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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
王都へ
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一撃

「アーニャ、まずは二人と合流しよう。 魔法系で選別出来ないか?」


 走りながらも、悠人はそう提案する。


「ちょっと待ってください……そうですね。 ここから東の方向に大きな魔力保有量の方が二つ確認できますが、それがキーシュさん、フィーベルさんかどうかは分からないです」


「いや、それでも十分だ。 それ以外にこの城に向かってきている魔力は感知できないか?」


「うーん、ちょこちょこは来てますけど……すごい勢いで消されてますね〜。 オルドフさんでしょうか?」


 悠人はそのデータを直接見られている訳ではないが、オルドフの気性ならやりかねんだろうなと悠人も想像していた。





「おい、こりゃ前に進めねぇぞ!」


 キーシュが苦言を漏らす。 本人はとてつもなく苛立っているようだが、本人の表情は真剣そのものであった。


 それもそのはずでフィーベルも同じ表情をし、敵となって襲いかかる獣たちを容赦なく粉砕している。


「ずべこべ言ってないで、もっと気を張ってね。 人数で言えばうちは圧倒的不利なんだから〜」


「あーー、わがってるよ!」


 飛んでくる弾を弾き、剣で襲いかかるゴブリンを剣ごと叩く、ある意味型破りな戦法で敵を殲滅していくフィーベルと高速でかつ正確に相手の急所を突いて無力化するキーシュ。


 その二人の戦い方は、相反するものであるが、お互いが邪魔する事なくむしろ連携が取れているといえるくらいのペアっぷりだった。


 例えてみれば親子ってところであるけれども……。


 その時、二人の動きが止まる。


 決して、有象無象の敵がいなくなった訳ではない。


 今も、それらとは睨み合う形であるが、それに見合わないやつが現れたのだった。


「おい………あれが親玉か?」


「………どなの?」


 今まで倒して来た獣たちは形様々ではあるけれども、どれも大きさは大きくても二メートル程のものであったが、今目の前にいるのはそれを軽々と超えている。


 完全にキーシュたちが見下ろされる形になる。


「はぁー、仕方ねぇな。 やるぞ、フィー!」


「そうねー、ここまで来たらしかないよねー」


 二人は巨大な獣目掛けて駆ける。


 なんと表現していいものか、似ているとしたらゴブリンなんだろうが、何しろさっきまで倒しまくっていたゴブリンとは大きさが桁違いであるし、筋肉の隆起がハンパない。


 あれがやはりボスなのか有象無象のゴブリンがそれを阻む。


「邪魔ーーー!」


 フィーベルがそう言って地面に拳を打ち付けると、地面が隆起してゴブリンたちを一掃する。 さらにフィーベルの凄いところはここだけでなくちゃっかりキーシュの向かおうとしている巨大獣への最短距離だけは不干渉にしたという事であった。


 その一本道にいるゴブリンを簡単に蹴散らしてキーシュは巨大獣の元へ行き着くと、そいつの足元を狙って一閃する。


「喰らえ、 炎碧オポジム!」


 あらかじめ、符呪エンチャントしていた魔法で右手にあおい炎を剣に接続コネクトして一閃したのだ。


「ウガァァァァァァ!!!」


 まるでコンクリの柱のような足が真っ二つに切られた。巨大獣は悶える。


「おいおいおい、そりゃ無いぜ」


 巨大獣はゴブリンを捕食し出した。 食べられたゴブリンから、緑の液体が飛び散りキーシュたちを汚す。


 ゴブリンを捕食したせいで、むくむくと切られたはずの片足が再生されていった。


 キーシュは周りを見渡す。ゴブリンの数は数え切れないほどいる。


 これではこちらが先に魔力回復が間に合わず、敗北は時間の問題だった。


(くそっ、これじゃサーシャが浮かばれねぇ………!)


 キーシュはグッと歯を食いしばり悔しそうな表情を見せる。いくらフィーベルもゴブリンの数を倒してくれてはいるけれども、同じく魔力が切れるのは時間の問題だった。


 フィーベルも同じことを考えたのか、二人とも苦悶の表情を見せる。


 まさに、絶体絶命の状況だった。






「このゴブリンの数は異常だぞ!」


 キーシュたちに合流するために、そこへ向かっていた悠人が着いた先で開口一番に放った。


 悠人でも時間の問題だということは瞬時に理解できた。


(だったら、こいつらには親玉がいるはずだ。 どこに…ってあれか!)


 一瞬、周りを見渡し一際大きなゴブリンを見つける。


「あれを討ち取る事が出来ればこの数のゴブリンを一掃出来るはずだ。 アーニャ、あれをやろう」


「はい、ちょうどここからなら範囲内のゴブリンと巨大ゴブリンを一度にたくさん叩けますね!」


 悠人とアーニャは手を繋ぐ、それは効率の良い方法では無いが、魔力渡しの方法だ。 本来の魔法も、精霊に魔力を注いでその恩恵を得るというのが通常ではあるけれども、契約精霊であれば恩恵がはるかに違ってくる。


 本来として、魔法を出してあげられる恩恵は僅かだ。


 例えば、精霊に魔力を注ぐ魔力量は正確には測ることはできないけれども、仮に100とした場合。そこから受けられる恩恵は僅か20%以下である。ここから見ても、精霊とヒトとの関係はフェアでは無いと思われるであろう。


 それに対して、契約精霊であった場合、同じように注ぐ魔力量を100としたとき、得られる恩恵はほぼ100%に近い恩恵が与えられる。


 こういういった事が起こる理由については、未だ正確な事実は分かっていないそうなのであるが、誰でも推測出来る事としておそらく契約にそういう事が起こるからであろうということは言われている。


「よし、頼むぞアーニャ」


「はい、創造クリエイト!」


 アーニャは、悠人の固有魔法、創造クリエイトをコピーし巨大な大砲を出現させる。


「エネルギー充填!」


「10……20……40……80…100! エネルギー充填完了! 発射のタイミングは悠人に任せます」


 アーニャは、照射ボタンにいつでも触れられるように準備する。


「おい、まてアーニャ。 この角度だとキーシュさん達まで当たっちゃうぞ! 」


 狙いを定めていた悠人がそのことに気づく。


「あっ、で、でもこのまま移動は難しいです! エネルギー充填してしまった以上、何処かに放出かしないと魔力濃度で悠人がやられちゃいます!」


 魔力は気体だという事が言われているが、正確なところは不明だそうだ。なぜ、不明かというとそういう事に疑問を抱かなかったからなのだろうけれどもこういう地球タリスから来た人たちによって表に出てきたものだという。


 魔力濃度が高いと有り体に言えば火災の煙の中にいる時と変わらない現象が起こり、本当に欲しい酸素が体全体に行き渡らず、酸素不足から命を落としてしまうという事が起きる。


 ただ、一酸化炭素の時とは違って魔力自体は体に吸収してされるので一定時間であれば問題はない。


 では、マズいのは何かと言うと、魔力を回復できてこれ以上はキャパオーバーとなった時である。


 その時の魔力は、正しい魔力系に入れず、違う場所に入ってしまう。低濃度であれば、特に問題はないが、高濃度であるとさっき言った理由になってしまい死に至る。


 アーニャはまさにこれを懸念しているのであった。


「くっ! 仕方ない!」


 照準合わせにスコープを見る悠人は、なるべくキーシュたちに当たらないコースを合わせるけれど、当然キーシュもフィーベルも写真のように動かない訳ではないので、エネルギー照射範囲に入ってしまう時がある。


(どうする……このままじゃあ、当たる。 二人がそれを避けられるとは到底思えない。 ………くそっ! 何かいい方法は………)


「悠人、マズいです。 このままでは砲台の方が爆発してしまいます!」


「何⁉︎」


「悠人は魔力コントロール出来ないので、砲台へ組み込むエネルギーを止められないのです。 その代わり、他の人がこれをやるとしてもより強いエネルギー体を照射できます」


「それで、砲台が耐えきれず………」


「………です」


 最後のアーニャの言葉は言わなくても分かる。


(撃ってもダメ、そのままでもダメとなると……くそっ! こういう時、移動するには………には………あ………)


 悠人は、中途半端に口を開ける。


 途端に下を向き、考え込む。


「いや、俺の頭の中では、いけるはずだ。 ただ、こんなにも大きいやつを運べるのか分からないし………………」


 下にうずくまり、ブツブツ呟いている悠人。 アーニャは何事かと心配になりながらもその雰囲気に声をかけられなくなっていた。


 やがて、轟音が響く中でここだけが聴音機をはめた時のようにただピーーという音が聞こえて来るように静寂に包まれる。


 その中で、悠人には考えがまとまったのかゆっくりとその場に立ち上がる。


「アーニャ、俺の考えが分かるよな………。 出来ると、思うか?」


 悠人はアーニャの方を向かず、顔だけは下を向き、口を開く。


「悠人ならできます! 絶対!」


 アーニャは悠人を元気づけるように両ひじを脇下につけ、力強く告げる。


「よし! アーニャ、撃つタイミングは任せる。 幸いにも、キーシュさんとフィーベルが足止めしてくれてる」


 悠人は砲台に手を触れ、集中するために視界を遮断する。


 何しろ、この巨体を移動させることは悠人でもやった事がないので、不安はありつつもこれに全てをかけるつもりでやるという覚悟を持った。


 アーニャは照準を巨大獣に合わせ、狙いを定める。もう、砲台爆発まで時間がないので移動した瞬間、撃つつもりでいた。


「よし、いくぞ! 」


 悠人を含め、砲台全体が眩い光に包まれ始めた。


瞬間移動インビジブルムービング!」


 悠人は、無意識にそう叫んだ。 すると景色が一瞬で変わって、目の前の巨大獣が真横に見えた。


「いっけええええぇぇぇぇ!!」


 アーニャが、エネルギー放出の引き金を引く。


 その瞬間砲台から眩い様々な色の粒子体が勢いよく放たれる。


 その光は、息もつかず巨大獣に当たった。


 不思議だったのは、その瞬間何事もなかったかのように巨大獣だけの空間が歪んでその場に凝集されるようにして消えてしまった事だった。


 それはみんなが不思議に思った事であろうとは容易に分かる。それでいて、悠人を含める4人がその場に立ち止まる。


「終わった……のか……」


「わ、分からないわ……でも……」


 キーシュがフィーベルに尋ねると、フィーベルは首を振るが、代わりにゴブリンの群れの方へ指を指す。


 ゴブリンの群れは先程までは敵意むき出しだったのが、我に返ったように引き返していく。


「はああぁぁぁぁぁぁぁぁ………」


 悠人は力を出しきり、その場にへたり込む。


 アーニャは悠人のそばに寄って、膝をつきへたり込む悠人の頭をゆっくりと撫でる。


「よく……やってくれましたね……」


「………はは、ありがとう」


 微笑ながらもお互いに笑い合い、喜びを分かち合った。

いつも読んでくださってありがとうございます!


最近は本当に寒くて、うちでもついにコタツという画期的なものを導入しましたけれども、導入した瞬間に自分がダメになってしまいましたね。ははは……ひ、引き締めないと………。


ってな感じで、一応王都での混乱は鎮静するかなと思います。


次は、どうするかに関してはまだ未定ですけれどもそれは来年になるんじゃないかなとか勝手に思っています。


ではではー。


小椋鉄平

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