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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
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お手伝いと謎の黒マント

 アーニャはまぁ、精霊なのでこんな厳重な扉でさえもすり抜けて行ってしまうみたいだ。でも、考えればわかることだ。


 ロビンに部屋に入る許可をもらって魔法研究科の棟へと足を踏み入れる。


 広場には何やら熱心に会話をしている生徒たちの姿や今にも死にそうになっている生徒などさまざまいた。


 前を行くロビンの方に目を向けるとやはりこの光景が日常茶飯事なのだろうか……ロビンは気にも留めないでいた。この景色が異常だとは全く頭に無いようだ。


 いっぽうのラネイシャはとてつもないアウェー感に押しつぶされそうになっていた。ラネイシャに「大丈夫、俺もだから」と小声で言うと「ええ、そうだよね」と安心してくれた。


 と言いながらも悠人の背中に手を当てながらオロオロとついてきていた。


(え、ちょっとー!)


 後ろをチラッと伺う悠人だったが、ラネイシャの不安そうな顔を見て一瞬で邪念が吹き飛んだ。


 やがて、扉ばかりの廊下になってその中の一つでロビンは足を止めた。そして生徒証を読み取るような機械に生徒証をかざすと、下のランプが緑色に変わってガチャという音が聞こえた。


 ロビンはガチャと聞こえたドアに手をかける。


「さぁ、ここが僕の研究室だよ。 入って」


 促されるままに中に入る。


 中はいわゆる研究室といった感じで、白を基調とした空間が広がっている。


「へー、ここがそうなのかー」


 悠人が辺りをキョロキョロと見渡しながら言う。周りには白を基調とした棚があり透明な引き戸の奥にビンが並べられていた。いろいろなビンに難しい名前が書いてあるが中に入っているのはどう見ても同じ白の粉末にしか見えなかった。


「ああ、ここで魔法に関していろいろな方面から研究して魔法とは何かを解明しようとしてるんだ」


 ロビンが答える。確かに机には“生体魔法について”と書かれた論文が置いてありそういうことを真面目にやっているんだなと改めて知った。


「もう、遅かったじゃありませんか!」


 アーニャが奥からひょこっと現れる。やはり、悠人がバインドから抜けたのは知っているらしく、こっちに来ていることも分かっていたようだった。


 おそらく悠人の考えていることに対してアンテナを張っていたからだろう。などと考えて「ごめんごめん」と返した。


「悠人、もう平気ですか?」


 マイン先生に魔法を解いてもらったことも分かっているのか、そう切り出すアーニャ。


 どこまで分かってるんだ! ちょっと怖いぞと少し身体を引く悠人。


 少し間を空けてアーニャの様子を伺うと先ほどと心配した様子で変化していなかった。


 どうやら気にしてないと分からないみたいだな。


「ええと、うん、大丈夫って言われたよ。アーニャが心配性なだけだって」


 アーニャは「そうですか」とよほど心配だったのか胸をなで下ろすほどに安心した表情をしていた。


 その表情を見るとやはり自分の軽率さを思い知らされる。アーニャはこんなにも心配してくれたんだって申し訳ない気持ちよりも嬉しいという気持ちの方が大きかった。


 それと同時に心配かけたくないともその後に湧いてきた。やはり、こんなにも親身になってくれるヒトに笑顔になって欲しい。


 ぼんやりとではあるけれども改めて決意した瞬間だった。


「悠人、そろそろ本題に入っていいかな?」


 ロビンがおずおずと悠人に提案してくる。


「おっと悪い。 で、俺はどんなことをやればいいんだ?」


 意識を切り替えて、ロビンの方へ歩み寄る悠人。その後ろにアーニャ。 画面横にラネイシャが悠人と斜めで対面するように立っている。


「逃げ帰ってきた生徒たちに話を聞いたところ、夕方の日が沈む少し前くらいの時間に魔法科棟二階一番奥のAクラスのドアの前で見たらしいんだ。 それを見張って、出てくるか見て欲しい」


 ロビンが画面に学園見取り図を出しながら説明した。


 悠人は「分かった」と頷く。


「ちょっと待って。 その情報なら風紀委員もやってるわ。でも、今のところ一向に出て来ないわ。 悠人がやっても同じことよ」


 ラネイシャがロビンの言葉に反論する。


「具体的にどんなふうにやってたんだ?」


「ヒトは入れ替えでやったわ。Aクラスの前の角で見張ったけど何も出てこなかった」


「ふーん、その人たちの魔法ステータスって今ある?」


 突然そんなことを言い出すロビン。悠人と同じことを思ったのかラネイシャも「は?」いった感じでロビンを見ている。


「襲われて現在行方不明の生徒のリストだ」


 とロビンは画面を操作して二人の生徒のデーターを写す。


「実はさっきラネイシャが言っていた生徒の共通点をもう一つ見つけたんだ。それがー」


「Aクラスの生徒……ってこと?」


 ロビンの答えを待たずしてラネイシャが画面を見ながら答える。ロビンは首を縦に振った。


 確かに二人の男子生徒はどちらとも所属クラスがAクラスだった。


「じゃあ、見たって言う女子生徒は?」


 やや、反論気味に悠人が答える。


「確か、Bクラスでしたよね。でも、それで消すのはかなり無理があるんじゃないですか?」


 後ろからアーニャがそう答える。 ロビンから聞いていたみたいだ。 悠人が後ろを向くとてへぺろとしてテレパシーで送ってきた。


『テレパシーの乱用はやめて欲しいのだが………』


 悠人は独り言のように頭の中で呟いたのだが、アーニャがションボリして「すみません」と言ってきてしまい。さらに、困った。


「うん、だから悪いんだけど実験データになって欲しいんだ」


 と、ロビンは悠人の方を向いてそう語る。


「ああ、任せとけ!」


 悠人は拳を立てて強く言った。




 そんなこんなで悠人とアーニャ、ラネイシャの三人で事件現場にいる。 悠人だけは当事者の言っていた通り、廊下に立って出るのを待ち構える。 既に護身用に抜刀した状態で待ち構える。


 一方、アーニャとラネイシャはAクラス前の廊下から百メートルほど離れた渡り廊下へと続く角で様子を伺っていた。二人はもし出てきて悠人に襲いかかってきた時の援護としてだった。


 静かな廊下。建物の中、ということもあって風の音とかが全く聞こえない分、恐怖感が少なからず湧き出てくる。そのせいで自ずと警戒心が増す。今も、どこから出てくるか分からない黒マントの奴の気配とかないか周りを張り巡らせている感じだ。


 一応、ラネイシャも元特待生だったこともあって今はAクラスだったのでラネイシャではダメなのかという案もあったのだけれど、ロビンは悠人ではなければダメだと言った。


「理由を聞いてもいいか?」


 悠人がそう聞く。ロビンはおもむろにアーニャをチラチラと見ながら、言おうか言おまいか迷った挙句。


「悠人で奴が出てきたら答えるよ」


 とだけ答えた。 もちろん納得は出来なかった(特にアーニャが)けれどもなんとか場を収めて今に至る。ロビンはさらにむやみに攻撃しなくていいとも言っていた。 今回は出てくるだけで大きな収穫らしい。


「………」


 腕時計に目を向ける。そろそろ女子生徒が告げた時刻になる。


 針の音がこの時ばかりはうるさく聞こえている。


 時計の秒針がⅫのところへ止まった瞬間………。


「っ!」


 空気が変わったことが分かった。 気配はまだないが、ピリピリとした空気が肌に突き刺さっている感じだ。


(! いきなりの殺気⁉︎)


 後ろを振り向き、長剣を横に薙ぐ。


 しかし、その場には何もおらず空振りに終わる。


(嘘だろ。 確実に後ろから殺気がかなりの勢いで迫ってきたんだ。 そこにいないはずがない……っ!)


 再び、背後からくる殺気に反応して剣を向ける。


「………どういうことだ?」


 警戒心を保ったままこの状況に首をかしげてしまう悠人。


 さっきから何度も殺気に反応して振り向いて剣を振る。


(これは殺気じゃないっていうのか? いや、そんなはずは………っ!)


 振り向き、一閃。またも剣は空を切る。 それどころか勢い余って廊下に傷をつけてしまった。


 ガリっとえぐる音が鮮明に聞こえる。


(ここは一旦退くべきか……っ⁉︎)


 今までにない大きな殺気を感じた。しかも、反対方向にそれぞれ悠人を挟み込むようにきていた。


 思考が速くなる。 魔法による身体強化でこの瞬間がスローに見える。それでいて悠人は一歩後ろに下がって横に薙いだ。


「はああっ!」


 殺気が霧散する。 スローモーションの中で、攻撃を回避したが……敵はその場にはいない。


 それどころか………。


「がはっ!」


 悠人は背中を横に一閃された。 スローモーションの中で、追撃を避けるために反転しながら、前に倒れこむようにして跳んだ。


 だが、その場にでさえ黒マントの姿は無かった。


いつも読んでいただきありがとうございます!


春休みということもあって、スムーズにプロットしてたのですが、なぜかサブ題名にちょっと詰まりました。まぁ、気にしないでください。


正直、春休みとはいえなぜかやること思いつかなくてぐうたらしてますね。なのであまりいうことがないですw。


では、悠人はどうなってしまうのか⁉︎ いつも通り、自分も楽しみながらプロットしていきたいと思います!


小椋 鉄平

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