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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
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さらなる実験

「相変わらず、今の地球のようだな。ここは」


「はい、地形などはほぼそうだと思っていただいて相違ないと思われます」


 白衣を見に纏った二人が、地図のような映像を見ながら語る。そこに映されていたのは地球の世界地図と瓜二つの形をした図だった。


「ただ、ここには倫理などという小賢しいしがらみがない……そういう面ではとてつもなく、実験場所にもってこいの場所だ」


「そう……ですね」


 二人の見ていた画面が変わり、山を爆破しやまの端にクレーターが出現した映像が流れていた。





 学園では日々生徒たちが魔法の研鑽に励んでいた。


 悠人とラネイシャはアイナから剣術の指導を受ける毎日を送っていた。


「二人ともかなり様になってきているな……」


 金髪碧眼のアイナに剣術を教わるなんて、信じられないことであるが、今ではそんなことも気にしなくなった。


 何事も突き詰めれば誰であろうともプロレベルになれるんだと感じた瞬間でもあった。


 そんなアイナが二人を褒める。アイナの指導はどっちかというと古来のやり方で身体で覚えろ、といった感じだった。


 魔法師には別に剣なんて持っていなくてもいい。それは魔法さえあれば、敵を倒せるという者たちだ。


 その中に剣と組み合わせた魔法剣士が存在するといった感じだ。


 しかし、アイナ曰く剣術と組み合わせた戦い方をする魔法師はごくわずかであるのが現状だと聞いている。


 それは、まず剣と魔法を分離した考え方があったからに違いない。


 魔法師は文字通り魔法を突き詰める。その一方で軍隊は剣術を極める。というような分業型の考え方が存在したからであろうと考えられる。


 そういった考えを取っ払ったのが、異邦人。つまり悠人たちのことである。


 文献には、『魔法の弾丸を放ち、かつ剣を巧みに操り敵を殲滅する組織があり……』という一文が残っている。


 それに対抗すべく、現在の魔法師は剣を携帯しそのような戦い方も行える訓練を積んでいる。


 しかし、基本は魔法なのだ。


 魔法師として成功を収めるためにまず伸ばさなきゃいけないのが魔法関連の事項で剣術などは優先順位の上位には入ってこない。


 そういう意味ではラネイシャ、悠人、アイナなどはかなり稀有な存在といえよう。


「ふふん、日頃の成果。 強くなってなきゃ意味ないわ」


 ラネイシャは胸をそらして豪語する。


「たしかに、こんなきつい訓練して強くなれていなかったら肩を落とすレベルだ」


 そんなラネイシャの大げさな行動に苦笑しながらも同意する。


 朝の訓練はここまでということになった。


 その間学園長室にて……。


「どうして私だけを呼び出したのでしょうか?」


 明らかに警戒しながら部屋に入ったアーニャ。


 今までは悠人の付属というような形でサーシャとは付き合っていた。しかし、今回は悠人はここにいない。


「あなたにしか言えないことだからよ」


 その言葉だけでアーニャは身体を強張らせた。


「というと、ムーバストですか?」


 ムーバストというのは秘密裏にこの国で動いていた魔法団体で、この団体のおかげでこの国の平和が保たれているといっても過言でない組織である。


 魔法に携わる者でもほんの一握りのものにしかその存在は伝えられず、ほとんど知るものはいない。


 ローレラもこの組織へと秘密裏に配属されている。


「そうです。正確には違いますが……端的にいうと情報が漏れました」


「ムーバストがですか!? そんな簡単に……」


 ムーバストの情報規制力は半端なく高い。何せ、女王陛下でさえこの組織のことを知らなかったのだから……。


「ええ、それもアリスに……」


「女王陛下に!? いったい誰がこんなことを……」


 アーニャは先程から驚きを隠せない。


 それは、女王を後悔させてしまう結果になると思ったからであった。


「分からないわ。情報によれば、二人組の男女がアリスのもとを訪れたとか」


「特徴は分かってるのですか?」


「ええ、でも……」


 口籠るサーシャ。その表情には迷いが見えた。


「話によれば、かつての英雄とそのお供がいたそうよ。そんなはずないのに……」


 そのサーシャが発した言葉でアーニャはピンときた。


 アーニャは一目散に駆け出した。


「あ、話はまだ……」


 サーシャの呼びかけ虚しくアーニャは出ていってしまった。





「【終焉レクイエム】!」


 悠人は今度は、魔法の訓練に取り組んでいた。


終焉レクイエム】悠人バージョン以下略は、先ほどとは打って変わって、剣を必要としない。


 このことによるメリットは遠距離からの攻撃が可能だということだ。条件は相手を視認していること、であるから言って仕舞えば、隠れて望遠鏡が何かで狙えば相手に気づかれることなく無力化出来るある意味最強クラスの魔法だ。


 森の中に隠れて、あらかじめ配置しておいたダミー人形に狙いを定める。


 悠人の手にはスナイパーライフルのスコープだけを持って狙いを定めている。


 ざっと概算で人形との距離は百メートル。


 視認限界値があるのかもと思ってやっている実験のようなものであった。


 肩のあたりを狙って魔法を発動する。


 たちまち黒い炎が肩から上がり、ゆっくりとその範囲を広げていく。


 やがて全てを燃やし尽くして炎もろとも消えたところでラネイシャがストップウォッチを止めた。


「三分よ」


「そうか……」


 ついでにどれくらいで燃えきるのかの時間を計測していた。今のところ対処法はないので当たりさえすれば確実に死だと思うのだけれども、悠人の中では三分も苦しみながら死を与えることに抵抗があった。


 悠人は立ち上がって場所を移した。


「今度は何をするのよ?」


「まぁ、見てろって」


 寮近くの広場でダミー人形を複数体置いた。


 今度は曖昧な視認で、魔法を発動してみる。


 具体的には、複数体を同時に炎で消せるかの実験だった。


「ラネイシャ、離れててくれ」


 ラネイシャは一歩下がって悠人の視界から外れた。


 悠人はダミー人形達を視界に入れた後、頭の中でダミー人形達がちょうど収まる範囲の四角形を描く。


 そこにいるダミー人形達を曖昧に目標にして魔法を放つ。


「【終焉レクイエム】……」


 その瞬間、地面に向かって黒い炎が上がる。


 しかし、数秒燃えた後、何事もなく消えた。


 その跡を見ても、何か砂が消えて穴が出来ているとかいう現象は見られなかった。


「これで何が分かるっていうの? 何も起きなかったじゃない」


「ああ、一回の魔法発動で複数の目標に当てられるか試したんだ」


「それで失敗した……と」


「そう、だな。 もともと遠距離魔法は複数点の領域、ではなく大雑把な範囲として魔法発動領域を定めるものだ」


「は? ど、どいうことよ」


「遠くの敵に魔法を当てるときどうしてんだよ」


 悠人はため息をついてラネイシャに言う。


「そんなもの、感覚よ。 手をそっちの方に向けるだけで出したい魔法が出るわ」


 ラネイシャはそう言ってダミー人形に手を差し出した。


 すると、ダミー人形を囲むようにして炎が舞い上がり、ダミー人形を燃やし尽くした。


(ここの魔法師は魔法を感覚で発動すんのかよ)


 悠人は脱力してうな垂れた。


「ちょっと、見本を見せたわよ。どうなってるっていうの?」


「あー、し、知らなくてもいいんじゃないか? 別に」


 どこかやる気をなくしたように悠人は手をあげ、立ち去ろうとする。


「ちょ!? 気になるじゃない、話しなさいよ!」


 ラネイシャは去ろうとする悠人の腕を思い切り引っ張り、引き止める。


「おい、待っ!?」


「きゃっ!?」


 予想外の力に悠人は耐えられずバランスを崩した。そのまま、力のむく方へと倒れた。


 必然的にラネイシャを押し倒すような形になってしまった。


 ラネイシャも悠人を受け止めきれず、一緒に倒れてしまう。


「あ」


「っ!?」


 お互いに見合ってしまった。みるみる、ラネイシャは顔を赤くしていく。


「ごめん!」


 すぐさま、離れようと足に力を入れる。ラネイシャを踏まないように地面の感触を研ぎ澄ませて踏み込む。


「え?」


 悠人が足に続いて手を力を入れようとしたところで手を握られる。


 悠人はその手を振り払うことができず、踏み込んだ力をキャンセルした。


 そして、悠人はラネイシャの方を見ると、ラネイシャは悠人から視線を外しながらも悠人の手を握ったりゆるめたりしていた。


「……好きにしなさいよ」


「え?」


 悠人は質問の意味が分からず聞き返してしまう。


「べ、別に怒ったりしないわ。 ちょっと驚いただけよ」


「そ、そうか……」


 ラネイシャは自分が今何を言っているのかさえよく分かっていなかった。


 頭が動転してしまっている。


 まともに悠人の方を見ることができない。チラチラと確認するものの、すぐに引っ込めてしまう。


「あの、ラネイシャ? 手を離してくれないかな?」


「い、いやよ。 あなたがでしなさい」


 ラネイシャが自分から悠人の手を放とうとはしない。


「……分かったよ」


 悠人は悩んだ挙句、片方の手でそっとラネイシャの手をとって、悠人の手から離す。その所作はとても優しくまるで赤子を扱うようにした。


 ラネイシャも抵抗もせず、その動きに任せる。


 離した手をゆっくりと起き、悠人は今度こそ立ち上がろうとした。


「ちょっと待ってっ!」


「っっっ!?!?!?」


 その瞬間、ラネイシャの顔が悠人の目の前にあって、ラネイシャは目を瞑って悠人の唇を奪った。

いつも読んでいただきありがとうございます!


最近はお話のスピードがゆっくりですみませんと謝っておきながら、まだまだグダグダやりますと宣言しておきます。


最近は閃きもあまりビビーンとでかいのがこないのでこんなのになってるかもしれません。


ではでは〜


めっちゃ暑い


小椋鉄平

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