ミサイルを止めるために新たなる旅路
「どうして学園長の私が出番がないの!?」
サーシャが机を叩く。
「いやだって……」
アーニャがサーシャの姿を見て言う。
「伝令!」「伝令!」「伝令!」「大丈夫? 死んでない!?」「伝令!」
「うるさーい………一人ずつ喋りなさい! あと一人は過保護すぎ!」
「ほらね」
出られる状況下にありませんでした……。
「見えないわね……」
雲を抜け青空の下、ミサイルを探す。こういう時にGPSのありがたさに気づけた。
悠人の想像では、ミサイルといってもボールを投げるような軌道で飛んでくるものであろうからどう考えてもこっちに向かっているのが見えるはずだ。
スコープでかなり先を見ているはずなのに異変一つ見つからない。
「ったく、どうなってるのよ……」
「苛立っても仕方ないよ。そもそも……」
(そもそもって何を言おうとした?)
ミサイル……鉄の塊……。 だが、ここは魔法世界……。
悠人は違和感を覚えた。
何も変化がない。 それは一見良いことに見えるが、不安ばかり募らせる。
雲ひとつない青空のはず、その中で風を感じていい気分になってもおかしくないが、目的がそれだけに嫌な感じしかない。
「ラネイシャ、ここ一体で魔法の発動を感知できるか?」
悠人には大きな見落としがあると感じていた。
「待って……」
その間にも景色から目を逸らさない。
「何か魔法の痕跡があるわ。 2時の方向。これは……」
「それは、物質を見えなくする光学迷彩的な魔法じゃないか?」
「あ、当たりよ。 って事は…」
「ああ、そこに隠れてきてるんだよ。こっちに……」
悠人とラネイシャは2時の方向を睨んだ。
光学迷彩はいわゆる、カモフラージュだ。おそらく、後ろからの光をそのまま透過させてこちらにはミサイルが見えないようにしているのだろう。
「ラネイシャ、何か不自然な部分はないか? 今向いている方で」
「何か不自然に雲が切れてる部分があるわ。あれなのかしら……」
ラネイシャが指差した方向には何かが雲を突き抜けたような円状の雲があった。
「念のために聞くけど、その魔法を妨害とか出来るのってある?」
「いいえ、発動前ならともかくもう既に常時発動状態であれば、妨害するのは無理よ。術者を倒すか、しないと」
「まいったな……」
「何なのよ。さっきから未来でも読んだかのように……説明しなさいよ!」
「最近、ラネイシャも女の子っぽくなったよな……」
唐突に話題をかける悠人。思い出したように口を開いた。
「/// あ、あんたには関係ないでしょ!?」
すぐさまラネイシャが顔を沸騰させて否定する。
「声が上ずってるぞ。変わったのは口調が、だ。なんかあったのか? きっかけ……とか?」
お気づきだったかもしれないが、男っぽい口調から女の子っぽくなっているとはいえ、荒いのは変わりない。
「まぁ、その方がいいよ」
「////!?!?!?」
ラネイシャは目をぐるぐるさせて混乱していた。悠人の言葉を拡大解釈してしまったらしい。
カオス・ド・ドラゴンもラネイシャを心配そうにしていた。
「さて、問題はミサイルをどう撃ち落とすか、だよな……」
「そ、そうよ! 何が起きてるのよ?」
「ミサイルはラネイシャの言った通りにあって間違いないだろう。だけど、複数あるはずだ。しか見えない。これを全て撃ち落とすのは不可能じゃないか?」
雲の切れ間から考えても悠人たちとの距離はまだある。しかし、魔法発動距離、魔法発動座標を考えても見えてないんじゃどこに発動していいか迷う。
そして、空というコンディション。 かつ、何発あるか分からないということから仮に打ち落とせても落とし漏れが高い確率で出て来てしまうだろう。
ただ、見えないというだけでかなり難しい。
「ミサイルなんかぶつかったらどうなるわけ? 吹っ飛ぶの?」
ラネイシャはミサイルの怖さがいまいち分かっていないようだった。
「そりゃあ、爆発してそれと同時にラネイシャがこっぱみじんになるよ」
「え? そんなやばいの……」
(ん、ぶつかったら……)
ラネイシャが怖気付き、悠人は何かに引っかかったように首をかしげる。
悠人が気になったのは、ラネイシャが発した『ぶつかったら』という部分だった。
「なぁ、ラネイシャ」
「何よ」
「この辺りに縦横に広がる壁を作れない?」
「はぁ!?そんなのできるわけないでしょ。悠人の方が『想像』して『創造』しちゃえばできるでしょ。壁よ、簡単じゃない」
今考えていることをそのまま代弁してくれた。
ドラゴンに乗ったまま立ち上がり、2時の方向をじっと見つめた後、目を瞑った。
(目指すは2時の方向のこの辺り……もう少し先でも良い……ここに出来るだけ大きい壁を……あの雲くらいの大きさなら……)
「創造!」
悠人が魔法を発動すると、目の前に大きな壁が出現した。壁はドラゴンをはるかに超えら大きさでそのせいでドラゴンは止まった。
「もっと上昇してくれ」
そこから状況がどう転ぶか見ることにした。
「かなりデカイわね……」
ラネイシャもこの建造には驚きを隠せない様子であった。
壁は地球の万里の頂上をイメージして創造しており、ほぼほぼその一部を取ってきて繋げたような形だ。
問題はこれで終わってくれるかどうかであった。
悠人としてもこれ以上は祈るしかなかった。
「………」
静寂……しかしそこにはピリピリと痺れるような緊張感が立ち込めていた。
突如として爆発音がした。
見えずとも壁の衝撃がその威力を物語る。
「創造!」
悠人は咄嗟の行為で壁を再び出現させた。
二発目が当たったのか、壁が見るからに壊れていく。
その度に悠人は何度も壁を作った。
額からは自ずと汗がこぼれる。一つの想像のミスが思わぬ結果を生んでしまう。
悠人は想像に全てと言って良いほどの集中力を費やした。
5回目にして轟音が瞬く間に消えた。
「これで終わったのかな?」
「やったわ! ミサイルを全部破壊できたのよ!」
まるで自分のことのように喜ぶラネイシャに少し安堵した。
(俺、またやれたんだな)
守るという使命を全う出来たという実感が湧いた。
(主人公ってこんな気分なのかな)
喜びよりも今は安堵感が勝っていた。
悠人は座り込み、大の字になった。
地上に戻るといなかったはずのアーニャが出迎えてくれた。
悠人が地上に足を踏み入れた瞬間に抱きついてきた。
「轟音が響いた時は心配になりました!」
顔を上げたアーニャの顔をよく見ると目が赤かった。
悠人は少し、いや、かなり嬉しかった。
だからこそその顔に笑みがこぼれてしまった。
「何笑ってるんですか!? 悠人。 とてつもなく心配したんですからね!」
ぽかぽかと叩いてくる。もちろんそんな程度痛みですらなかった。
「本当にごめん。 ただ、心配してくれる人がいるんだなって嬉しくなっちゃっただけなんだ」
アーニャの頭を撫でながら、そう謝る。
アーニャもこれ以上は踏み込んでこなかった。
悠人はアーニャの頭を撫でながら、アイナ先生の方へと向く。
「落ちたミサイルはありませんでしたか?」
「いや、まだ配置には付かせているがそのような報告はきていない」
その言葉に本当の意味で胸を撫で下ろした。
「ミサイルの残骸の処理は、どうでしたか?」
「それはこっちでやっておいた。さすがにそこまでさせるのは取りすぎというものだろう?」
アイナは笑みを浮かべてそう答えた。
悠人も取りすぎというのが手柄だということくらい分かっていた。
悠人自身そんなもの正直金に困っているわけでもないので興味が湧かなかった。
「でだ。当然、これで終わる気は無いよな?」
「ええ、同感です」
「一人で行くのか? 陛下から特別に兵を出すとの書が来てるが?」
「どちらにも首を降らせて頂きます。俺一人では到底無理なので」
そう悠人が言うとアーニャが「当然付いていきます!」と手を挙げ、ラネイシャが「仕方ないわね。死んでもらうのも困るからついて行ってあげるわ」と言ってくれた。
「すまんが、私は無理だ。ここの指揮官を任されている」
「大丈夫です。それよりもここをよろしくお願いします」
悠人は頭を下げた。
「ああ、死ぬなよ」
そう言いあって、アイナと別れて悠人たちは早速、ナイルダルクを目指した。
いつも読んで頂きありがとうございます!
これを読んでいただいているという事自体嬉しく思います。ってか、最近報告遅すぎてすみません!
さて、つい前に三万pvを達成しとても嬉しく思っております。と同時にナイルダルクに向かうというこれからの展開が早くなってゆきます。
これからも変わらぬご愛顧を賜りたいと存じます。
ではでは〜
ぶくぶくぶくぶー
小椋鉄平




