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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
挑戦の時〜新たなる気持ちで〜
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汚い手

 結局、再三いいとこ止まりで終わってしまった。


 そして、先生からもらった言葉が、


「お前、実戦じゃないとダメだな」だった。


 自分では無意識であったが、そこそこショックだった。


 自分の分析では、ここ!っていうところでいつも返り討ちか、防がれてしまうのでそこのもう一歩感を咎められたのだと思った。


「まぁ、それは私が相手だったからだということにしておいて、これなら彼奴とまともにやり合えるだろう。……っとあまり個人的な贔屓ひいきは先生にとって良くないがな」


 と、激励の言葉をいただき特訓はお開きとなった。


 その日の帰り道、アーニャと久々に一緒に帰路についている。最近はそんな事も少なくなった。


 別に寂しく感じた事はないが、彼女はどうなのだろうと気にはしてしまう。


 そのように横目でアーニャの顔を盗み見るが、ごくごくいつも通りのアーニャに見える。というか、こんな子が俺の隣を歩いても良いのだろうかと彼女に対する罪悪感と悠人の隣を歩いているのがこんなルックスのいい子だと思う優越感の狭間で葛藤していた。


(いやいやいや、アーニャは精霊なんだ! 他のヒトには教えない限り知覚できないはずだ!)


 と頭を振って邪念を払う。


 そう、紳士にというのが俺だったろう。と心の中で自分に言い聞かせる。


 それにしても…………。


 悠人には歩きながらある懸念があった。多分懸念であっているはずだ。


 それは会話がない事だ。


 たちの悪い事にアーニャの顔はビクともしない。気まずそうな顔もしないし、むしろ笑顔だ。


 こういう時どうすれば………‼︎


 すぐにさっきの狭間での葛藤は放っておくか、話しかけるかの二択にすり替わっていた。


 終始、変わらない笑顔のアーニャにチラチラと横目で盗み見るが気づいてくれる様子はなく。むしろ変わらない。


 悠人はふうっと息を吐いた後、選択をした。


 アーニャが笑顔ならいっか………。


 静かな夜を過ごしたが、闘志は燃えていた。かつての自分であれば努めて冷静でいようとしたであろう。


 もちろん冷静さも大切であると感じていたからそうしていたわけであるが、何よりもそれだけでは足りないという事に気付けた事が今の自分がいられる事実だ。


 ノックの音がした。目覚ましを見ると時刻はすでに日を跨いでいる。


 こんな時間に誰だ?と、少しの警戒を持ちながらドアに近づく。


「どちら様?」


「あ、アーニャです………」


 声からもアーニャが良くない事を抱えてこちらに来ている事が分かった。


 悠人はドアを開けて、アーニャを中に促す。


 電気を点けて、アーニャに正対する。


「それで、どうしたの? 明日は決闘なんだから早く寝ないと身体に良くないよ」


「悠人も夜更かししてるじゃないですか」


 アーニャも当然の抗議の声を上げる。


 ははっ、そりゃ当然だな。と、勝手に笑みを浮かべてしまう。


「それで、どうしたの?」


 笑顔のまま、アーニャに尋ねる。


「ええ、実は……ううん………」


 アーニャはとても言いづらそうにしている。


 それは悠人には話しにくい内容なのではないかと強く思う。


 俺を思ってくれるのは有難いが、俺もそこまで子供じゃない。誰かにおんぶ抱っこじゃいけないんだ。


「いいから、言ってごらん……」


「ええ、実は一昨日からラネイシャさんが帰ってきてないんです………」


 ラネイシャが? それは遭難という事なのだろうか。いや、帰ってきていないという事は、学校では見かけているって事だろう。つまり、この寮に来てないってだけで、それは別に悪い事ではないと思うのだが……。


「それが、どんな悪い事に繋がるんだ?」


 悠人はアーニャに話を促す。


「はい、ラネイシャさんが学校には来ているらしいのですが、寮には帰ってきていません。何か、訳あって帰って来ないのかと思って寮に確認を取ろうと思ったのですが、そもそもラネイシャが今の厚生荘の寮長代理な訳ですし、聞けませんでした」


「うん、確かに妙だな……。誰かにどこへ行くとか言って無かったの?」


「いえ、クラスメイトに尋ねたのですが、ラネイシャさんがそのような事を言っていたのを聞いたヒトはいなかったそうです。そこで、目撃証言を探してみたのですが……」


 そこでアーニャは下を向く。それだけでどうなったかは一目瞭然だった。


「そう……か」


 悠人はアーニャとは反対に上を向く。


 ラネイシャか………。確かに俺もしばらくは特訓で会って無かったし、会話もしていない。


 それこそが不自然だ。


 今まで普通に、というよりもしょっちゅう会っていたヒトに会えないなんて……。


 一体、どうしたっていうんだろう……。


「すみません。捜索隊に知らせますか?」


 アーニャがおずおず尋ねてくる。


 本来なら俺たちで捜索したいところなのだが、あいにくそんな暇はない。


「アイナ先生とサーシャさんにだけは伝えてもいいと思う」


 そう答える事しか出来なかった。


「はい、分かりました。……ふぁーー………」


 気が抜けたのか、欠伸を漏らすアーニャ。


 そんな仕草は、妹を見ているようで微笑ましい気分になる。


「それじゃ、明日も早いし寝ようか」


 悠人は立ち上がり、寝る準備をする。


「だぁっ」


 ボムっとベッドにダイブするアーニャ。


「いや、ここは俺のベッドだよ………」


「良いではないかー、良いではないかー」


 悪巧みするような猫の表情になっているアーニャ。はぁ、どうするかな………。


「それじゃあ、寝るか………」


 諦めて、ベッドにつく。


「えええ、追い出されるかと思いましたのに……」


 アーニャは悠人が追い出すと思い込んでいたようだった。明らかに動揺している。


 アーニャがここで寝たいとやって来たのに何動揺してんだか……。ため息を我慢できない。


 悠人はアーニャに背を向ける。


「……………」


「……………ゆうと……」


「ん?」


 寝ようと目を瞑ると声が掛けられる。


「本当は私は寝られないんですよ。この身体になってから……あっ、でもそれがつらいってわけじゃ無いんですけど……」


 悠人の心配顔を読み取ったのか、アーニャが付け足して安心させようとしてくれる。


「アーニャは……さ。やっぱり、戻りたいよな?」


 アーニャは口では『悠人の力になれるから……』とか言ってるけど、やはりアーニャは元に戻りたい……そう思ってるはずだ。


「そうですね……いつかは……戻りたい……かな? でもでも、私は今のこうやって悠人といられる生活にも気に入っているんです」


 と、頭を預けてくれる。


 女の子がそれでいいのだろうかというくらいのかたむけっぷりで本当に悠人にアーニャが気を許していると分かる一面だ。


 悠人はドキドキを聞かれないようにするので頭がいっぱいになる。だが、アーニャは悠人の胸に頭を預けてくる。


「〜〜〜」


「ふふん……悠人の暖かさを感じて……そしてドキドキも感じて……」


 アーニャは終始、笑顔で微笑んでいて悠人も安心して眠りにつくことができた。


 そして………


「やぁ、待っていたよ」


 悠人は一人の男と相対している。横にはラネイシャ。対して悠人の方にはアーニャがいる。


 悠人もアーニャもスライトを睨みつけるような目で見る。


 もちろん、苛立ちが抑えられそうに無いからだ。


「………洗脳でもしたのか?」


 怒気を強く孕んだ声で尋ねる。


 今にでも殺してやりたい……。


 悠人は利き手の右手をギュッと握りしめ、そう思う。ここまで残虐非道なことをして来るなんて……酷すぎるとしか言いようが無い有様であった。


 しかし、同時にそれはそうでもしなければ悠人達に勝つのには難しいと思ってくれているという表れでもあるということに違いない。


 だとすれば、捻りつぶすのも案外可能かもしれないと悠人は考えていた。


「そんなことないさー、僕はただ、バディとして一緒に出てくれないかと誘っただけさ……ラネイシャはそれをオーケーしてくれた。 それだけのことさ」


 涼しげな顔で答えるスライト。ラネイシャのその暗い顔からどうその話を信じればいいのか………。


「ラネイシャさんの顔を見れば分かります。最近のラネイシャさんはセンチメンタルになっていたので、漬け込むのは簡単なはずです。………違いますか?」


 アーニャが追い打ちをかけるように述べる。その指摘は的確で、さも納得がいく。


「それは、今から戦えば分かることさ。さぁ、お喋りは終わりだ」


 それぞれが円の端に寄り、武器を展開して構える。


 擬似空間アストラルカーディガンが展開されいよいよといった空気になる。


『では………始め!』


 号令がかかり、戦いの火蓋が切って落とされる。


「はあああっ!」


 悠人が瞬間移動魔法でスライトの前方へ一気に移動して剣を振りかざす。


「……………ん」


「なに⁉︎」


「おおっと、危ない」


 悠人の振った剣はスライトではなく、ラネイシャに合わされてしまう。


 スライトとラネイシャの距離は5メートルは離れていた。俺が瞬間移動でスライトの目の前に入ったのでそこからラネイシャが防ぐなんてことはほぼ不可能な筈なのに………くっ!


 その隙にスライトに死角に入られて、悠人は瞬間移動で距離をとる。


 悠人サイドの作戦は悠人が前衛でアーニャが後方支援である。何しろ、召喚魔法を使ってくるラネイシャに悠人は圧倒的に不利なので、そういう配置になっている。


 アーニャは常にラネイシャと悠人を結んだ直線の延長部分に位置して、ラネイシャの遠距離攻撃を弾いてくれている。


 そのお陰で、悠人はスライトとの半ば一騎討ちのような構図になっている。


「これは、マズイね……」


「余所見してる場合か!」


 間髪入れない攻撃を浴びせる悠人、アイナとの近接戦闘よりかは悠人の方がかなり押している感がある。その攻撃に対し、常に防戦一方のスライト。彼の剣は片手剣で、悠人の攻撃を受け流すように上手くかわしてはいるが、速さには付いてこれておらず、避けたり受け流したりを繰り返している。


 悠人は瞬間移動で死角へ潜り込む。


(もらった!)


 完全に背中をとった悠人はすぐさま剣を振るう。


「………防御シールド」


 スライトの背中に展開された壁に弾かれてしまう。


「くっ!」


「隙やり!」


 アーニャがラネイシャに向かって魔法弾を放つ。


 魔法弾はその名の通り、ただ、魔法エネルギーを圧縮して高速で放ついわば拳銃のようなものである。


 その魔法弾を負傷したはずの右手で防がれる。


 悠人もアーニャも驚きを隠せなかった。声に出すのははばかられたが。


「そう、分かってくれた? 本当にラネイシャは僕を選んだのさ。僕はその見返りにこの手を……元に戻してあげたんだ」


 高らかに自慢するスライト。


 悠人もアーニャも苦虫を噛み潰したような表情になる。


 さっきの出来事からしてラネイシャの右手から魔法を出せるようになっているのはまず間違いない。さらに、それを理由にスライトの味方をしろと言われてラネイシャが選択したという可能性は大いに考え得る事である。


 悠人もアーニャもラネイシャの右手については敢えて聞かないようにしていたので、彼女がどんな思いで日々を過ごしていたのかも分からない。


 だが、今思えばそこに付け込まれて今に至ってしまっている……。


 そう考えるとますますスライトを憎んでしまう。


(くそっ、今まさに本気で殺したい奴が目の前にいるッ)


 憎しみで戦ってはいけない……。それは様々な物語でもそのように描かれている。だからこそ、そうして戦う事は決して良い結果を生む事はない……。


 悠人も当然頭の中にはある。がしかし、あいつの涼しげな表情と下を向いて暗く無口になるラネイシャを見るとそのような感情が湧き出てくる。


 それはとてつもなくドス黒い感情で、ドロドロしているために中々すぐに晴れることはない。


「はははっ、君の今の表情さいっこうだよ。まさに僕に対しての黒い感情がとって分かるよ。なぁ、ラネイシャ」


 スライトの手がラネイシャの頭に乗せられる。


 それだけで怒りの感情が湧く。


「………テメェ………」


 ラネイシャは拒絶も容認もしない。とにかく無だ。それはスライトの操り人形のようであった。


「悠人………そのようなものに身を任せてはいけません」


「分かってるけど……」


 アーニャが悠人に戒める。


 悠人も当然それは分かっていると返すが、アーニャは首を横に振り悠人の目の前に来た。


「悠人、私には分かるんです。貴方の考えていることが……」


 アーニャは悠人の胸に握りこぶしで乗せて話す。


「いくらアーニャでもそこまでわかるわけー」


「いいえ、私は貴方の契約精霊です。主人の思ってること、どんな気持ちで、今なにして欲しいのとか全部、全部分かっちゃうんです」


 悠人の言葉を遮り、アーニャが淡々と話す。それは泣いた子供をあやすような声で。


 悠人はその口調になにも言えなくなる。


「…………悪い」


 悠人はアーニャの言葉に折れて自白した。


 アーニャは悠人から手を離し、二人して相手を見る。


「ええ、先ずは彼を抑えましょう。そうすれば、ラネイシャさんへの干渉は消えるはずです」


「おう」


 アーニャと悠人はそれぞれ位置につく。


『ほら、私の方からもお話出来るんですよ。ああっ、動揺してはいけません。相手に悟られてしまいます』


 一瞬、とびひきそうになったのをアーニャの言葉で我に帰る。


『作戦は悠人の考えていることで構いません。私もそれに動けるように頑張ります』


『分かった。信じてるよ』


 と、頭の中で会話をして再び相手に突っ込む。


「何度やっても無駄ですよ。一対一になれば君の方に分があるけど、僕は生憎一人じゃ無いんだ。それに……」


「ッッ!」


 瞬間移動の場所をとっさに変更する。


(間に合うか?)


「く、卑怯だぞ!」


 悠人はラネイシャに向けて放たれた魔法弾を辛うじて弾く。


 そう、スライトは悠人やアーニャではなく、ラネイシャに撃ったのだ。


「悠人、うしろ‼︎」


「ぐっ」


 肉が引き裂かれる感覚。苦悶の表情を見せるが、咄嗟に距離をとる。


 まだ、重く無い分良かったとは思うが、それでも常人が喰らえば失神するレベルにあるだろう。


「ふははははっ………実に楽しいなぁ……」


 軽くアーニャが傷を塞いでくれるが、この世界フィールドでは痛覚をどうにかしない限り回復魔法は意味を為さない。逆に言えば、痛覚さえコントロールすることが出来れば、ゾンビのようにほとんど死ぬことなく闘えるだろう。


 ただし、それは身体が残っていればの話だがな。いくらそうでも動く身体が無くなれば無理だということだ。


 悠人はスライトの嘲笑に努めて反応しなかった。


 代わりに剣幕な表情を奴に向けてやる。もう、手段は選ばないといった意思表示を相手に向けてする。


 その悠人の表情でスライトは笑うのをやめる。


「後で後悔しても知らないからな」


 一見、こちらが悪にも見えるそのセリフにスライトは笑いを堪えられない。


「はははっ………それは捨て台詞ってやつだよ悠人君。分かってる?」


「ああ、俺も自分をいい奴だなんて思ってないんでね」


 悠人は目を瞑る。


『アーニャ、一人で俺への攻撃を防いでくれないか?』


 アーニャは一瞬、目を見開くが、すぐに戻って『分かりました。お任せください』と、答えてくれる。


『なるべく早くするな』


 と答えて、下がる。


「なにをするのか知らないけど、それじゃあますます不利になるばかりだよッ」


 悠人に向かって魔法弾を放つ。


 それをアーニャが弾く。


「させません」


 その隙を逃さないとラネイシャが近づき、短剣を振り下ろしてくる。


 それをいなしながら、様々な角度から悠人を狙って飛んでくる弾を弾く。


「隙あり……」


 ラネイシャの剣が目の前に来る。


 アーニャは丁度弾をいなした後で反応が遅れてしまう。


 その瞬間、ニヤリと笑うスライト。


 ごめんなさい。悠人さん!


 目を瞑るアーニャ。


 しばらく、瞑っても痛みが現れない。


「あれ………?」


「待たせたねアーニャ」


 アーニャに背を向けながら悠人が声をかけてくれる。アーニャには悠人がどうするか分かっているので、パァっとアーニャの表情が明るくなる。


「ええ、何とかやり遂げました」


「うん、偉いぞアーニャ。さすがだよ」


 えへへと喜んでくれるアーニャ。それほどの価値があったのは事実。


 あとは、その頑張りに俺が答えるだけ‼︎


 悠人はスライトに真っ直ぐに駆ける。


「だから無駄だと言っているッ」


 向かってくる悠人に向けて魔法弾を放つスライト。もちろん避けるが、スピードは落とさない。


 焦ったスライトは弾の発射スピードを速くする。それにより数が増えて避け辛くなるが、悠人はそれをもろともしない。


「くっ、ラネイシャ!」


 スライトはラネイシャを横から援護させる。


 悠人の死角からラネイシャが駆けてきて悠人に一撃浴びせるところで停まる。


 今度は悠人が含み笑いを浮かべる。


 剣は背中から見て心臓に位置する場所に突き刺そうとする数センチ手前で止まっていた。


 もちろん時を停める魔法を使ったわけじゃ無い。なのにもかかわらず、時が停まったようにこの空間だけ動かない。


 スライトは何が何だか分からないといった表情だ。


「………何をやってる! ラネイシャ、そいつをやるんだ」


「………ムリよ……」


 静かに告げる。さっきまでの無機質な声ではなく、しっかりしたアルトの声が聞こえる。


「ありがとう、ラネイシャ君を信じていた」


 悠人はラネイシャの方へ向き直り告げる。


「貴方は……どうして……」


 まるで嬉しさと戸惑いが混ざり合った声で告げる。薄らと涙が浮かんでいた。


 確かに、ラネイシャを捨てていればもっとはやく決着したと思う。


 なぜならば、ラネイシャは洗脳ではなく、操られていただけなのだから。


 剣を交えあった俺たちなら分かるどこか動きが悪かった。それに全力のラネイシャであれば、召喚して俺たちを数的不利に持っていくことだって可能だった筈なのにそれをしなかったのはラネイシャの意思がまだ残っていたからだと信じたい。


 だからこそ、俺たちはラネイシャを攻撃せずスライトだけを狙った。


「敢えて言うならば、信じてたから……だよ。君がそんな奴の手に乗るなんてね」


「そ……んな……私は下ったわ彼に……半信半疑ではあったけど本当に右手は治ったわ。それだけで、私は舞い上がってしまっていたわ」


「それでも、結果よければ良いんですよ」


 アーニャがこちらによってニコリと笑顔を見せる。


「さぁ、これで三対一だ。覚悟は良いよな?」


 三人でスライトを睨みつける。


「ま、待て。話が違うじゃ無いか⁉︎ ふん、ゆ、言うことを聞け!」


 硬式ボールサイズの赤い宝石に向かって怒鳴る。


 その宝石は何も起こりはせず、その赤い輝きを見せてくれるだけだった。


「無理だよ。それに魔法は入ってないんだから……出来損ない」


 最後に毒を吐いて真実を告げる悠人。


「それにはもう魔法は入ってはいないわ。正確に言えばその忌々しい魔法を発動させるための情報といったところかしら。 ……クズ」


 ラネイシャでさえも罵声を浴びせる。


「こここ、婚約者に向かって何で口だ! 良いのか、この縁談が無くなっても」


 今のラネイシャにそれを言っても無駄だろう。そう思ったのはアーニャと本人だけだったみたいだ。悠人は心配そうにラネイシャを見ている。


「安心しなさい。もうあんたに頼ることは無いわ。そんな事しなくても貴方より上へ連れて行ってくれる人が居るんですもの」


 と、悠人の肩に手を乗せる。


「ああ」


 悠人ははっきりと答える。


 そう答えた瞬間、外から黄色い声が届くがはっきりとは聞き取れなかった。


 瞬間移動でスライトの死角ではなく、正面に移動する。


「ひ!」


「終わりだ」


 剣を上から力強く振り下ろした。


 もう動くことのできる身体は無くなった。


































いつも読んでいただきありがとうございます!


今回は少し、長くなってしまいまして久々にどこで区切りにしようか悩みながらやってました。まぁ、良いとこで切っても良かったんですけど、少し悪い気がして丁度の終わりでとめました。


今回は、ラネイシャさんの大胆発言⁉︎ があったんですけど、さすがですね主人公。って感じですね。まぁ、それが進むかどうかは別として、正直僕にも分かりませーん。


ただ、ラネイシャのことはこれだけじゃ無いんでね。そっちの方もどうなるかお楽しみということで、来週にも期待していただきたいと思います。ではではー


小椋鉄平

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