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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
挑戦の時〜新たなる気持ちで〜
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勝利の創造

 俺の言葉で空気がさらに収縮する。いや、もうそれ以上かもしれない。俺も言っておいて、この空気に気圧されている。


 でも俺には確信がある。


 先生は死にに行ってる。


 それだけは分かる。何の為にそこまで命をかけられるのかは俺には分からないが、何で一人でやってしまうんだ。


 俺の中で少し怒りがあった。


「……では、私と“本気”で決闘するか? 勝てばその力を見込んで連れて行ってやる。負けたら、それは勿論ない」


「望むところですよ」


 少しでも、気持ちを自分で昂ぶらせる。そうでもしなければ今のアイナにはまともに会話すら出来ない。


「……」


 アイナは黙っている。


 それを見ていたアーニャが青ざめていた。


「やめて下さい悠人! そんな事したらあなたの命が!」


「? 何の事だ? 決闘だろ?」


 俺は当然だと言わんばかりで聞き返す。


「……お前、そんなんだからロクにヒトを殺れないんだぞ。 それじゃあいつまでたっても私には勝てないよ」


 先生とはいえ、少し頭にきた。


「そんな事、やってみなければ分からないでしょ? そんな事言ってると足をすくわれるんじゃないですか?」


「お前は本質を分かってないと言ってるんだ! いいか、私は“本気”のと言ったはずだぞ」


「分かってますよ。先生相手に手加減できる余裕なんでありませんよ」


 俺の言葉にサーシャとアーニャがため息をつく。


 アーニャが何か言おうとするが、アイナが手で制する。


「アルベルトさん、お庭を借りてもいいですか?」


 アイナがアルベルトに尋ねる。


「いいですけど、建物を壊さないで下さいね」


 アルベルトはにこやかな顔で答える。


 ………


「まさか、ここでやるなんて……!」


 俺は渋々、ポケットのキーホルダーを出して自分の剣を顕現させる。アイナはすでに愛用の日本刀、天星を出していた。


 同時に構える。


「審判は要らないのか?」


 不敵に尋ねる。俺もさっき、アーニャに聞いて事の重大さに気づいた。


 庭までの移動中の事。


「本当に無理しないで下さいね?」


「そいつは無理だろう。下手な攻撃で倒せる相手じゃないし、少しこっちが犠牲を払ってでも倒しに行かなくちゃいけないだろう」


 俺はアーニャの目を見ずに話す。今は目の前の事に集中したい。


「悠人! 本気ってのは命をかけるって事です。つまりどちらかが死ぬまでやるんです。それでもやるっていうんですか!」


 俺に思いの丈をぶつける様にアーニャが大声で訴える。でも、それでもアーニャの顔は見ない。


 そうでもしないと………。


 気が変わってしまいそうだから…。


「悪いけど、それは無理だ」


「そ、そんな……」


 アーニャは思い込んでいるんだ。間違いなく俺が殺られるんだと。


 それは分からないだろう? 何事もやって見なきゃ分からないんだ!


 地べたに座り込んでしまうアーニャを置いて歩いて行った。


 正直、聞かされた時はかなりビビったけど、俺だって男だ。一度決めた事はいくら誤解してたからといって取り消せはしない。万が一取り消せたとしても、それをした事自体恥だと思うから。


 俺はアイナ先生を視界の中心に入れる。その目の先に剣の先が入るように合わせる。


 両者、睨み合いが続く……。


 風が吹いて、開始の合図が示される。


「悪いけど、終わらせる!」


 アイナが一瞬で悠人との間合いを詰めてその剣を振る。


「ッ!」


 悠人はそれを身体ギリギリのところで、止める。


 アイナが俺の上半身側面を狙って振った剣に対して、肩を上げてアイナの剣と垂直に近い角度で俺の剣を当てる。


 身体ギリギリのせいで上手く力が入らずすぐに弾かれる。飛ばされる瞬間にわざと後ろに下がって間合いを取る。


 俺はすぐさま汗を掻く事になった。繰り返される間合いの詰めあいに俺は防ぐので精一杯どころか、フェイントをかけられたりして、序盤なのにかなりの切り傷を作ってしまった。


 さらに俺にとって良くない事が……。


「う、嘘だろ⁉︎」


 身体の傷から青い煙が出ている。その代わり血は全く出てこない。


「分からないか? 想像してみろ。それが正解だよ」


 アイナが挑発じみた返事をする。たが、俺の想像が正しいと言ってるならば、自分で考えていた作戦が水の泡になってしまった。


 悠人が考えていた事……。


 それは魔力消耗。言うなればスタミナ切れにする事だった。


 純粋に魔法力や魔法のバリエーションなら悠人はアイナにはるかに劣る。それを無視して悠人が勝つ手段は考え付く限りそれしか思いつかなかった。


 それそこがもともとの悠人が持っていたアドバンテージだったからだ。


 前にも言ったが、魔法はガソリンのように使い終わったら終わりのものではない。自然のエネルギーを魔法力に変換する事で常に持続可能なものになっている。ただし、その魔法の回復の速度はヒトそれぞれであり、かつ魔法を発動しながら体内魔法量を常に満タンにしておく事は誰も出来ない。


 つまり、魔法を発動し続ければいつかは尽きるという事だ。正確に言えば、魔法量が限界に達すると命の危険を感知して無意識に魔法が使えなくなる。


「くそッ!」


 思わず、悔しさが声になる。


「お前ごときの考えなんてお見通しなんだよ。誰だって思いつく」


 喋りながらでも、間髪ない攻撃が浴びせられる。


 ッ! 速い。


 さっきよりもアイナの剣さばきが速くなっている。これでは逆にこちらがスタミナ切れになってしまう。


 クソッ! これは切り札に取っとくつもりだったのに……。


 意を決して、俺は“創造”する。


 先生が攻撃を仕掛ける瞬間に発動する。そう、想像して頭の中で描いた想像を創造する。


 俺は創造した。俺が先生の背中を見ている瞬間を!


「もらった!」


 無我夢中で振り下ろす。


 ………………。


 手応えが…感じない⁉︎


 ヒトを殺した事はなくても剣を肉に突き刺したり、切ったりした感触はしっかりある俺にはこの感触に疑問を呈せざるおえない。


「なに⁉︎……俺の剣を受けた…だと⁉︎」


 目の前には俺の剣を天星で受け止めている光景があった。


 そんな馬鹿な⁉︎ あの間合いで完璧に防げない隙を狙ったんだぞ!


 両者、鍔迫り合いになる。驚きながらも、押しにかかる悠人とアイナは天星を巧みに操り、悠人に背中を向けながらでも、鍔迫り合いに負けてない。


 ますます、アイナの力が計り知れなくなった。


「情報も一つの戦略のうちだ。 事前に調べられるならばやっておくのも作戦だ。 そこのところは日本人は変わってないな」


 と、またもや挑発してくる。


 さすがに今のは腹がたつ。俺だけに言われたならまだ良いが、日本人をけなされては我慢ならない。


「うおおおおお!」


 アイナはさすがに耐えられないと距離をとる。悠人も息が上がり始めたので、整えるために睨みながらも呼吸を落ち着ける。


 状況を考察する。


 アイナには傷一つついていない……。一方、俺はボロボロ。このまま長引けば俺の身体が持たない。何か、何か策はないのか⁉︎


「考えは終わりか?」


 まるで待ってやっていると言わんばかりの態度でアイナは立っている。


 今日はなんだか、異様に感に触ってくる。その言葉言葉にイライラしてしまう。


「クソぉおおおおおおお!」


 やけになって、剣を地面に叩きつける。


 地響きとともに、土煙が辺りを覆う。自分でもこの衝撃には驚いている。


「な、なにが起こったんだ?」


 剣を構え直すのを忘れるほど唖然としている。目の前が土ボコリやで全く見えない。しかもここは芝生茂る庭だったはずなのにこの砂はありえない。


 次第に砂埃が晴れる。


 悠人は驚いた。いや、これは悠人でなくても驚くだろう。


 地面にギザギザの影が出来ていた。

 悠人は前を向く。視界が広がったところにアイナはいなかった。まさかと思い亀裂を見る。


「だからそれが甘いんだよ」


 頭に衝撃が走った。地面に叩きつけられる。


「私は優しいから一つ教えてやろう」


 悠人は追撃を間一髪で避け、立ち上がる。


「お前は私を強いと思っている。だからこそ、スタミナ切れに持ち込もうとした……。それはお前が守りに入っているという何よりの証拠だ。だからこそ、責められる」


「……どう考えを変えれば良いんです?」


 アイナに警戒心を放ちながらも質問する。


「お前に相手の攻撃をかわすのは無理だ。少なくとも今はな…。だからって諦める事も早計だ」


「答えになってませんよ」


 悠人は詰め寄る。今は是が非でもアイナを倒したいと思ったからだ。


「お前には“創造”っていうものがあんだろ? だったら、勝つことを想像すれば良いじゃねぇの?」


「……」


 俺は言葉が出なかった。その通りだと思ってしまったからだ。なぜその考えが出てこなかったのか自分でもわからない。出来なかったら……。という考えが頭にあったのかも知れない。


 でも、この窮地に立っているこの時に使わないのは腰抜けだ!


「助言、感謝しますよ。 これで俺が勝っても文句なしですよ」


 悠人はアイナに向かって突っ込む。増幅器ブースターに触れたままだだ、一つのことだけ頭に思い浮かべて。

 それは、あまりにも曖昧なものであるけれど、それでいて不思議と自分自身に知らず知らず自身を持たせてくれるものだ。


 身体がまるでさっきとは違う。自分でも驚いてしまうほどに分かる。

 それでいてそんな自分が誇らしくてつい頬が緩む。


 それを見たのか分からないがアイナも笑う。


 その間にも、アイナの周りを高速で動きながらアイナの感知の先を行く。それにアイナもきちんと対応してくる。


 ここ!


 とうとう、アイナの反応をかいくぐり一閃するがアイナは防御を止めて回避に入った。


 それでも全て避ける事は出来ず、アイナの腹部から悠人が切ったことによる鮮血が漏れ出していた。


 アイナは苦悶くもんの表情を見せながらも悠人をはっきりと視界に捉える。


 くそ、やっぱりあの助言は余計だったか……。


 しかし、悠人はアイナを待っている。ここで畳み掛ければ容易にアイナを亡き者にできるというのに…。


 ふっ、そんなんで借りを返したつもりか?


 アイナは自身に治癒魔法をかけ、流れ出す鮮血を止める。


「これで、おあいこですね」


「ばかいえ、まだお前が有利なのは変わらないだろうが」


 やはり悠人は借りを返したと思っていた。


 私は返したなどと思っていない。その油断がお前自身を苦しめてしまう。


「お前、私が言ったことをもう忘れたのか? 殺せないからこうして教えてやってるんだろ?」


 アイナはは本来の目的を忘れているであろう悠人に叱る。


「いいえ、俺は分かってますよ。でも相手は先生だ。殺すなんてとんでもない!」


 その言葉とは反対に悠人はアイナに突っ込む。


「その言葉、後悔するなよ!」


 突っ込む悠人の頭上に光の刃が向く。一本だけではなく八本。


「ライトランス!」


 八本のランスが俺に向かって飛ぶ。それは四方八方から飛んできているため避けるのは不可能だ。


 俺じゃなければ………。


 ランスが貫く。 それは肉を刺す音ではなく、地面に突き刺さる音だ。


「先生の負けだ」


 悠人は剣を裏返して、アイナの頸部に叩いた。
















いつも読んでいただきありがとうございます!


月曜日になると、少し焦るんですよね。こうなんて言うか、pvの数が普通に増えるので、期待してくれてるんだと思う一方、作らないとと走りで書いています。


まぁ、遊んでる自分が悪いんですけどね。


でも、読んでくれてるからこそ、私も頑張ろうと思えています。


これからもよろしくお願いします!


自分にもついに国民年金の請求が⁉︎


小椋鉄平

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