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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
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潜入!

「……なんなの……これ?」


「すごく高い建物がたくさんあります……」


 森を抜けた先に大都会が往々と存在していた。


 その景色は悠人にとってみればよく目にした光景であった。しかし、ラネイシャやアーニャにとってみれば逆に異世界だと言えるのだろう。


「これは、地球の街だ。 でもどうやってこれが……」


 悠人は疑問に思った。


 今の時期、地球とタリスの接点は近くなるらしい。それ故にこちらに来れる特異点の数も自ずと増えるそうだと聞いている。


 したがって、偶然タリスの世界に迷い込むなんてことがあり得ると考えられる。


 しかし、それでいてこの巨大な大都会を作り出すのには莫大な時間が必要に違いない。


「取り敢えず、この街に入ったら魔法の使用は禁止よ。悠人は、魔力の放出をコントロールできていないけど、ナイルダルク人はそもそも魔力感知の能力がないからあんたに恐怖を感じたりする人はいないわ」


 というラネイシャの注意からナッサルデヒアに入った。


 つまり発動しなければいいということだ。少しでも魔法の世界に足を踏み入れたものが、増幅器ブースターに手をつけている悠人を見ると恐れおののいてしまう。


 今回はそれがない分、妙な気を起こされることもない。


 ある意味安心かもしれなかった……。


(元々、俺はナイルダルク側の人間だと思うしな……)


 一度、地球に帰ろうものなら悠人は一介の人間に過ぎない。だからこそ悠人はナイルダルク人に対して完全な敵視は出来なかった。


 周りはビルビルビルと高層建造物のオンパレードであった。ヴァッフェルチアのレンガの建物もヨーロッパぽくていいと思ったが、こちらはまさに東京やニューヨークの街並みを連想させた。


 ただし、その違いはヒトの多さだった。


 テレビで見た大都会はヒトが常に行き交う密集地隊であった。


 しかし、ここにはそのヒトがそれほどいなかった。


 ナイルダルクはヴァッフェルチアと違い領土がかなり小さい……。ヴィフェルチアの領土面積を一とすればナイルダルクはその四分の一だ。それでいて存続し得たのは大国同士の戦争を避ける緩衝材の役目もある、いわゆる“生かされている国”であった。とヴィフェルチアのある歴史書に記してあった。


 そんな国がこのような高度な建築技術を携えて力を急速につけてヴィフェルチアに戦争をしかけている。


 この景色を見た瞬間に地球の人間の息吹がかかっていることは確実に分かった。しかも一人ではなく複数人。何かの団体であった可能性が濃厚だった。


 どんどんと中心部へと向かう。


 過ぎて行く人をみて、服装だけは変化がないのだろうということに気づいた。てっきり洋服に変えられているのかとも思ったが、民族衣装のような薄い布を羽織っていた。


「そんなに変ですか?」


 横からアーニャが声をかけてきた。悠人の考えてたことを聞いていたようだ。悠人と同じ方に目線がいっていた。


「ああ、この建物といい完全に地球の者たちが手を加えたんだ。 だとすれば、ヴィフェルチアに戦争をふっかけた理由にも頷ける」


「具体的にはどうしたのでしょうか?」


「おそらく軍事的指導を行って無理やり従わせたんだろう…それにナイルダルク人にとっても悪い話じゃないだろ。こんな魔法のような武器が手に入るんだから」


 悠人はある店に指をさした。そこには『weapons shop』という看板が立っていた。


「あれは何を売ってるの?」


 ラネイシャが歩きながら悠人に尋ねた。


「あれは、武器屋だ。ラネイシャはあまり見たことないだろうが、鉄の弾丸を高速で撃つ機械だ。使用者は引き金を引くだけでヒトの身体を貫ける」


「それは魔法じゃなくて? 本当に引き金を引くだけでいいの? 何か魔法が付与エンチャントしてるんじゃなくて?」


「ああ、あれは正真正銘魔法じゃないよ。だけどラネイシャは魔法だと思っておいたほうがいいかもね」


 悠人の発した言葉にアーニャも頷く。やはり、アーニャは知っているようだった。


 地球の世界を知っている者でない限り銃を見たり聞いたりしたものはごく少数であろう。逆に科学が発展しなかったからこそ魔法が発展したのだと思われる。


 しかし、何らかの偶然が重なって悠人を含め、地球人がこちらへと来られる状況下にある。


 だからこそ、まるで懐かしささえ感じるほどの風景を映し出してしまっているのだろう。


「そうですね。あれを一度喰らえば、死はほぼ確定だと思っていいです」


「わ、分かったわ。アーニャまでそう言うならそう思うことにするわ」


 半信半疑ながらも認識を固定したようだ。


 その怖さを教えるなら擬似空間アストラルカーディガンで試すしかない。


「ラネイシャ、いくら持ってる?」


「ここでヴィフェルチアのお金は使えないのよ」


「ああ……確かに」


 戦争状態でナイルダルクでヴィフェルチアのお金を使えば、反逆者だと思われてもおかしくない。


「何でそんなこと聞いたの?」


「あ、いや、あの拳銃持っておいて損はないと思うんだが……」


「ダメです! 悠人はそんなもの持ってなくても強いです」


「あんなもので何になるっていうのよ。リフレクトシールドでも張っておけば、防げそうじゃない」


「まぁ、確かにな……やっぱいらないか……」


 悠人は少し肩を落としてついていく。日本では絶対に手に入らないものだけに少し触ってみたいという好奇心がそうさせたのかもしれない。


「ここよ」


「これが……ナッサルデヒアの中枢。ナイルダルクの中心……」


 これだけは大都会の風景と逸脱しており、それだけがお城で出来ていた。


 白色で基調された高さもかなりある城だった。外を丸く囲むように塀があり、その中に城がそびえ立っている。


 悠人たちは城を一周してみる。


 そこには城にさらにそぐわない軍服に身を包み、肩に拳銃を担いだ兵士が立っていた。


 城に入るための門は一つ。それ以外は高い塀に囲まれて中に入ることはできそうになかった。


「どうする?」


 悠人がラネイシャに尋ねる。


「アーニャ、精霊化して城内を探ってきなさい。あなたなら気づかれずに中に入れるはずよ」


「ラジャーです!」


「私たちが入れるようなら呼んで」


 そうしてアーニャが門の所から普通に入っていった。


 兵士は平然と中に入ろうとするアーニャに全く反応していなかった。


 まさに魔法に関して、無抵抗な証拠であった。


 科学で魔法を凌駕するなんて思い浮かばないので、対策のようなものはされていないのかもしれない。


『アーニャ、聞こえるか?』


『はい、聞こえます』


『そこらへんの風景をこっちに送ってくれないか? 』


『はい、分かりました』


 アーニャと視覚を共有した。テレパシーにはいろいろな共有ということによって起こるということが分かったのだ。


 今はそれを使ってアーニャの見ている映像が悠人の中にも見えるようになっていた。


 アーニャは、城内部に入る。


 外は城という豪勢な建物の割には、中はとても城とはいえないほどのオフィスのような形になっていた。


 適当な部屋に入る。


 そこには、スーツ姿の人が五人ほどで話し合っていた。


 ホワイトボードにはヴィフェルチアとナイルダルクの地図が貼ってあり、国境付近に赤丸。もう一方の国境付近に赤丸がついていた。


 おそらくそこで衝突が起こっているのだろう。


 男の人が、その地図に線を描いて、ヴィフェルチアの首都に向かって弧を描いて矢印を描いていた。


『またミサイルを撃つ気だな……』


 悠人の独り言にうんうん頷くアーニャ。


 そのせいで、視界がぐらんぐらんと揺れる。


(き、気持ち悪い……)


 予期せぬ動きに気持ち悪くなってしまった。


『す、すみません!』


 アーニャがその場で頭を下げる。そのせいでさらに頭がぐらつく。


『い、いいから頭を動かすのをやめろ……』


「大丈夫なの?」


 ラネイシャが悠人の挙動の変化に不安を募らせていた。


 アーニャはその部屋を後にして、ちょうどエレベーターのドアが開いたので飛び乗った。


 女性がボタンを押したところでエレベーターが上昇していく。


 チンという甲高い音と共に扉が開く。


 女性が出ていくと同時に出ようとするが、エレベーターはアーニャを感知しておらず、女性が出たところで素早く閉まろうとした。


『うぎゃ!?』


 そのせいで、足を取られてアーニャは前に転んでしまった。


『ぅ……』


 気持ち悪さに拍車がかかる。


 さすがに姿しか隠せないので、音が出てしまって女性がばっと振り向く。


 しかし、何も見えないようだ……。首を傾げている。


『イタた……』


『た、頼む。もう……しないでくれ……』


『す、すみません!』


『ウプッ!?』


 ここからはお伝えし辛い事が起きた。

いつも読んでいただきありがとうございます!


まじで最近は暑いですね。クーラーが手放せないです。


というわけで、少しドジっ子を入れつつでしたが、ゆっくりとクライマックスシーンへとつなぐための布石を打っているといった感じです。


まだまだ、ナイルダルク編終わらないので次回も楽しみにしていただけたらなと思います。


ではでは

無性にアイス食べたい。

小椋鉄平

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