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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
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20/97

修羅場? たぶんまだいいほうだよね?

高コンテクスト文化

端的に言えば日本みたいな社会のこと、「あれ」とか、「それ」と言っただけで会話が通じるのが特徴。対義語、ー低コンテクスト文化ー

「んんん………」


 あの後は倒れるようにして厚生荘に向かって寝た。


 そこまでは覚えてるんだけど…。


 このベッドの状況だけはどうにも理解できなかった。


 俺を真ん中にして左右にとてつもなく魅力的な方達がいるんですけど…。

 全く、理解出来ない。


「う、……ん…」

「う、ううん………ふふふ……」


 二人ともとても気持ち良さそうに寝ている。

 幸い、腕までは取られていなかったことで彼女達を上から見下ろすことができる。


 そおっと彼女達に気付かれないようにベッドから降りる。

 このベッドがあるって事も、俺にとっては新鮮だった。

 当たり前のことかもしれないが…。


 理由はいたって明快。

 実家にはベッドなんて無かったからだ。

 なぜか、ウチではみんな寝室で川の字になって?(3人では無かった)いっしょの部屋に布団をくっ付けて寝ていた。


 冬になると暖かさを求めて発熱する俺にみんなが群がって来たものだ。

 そういう意味では俺の両親は過保護すぎると言って良い。


「今頃、何やってるのかな?」


 つい独り言を呟く。

 もう、あっちでは俺は死んだ事にされて…とか考えてしまう。


 まぁ、実際は死んで無いのでこっちとしてもどう思えば良いのか分からないが…。


 そんなくだらないことを考えて1人で苦笑した後、そっと、部屋を出る。


 最近、女の子にもだんだん慣れてきた気がしている。


 こう……理性的に。


 誰も見ていないところで自分でもよくわからないガッツポーズを決めて朝食を摂るために食堂へ向かった。


 ………………………………………


 ……………………


 …………



 朝食を済ませて部屋に戻る。今日はいつもよりもスローペースだ。やはり、魔法の学校でも休みというのはあるらしい。

 とても喜ばしい事だ。休みが無ければとっくに学園生活にばてていたかもしれない。


 とっても、休みがある事にどこの神を信じてる訳でも無いのに手を合わせて感謝してしまう。


 という感じで、今にもスキップしそうな勢いで俺の部屋を開ける……。


「……………はぇ」


 部屋の状況に変な声を出してしまう。


 俺が今いるのが俺の部屋のドアの前。アーニャが俺から見て左前にいて、もう1人が右前のベッドの上に仁王立ちしている。

 なぜか、とても睨み合っているように見えるが……。

 確かに、昨日の今日でおいそれと手を取り合えるとも思えないが…そこまで険悪になる程だっただろうか?


 腕を組んで考え込んでしまう。



 俺が部屋のドアを開ける数時間前……………。


 2人は消えた温もりを求めて動く。

 さっきまで隣にあった筈の。


 そして2人は温もりを見つけて離すまいと抱き合う。

 アーニャは寝言で「ん…どこにも行かないでくだしゃい……」と。


 だが、そこはアーニャ。

 マスターの事を知り尽くしている、いわゆる『マスターソムリエ』とでもいう嗅覚でアーニャは布団から飛び引き戦闘体制に移る。

 そして、その相手を見た時……。


「な、なな、なんで…なんであなたがここにいるのですかー!」


 すると、もう1人が俺のベッドからムクっと起きる。

 まだ、寝ぼけているのか目がうつらうつらしている。

 アーニャがその1人に近づき、大きく肩を揺らす。


「良い加減に目を覚まして、この状況を説明してください!」


「ガクガクガク………むにゃむにゃ……もーぅ何するの〜」


 寝ぼけているため、もはや怒っているのかさえ微妙に思えるふやけたセリフだった。


「ふざけないで下さい! ここは私と悠人だけが横たわる事を許された場なのですよ。それを無断で入るなど…到底許せません!」


 と言って、ただの普通のベッドを指す。アーニャの言い方だととてつもなく高級そうなベッドに聞こえるかもしれないが…とてつもなくセオリー通りの普通のベッドです…はい。


 彼女はようやく意味が分かったのか、 ハッとした瞬間俺のベッドを見て湯気が出るんじゃ無いかってほど顔を赤くしていた。


「ようやく、そこに入る事の無礼さが分かりましたか」


 アーニャは勝ち誇ったかのように言う。

 一方、彼女も恥ずかしながらも意を決したように口を開く。


「でもでも、昨日の決闘に負けちゃったので帰る場所が無くてその………」


 途中までは良かったものの、最後が聞き取れなかった。


「それに、条件には悠人のお付きになるというものだったので、ここに来ました」


 と、もう1人…もといラネイシャが、弁明するつもりで放った言葉はアーニャには逆効果だった。


「ふぅー、今日も食ったなー」


 と呑気に部屋のドアを開ける俺。

 そして、さっきの状況に至る。


 俺が入ってきて早々、アーニャは俺にズカズカ寄ってくる。


「これはどういうことですか⁉︎ 勝利条件が悠人のお付きだなんて⁉︎」


 説明してと言わんばかりの表層で迫られる。

 そんなこと言われても、思い出せばその条件は俺が提示したわけじゃ無いわけで……。つまり、弁明することが無い。強いて言えば……


「その条件はロビンとローレラがやったんだ。だからそいつらに聞かないと何とも……」


 言えないと言おうとしたが、アーニャがとてつも無く目が据わっているので口が開けなくなる。

 アーニャは一瞬、俺にキッっとなった後、部屋を出て行く。

 おそらく、ロビンの所へ行ったのだろう。すまないロビン…後は任せた。

 そっと、ロビンの無事を祈った。


「で、負けたからって何で、俺の所…というか、俺の横へ?」


 ラネイシャは黙る……。

 いや、何か喋ってくれないと始まらないよ。

 でも、俺もそれ以上聞けないのでお互いに黙ってします。


「仕方ないじゃない……だって、ここに所属になる事は負けた時点で確定だったし」

「ああ、そうだったな」


 あの後、疲れていたせいでラネイシャのことを全く気にして無かった。


「ったく、何であなた達は厚生荘ここ所属なのですか。もっと引く手数多あまただったでしょうに」


 ラネイシャは怒り気味に言っている。多分、ここに居る人の境遇を知らないのだろう。


「あのねラネイシャ。そんなに厚生荘ここを悪く言わないで欲しいな。ここはね……」


 とラネイシャに厚生荘がある意味について、話す。

 話してて、だんだん顔が俯いていたので、話していた甲斐はあったのかなと思った。


「……という事なんだ。だから…ね。ここの事は悪く言わないで」


 そう、俯いたままのラネイシャに近づけて言う。しかし、ラネイシャは肩を震わせているなと思ったら、いきなりガバッと起きて俺の手を握る。


「素晴らしいわ! 学生の身でこんなにも身寄りのない子供を学校に通わせるなんて。あたしはあなたの事を本当の意味で見くびってたわ。このとうりよ。非礼を詫びるわ」


 と言って、座ったまま一歩下がり、手を地面に着けて、頭を下げる。


 いわゆる土下座だ。

 ここでは土下座は当たり前なんだろうか?

 ついそんな事を考えてしまったが、このままにして置くのもまずいと思ったので、


「か、顔をあげてよ、ラネイシャ」


 そう、言ってもなかなかラネイシャは顔を上げてはもらえない。


 俺は慌てる。

 脳裏をよぎる。


 ー土下座には別の意味があるのではないかとー


 俺は必死になって考える。


 その時にちょうど、というべきか、アーニャが帰ってくる。


「あ、いいところに。アーニャ、実はな……」


 と、ついアーニャにすがってしまう。

 案の定、アーニャはわなわなと肩を震わせてる。


「わわ私というものがありながら……なぜ、あなたはこんな美少女を引き抜いて……許せません。が、悠人の決定は逆らえません。非常に遺憾です。ええ、とても」


 アーニャは土下座しているラネイシャに近づき、


「余を重臣、相馬悠人の従者とする。異論はないな?」


 と言う。その言葉にはいつものアーニャにはない、感じがあった。

 何というか、アーニャが発する一言ごとにとてつもない重みがあるように感じた。


「ああ、もう、異論はなくなった。今ここに来て、迷いが消えたよ」


 ラネイシャもアーニャの問いにしっかりと答える。


「よろしい。では、魔力を」


 ラネイシャは俺の胸に手を当てる。


「我、汝への忠誠を誓う者、破りしは相応の罰を、貫きしは汝の永劫ある限り永きの安泰を約束されたし……」


 と、唱えるようにラネイシャが言うと俺の胸に当たっていた手が光って、胸の中に入っていく。


 ーどくー


 一瞬、胸が熱くなって胸を抑えようよ手を伸ばすが、ラネイシャの手が俺の手を握る。


「大丈夫。これが私の忠義の証」


 しばらく握っていてくれたおかげで、随分、痛みも和らいだ。


「これで終わりなのか?」

「ああ、これで私はあなたの従者だ」


 とてもその事が誇りだと言わんばかりに胸を反らしている。

 そんな大層なもんじゃないと思うけど…。


「あ、でも注意して置く事が……」

「ん、何だ?」

「これで、主人様にも制約があって…さっきも言ったでしょ。汝の永劫ある限り……って」

「まさか……」


 俺は自前の日本人が得意としている“察する”というのを自然と使ってしまう。

 ここではそれはあまり、通用しなかった。アメリカみたいだと思ってくれればいい。


 ラネイシャは察しが良くて助かるといった顔で俺を見る。

 アーニャはんん? と首をかしげるばかりだ。得意な俺からしてみれば何でと思うくらいだ。


「そう、私が死んだら主人様も道連れだから」

「え〜〜〜!!!」


 アーニャは終始、驚き顔だった。


















いつも読んでいただきありがとうございます。


今回は少し、ワクワクものじゃなくてある意味平和系でいってみたいと思ってこの様にしました。

この後ももうすでに考えがありますので、これに関しては安泰だと思います。

というより、これはコンセプトの1つとして終わらないというのを念頭に置いてるので自分でも終わらせる事はないと思います。

逆に言えば終わらないので新人賞とかにも出せないんですけどね……とほほ


ってなわけで次回作も楽しみにしてもらえたら嬉しいです。


次回あらすじ


まさかの試験⁉︎

途中すぎて単位が全く足りてない悠人が勉強すらして無いのに進級試験を受けることに……


これくらいにしておきます。また先延ばしになるかもしれないけど…

それでは〜


小椋 鉄平

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