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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
71/97

過去の記憶

「ありがたく思います。 みんな、私に恐れをなしてしまって……規定で殺傷能力の極めて高い魔法は使用禁止だと書いてあるはずなのに……」


 確かにその規定があることは生徒全員が知っていることであった。


 しかし、使わないことに安堵することなど到底できなかったのだ。いざとなれば使える。ということが、皆の恐怖を煽ったのだ。


「お前がその魔法を使えないようにしているのならともかく、使える状態でいくら使わないからと言っても御託にしか聞こえないからだ。 いざとなれば自分の身を守るために使えるってことが悪いんだ」


 だからこそ、ギースはあえて口に出して言ってやる。サーシャ自体もこの状態に満足は覚えていないようであったし、頭の片隅に理由を知らないのかという疑念があったからだ。


「それは私でも無理よ。神じゃないもの、そんな確約は出来ないわ。私だっていざとなったら自衛行動はとらないといけないしね」


 短い会話であったが、これがサーシャとギースの出会いだった。


 開始の合図が鳴り響き、決闘が開始された。


「アンビバレッツ!」


 ギースは指を拳銃のように作り、空気弾をサーシャに向け放つ。


 空気弾は威力こそ少ないけれども圧縮して放せば、かなりのダメージを与えられる。ギースの空気弾は弾が小さく、なおかつ速い。これをまともに喰らえば鉛玉を当てられたような感覚になるに違いない威力だ。


 それほどまでに、殺傷ランクの規定は残念ながら低かった。


「ドロップ」


 サーシャはベクトル変換の魔法を空気弾に向け放ち、サーシャの方へ向かってくる空気弾に下向きの力を付加した。


 空気弾は地面へと消えた。


 ギースから放たれた空気弾は複数あったのにも関わらず、全ての空気弾に対してベクトル変換を行い、攻撃を回避したサーシャの魔法処理能力に感嘆の声が会場から上がる。


(くっ、ならば!)


「ファイアバレッツ」


 空気弾ではなく、炎の弾をサーシャに向け放つ。


「アクアバレッツ」


 間髪入れず、水の塊をサーシャに向け放つ。


「ドロップ」


 サーシャの発動した魔法は変わらない。ギースの発動した炎と水の弾が全て力の向きを変えられて地面に落とされる。


 当然、水と炎がぶつかる事により、蒸気が発生して両者の視界を遮る。


(ここだ!)


「アンビバレッツ!」


 蒸気が上がった瞬間に空気弾を放つ。


 ギースも例外なく、視界が遮られてサーシャの姿が見えなかったが蒸気が放つ前に魔法を発動させる準備をする事で蒸気を発する瞬間に空気弾を放ち、回避行動をとらせる前に叩こうという作戦だった。


 当然、蒸気が立ち込める中で当たったかどうかなんて分からない。ましてや空気弾。何か当たった音がするわけではないのだ。


「ぐわっ!?」


 衝撃が走った。腹部、胸部に激しい衝撃が起きて数メートル後方に吹っ飛ばされる。


 激しい痛みにすぐに立ち上がることが出来ないが、首だけは上にあげて何があったかを確認しようと振る。


 蒸気が上がり、サーシャの姿がおぼろげながら確認することが出来た。


 サーシャは片手を前に突き出していた。おそらく何かをして、ギースにダメージを与えた時にしたものであろうということは分かった。


 よろよろと立ち上がって、再びサーシャと正対する。


「………何をした」


「リフレクトよ」


「あの瞬間にリフレクトを発動したというのか⁉︎ 」


 ギースは目を見開いて驚いていた。


「ええ、あんな巨大な蒸気を発動させて何もしてこないなんてことないと思ったから全方位にリフレクトを張ったのだけれども、余計だったわ」


 サーシャは涼しげに答える。さも当然でしょうと言わんばかりに。


(やはり、この女はやばい。 化け物に近い何かだろ……)


 額に汗が伝う。


 サーシャからは攻撃してくることはない。 というよりも、この戦いを楽しんでいるようにも感じ取れるその冷ややかな嘲笑に死の予感しかしないギースがいた。


(やはりあれを使うしか……ッ!)


「アクアバレッツ、ファイアバレッツ!」


「ドロップ」


 やはり、サーシャは同じ手。


 再び、蒸気が上がる。


加速アクセル


 ギースはサーシャが動かないと踏んで、サーシャがいるところを記憶して回り込む。


(出来ればあんな奴の誘いには乗りたくないが……)


 サーシャの後ろに回り込んでギースは地面に手をつく。その瞬間、手の周りに紫の円が出来ていく。


(こいつが……)


 円は広がって、中から黒い煙に包まれた物体不明の何かが現れた。おぼろげであるが、人の姿をかたどってはあるけれども外見だけでそれ以外はやはり異形の姿としか言えなかった。


 ギースはその煙に触れる。


「これは⁉︎」


 触れた瞬間、蒸気の中なのに、サーシャの姿がはっきりと目に映った。


(これなら勝てるかもしれない……)


 サーシャの背中から近づき、背中のナイフを抜いてゼロ距離になったところで振り下ろした。


「くっ……!」


 サーシャは瞬時に後ろを振り向いて、手をナイフにする魔法を発動し一閃する。


(バレたのか⁉︎)


 ギースはそう思った。


「え……?」


 そのままギースのナイフはサーシャをすり抜けて、しまった。肉を切ったという感触もなかった。


「どういうこと?」


 蒸気が消え、ギースはサーシャの方へ向く。


 しかし、サーシャはギースの方ではなくあの黒煙の方に向いていた。


「なんなの……これ? 精霊なの?」


 サーシャは黒煙の方ばかり見てギースに背中を晒してしまっていた。


(チャンスだ)


 再び、近づいてナイフを振る。


「⁉︎ 殺気! ふん!」


 今度は風を発生させて、対抗してきた。風の刃が、ギースの腹部を襲うが、それもすり抜けてしまう。


「はあっ!」


 ギースもナイフを振り下ろすが、それもサーシャの身体をすり抜けた。


「そういうことか………」


「やはりあれが原因なのね」


 ギースもサーシャも納得したような顔をしているが、考えていることは全く異なることであった。


 サーシャは黒煙に正対して、初めて自分から魔法を放った。


「バーニングバースト!」


 サーシャの手から、轟音をあげて炎が飛び出し、黒煙を直撃した。


 その瞬間に、サーシャの背後からギースが近づき、ナイフを一閃した。


「嘘!? ぐっ!」


 背後からの急な殺気に気づいて振り向くサーシャだったが、完全に避けることはできず、ギースの一閃を背中に受けた。


 サーシャはすぐにギースから離れる。


 このランキング戦初めて、サーシャになにかしらのダメージを与えたことに周りからさらに驚きの声が聞こえる。


「どういうこと? 」


 サーシャは素直に尋ねていた。どうやって背後に近づいたのか分からないみたいであった。それに黒煙もあの炎を食らっても傷一つないようであった。


「悪いが、それについては俺にも分からない。 そいつをくれた奴にしか知らないからな」


「………まぁいいわ。 初めて、一本取られたしこれで私も愉しめそうよ」


「それはどうかな……?」


「どういうこと?」


 ギースはそう言い残して、サーシャの視界から消えた。サーシャの質問に答えずじまいであったが、少なくともギースがまだこの決闘を諦めてないということだけは口ぶりで分かった。


(いったいどこにいるの? 私が視認出来ない領域の中にいるとでも? )


 サーシャは周りを警戒する。サーシャの周りには、やはり黒煙以外人らしきものは確認できない。


(やっぱり、あの黒煙をなんとかしないといけないわよね)


 サーシャは黒煙の方に向かって走る。


 その間にも間髪入れず、ギースからの攻撃を浴びせられる。ギースは、至近距離で姿を見せるとすかさずナイフを振りかざしてきた。


 その刹那の間に瞬時に殺気を感じ取ってその攻撃に対処している。


「くっ!」


「へへっ、このままじゃいくらサーシャでも殺しちまうかもな。 ……なぁ、サレンダーしろよ」


 サーシャはさっきから黒煙の方へ少しずつ、進みつつも間髪なく浴びせられるギースの変則的な攻撃に防戦一方だった。


 ギャラリーの方も予想だにしない光景に興奮しているみたいであった。いくらか、ギースを応援するような喝采まで聞こえている。


 やっとの事でたどり着き、黒煙に手を入れる。


 手を入れた途端、周り全ての色が消えた。

いつも読んでいただきありがとうございます!


今回は割と一気に行けるかなと思っていましたが、そこまで行けず途中になってしまいました。すみません!


前回から言ったように、ちょっと回想シーンが多いしなおかつ主人公どこいったよ⁉︎っていう部分なので、つまらない方いるかもしれませんが、ご辛抱くださいとしか僕からは言えません。


今回はわざとではないのですが、続きを楽しみにしていただきたいと思います。


それでは〜


小椋鉄平

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