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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
挑戦の時〜新たなる気持ちで〜
28/97

進級、新たな気持ちで

 結局、なんだかんだ言って進級できるようになった。というか、させられた。


「アイナ先生嫌いになったわ〜」


 ヒトのいないとこで愚痴る俺。当然、こんな事は誰にだって訊かれる訳にはいかない。


 ましてや……。


「ほほう、どこが嫌いなんだ?」


「違うんだよ。進級する条件にあの大量の、しかもただのコピーのをやればいいってのは生徒の事騙したとしか言えないよなってとこが……ってひぃー!」


 俺は壁に向かって喋ってて…さっきの声は……?


「悪いなぁ、こんな事させて。次からはもっと多くしてやるからな」と、肩を叩かれる。


 やっぱりぃー、訊かれてましたぁー。


「けけけ、結構…ですよ。ふふふ、普通にテストでやってください」


 だんだんと、肩に置いていた手の握り具合が強くなる。


「分かってないなー、これはむしろ楽だとは思えねぇのか? 勉強しなくても、その作業とやらをするだけで卒業出来んだぞ?」


 それについては意義申し立てがある。


「でもですね、来年もアイナ先生が担任になるとは限らないじゃないですか」


 当然の反論だった。もし、意気込んで違う先生って事になったら肩が地面に落ちてしまうのではないだろうかぐらいテンションが下がると思う。


「いや、お前の場合私が担任になる」


 アイナ先生、言い切っちゃったよ。

 アイナはスーツ姿の自分の腰に手を当て胸を張っている。

 俺はその自信がどこから来るのか疑問だが取り敢えずため息。


「どうしてですか?」


「うん、もう知ってるからだ」


 単純な理由だった。もうすでに俺の進級アンドクラスまで決まってるなんて、考えてみれば早すぎる。


「…それ、もう俺の進級が決まってたって事なんじゃないんですか?」


 俺は疑いの目線をアイナに向ける。


「そうだな、そうとも言う」


 二度目のため息。

 じゃあ、あの課題とテスト勉強はなんだったんだよ。

 と、訴えてみたいがその後の仕打ちを想像して躊躇してしまった。


「そもそも、私のクラスになって進級できなかった奴はいないんだ。みんな通してる」


「ですよね〜」


 そうだと思ってましたよ。あなたのその性格を考えればね。

 てな感じで、手続きを済ませて帰る。


 俺の選んだ科はもちろん魔法科。というか、それ以外に選択肢がなかった。違うな、そうでなければここにいた意味がないから。だろう。


 また、新たなる気持ちで臨む学園生活をなるべく考えないようにして日々を過ごしていった。


 理由は単純。


「どうせ、メンドイ事になるのは目に見えてる」だった。



 月日は流れ……。


 休みの間、俺は一ヶ月しか貰えなかったわけだけど、元いた世界よりやる事がなくて退屈していた。

 ついでにアーニャに教えを請おうと声をかけてみたが、


「それは私が教えられる事ではありません、ご自分で掴むものだと、私も最初に見せてもらっただけで自分でやったのですよ」


 と、言われてしまったので裏の以前アーニャに見せてもらった場所で自分なりにやってみたが、結局分かったのは、


 一、現実にあるものはムリ、やってみたが、不完全。


 ニ、魔法的な。例えば炎を出すとかをイメージしてやってみたが炎の画像を出したような感じになって触っても全く熱くなかった。


 三、想像するだけではダメ。形、質感、感じ方(痛いとか)を想像しないと作れないみたい。


 総括、想像って案外難しいんだね


 つまり、俺は魔法の才能はないと言っても過言ではないという事になる。


「こっれ〜はヤバイかも知んない、いや間違いなくヤバイ。俺ここに来て、何にもできてない事になるじゃん。 救世主とか呼ばれて浮かれてただけかよ…。これじゃあ、要らない子じゃないか」


 それだけで一日潰したこともあった。


 それでも生きるにはこれしかないと決めて、残りの休みを訓練という名と呼んでいいかどうかすら怪しい、インスピレーショントレーニングをしていた訳だけども。


 具体的に言えば、想像→魔法行使というのをして出来てるかどうか確かめるを繰り返ししていた。


 結局のところ、どれもこれもあと一歩って程度で終わった。


(これは、どうしたもんか……)


 その頃から、もう一つの悩み事があった。それは何かって言うと……。


 朝。


「ん、ん〜〜」


 俺は朝の日差しに当てられて目をさます。窓のカーテンはあるんだけどそれだと堕落した生活になると思ってわざと閉めてない。


「よしっ」


 と、ベッドから起きようとすると。


「ッ!」


 俺が手をついた隣には気持ちよさそうに寝息を立てているアーニャの顔があった。


 うわっ、これまた⁉︎


 そう、これは前回もあった。そう、俺が木に向かって突っ込んでこの世界に来て早々魔力をぶっ放して気を失って目覚めた時に。


 俺は結構重り?には敏感な方であるがアーニャに関しては分からない。本人に聞こうと思ったが、(体重の話だし…)と思って口を紡いでいたが、


「なぁ、どうして俺に分からずにベッドに入ってこれるんだよ? 俺、結構重いのは敏感な方なんだけど…」


 って言ってみたが、


「まぁ、悠人ったら私を重いというの⁉︎」


 とやけに演技っぽい感じで予想した通りの返事だったので、


「御託はいいから。 何故なんだ? 」


 そう言って本題にすぐに戻す。

 アーニャは脱線の方に付き合ってもらえず、少し物足りない顔をしていたが…。


「言うなれば愛ゆえに私が汗水垂らして試行錯誤を繰り返した結果です!」


 自慢げに話すアーニャであるが、


「ちっとも使えない魔法じゃねぇか」


 こればっかりは思ったことが声に出てしまった。


「そんなことありません、本来は隠密用の魔法を私なりにアレンジしたんです! それはもう血の滲むような努力があったんですよ。………ぶつぶつぶつ」


 しまった、これは終わりが見えない。


 アーニャはすっかり自分の自慢をとてつもなく自慢げに話し始めてしまい、収拾がつかなさそうになったが、最後にアーニャは、不意に俺の首の後ろに手を回してアーニャの口が届くところまで引き寄せると、



「つまり、私の言いたい事は諦めないことですよ。なんでも最初は出来ないものです。でもそれが出来た時。その時の達成感、そしてそこから見える景色は私の口からは到底言い表せない感覚なのでしょう、私も経験ありますし、私はそれを信じていたいです」


「アーニャ……」


 こればっかりは心に来た。どうやら、俺が心配をかけてしまったかもしれない。


 だよな…俺が諦めちゃいけないよな!


「ありがとう、アーニャ! 俺、頑張ってみるよ」


「その意気です。 頑張ってください! と言っても、さっきの言葉は昔の悠人に教わったことなんですよ」


 ガクッ! そうなんかーい!そこは言わないでも良かったんじゃないすかねアーニャさん。


「でも、私はそれを糧にしてここまで生きているし、実際実りました。 実例がいるのに諦めるのはダメ、ですよね」


 にっこりと満面の笑みでいうアーニャにさっきの事など吹っ飛んでしまった。


「ああ、俺なりにやってみるよ」


「ファイトファイトですよ」


 しかし、落ち着いてみると昔の俺って案外情熱家でもあったのかななんて思ったが、おそらく違うのだと確信する。


 今もそうだけど、ヒトにカッコつけて言う癖、あったもんな。


 テレビの影響で妙にキザなセリフばっかり思いつくようになっていた俺が不意に言った言葉で、実際にそれが自分自身出来てるかと言われれば出来ていないのだろう。


 例えば、犯人を追い詰めた刑事風に。


「人生ってのは色々、あんだよ…。だから、道を踏み外すこともあるだろう。だけどなぁ、それで終わりじゃねぇだろ?人生ってモンはよ…」みたいな感じに。


 それを自覚したのは中学の時、それ以来封印して今ではほとんど起きないし、そういう場面に遭遇しないようにしている。


 もう、後には引けないんだ。やるぞ!


 俺は右手の拳を強く握りしめた。


 そんなこんなで二年生です。俺はクラスを探す。

 担任が誰か、は…分かってしまったわけだけど、クラスメイトがどうなっているかが気になった。クラスメイトが前みたいな感じだととても落ち着くし助かる。


 クラス表を見る。それは掲示板らしき場所に貼ってあった。


 俺の名前は………。


 そう思いながら見渡す。

 だが…。


「ないなぁ……」


 ここでは、二年から魔法科、魔法研究科、魔術医療科に別れる。


 それぞれ、選択は自由であり、個人が最も自身の力を活かせる科を選ぶ。


 ロビンソンことロビンは当然魔法研究科を選択した。


 さっき会った時には、興奮していたけど…まぁ、何も起こらない事を信じたい。


 そう考えながらもう一回ぐるりと見渡すが、俺の名前はない。


 徐々に人だかりも減っていき、まばらになってきた。


「…」


 どうしたもんかな。なんか、もうないならないで良いんじゃないかなと思えてきた。


 いやいやいや、アーニャと誓ってしまったんだ。この施設を追い出される訳にはいかない。


「君が相馬悠人かしら」


 ? 不意に横から声がかかる。見てみると、女の人だ。背は低いがとても無駄の無い身体つきで魔法だけでは無く、身体もそれなりに鍛えているのだと伺いしれる。

 とりあえず返事か…。


「そうだけど…」


「ああ、まだいてくれて良かったわ。残念だけど君はこのクラスには入れないわ」


「は? じゃあ、俺は?」


 当然の問いだった。彼女の返事をすぐさま予想する。


 もしかしなくても進級はやっぱり取り消しでもう一度一年からやり直しっていう考えしか浮かんでこない。


「取り敢えず、歩きながら話しましょうか」


 彼女は俺の返事を無視して歩き出す。


 俺も分からないのでついて行くしかなかった。



 俺は彼女の後をついて行く


「なぁ、話ってクラス関係の事だよな? 聞いても良いかな?」


「そうね、取り敢えず結論から言うと、貴方は当学園で危険と判断されたのよ」


 彼女は歩くペースは緩めずかつ、こっちを向くこと無く話す。


「それって? 隔離って事かな?」


「ぶっちゃけそういう事だと思うわ。 でも、表向きは特進クラスって事になってるわ。ランキング上位の十五位までが入る事ができるクラスって言われているけど厳密なラインは無いみたい」


 そうなのか、ん?、待てよそういう事は…。


「じゃあ、俺はその例外的なものに入る訳だね」


「そういう事よ。でも本当の目的は隔離だって言ったでしょ?」


 彼女は立ち止まり、くるりと半回転し俺と相対するような位置になる。


「ようは、そこに集められた生徒は危険度が高い生徒達の集まりなのよ。例え、擬似空間があったとしても、ね」


 彼女はそばの扉を開けて中に入って行く。俺も遅れて中に入る。


 俺はその“危険”っていうワードからクラスの雰囲気を想像してゆっくり、慎重に歩く。


 雰囲気は…いつも通り、かな。俺の中のいつも通りでは無いけど…。


 アイナ先生がいるとこういう事になるのは一年から知っていた事だ。


 もうそこには俺以外みんな席に着いていた。あの案内してくれた彼女でさえも。なぜか、俺だけがまるで最初の時のような転校生みたいな感じに思えた。

 なぜならーみんなこの雰囲気に慣れている、感じだったからだ。


 それはすぐに分かった。


「あー、今度からこの特進クラスに入る事になった相馬悠人だ。もう名前くらいは知っているだろうが宜しくしてやってくれ。 あんまりいびる事はするなよ? 」


 最後に意味深な台詞を残し去っていくアイナ先生。


 特に自己紹介とかしなくて良かったのかな?


 と、俺は教壇の前で立ち尽くしてしまうが…。


「君だったのか…うん、イメージより普通だね」


 なんだよその上から目線の態度。確かに、君よりは顔は良く無いと思うけど。


 普通の何が悪いってんだよ。普通チョー良いんだよ!

 普通が一番なんだよ。んな事わかる訳ねぇよな。


 なんだって、


 話しかけられた男は俺からすればすでに彼女いそうな条件の例の3スリーエスってやつを完璧にそろえてやがったからな。


 ……と言える訳も無く、黙っていると。


「ごめんよ、悪かったね。悠人くん」


 とても爽やかな返事がさらにイラつかせるんですけどー、さっさとあっち行ってくれませんかね?


 ……と、やっぱり言える訳も無く黙っていると。


「ああ、しまった。自己紹介がまだだったね、僕はスライト。スライト・カルシバーグだよ。以後宜しくね」


 と、ニコニコとして手を差し出す。


 なんか、個人的にはイラつくが悪い訳ではなさそうなのでその手を取り挨拶する。


 …………その後彼から彼女と同じ説明を受ける。


 それが、なぜがカンに触る。


 取り敢えず、表面上だけでもよくしておくか。


「…それくらいかな。じゃあ、健闘を祈るよ。相馬くん」


「あ、ありがとう」


 と言ってスライトは去っていった。


 俺も先ほど案内された席に着き授業を…てかいな!


 クラスメイト一人もいないんすけど⁉︎ 一体どこ行ったんすか⁉︎


 はっ!


 ここで考え付くのはただ一つ。


 実技だったとかそういう感じなのか⁉︎


 俺は焦って、闘技場へ向かう。


「はぁ、はぁ、くそっ! なんで初日から…こんな…ことに…」


 と、腿に手を置き、肩を上下して呼吸する。


「あっ、悠人くんじゃーん、お久ーだね! 今日は私たちの授業に出るの? 悠人くんは真面目だね〜。私だったら、絶対出ないよ?」


 カレンが近づいてきた。あれ、もしかして合同授業なのかな?

 カレンのクラスは圧倒的に人数が多い。自分たちのクラスよりも。まぁ、そうそう特進クラスなんてランキング上位か、危険な何かを持った人だけって訊いてるから、当然の結果だろうと考える。


 だけど、カレンの意味深な台詞……気になる。


「……なにいってんの?」と、尋ねる。


 つい言葉が変になってしまうが、伝わりはしたと思う。


 カレンはそれで、「あっ、あちゃー」と、額に手を当てて何やら独り言をした後。


「うん、何も聞いてないんだね。結論だけ言います。特進クラスはね……授業は受けなくて良いんです!」


 は? え? なに? なんで?


 カレンが言った事が理解できなかったかのようにキョロキョロする俺。よく見たら、特進クラスの人たちが全く見当たらない。


「そ、それなら帰ろうかな……」


 とカレンに背を向けた途端。


「よぉ〜、こいつが噂の相馬悠人つーやつ? 貧相な身体してんなぁ〜てめぇ」


 そいつの顔を見た瞬間、カレンがなにも言わず後ずさる。


 確かに、不良の親玉やってそうな感じだな。


「なんで、この俺じゃなくてこいつが特進になったのか、これで確かめて貰おうじゃねぇか」


 剣を召喚する音が聞こえた。


 俺は聞こえなかったふりをして足を進めようとするが、肩にそれがのる。


 強ぇーんだから、弱い者からの挑戦は受けるよなぁ。


「くっ!」


 肩から血が流れる。どうやら、一瞬だけ力を入れなかったようだ。明らかに挑発しているのは分かる。だけど、ここは感情に任せるべきなのだろうか? そんな葛藤があった。

 別にこいつは雑魚とか、そんなことは微塵たりとも思っていない。いや、むしろ、こいつから放たれるオーラは二年生とは思えない他の人達とは一つ、いや、それ以上の感じがある。

 まず、特進だから強いという考えは捨ててもらいたいのだが、でも……。



「まず、この剣をどかしてくれないかな?」


 俺は剣が置いてかる方の手でそれを触る。


 剣が離れて、その跡から血がドバッと出る場を見つけたように勢いよく飛び出して行く。


 久々の感覚だな。何年ぶりだろうか、俺が血を出すなんて。


 そして、妙に筋肉質で、かつ俺のと同じくらい長い剣、それでいて幅が広く、重そうな物を軽々と動かしている。


 こいつは一味違うな。


 悠人はこれまでとは明らかに違う相手だと感じた。


























いつも、読んで頂いて感謝です。ありがとうございます!


もう気づけば28話目になっていました。随分進めたんだなぁーと感慨に耽る私でございます。さて、今回ですが、まぁ、出来るだけ長く読んで頂きたいということでギリギリまでやってました。


多分、五千? 確認してませんが、いってると思います。楽しんで読んで貰えたら幸いです。


さて次回は、僕の少し? 得意に感じている戦闘シーンをねっとりと書いていきたいと思います。


どうぞ、込うご期待!


それでは、


妄想は儚いが、夢がある。


小椋鉄平

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