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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
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嘲笑と逃げ道

 にらみ合う二人、サーシャは自分から仕掛けるつもりはなさそうであった。その理由に敵をあざ笑うかのように見つめている。


 ギースはギリギリと歯ぎしりをしている。よほど悔しいのであろう。サーシャと違って明確に悪意、憎悪を持って睨んでいる。


「………っ!」


 焦れたギースが仕掛ける。サーシャの方へ一気に間を詰めて背中に仕込んでいたナイフを横に凪いだ。


「そんなもので私を倒せると思っているの?」


 スロー映像の中で、至近距離でナイフが刺さってしまうというのにそうギースに語りかける。頂上は変わらずに。


「ふん!」


 ギースはナイフを振り切る。


 それに感触があった。


 ギースはまさかと思い、下げた顔を上げる。


「あら、意外だった? そんなんじゃ、私を倒すなんて無理よ」


 そんなことをのたまうサーシャ。


 ギースは目線を外すと、確かにナイフは刺さり服の中から血が溢れている。しかし、その表面的な状況とサーシャの表情や言葉が合致していない。故にギースは不気味に感じていた。


 とっさにギースはサーシャとの距離を取る。


 サーシャの顔は相変わらず、嘲笑を浮かべている。


 サーシャに突き刺さっていたナイフが落ちて、そこから血が噴き出す。


(何故平気なのだ。 確実に内臓一つ分は終わってるはずなのに……。なぜそんなに笑っていられるのだ)


 ギースは不気味さをサーシャに感じ得なかった。不気味、不思議をゆうに超えている感情。ギースは身構えた。


「ねぇ、ギース。私たちがまだ学生だった頃を覚えているかい?」


 唐突にサーシャが昔話をし始めた。ギースにはもうさっぱり意味がわからなくなっていた。


(このまま逃げて仕舞えば!)


 ギースは踵を返し、全力でサーシャから逃げる。


 階段を降りて、渡り廊下を疾走しグラウンドに出て校門へ走る。


 チラチラと後ろを向き、追いかけてこないことを確認しながら、それでも速度を落とさずに足を動かす。


(それもそうだ。かなりの痛みだったはずだ。 追ってくるなんて……出来るわけがない!)


 もう校門は目の前だ。


 ギースは頬の端を釣り上げて勝ち誇った表情をつくる。


(俺の勝ちだーーー!)


 思わず声に出そうになるのを懸命に抑え込んで校門をくぐり抜ける………抜けた………がー。


「はぁい、ギース。 気分はどうかしら? あなたがやった事と同じことをされた気分は」


 ギースは校門をくぐり抜けた…はずなのに目の前にサーシャがいた先ほどの廊下に立っている。


 された事は一瞬で分かった。自分も同じことをあの男子生徒にやったからだ。なぜか、三人目の男子は逃げなかったので快くやってしまったが……。


「どうもこうもないぜ。 最悪の気分だ」


 よく見ればサーシャが先ほど負っていたはずの血が綺麗さっぱり消えており、かつまるでさっきのナイフでの攻撃がなかったかのように服も元の通りになっている。


 脂汗をかきながら、挑発するように声を張り上げて答える。


「……ふふふ。 そうでしょうね。私もそれを期待してわざわざ長ったらしい小芝居をしたのだから」


「……それは俺が逃げると分かっていたのか?」


 呼吸を整えたギースが怒気を強めた表情で、サーシャを睨みつけ答える。


 もちろん、そんな程度でひるむサーシャではない。むしろ楽しんでいるようにも感じた。


「ええ、分かっていたわ。 だってそれは“私がさせたのだから”」


「……なん……だと……」


 今度は目を見開いて、サーシャを見つめる。信じられないといった感じの目で見ている。


「あら、どうしてといった顔をしているわね。 ふふふ、その顔が見れるのが楽しみだったわ、やる前から」


 不気味ともとれる笑みを浮かべている。もはや、どちらが悪か分からなくなってしまうほどに形成が逆転していた。


「………ど、どうしてなんだ」


 ギースとしては先読みされたことが不本意だったのであろう。 口から出るものに覇気が感じられなかった。とても弱々しく、それでいて恥じている。


「え、なんて言ったの?」


 サーシャはこれみよがしに挑発をかける。耳裏に手を当てて、ギースの言葉をよく聞き取ろうとしている。もちろん嘲笑は変わらず。


「くっ!………どうしてこうなったんだ!」


 このままでは埒があかないと悟ったのか、あるいは観念したのか。 声を張り上げて言葉を発する。


 言い終えた後は、もうドヤ顔すら感じ取れるほどの表情だった。


「どうして……か。 教えてもいいけど、聞いても得することなんてないわよ」


 少し、キリッとした顔でギースの方へと顔を向ける。


「どうしても……だ!」


(この局面を打開するにはまず相手のことを知らなければ無理だ。ただえさえ、毒舌魔女と男子の中で呼ばれていた悪魔だ。聞いて、どうにかなるような気がしないけどな……)


 ギースは頭の中でそんなことを思いながらも、聞かずにはいられなかった。いや、そうさせられたという方が正しいかもしれない。


「じゃあ、ヒントね。 覚えているかどうか分からないけれど、私たちは学生時代に一度手合わせしているはずよ。結果は、あなたの想像通り。 どうやってあなたを追い詰めたのか、というのがヒントよ」


「ちっ、どこまでも悪どいやつだな」


 サーシャの焦らしに苛立ちが膨れ上がるけれども、破裂させることはせずに我慢する。


(けど、あいつとの学生時代か……正直、接点はなかったはずだよな)


 確かに、三年のランキング戦の時にサーシャと戦う場面があったことをギースは思い出していた。



「きっと、棄権されると思っていたわ」


 サーシャと対峙するギース。当時、サーシャは凄腕の魔術師アルベルトの孫という名声にそぐわない実力と実戦を携えて迎えるランキング戦だった。


 この時代のランキング戦には擬似空間アストラルカーディガンが無かったので、サーシャレベルの実力となると皆、死を恐れて棄権する者が後をたたなかった。


 だからこそ、ほぼ無名なギースがサーシャと向かい合っている事自体、正気か⁉︎と言われる事ことなかった。

いつも読んでいただきありがとうございます!


先週は胃潰瘍一歩手前で頑張ってました。ツイッターでは気を遣ってくださってありがとうございました!


今ではもうかなり和らいできているので大丈夫です。


さて、今回のお話ですけれどもちょっと長めの尺を取るお話になりそうなので意味不明なところで切ってたりするのですが、まぁ、えーと思わずに次を待ってもらえたらなと思います。


ではではー


今日も更新できたことに感謝。


小椋鉄平


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