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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
王都へ
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教育会議

「それで、話は変わるけど……今年も参加するの?」


 さっきからのお茶目な陛下の一面も見られて少しは親近感が湧いて来てはいるけども、まだどうしてもアーニャやサーシャのように軽々しい友人に話すような口調ではどうも話しづらい。


 それは、見た目はもちろんのこと内面を見ても完璧超人としか言いようがない、雰囲気。これに尽きた。


「はい、自身が参加することによって無用な決定を防ぐ事はもちろんのことなのですが、それよりももっと周りがどうなっているか知りたい……の方が大きいですね。だから、参加しますよ」


(姫様も参加されるのか。だとしたら、ますます襲われる心配は限りなく減りそうだ)


「………」


 アーニャは黙って悠人を見ていた。






【アーニャ】


(悠人、それは考えが浅いです。 いつもいつも最悪を想定して動くのが、護衛の務めなんですよ……)


 と、小さく溜息をついてしまう。


 チラッと悠人を見るが、表情だけで案仕切っているのが目に見えてわかる。これでは、すぐに護衛失格と言われて、解雇されるレベルのものだろう。


 一通り、アーニャも悠人がサーシャの護衛を請け負った理由は本人から聞いていた。




 □□



「なぜ、悠人を護衛にしたのですか?」


 私は、後日一人で学園長室に赴いた。もちろん、悠人の説明を鵜呑みにしているわけではないが、今の悠人では護衛など務まるわけもないと、ここにいる上位クラスの人達は分かっているだろう。


「あら、悠人から聞いていないのかしら?」


「いえ、聞きました。 なんとも言えないような理由でしたけど」


 それを聞いた。サーシャは「うふふ」と苦笑を漏らした。


 確かにこの国が悪いのかどうかと言えば良くはない。と答えるのが正解だろう。ここの生徒の家族はともかく、庶民は常に苦しい生活を余儀なくされ、無用な戦いに駆り出され、あるいは戦場として荒らされ、苦しいことに加えてとても理不尽であると私は思った。


 だからこそ、“庶民出身の英雄”というキャッチフレーズとも言える出来事が当時、庶民をまとめ上げる一つの方法であった。


「確かに、あの理由は私でもないわと思ったわ。この地の安住……なんて大それたこと出来るわけないじゃない」


 ここの学園長でもそんな権限は与えられていない。当たり前だ。この地のことは女王から与えられた家族の土地なのだから、当然その貴族の思い通りになる。


 だからこそ、先程の答えは良くはないなのだ。


「だったらー」


「でもね」


「?」


「でもね、そういう望みに賭けてみたいと思ったのよ……。人は誰しも無理といえばそこまでだと思ってるわ。決して、全てを手に入れるのは無理かもしれない……。けれども、その近くまで行ければ、それで充分だとは思わない?」


 目を細くして、私を見つめてくる。 頬筋きょうきんも上がっている。


「………」


 先程の顔の真意が掴めない。 何を考えているの?


 アーニャは半分睨みつけるようにサーシャを見る。


「それに………貴方にも興味があるわ」


「どういうこと……ですか」


「どういうことも何も言葉の意味よ。 いや、女の勘といっても相違ないと思うわ」


「………」


 さっきから何を言いたいのか、まるで分からない。 このヒトはさっきから本当の事を言ってない。


 それは、まるで私から情報を引き出そうとしているかのようだ。


「どう、この際腹をくくって話さない? 言っちゃあなんだけど、悠人くんは私の護衛なんだし何かあれば知っていればお手伝いくらいは出来るかもと思っただけよ」


 正直、ここで味方になってくれるのはありがたい事であると私も思います。 しかし、まだ、サーシャが信用に当たる人物とは考えにくい。


 まだ、何か私に出していないカードがあると私は踏んでいます。


「では、何か私が信用出来ると判断できるものを見せてください」


 今後、色々とやっていくうちで味方が多いことに越したことはない。 しかし、裏切りには注意しておかなければならないことは歴史上の事から見ても明白だ。


 だからこそ、大将は誓いを立てさせる。 それは、極端に行って仕舞えば、自分の地位の安定の為であり、自分の身を守ることにとってもその誓いは重要な意味を持つ。


「そういうと思ったけど、貴方の下に下るつもりはないわ」


「別にそんなことは言っていません。 ただ、まだ貴方を完全に信用することはできないということです」


「そうね、じゃあアリスフィア女王ならどうかしら?」


「どうーとは?」


 私はその言葉を聞いて嫌な予感がしました。


「女王の下で貴方がコソコソやってるのは情報として上がっているわ。 もちろん、悪いことじゃなさそうだから何もしてはいないけど、ってこれでどうかしら?」


 急に背中が寒くなりました。 これは、確実に降参です。


「分かりました」


「そう、ありがとう」



 □□□



 個室に案内された。そこには、会議をするような丸テーブルになっており、いかにも会議室といった雰囲気を醸し出していた。


 というのも、中にもう既に数名が座っており、手前の椅子だけいないという感じだったからだ。


「若いくせに、ずいぶんな到着じゃあないか?」


 一番、奥に座っていた御仁がそう呟く。体は筋肉質でどう考えても学園長をするレベルではない。現役でもいいくらいだ。


「いえ、指定時間には間に合っておられるのですから良いではありませんか」


 その質問に答えたのは、サーシャではなくアリスフィアだった。


「分かりました」


 大人しく引き下がる御仁。やはり、女王相手では何も言えないようだ。


 周りを見渡すと、さらに側方にそれぞれ座っているヒトがいた。左側には……ええと、とても学園長とは思えない小さな女の子が座っていた。 対する右側には、誰がどう見てもイケメンと呼ばれるくらいのヒトであった。


(やっぱ、学校って個性的な人ばっかなんだな……)


「ところで、このヒトが例の庶民出身の護衛かな?」


 女の子が喋る。 声も異様に高く、子供と思われてもなんらおかしくない。


「ええ、そうですわ」


 サーシャの言葉とここの雰囲気からこの子がただの子供の場違いな女の子ではないことくらいわかる。


「護衛なんて連れる必要ないだろ。 ったく、お前はそんな弱かったけか?」


 イケメンが声を上げる。


 机に指をタップしていた。


「ええ、私もいつ狙われるか分からないですもの」


「けっ! 言うぜ、毎回俺を無様に倒すくせによ」


 確かに、学園長以外はお供を連れてなどいなかった。むしろ、いるだけ邪魔というくらいのオーラさえ放っていた。


「まぁ、そういうお話は後にしてもらって、本題に入りましょう。 教育としての成果はどうですか? 」


 アリスフィアがまとめる。


  だから、女王様が来たんじゃなかろうかと密かに思った。


「うん、私のところは例年通り可もなく不可もなくだよ。 特に突出していいって子はいないかな」


「俺んとこもだ。やはり、血は争えねぇって感じだ」


「最近は、研究ばっかやる奴が多くて軍志望のやつが少なくて困る。別に、昔みてぇに搾り取ろうってもんじゃねぇのにな」


「私のところは、この子も一理だけどかなりの変革はあったわ」


 皆、一様に進捗状況はうち以外は普通といった答えだ。


 そうそう、変化があっても困ると思うとうんうんと納得していた。


「はい、それでは今王都で発生している事件のことですが、キーシュさん。 魔法大の学生の仕業ではないかという噂が広まっています。それについてはどうでしょうか」


 みんなの目線が、右側方へ向く。


「ああ、それについてはご指摘の通り調べたぜ。 確かに、良からぬことをやってる奴らがいたんでとっちめてやったが、彼らは単に利用されていただけに過ぎなかった。 それも、貴族といっても少しいいだけの奴らばかりがそのターゲットとして操られている。 『金が貰えるからって』さ」


「なるほど、それで上手く兵の警備をかいくぐっていたのですね」


 だが、しかしそれでは連中の狙いが見えてこなくなった。


 確かに、議員連中を次々と消すことによって何か良からぬこと、例えば平民に無理難題な条例とかは未然になかったことに出来るかもしれない。


 少し俺も勉強して分かったが、女王が一応この国の最高権力者に当たるわけだけど、法律や憲法といった国の根幹に当たる部分のことに関しては最終的な決定権は女王にある。


 しかし、この国のいわゆる条例に関しては議会が承認して発令することが出来る。


 これにより、議員は平民に対して無理難題を押し付けられるという訳である。


「だとすると裏にいるのは誰だろうね?」


「そら、決まってんだろフィーベル」


「隣国のナイルダルク共和国ですね」


 みんな考えていることは同じだったらしく、サーシャも含めて5人が頷く。


「でもどうやって証拠を掴むの? 証拠がなければ、宣戦布告は出来ないわ」


「確かに、簡単に尻尾を出すとは思えねぇし…かといって大っぴらにすれば帰って警戒させちまう」


 ここで、意見が行き詰まる。


 どうすれば良いのか決めかねているようだ。


 一応、俺自身一つは考えが浮かんでいるのだが、実現可能か微妙なところだった。


 なので、この考えが分かっているアーニャの方を向くと、アーニャは『言っちゃえ』とジェスチャーして来た。


(いや、俺となんだからテレパシー使えよ……)


 わざわざ、身振りで伝えて来たアーニャに苦笑してしまう。


 アーニャも『あっ、そうか』と納得顔だ。


(だから……もう言うまい)


 ふと、視線を戻すとみんなの視線が俺に向いていた。


 それがとても興味のある目だったり、威圧感の目だったりでくらっとしてしまう。


「何かあるのか?」


 一番、威圧感のある目の前の御仁に尋ねられて背筋を伸ばしてしまう。


「発言してもよろしいのですか?」


「構いませんよ。 悠人さん。 ここは会議なのですから、身分の差は関係ないのです」


 アリスフィア女王が、笑顔で許可してくれる。他の者の答えは聞いていないが、最高の権力者が言っているのだから発言しても許されるだろう。


「では、変装してわざと狙ってもらうのはどうでしょうか?」


 俺の端的な回答にアーニャ以外が目を見張っていた。

















いつも、読んでくださってありがとうございます!


最近は、やろうって思ったら結構スラスラと進められるので自分的にはいいと思ってるのですが、読者側に立った場合どうなのかなと心配にはなります。


さて、お話ではまだまだ序盤ですのであんまり笑いを取るような場面はあまり書かないのですが、違う面白さなら追求出来るのかなと思って書いています。


やはり、トリは最後に持ってくると思うのでそれまで読み続けていただければ幸いです。


それではー


モンスターボール不足でやばい


小椋鉄平

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