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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
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復活と新たなる壁

「さて、自力での復活、見事だった」


 アイナが悠人の元へと来てくれる。それと同時に悠人が眠っていた間何が起こってどうしたかを詳細にアイナから聞いた。


「そんなことが……」


「ああ、それでお前を昏睡状態にした張本人は拘束したがそいつが大元じゃあなかった。そこで、王室に引き渡して情報を吐き出して貰ってるところだが……」


「やっぱり、難しいんですか」


 アイナの表情が曇ったことを察知して悠人が答える。アーニャも同じ考えだったようでうんうんと頷いている。


「まぁ、本人じゃない何者かが奴の脳の深層心理にとても強固なプロテクトをかけている。 慎重にそのプロテクトを外さないと万一破壊してしまって情報が得られないと同時に……」


「犯人の精神が崩壊する……ですか……。それで女王にお叱りを受ける……というとこですか?」


 悠人の的を得た回答に驚いているアーニャとアイナ。


「お前、どうした。 やけに勘がいいな」


「まだ、寝ていた方がいいんじゃないですか?」


 アイナは驚きで聞いて来ているけれども、アーニャはその驚きが心配に変わっていた。


「いや、俺はいつも通りです。 それよりも、学園長でも無理だったんですか?」


 悠人がいう無理、とはサーシャの力を持ってしても犯人の情報が得られなかったのかという質問だった。


「ああ、さすがに少しはな。 そいつの名前はギース。アリスティア女王とサーシャ学園長が学生だった頃の同級生だったようだ。 そういうどうでも情報はわんさか出て来たんだが、肝心なこのフィアルテーレ学園に襲撃した理由がわかっていない。おそらくナイルダルクのテロというように学園長は見ているようだ」


「ナイルダルク……完全な悪と見ていい国なのでしょうか?」


 悠人としてナイルダルクという国について情報を持ち合わせてはなかった。


 ただ、アイナ先生やサーシャ学園長からの話を聞く限り悪という印象が強い。


 けれども、悠人にとってヒトから得た情報ほど信用してはいけないように感じている。ヒトからの情報には少なからず私情が入る。それを抜きにしてその情報を鵜呑みにするわけにはいかなかった。


「どういうことだ? ナイルダルクの悪行は一年の時散々授業したはずだが……あー、例えばー」


 アイナはナイルダルクがブィッフェルチアに行ったあらゆるテロの模様を詳細に話そうとした。


「知っています。 毒ガスによる魔法師の大量虐殺、女王暗殺計画。もといそれは計画に終わったもののあれば前回のような未遂にまで発展したこともある……と」


 悠人がアイナが言おうとしたことを噛み砕いて答える。アイナはそれを聞いて安心したように黙った。


「ですが、あちらにも我々の国を攻めなければならない理由があると……俺はそう思っています」


 その悠人の一言でこの保健室の雰囲気が凍りついた。なぜならばこの国でナイルダルクを憎まない国はない。だからこそ、議員連中はナイルダルク侵攻を掲げることで市民から信用を得ている。


 アイナはナイルダルクが侵攻したことをこの目で見たのか、アメリカのトップの意地なのか、悠人を睨みつけた。


「お前……本気で言ってるのか……?」


 アイナから悠人へ鋭い眼光が向けられる。今にも悠人に襲いかかろうとするような雰囲気だ。


「アイナさん、お、落ち着いて……」


 アーニャはタジタジになってアイナをなだめようとしているが、アイナを止めきれていない。


「俺は仮の話をしています。おそらく、女王がそれをしないのは俺と同じ考えだからだと思います」


「あの方は……そうかもしれんが、むしろとても守護的思想だと思う。 そう、相手から敵意を向けられなければ相手をしない。それを理由に戦争をふっかけて領土を奪えばいいものの……」


 悠人の言葉に少し言いすぎたと感じたのか、雰囲気が少し弛緩した。


「それでナイルダルクの人をを奴隷にでもするんですか? それとも……殺しますか?」


 しかし、悠人はアイナを諭すように続けた。さらに怒らせる結果になると分かって。悠人はアイナを見据えて真っ向から対立姿勢を見せた。


「ああ、難民ならともかくこの国に敵意をあらわにした者は少なくとも並大抵の階級にはいられんだろう。むしろあのアリスティア女王がそれをしなくともそうなるだろう」


「彼らは俺たちと同じように……魔法が使えない人たちですよ。 いい加減気づいてください。それでは全く解決しないことに」


 悠人がさらにアイナを諭す。


「……ああ、分かっちゃいるんだ。かつて私たちがそうだったからな。それで……見失ってたよ」


 アーニャはまだ、悠人とアイナの会話で何が起こったのか理解できていないようだ。二人の顔をキョロキョロと伺い何故悠人たちが和解できた、正確に言えばアイナが諭される形で終わった理由を知りたいようだ。


 それを分かっていて、悠人は答えなかった。


(思い出させることはない。アーニャだって同じだったはずなのだから……)


 この事は悠人とアイナの胸の内でしまうこととなった。


「でも、結局どうするのですか悠人。 悠人はリベンジしたいのでしょう?」


 アーニャがそんなことを言う。確かにさっきまでのことはそれを理由に全面戦争にすべきではないということであり、テロを行った犯人とその中にあるやつを許す気はない。


「俺は、ナイルダルクに乗り込もうと思う」


「おい!? さっきまでの会話はなんだったんだ」


 アイナが呆れ顔になって悠人を見つめる。明らかに悠人をこいつ馬鹿だみたいな目で見ていた。


 その目線を悠人は真面目顔で返す。


「アリス……女王も専守防衛が主とはいえ、未然に防ぐという名目ならば俺の提案を受け入れてくれるはずだ。 それが専守防衛の落とし穴だからね」


 専守防衛には、まず相手から敵意を向けられなければいけないと言った。確かにそれは良いことのように一見思えるけれども誰かが被害に遭わなければ防衛できないという落とし穴がある。


 では、それを防ぐためにどうするかというと……。


「悠人は知ってるのか? 王国直属の暗部の存在を……」


「っ!?」


 アーニャは微かに肩をビクつかせるが、悠人とアイナには気づかれなかった……と思う。


「知っているというよりも、そう考えれば容易に想像できると思います。もし、表側だけでこの国が成り立っているとしてこの国土を維持するのは、よほど外交能力に優れた君主か、裏でキチンと抑え込んでいるかの二択です。ナイルダルクとの関係が良くない以上、最初の可能性は排除されて……という推察です」


 悠人のこの言葉にアイナはあっけにとられた。今まで味方でここまで考察して言い当ててしまう者に会ったことがなかったからだ。そういう中では悠人はこの国ではとても稀有な存在なのだろう。


「そういや、お前はこの国の人間じゃなかったな……」


 アイナは口を釣り上げ正解の代わりにそんなことを告げる。


「ええ、そうですね……日本とは違いますから」


 悠人もそれにつられたように笑みを浮かべる。アーニャは口を挟むのをやめた。もう誤魔化しきれないと悟ったからだった。アーニャ的にも悠人にならバレようがそれほどの損害ではなかった。


(前の悠人も知ってましたしね……)


 そんなことを考えて自身を納得させるアーニャだった。


「しかし、悠人がこの国を離れることはアリスからの直接のめいがない限り無理だ」


「え……っ!?」


 アイナははっきりと告げた。それには驚きを隠せなかった。それはこの流れを見れば想像がつく。


「それは、先生が止めるということですか?」


 悠人は長剣を用意し、臨戦態勢をとる。


「ふっ、そうだ……と言いたいところだが問題はさっきも言った通りだ」


「悠人はアリスからヴァーチカン賞をもらってます。そのせいです」


 悠人の何故という問いを聞くまでもなくアーニャが感じ取って答える。


「なんでだ? あれは感謝状って言ってたじゃないか? そんな程度で外に出られなくなるのか?」


「ふむ……お前の言いたいことは分かる。……例えば国の感謝状はいわゆる国の宝だという証明書だ。それをわざわざ無駄死にさせようなんて考えるか?」


 今度はアイナが悠人の質問に答えた。


 つまり、日本で言う国民栄誉賞だと考えれば良いであろうか。国の宝を戦場へやすやすと送り出すことはしないだろう。


「じゃあ、女王に許しをもらわなければならないと……」


「もしくはそういう命を受けるか……だな」


 今日中には結局決まらず、悠人の体調が戻るまでに決まらなければこの話は無しということに半ば無理やりされた。


 悠人自身そこまでの愛国心を持ち合わせていないので、そこまで本気にしてやることもないかなと思っていた。


 それよりも学園を守りたいの方が悠人としては大きかった。

お久しぶりです。改めて、一旦完結したのちも多くの皆様に読んでいただきありがとうございました!


皆様のおかげでこのお話を投稿できています。


さて、自分もこの期間にまぁ、絵を描いたりと色々やってましたが、やはり自分はこれしかないのかなと心底思わせられました。デジタル強し。


まぁ、端的にいうとデジタル絵がほぼ描けなくて絶賛挫折中なんですけれど……。


まぁ、いいです。今回は新たなる節だと思います。章というには多くはなりません。


本当はそろそろいい加減にアレなシーンを打ち込むべきだとは思いますけれどもそれに関しては自分も簡単にはお話の都合上ちょっと難しそうです。


ということで改めて『マジフェン』をよろしくお願いします!


小椋 鉄平

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