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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
王都へ
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実行への準備

 サーシャたちと別れて、女王の部屋に向かう。


 ドアをノックすると「悠人さんですね。大丈夫です」と来るのを分かっていたように言われたので(超能力者か⁉︎)と思ったが、魔法世界なら当然かもと思考を修正した。


「失礼します。 あっ、ご苦労様です」


 中に入ると、しっかりとした気品のあるドレスに身を包んでいるアリスフィアがいた。その姿はまさに女王と形容するのがふさわしく、かつこの装束を着るのに慣れているようで初々しさが全く伝わってこず、荘厳とした感じさえ受け取れて見た目だけで昨日までの彼女ではなく、このヒトが女王だと実感させられた。


 ご苦労様ですと言ったのは、もちろんアリスフィアのお付きのものがいたからと一緒に護衛が3人ほどいたからだ。


 彼らはあらゆる侵入経路を監視中のようで、悠人の労いの言葉に目を向ける余裕さえない。


(これだけ、真剣な目なら大丈夫だろう)


 今回の事に関して女王を狙うという事は正直ないと睨んでいた。その理由は女王陛下の思想にある。女王の考え方は、ざっくり言って仕舞えば平和主義者だ。


 人々の争いを嫌い、かつその鎮圧にも死者を出すなという命令を下すのはそういう面からであるというのは本人の口から聞かずとも分かる。


 そんな事は到底不可能……というのは今は置いておいて。


 対して、議会の考えは方向性が異なり自国の発展をしようと考えている。もっと言って仕舞えば、保守的地位の向上であろう。


 授業で軽く習った事であるが、ここの政治は女王の絶対王政を防ぐために、議会の反対意見が三分の二以上であればその政策や政令を打ち消す事が出来るような仕組みになっている。


 これを逆に考えてみよう。


 議会の承認を得た政策は政令はは誰が止めるのだろうか? というのが、今の矛盾点だ。


 当然、国民が議会の人間を評価し、千差万別した上で彼らを代表として導くというのが悠人の国、日本でのやり方であろう。


「こんにちは。 悠人さん、アーニャさん。 いよいよ、ですね」


「こんにちは、女王陛下。 ええ、皆さんの気合いのありように自分でさえ驚きを隠せません」


 悠人のセリフにアリスフィアが軽く微笑む。


 実際、そこまで手の込んだ物でもないし成功する確率の方が高い、いや、成功というよりこちらにかなり分があると思っていたからこそむしろ悠人の方が張り切り過ぎな気がしていたが、案外皆緊張した面持ちでいることに驚いた。


(みんなやる気だ。 俺も気を引き締めないと………っ)


 制服をギュっと張り直して、気合いを込める。


「さっ、では少し早いかもしれませんが、現場に参りましょうか」


「お待ちください!」


 アリスフィアが先頭を切って、現場に行こうとするところを警備兵に止められる。


 当のアリスフィアはなぜ止められるの?と言わんばかりの表情で護衛の一人を見る。


 直視された護衛は少し、狼狽したもののすぐに立ち直った。


「当然に決まっています。 あなたは王なのですよ。我々、ヴッフェルチアの最後の要、大将なのです。 その大将が前線に出るなどあり得ません! ご自重ください!」


 お願いするような口調で護衛はアリスフィアを納得させようとする。


 その言葉にムッとした表情を見せるアリスフィア。


「前線で戦っているからこそむしろ私はいかなければならないと思うのです。 私が現地に赴くことで仲間の孤軍奮闘を促すことも出来ますし、何しろ女王とはいえ弱くはないのですから少々前線に近づいたところですぐにやられるようなたちじゃあありません!」


 提言した護衛にきっぱりと言い返すアリスフィア。


(なんという王の鏡みたいなヒトなんだろ……)


 普通、物語の王とか、上に立つ人間はそんなセリフまず吐かないと思う、とか見たことない。


 必死の護衛の説得に「もう、いいです!」と痺れを切らすアリスフィア。


(そろそろ、助け舟を出すか……)


 周りを見るとお世話係の人たちまで、ため息をついて諦めた様子であった。


「じゃ、じゃあ、俺の方に来ますか? それなら城内だし護衛さんたちも一緒いられるでしょ?」


 悠人の提案に真っ先に乗ったのはもちろん護衛だ。


 光明を得たような顔をして悠人の提案にすがるかのように便乗して説得する。


(あの……本当ならここに留まってもらった方がありがたいんですけどね……)


 心の声を護衛たちに向け放つが悠人の表情をすら見る余裕がないようで、ため息をつかざるを得なかった。


「分かりましたよ……ふぅ……」


 ついに根負けした様子のアリスフィアが肩を下ろして渋々同意する。


 その言葉を聞いた瞬間、護衛の兵やお世話がかりの人たちまでホッと息をついて胸を撫で下ろしていた。


「では、今度こそ参りましょうか」


 アリスフィアが表情をにこやかな顔に戻して悠人たちに言い、そそくさと行ってしまう。


 アリスフィアだけは悠人の表情を見ていたので反論は受け付けないといった意思表示だと悠人も分かった。


『どうしたもんかね』


『さぁ……仕方ないでしょう』


 悠人とアーニャがお互いに顔を見合わせお互いに肩をすくめた。





 悠人たちがアリスフィアに案内された部屋はプロパティ議員の与えられている部屋だった。


 まだ、中には入らないようにする。


 議員の上位のクラスにもなると自室が与えられるらしい。


「当のプロパティさんは?」


「はい、牢屋に監獄中です」


 笑顔でさらっとやばいことを言う。アリスフィア女王に恐々とする悠人とうんうんと普段と変わらぬ様子でいるアーニャ。


(女王がどんなヒトがわからなくなってきた……)


 悠人は頭を抱える。


「大丈夫ですか、 悠人?」


 アーニャが心配そうに身体を支えようとしてくれるが、もう片方の手で制する。


「ああ、大丈夫。早速だが、準備するか」


「はい、ええとこの写真の人でいいんですよね?」


 アーニャはみんなに見えるように回しながら、プロパティ議員の写真を見せる。


 プロパティ議員の写真を初で見る悠人では判断しかねた。


「はい、大丈夫です」


 アリスフィアがアーニャの質問に答えた。


「ありがたとうございます。 では早速…………創造クリエイト


 あらゆる説明は省くが、魔力はかけられる悠人持ちでそれを魔法という形に変換して発動するのがアーニャという形だ。


 経路はとても効率がいいとは言えないが、当の悠人自身がその魔法を想像による創造で再現出来ないので、そのようにする他ない。


 一瞬の煌めきがあった後、アーニャ達みんなの顔が見える。


(何だが、アーニャ達が小さく見えるんだが……)


 悠人の視点が急角度になって、アーニャやアリスフィアを高い位置から見下ろしていた。


「ちゃんとなれてる?」


「はい、バッチリです。 見ますか?」


 とアリスフィアが手鏡を出して見せてくれる。


 その鏡の向こうから悠人を見る白髭を生やした爺さんがいた。


 悠人にはてっきり、三十代ほどの若くキャリアのある奴を想像していたが、今、悠人を見返す者の顔からは三十代とは程遠い六十代くらいの爺さんが写っていた。


 下を見ると、さっきまで学園の制服を着ていたのがいつの間にかスーツ姿になっているのが分かる。


 悠人はネクタイを締め、気合いを入れる。


「じゃあ、ここからは俺だけが中にいるから、アーニャは精霊化して一緒に来てくれるか?」


「はい、喜んで!」


 アーニャは実体化をやめて、精霊化する。


 悠人にははっきりとアーニャを捉えることが出来るが、アリスフィアや護衛の人たちにはアーニャがどこにいるのか分からなくなった。


 アリスフィアは無意識にキョロキョロしているが、諦めたようだ。


「では、護衛の人たちに女王はお任せします。 何があっても中に入らないようにして下さいね」


「はっ、承知しました」


 護衛の兵は兵での決まりなのか、胸のあたりに握りこぶしを軽く当てた。


 アリスフィア達には全容は伝えていない。 アリスフィアは当然、疑問に思ったはずだろう。


「どうしてですか? あちらで、暗殺者さんを無力化してくれるはずですよね?」


 確かに学園長三人が暗殺者に負ける、なんてことは悠人も考えていない。


(まぁ、納得してもらうにはちょっと厳しいかも知れないけれど……)


「少し、気になることがあったんです。 発案者は自分ですから、何か不備があってはいけないと思ったので、自分でケリをつけますから……ってことで納得してもらえませんか? もちろん女王の不利益には及びません」


 悠人は敢えて、することを曖昧にして、お願いという形での説明に留めた。


 もちろんアリスフィアは納得した様子ではなかったが、アーニャも現れて「どうか……」 と言ってくれたことが良かった。


「はぁ、なぜか今日は除け者にされてばかりですね。分かりました。けど、何かあれば助けに行きますから悠人さんもそれでいいですよね?」


「ええ、自分も女王のお力を借りられれば怖い者なしですから」


 お互いに妥協して、納得して貰った。


 再び、アーニャは消えて悠人は扉を開け中に入った。















いつも読んでいただきありがとうございます。


自分でももどかしいと思うほどなかなか進みません。 結構、自分の中ではあーしたいこーするというのが構想としてあるのですが、文章にするとなると表現に悩んだりして、時間がかかってしまいました。


このままいくとなると、結構この章はかなりの文章数になってしまいそうな予感がしちゃってます。


では、また次回に。


やっと、東京に行ける目処がたったので嬉しくて舞い上がりもしつつ、当日は雪とか天候が悪くなりませんように!となむなむしている私でした。


小椋鉄平

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