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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
63/97

アーニャの秘密と悠人の特訓

「ふぅーー」


 ローレラがまた破片の中には人間とは思えない、何か分からないケーブルのような断片が入っていた。


 また、皮膚だと思っていた肌が、実は滑らかな手触りの何かであって弾力性が全く感じられなかった。


 だからこそ、これは人間ではないと思った。


 ローレラは目を瞑る。


 これだけを見れば、とても戦場でやるような事ではないように思うだろうが、ローレラには周りに危険因子はないと分かりきっていた。


 それよりも、探しているのはあの男がそうであった様にロボット(これ)を操っているヒトがいるはずだと考えていた。


 これが何で動いているのはローレラにはよく分からないが、おそらくどこか魔法が関わっているのではないかと感じていた。


(………いないわ)


 目を瞑るのをやめて目を開ける。


 薄暗い部屋なので目を細めることもなく開く。


 ローレラは踵を返し、この場を去った。




「ふむ、やはり、か……ああ、報告ありがとう、それじゃあ後のことも頼むよ」


 ふかふかの上クラスが使う様な部屋たで、これまた高級そうなチェアに座って手のみを耳に当て独り言を言っている。


 もちろん、独り言の様に見える、というだけで本当はそうじゃない。


 しかし、見る人大半がこの光景をおかしな独り言と思ってしまうに違いない。


 男は耳から手を離して机の上にのせる。


「何か進展はありましたか?」


「ああ、あった。 君の目論見通りだったよ。アーニャさん」


 男は顔を上げ、ソファーに座っている彼女に言う。


 二人の様子からしてそこまで仲がいいとはお世辞にもいえない。


 逆にお互いを牽制しあっている。 そんな龍と虎のような関係に見えた。


「やはりそうでしたか」


 それだけアーニャはぶっきらぼうに言うとソファを立ち上がる。


「あれ、結果は聞かないのかい? それでどうしたのかとか……」


 男は机に両膝をついて手を握る。


「それはローレラのことです。 うまくやってくれるでしょう? あなたのお気に入りなんだから……」


 そう、こいつの部下がローレラなのだ。


 故にアーニャはこの男が信用ならない。


 あのローレラがこんな奴に降るはずがないのだ。


 ローレラは学園時代でもエース的存在、そしてその実力は百年に一人いるかいないか、悠人にも引けを取らない魔力量。


 そんなローレラが到底、こんな男に屈するとは思えない。


 絶対に何か社会的弱味を握らされてこんな悪事まがいなことをやらされているに違いない。アーニャはそう確信している。


 この組織のことを知ったのはつい最近。


 その時は私は驚きを隠せなかった。


 議会の連中のバックにこんな組織があるなんて知らなかった。


 しかし、やっている事はごく単純。ただ、このヴッフェルチアにあだなす因子を片っ端から排除する。


 それがこのヴッフェルチア国暗部であった。


 私は、それを知ってしまったので当然消されると思った。 私ほどの精霊などいくらでも消しているだろう。


 男に会った時はかなり何もない壁に目を向け、冷や汗をびっしょりかいていたくらいに怖かったのだ。


 精霊なのだからそういった分泌物は出ないにも関わらず、だ。


「別に私に協力しろとは言わない。 もちろん、あなたを消したくもない。 しかし、この組織を女王に知られるわけにはいかない。 だから……取引しないか?」


 という、事であった。


 暗部にしてはへりくだりしすぎている。


 暗部というくらいなら、問答無用の悪軍団だと思っていたのでアーニャのような女王と面識のあるヒトは片っ端から殺っているような印象だった。


「………内容次第ですね」


 アーニャはそうぶっきらぼうに答える。 完全に部はあっちにあるのだが、それでも虚勢を張ってみせる。


「だろうね。 僕でもそう答えるよ。 簡単だ。 このことを秘密にすること……それだけでいい」


(嘘ですよね⁉︎ こんなことでいいの? )


 アーニャは驚きの表情を浮かべながらも、さらに警戒心を増した。


 対する男は表情を崩さず、ニコニコした顔を絶やさない。


 この男の笑顔にはやはり好きになれない。


「……何も警戒することないよ。 他言無用にすること。それだけでいいんだ」


「………本当に?」


「ああ、約束しよう。 本当だ。 もし君が良かったら情報を我々に流してくれるとありがたいのだがね……お互い愛国心は一致しているだろう?」


 男はそう付け加えて言った。


 そんなこんなでアーニャはこれまで生かされている。


 そう、生かされていると言ったほうが正しいのだろう。


 どこまでも謎の組織だ。


 悠人がきた今でも分からないことが多い。


「じゃあ、私はこれで」


「ああ、わざわざご苦労様。 これからもよろしく頼むよ」


 アーニャはその男の声に振り向きもせず去った。





「もう一度! はあぁぁぁぁ!」


 真正面に剣を振り下ろす。


 悠人の持つ剣は自分の身長ほどある剣なので敵との間合いが離れる。


 つまり、それだけ遠距離攻撃のような物理攻撃ができる。


 逆にいえば、遠距離攻撃に対してもある程度対処が効きやすい。


「惜しいな!」


 だが、アイナはその一手先をいく。


 軽々と懐に入られ、確実に悠人の胸を串刺しにする。


 その瞬間の胸が風船を割ったかのように弾ける。


 アイナが突き刺さった剣を抜く。


 血が弾け飛び、叫び声すら上げられない痛みが襲う。


 と同時にショックが悠人に襲いかかり、容赦無く悠人の意識を刈り取ろうとする。


 悠人はその場に膝をつく。


「大袈裟だぞ、悠人。 お前、これで死んだの初めてってわけじゃないだろ?」


「そ、そんな事言ったってこんな痛みを慣れろってほうが可笑しいですよ! こんな痛みを何度も味合わされるなんて、絶対にごめんだってやられるたびに思います」


 そう、悠人は普通の人間なら一生にもしかしたら味あわないことがほとんどな強烈な、何ものにも比喩しづらい痛みをもうかれこれ手足の指を使っても足りないくらい味わっている。


「そんな事言って、お前はこんなもんじゃないだろ? さっきから単調な攻撃ばっかじゃないか、途中からお前はMエムなのかと思い始めたくらいだ」


「そんなわけないじゃないですか⁉︎ さっきから嫌だって何度も言ってるじゃないですか⁉︎」


 とはいっても戦場でそんなことが通じるわけがない。


 それは擬似空間アストラルカーディガンがあるおかげでそんなわけないとのたまえるのだ。


「じゃあ、もっと上手くやるんだな!」


 アイナが休憩は終わりだと、悠人に向かって剣を振り下ろす。


 さすがにそれには対応できず、避ける。


(……くっ、剣圧が……避けられないッ!)


 アイナは進行方向とは別の方向へと剣を振っていたのだった。


 悠人はそれを見越して、避けたもののそれすらも予想できてたといわんばかりに剣尖がこちらへと襲いかかる。


 この一瞬で『風の一閃ウィンドブレード』まで構築して悠人という敵を確実に殺しにかかっている。


『風の一閃ウインドブレード』は等級でさえ、第三級魔法に当たるが、使うヒトが工夫して使えばその等級は一級にまで跳ね上がる。


 こんな時みたいに。


 悠人はなんとかそれに自分の剣を合わせるが、力負けして吹き飛ばされる。


(しかも追加攻撃まで……本当に恐ろしいよ先生)


 悠人の制服はそれによってあちこちが切れてボロボロになっていた。


 この制服は本来それを防ぐために着ける戦場でも兼ねられるものなのであるが、それを一発で使い物に出来なくするアイナ先生の技に感服するしかなかった。


 ふと、顔を上げるとアイナが立ったままでいる。


 同時にアイナも悠人に驚いたような顔をしていた。


「さすがだ、悠人。 この私のコンボを防ぐなんて」


「服がボロボロになってる時点で、全然嬉しくないですけどね。……コンボって、違くない?」


 悠人はコンボと聞いて疑問に思って呟く。


「こここ、コンボに決まってるだろ⁉︎ 」


 アイナはかあっと恥ずかしそうに顔を赤らめて自分の発言を悔いている。


「ですけど、コンボっていうのは連続攻撃のことですよね。結局のところ、風の一閃ウインドブレードが攻撃だった訳ですから、詰まるところ一回しか攻撃してませんよね?」


「わーわーわー!!」


 パタパタと手をブンブンと振るアイナ。しかし、悠人との距離が空きすぎていて意味がない。


 悠人もアイナをからかおうとして言った発言ではなかったので、そこをつついたりしない。


 ただ、恥ずかしがるアイナに吹き出した。


 いや、吹き出してしまったといったほうが正確だろうか。


 アイナにとってその悠人の反応は嘲笑の何ものでもなかった。


「ええい、うるさい!」


「うおっ、ちょッ!」


 アイナは悠人に向かって一閃を放つ。


 いきなりの攻撃にたじろぐ悠人であったけれども、先ほどのシーンとは違い、防ぐことができた。


 防ぐ瞬間に一工夫加えてみる。


(授業ではできなかったけど……やってみなきゃ成功もない!)


 悠人は自分の長剣に魔法を乗せ、アイナから放たれた一閃に合わせる。


反射リフレクト!」


 一閃がいきなり進行方向を変え、放った本人の方へ放たれる。


 自分で放ったものなのだから、当然それを弾いた。


「くっ…だが、こんな工夫じゃ……ッ⁉︎」


 アイナは目を見張った後、常人ではありえない速さで後ろを振り向く。


「もらった!」


 アイナが振り向くよりも悠人が目の前で剣を振り下ろすほうが速かった。


 その間、ほんのコンマ5秒。


 悠人がアイナにやり返した瞬間だった。









いつも読んでいただきありがとうございます!


今回は、なんか短編みたいな感じになってしまいましたね。


前回、なんて書いたか分からないですけど、もしローレラ視点で書くとか言ってた記憶があるんですけど、すみませんあれ嘘です。


なぜか、視点が変わるだけで急に書けなくなったので。理由はそれだけです。


というわけで、千字程度になってしまったのでここいらで色々と細々入れてみようかなと思って短編みたいにしてみました。


悠人視点もあれなんで、色々な角度から書いて三十万字までいけたらなとか思ってます。きついな⁉︎


ではでは。


最近の喜びは仮免試験に受かったこと!


「いや、誰でも受かるし!」


「マジか!!!」


小椋鉄平

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