。本当に自分の趣味です。

基本的にラノベとかゲーム関連の人のブースに行ってました。


という事で、いかがでしたでしょうか? これも自分の趣味でやっていてもしかしたら……てな感じでやっている訳ですけど、迷走してますねw。


一回、見直しておかしいところがないか見てみたいと思います。

カクヨムの方は今の所6000文字程度なのでもう少し待ってください。個人的には好きな展開にしてます。


では、また次回もよろしくお願いします!


コミケは楽しいけど、足が痛い……。

小椋鉄平

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