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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
始まりへの選択
22/97

試験勉強、ラネイシャ編

「さぁ、さぁ始まりました! 勉強会! 司会はカレンが務めさせていただきます!」


 などと言いながら、ここは図書館のはずなのにと思っている俺がいるのだった。

 司書さんもこの人数ではどうにも注意出来ず、オロオロしている。ざっと見、100人以上はいると思う。

 ………。


「それにしても、どうしてこうなったんだ? 普通に勉強がしたいだけなのだが…」

「勉強にも質が大事! 適当に教えられては間違った解釈をしてしまうかもしれない! そうなってしまわないように教える人を選ぶってことだよ!」

「だからって…みんなほとんど女の子ばっかなんだけど…?」


 悠人は辺りを見渡しているが、男子の制服など一切見えなかった。


「いや〜、それは〜」

「みんな君に興味があるんだよ。なんせ、一年でもうすでにランク15位のラネイシャを非公式でも倒したんだからね」


 カレンが言い淀んでいるところに助け舟とばかりに声がかけられる。


「いや、それじゃあ説明になってないよ。……ええと」


 誰かわからずにいると気づいたかのように


「申し訳ない。私はハル。よろしく!」


 と手を出してきたのでそこに自分の手を伸ばす。


「こちらこそ」

「実は私も君に興味がある1人なんだ」


 そういうハルに悠人は想像どうり、といった反応をしているのに対し、カレンが異常に驚いていた。


「ん。 どうしたのカレン?」


 それに気づいたハルがカレンに問いかける。


「いや、驚くでしょ! まさか、あんたまで狙ってるなんて…」


 そのカレンの言葉にハルは一旦、考えるようなそぶりを見せるが、すぐにわかったように顔を上げる。


「いや、私が気になってるのは君の能力。力と言ってもいい」

「……」


 悠人は黙ったままでいた。正確に言えば、考えていた。


 自分の能力。

 それは自分ですら、興味があった。アーニャに見せてもらったが、自分自身で使えてはいない。

 だからこそ、ラネイシャとの決闘もいまいちピンとこない。自分の中で何かモヤっとする感じがある。


「でも、とても良かったよ、あの決闘は。 とてもワクワクしたんだ。こう、どちらが勝つのかが分からない感じが。うまく言葉にはできないが、感動したんだ」

「それは、ありがとう?」


 そのハルの言葉にでさえ、疑問符で返してしまう。


「謙遜しなくて良いよ。胸を張って」

「いや……」


 どうやらハルはあの言葉は謙遜だと思ったらしい。当然それもあるがそれだけではない。


「それじゃ、試験頑張ってね!」


 言い放ち、図書館から消えていく。


「え⁉︎」


 そう、文字通り、消えたのだ。体ごと何かに飲み込まれるように。


「ハルは大丈夫なのか⁉︎」


 慌てる悠人の肩に手を置かれる。カレンだ。


「落ち着いて。何も心配する事ないよ」

「そうよ。あれはハルの固有魔法オリジナルで、空間を自由に行き来できるの」


 それを聞いてふっと安心した。


「それよりも、悠人の慌て方はちょっと……笑えたね」

「ええ、とっても」


 と、笑い声が図書館にこだまする。

 それを聞いて、顔が赤くなる。

 とてつもなく恥ずかしかった。


「それで、話し合ったんだけど…取り敢えず成績が上位の子で希望者を対象に教えて貰えるって事で良い?」

「ラネイシャは?」

「やっと思い出したね……」


 ラネイシャは少し、というかとてもお怒りのようだった。さすがランク15位というか、怒った時のオーラが凄まじい。


「あ、いや、忘れてなんかいないよ! もちろん」


 ラネイシャは一瞬訝しげな表情を俺に見せたが…取り敢えず収まってくれたようだ。


「じ、じゃあラネイシャは内定って事で」

「え、いいの?」

「良いんだ。頼んだのに今更断るなんて出来ない。せっかくいいって言ってくれてるんだから」

「まぁ…悠人君がいいって言ってるなら、止めはしないけど…」

「うん、ラネイシャには寮での家庭教師としてお願いする事にするよ。それでもいい?」

「ああ、わかったそれでいい」


 そんな会話をしながら、ラネイシャはとても嬉しそうな顔を一瞬だけ見せたが、すぐにキリっとした顔に戻り、


「当然だわ。 私を選んだからには絶対に満足させてやるわ!」


 拳を握り、俄然ラネイシャがやる気になる。カレンは全く信用のしていない目だ。

 俺はそれを見ながら苦笑いしかできなかった。


「じゃあ、今日はこれで帰るよ」

「うん! 明日までに悠人君専属カテキョを選抜しておくよ!」

「あはは…取り敢えず、お手柔らかにね」


 このやりとりで思った事は。


 カレンってあんな性格だったっけ? という事だった。


 …………………………………………………………………


 寮に帰って、早速アイナ先生からもらったこの冊子を開く。見た目、修学旅行のしおりのように感じる作りの冊子でかなり最初は胡散臭さを感じたが…そこはやっぱりアイナ先生らしいというか、とても情に暑い先生だなと思った。


 というのもこの冊子がイラストだらけだからである。しかも手書きの。

 先生の腕はうまいというものでもないが、下手でもないと思う。


 まぁ、絵がダメダメな俺が言っても仕方がないが…。


 例えば、【ここは重要だ!】と、ミニキャラが指をさして教えてくれてたりする。


 その絵に少し、クスッと笑えてしまう。決して、下手すぎてという事はない。そのキャラの妙な愛らしさにだ。


「ええと、魔法発動の基本はスペルを正しく詠唱する事。それは声に出しても頭で唱えても良いが、例外もある。{例、音声認識型魔法。永続詠唱型魔法など} これに当てはまらないのが、系統外魔法に分類される。今現在、系統外に分類される魔法が多い事が現状である」


 一旦、音読するのを止め、伸びをする。意外だと言われるかもしれないが、じっとしているのが苦手なのだ。常に何か動かして無いと落ち着かないのだ。


 貧乏揺すりで何度母親に怒られた事か……。

 いけない、いけない。


 あと、一週間を切ったというのにまるで自分に緊張感、というか焦りというものがなかった。初めての感覚だ。自分でも不思議でならなかった。


 ここに来たからかな? まさかね。


「あっ、ちゃんとやってるね主様」


 感慨に耽っているところにラネイシャが来てくれた。


「いや、そうでも無いんだ。なんだか、落ち着かなくて……」

「そう、まぁその方が教え甲斐があって良いわ。どこやってるの?」


 悠人はおもむろに教科書を見せる。それをラネイシャが受け取って、ふむふむと眺めている。


「うん、頑張って。とても……わ、分かりやすかったわ」

「そう…」


 そう言ってから、かれこれ1時間………。


「…………」

「…………」


 悠人は教科書とにらめっこしている。一方、ラネイシャはというと………。


「…………くぅーむにゃむにゃむにゃ………」


 悠人のベッドに横になって寝てしまった。


 ラネイシャの教え方はなんていうか……スパルタかと思っていたが…。


「かなりの放任主義だなぁ……」


 ラネイシャは本当かどうかはさておき、カレンの忠告の通りかもしれない。

 それでも俺にとってこの状況はある意味良いのでは無いかと感じ始めていた。


 誰かいると思うと集中できるのだ。それだけでもありがたいと思った。


「…………」


 悠人はさらに勉強に没頭した。


 魔法の発動スピードは声に出すより、頭の中でする方が圧倒的に速い。

 口で初めから順に詠唱するよりも、頭の中で文字全体を思い浮かべる方が完了スピードが一目瞭然だ。

 発動するスペルを変えると魔法に様々な変化が起こる。しかし、改変ができるのだが、それで威力が上がる事は決して無い。


 ふむふむと…頭の中でそれを言えるようになっていた。


 少し賢くなった気がして成長した気がして自分に嬉しくなる。


「…………ううぅ…うん?」

「あ、起きた?」


 気づいて悠人が振り向く。どうやらラネイシャが起きたようだ。結局、ラネイシャは俺の勉強時間近く寝ていた。


「私……ここは?」


 ラネイシャは目を擦りながら辺りを見渡している。


「ここは俺の部屋だよ」

「‼︎」


 悠人の言葉にラネイシャは自分の体を自分で抱く。


「いやいや、そんな事してないから!」

「本当でしょうね?」

「ああ、命賭けてもいい。俺はラネイシャに何もしていない‼︎」

「じゃあ、なんで上向きながら言ってるの?」

「そ、それは……」


 俺は話しながら気づいてしまったんだ。この位置関係だとパンツが見えてしまう事に。


「どうしたのよ、なんかおかしいよ?」


 そう言ったラネイシャがこっちに近づく。パンツが見えなくなる体勢にしてくれてホッとするのも束の間……。


「ほら」

「ちょ⁉︎」


 ラネイシャは悠人のおでこに手を当てている。


 だが、俺はそこに狼狽したのではなく………。 む…胸が……。


「近いって…‼︎」

「何? じっとしてなさいよ。近づかないと測れないじゃない」


 時折、フニョン、フニョンと悠人の顔にラネイシャの胸が当たり、その柔らかな感触が感じられる。


 …………。いや! やっぱダメだ‼︎ 俺は紳士なんだ‼︎


「あ……」


 ラネイシャが悠人から離れていく。ラネイシャは顎に手を当てて何やらブツブツ言ってる。


「特に大事な問題は無いわ…魔力は…感じられないけど…それ以外は大丈夫よ」

「そう…」


 今の俺の心の中で天使と悪魔が戦っている。どうやら悪魔が優勢のようだ。


 それにしても……女の子の胸って柔らかいんだなぁ………。それに、ラネイシャのいい香りがして……。


 俺は始めての経験をした。こんなことあるわけがない。だが、これで分かった事がある。


 とてつもなく気持ちいい。

 いや、俺は紳士なんだ‼︎


 と、首を横に振り考えを消す。


「それにしても……ありがとうラネイシャ、おかげで勉強が捗ったよ」

「え? はっ‼︎」


 ラネイシャは今の今まで、忘れていたかの様な顔を見せた。


「ごごご、ごめんなさい‼︎ 主様にこんな失態をしてしまうなんて」

「いや、いいんだ。ただ、ここにいてくれるだけで集中できたよ。本当にありがとう」


 ラネイシャはかしこまって、悠人に謝る。もちろん悠人自身は気にしてなどいない。むしろこっちが謝らないといけないのだが…黙っておく事にした様だ。

 ラネイシャは何度も腰を折り続けて謝りまくってきたので、押さえつけて止めさせた。


「それじゃあ、私はこれで…」

「ああ、明日もよろしく」


 ラネイシャは俺の部屋から出て行く。


「はぁ……言えなかった……」


 言えるはずも無い。数々の罪をわざわざ宣告するなど…。


 それ以上に。


「俺はヘタレだ」


 ひどく、落胆した。
















いつも読んでいただきありがとうございます!


さらに待たせてしまって申し訳ありませんでした!

ということで、みなさんとの約束をしたいと思います。


更新期間を休みに関しては二週間ごとの更新にしたいと思います。


これでなにとぞよろしくお願いします!



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