希望の光
しばらく歩いてはいるけど……。
「……ないな……」
もう御託を並べる余裕さえなく、はっきりと聞こえるような単語さえ喋ることができない。今のは、変わらないなと言おうと思ったのだが、言う気力さえないほどに疲れ切っていた。
「うっ」
遂に、膝をついてしまった。
ついた場所でさえ、真っ黒だ。視界も自分の足以外、全てが黒。
悠人の目も虚ろになってしまっていた。
淡く、声が聞こえてくる。 その声に引き寄せられるようにしてむくりとゆっくり立ち上がる。
すると先ほどの真っ黒な世界の目線の向こうに眩しく光り輝くのがあったが、悠人にはそのことを考える余裕さえなく、虚ろな目でその場所へとのそりのそりと歩を進めた。
「ああ……暖かい……」
悠人はそう呟き、光に包まれた。
「悠人………」
もうこれで何日目だろうか、精霊だからどうでもいい事なのだろうけれども。
ベッドから頭を上げて悠人の顔を確認してホッと息をつく。耳をすますと悠人の寝息が聞こえてきて安心したのであった。
窓の方へと視線を移すと、窓からは淡い太陽の光が差し込んでいた。その光を意味もなくぼうっと見つめる。
太陽はこんなに曇りなき光を放っているのに……。
アーニャ的には、何も罪もないはずの太陽を恨みたくなってしまう。
「〜〜〜あれ?アーニャ」
背後から聞き慣れた、けれどこの状況では聞き慣れない声が聞こえた。
「わたし、遂に幻聴なんか聞こえてしまって……」
その懐かしい声に涙が溢れてくる。
それを見せまいと袖の服を目尻に当ててそれを拭う。
「どうしたの? アーニャ……」
肩に手が触れた。
それは、昔、わたしが小さかった頃の悠人の手のように思えた。
「……わたしにも……分かりません……でも……あなたの声を聞けただけで……涙が、止まらなくて……」
アーニャはくしゃくしゃになってしまった顔を見せまいと懸命に涙を拭う。
「大丈夫だよ。 何も心配ないから。……だから」
そんな言葉が聞こえてきて、肩をポンポンと優しく叩かれる。一定のリズムで、肩だけなのにアーニャには全身柔らかい何かで包まれるような感覚がした。
「泣かないでくれよ。…… アーニャ」
そのセリフに全身に電撃が走ったように身体が震えて、硬直してしまう。
「………ゆう……と……?」
アーニャがゆっくりと後ろを振り向くと、そこにはさっきまで仰向けで眠っていたはずの悠人が、上半身を上げてアーニャを見上げていた。
「悠人!」
アーニャは勢いよく、悠人にダイブした。
「心配かけてごめんな……」
「はい…。もう心配しまくりました……」
アーニャは悠人のお腹に顔を埋めて悠人の復活を確かめるように頭を振っていた。
わずか、二日間の出来事なのにもかかわらず、とても長く感じた日々だった。
いつも読んでいただきありがとうございます!
前も言っているように、一応このお話はこれで形の上では完結とします。
長い間読んでいただいた方には感謝しきれません本当にありがとうございました!
今後はカクヨムの方を中心に書いていきたいと思いますので、よかったらそちらの方も読んでいただきたいなと思います。
小椋鉄平