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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
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18/97

主は従者の為に従者は主の為に 前編

【魔法】

かつて、この能力をもってエジプトにある数々の歴史的建造物などを作ったと言われるもの。

現代においてその能力は退化、消滅してしまった。


定義: 基本的に精霊との物々交換で成り立つ。例外あり。

ヒトは魔力を、精霊はそれに見合ったヒトの望むものを出現させる。

大精霊になるほどヒトが供給する魔力は多くなる。しかし、見合った魔力を提供できれば強力な魔力の発動が可能。



………新情報は本編で続々出すつもり


 俺とローレラがあれこれやってる時………。


「…………」

「…………大丈夫か?」


 ロビンとアーニャが闘技場の控え室にいた。

 アーニャはこの決闘を成立させる為にある作戦をしていた。


「君の実力なら完璧なはずだ。何せ、主の右腕なのだから」

「それなりのブランクがありますけど……?」


 そのロビンの励ましにおどけて見せる。


「ああ、それでも君ならやって見せるだろう」


 私はクスリと笑ってしまう。

 精霊にも感情というものはあるかどうかわからないが……。


(何とかなります!)


 と自己暗示をかけて、控え室から舞台に歩き始める。


(これを悠人に見てもらえないのは残念ですが、後でびっくりしてもらいましょう)


 闘技場にいる野次馬はかなりの数でザワザワと五月蝿い声が聞こえる。


 舞台の端まで行くと、もう既にラネイシャが反対側に立っていた。


「遅いですわよ! “相馬悠人”!」

『悪かったな』


 そう、この決闘を成立させるには本人が出るのは当然。後は想像がつくだろう。

 これも、彼女の能力アビリティの1つである。


「では、早速始める」


 審判員の人が仕切る。仕切ると言っても、ほとんど死なない殺し合いなのだから、ルールなど無いに等しい。あるとすれば、開始の合図ぐらいだ。


 舞台を離れて、擬似空間アストラルカーディガン

 を展開する。


「両者構え! ………始め!」


 開始の号令が審判員の人から発せられる。その声は擬似空間にだけ伝わる。


「……私の力でひれ伏すがいい!」


 ラネイシャがそう言い放って、カードを取り出す。

(封印されし、我の眷属を今解き放つ。……召喚!)


「来れ、我の化身達!」


 出したカードが光を放ち、そこから五体の騎士ナイトが現れる。

 顔は鎧で見えない。


「お前など、この騎士ナイト達で十分だ。 いけ! 我が眷属よ」

『……………』


 アーニャは悠人の身体で考えていた。

 夕べに悠人から与えられた魔力でどうやろうかと。

 与えられただけあって、量に限界がある。この場に悠人と自身がいれば、話は別だけど…あの悠人の状態では再び供給など無駄であった。


 まとめると、アーニャはどう効率よくこいつを倒すか考えていた。


(ただ倒すだけなら、これっぽっちも問題無いのですけど…)


 そんなこと考えてる隙にも五体の騎士ナイト達は“悠人”に剣を振りかざす。


 それを持っている長剣で1つずつ躱してゆく。


(でも、こいつらに魔力を使うことは無い)

 勝利条件は相手を倒すこと。つまり、この騎士達を倒しても意味は無い。


 騎士達の容赦無い攻撃を長剣を合わせて、躱しながら、ラネイシャを探す。


(! 見えた)


 悠人の姿をしたアーニャはすかさず、剣を振りかざす。

 相手を殺すことが条件の通りに首を狙う。


『くっ……!』


 だが、切れたのは騎士一体の首だった。


「そう簡単にやらせるわけ無いじゃない」

『騎士を犠牲に……』

「当たり前じゃない。勝利条件は理解してるわよ。それに………」


 首をはねられた騎士が動いてる。


『こいつらはゾンビか?』

「まぁ、そんなとこね。私を知らなそうだから親切に教えてあげるけど、私のカードの中の眷属は核を壊さないと倒れないわよ」


(核……だと……ならっ!)


創造クリエイト!」


 これで、魔力が減ってしまうことになるが、仕方がない。

 透視出来るようにゴーグルを想像(創造)する。


 悠人の顔の目の辺りにスポーツ用のサングラスみたいなものが出現する。


「何してるか知らないけど、そんなことしたって無駄だ!」


 そうこうしている間にも騎士達が剣を振りかざしてくる。


 一体ずつ見ていたが、核は少し面倒な場所にある。


(剣の威力を上げるしか………っ!)


 何せ、鎧で固めてある場所の辺りに在るのだ。あそこしか効かないとなると、鎧ごと破壊するしかない。


(まず、一体目!)


 胸の辺りを高速の剣の突きで鎧ごと破壊した後、横に凪いで小さな核を一刀両断する。

 すると鎧の中のものが蒸発していき、鎧だけがカランと金属音をたてて、地面に落ちる。


 悠人の姿のアーニャが間髪入れず、次の騎士に剣を向ける。

 2体目は剣でのけぞらせた後に足に剣を突き立てる。


「ふん、そのメガネは伊達じゃないみたいだな」

『わざわざ意味もなくつけるわけねぇだろ』


 次々と核のある位置へ正確に剣を突く。


 ちなみに3体目は頭、4体目は腕、五体目は目だった。


 ラネイシャは次々と倒されていった騎士に怒りを募らせる。この怒りは当然の如く、悠人に向く。


「ぐぬぬ………我の眷属をこうも容易く………」

『何言ってるんだよ。雑魚だっただろあいつらは』


 ただの鎧だけになった残骸を見渡しながら、ラネイシャを挑発する。


「………ふん! 不服だがお前の実力は認めざるおえないようだ…。だが、こんな物は倒せるのが普通だ、少々お前を過小評価していたに過ぎない……本番はここからだぞ……」


 ラネイシャは目を閉じた。


(今がチャンス!)


 そう感じた“悠人”はラネイシャに向かって走り出すが、すぐに足を止めて構えた。


『なんだ……あれは……』


 ラネイシャの後ろに巨大な石像が現れる。

 その石像はそのままカードを分厚くかつかなり大きくしたような四角い形をしている。

 地面から現れたそれはラネイシャの身長など遥かに超えている。

 巨大な石像が作る影が気味の悪い雰囲気を醸し出している。


「我が呼びかけに応じ、姿を現せ! すべてを混沌へと誘うものよ………」


 そうラネイシャが唱えたその瞬間、巨大な石像に光が差し込んでいく。こう、ものを描くように。だんだんと……。


 光の彫刻で1つの絵が浮かび上がってきた。


『なん、だと……』


 悠人のの姿をしたアーニャは息を飲んだ。


 その姿とは………。


『ドラゴン………だと……』


「見るがいい、私の固有魔法オリジナルで召喚できる眷属の中での私の切り札だ!」


 そう言っている間に、光の彫刻がそのすべてを彫り終える。


「いでよ、我が切り札。その名も『カオス・ド・ドラゴン』!」


 光の彫刻が光輝き、石像が消えると共に『ドラゴン』が現れる。


 そのドラゴンは巨大でその顔は見上げないと見ることが出来ない。


「行け、カオス・ド・ドラゴン。焼き払ってしまえ!」


 ドラゴンが火を噴く。取り敢えず、転がりながら回避する。


「くっ……!」


 ふと見るとラネイシャがドラゴンの背の上にいた。


「見る影もないだろう。舞台フィールドが小さい分、このドラゴンは少しずるい気がするが…お前がさっさとくたばらないからだ!」

『とても理不尽な理由だな、それは……でも、こちらもそう簡単にやられるわけにはいかないんでね』


 だが…アーニャはこの巨大な敵を前に焦っていた。


(どうすれば良い? 私の力ではあの巨大な敵を倒す魔力ちからは残って無い)


 ある意味、弱点を突かれた形になる。もちろん、相手が故意にやってるとは思えないが…。


「ほらほら、どんどん行くぞー!」


 ドラゴンの火炎攻撃が容赦無く“悠人”に降り注ぐ。

 悠人の姿をしたアーニャはそれを冷静に避ける。避けながらも、“悠人”はラネイシャのいるドラゴンの足下に近付いている。


 足下に着いた瞬間に悠人が編み出した高速燕返しをドラゴンの右脚に放つ。だが、一瞬こそ切れたような跡が残るものの、紫の煙が出てきてすぐに切れた跡が元に戻る。


(え……⁉︎)


 悠人の姿をしたアーニャは驚きと同時に疑問を抱く。それに答えたのはラネイシャだ。


「そんなもの私の魔力で再生可能に決まってる。しかも………」


 ラネイシャは悪みした笑みを浮かべる。


 アーニャは悠人の姿での鼻と口を手で押さえる。

(これは……魔力不全を促す毒……?)


「御察しの通りだよ。本当はここまで手を尽くした事は無いんだけどな。ドラゴンの火炎までで終わるのが普通なのにな………」


 ラネイシャはこのヒトを痛めつける状況が楽しいらしい。今では、先ほどまで隠していた笑みすら隠せなくなっている。


【魔力不全】………。

 魔力循環が行えなくなったり、魔法発動にタイムラグが生じたり、症状は様々だ。


 さっきの燕返しで少し、吸ってしまった可能性は否めない。


 ドラゴンの足が“悠人”を潰そうと足が襲い掛かってくる。


 アーニャは足下から離れる。


「ほらほら、火炎攻撃いくよー」


 息のつく暇を与えないという間で火炎攻撃が襲いかかる。それも一発では無く連続で。

 地面ですら、火炎攻撃によって少し黒ずんでしまっている。


 ………………まずい。


 この状況になるのはとてつも無く不利な状況だ。

 ただえさえ、魔法の供給が無い(毒が無くても初めから無い)


 それに既に変装するのに常時【創造クリエイト】を使用している。

 魔力が尽きて仕舞えばよもや相手を打ち負かすことが出来ず、さらには姿が見え無くなるため(並みの魔力容量のヒトでは意識しないと見る事は不可能)最悪、敗北どころか不名誉な不戦勝だってあり得る。

 思えば思うほど、アーニャの頭の中では最悪なシナリオしか浮かんでこない。


(残り少ない魔力で強力な魔法を発動して、一撃で仕留めるしか……ない!)


 アーニャは昨夜の大砲をイメージする。あれはこの世に存在するのがわからない分、悠人の“頭のイメージのコピー”するのがより難しくなる。


 過去でそれを使う時の悠人の頭の中のイメージをコピーしてさらにそのイメージを【創造クリエイト】にインプットする。


 アーニャがこれをするのはかなり回りくどい分、悠人が使うより格段に難しい。

(当の本人は記憶がないため使えないだろうけどね………)


 今回はさっき言ったように変装に使ってる分、二重に魔法を発動することになる。これは、いわば、二刀流で剣を自在に操るよりも難しい。

 少しでも、何かの行程や、双方への意識がずれれば確実に負ける。


 相手の攻撃を避けたり、剣で吹き飛ばしたりしながらさらなるマイナスな点を思い出して、剣を持ってない方の手で顔を覆う。

 今にもしまったーっと言ってそうな表情なのだ。


(未知の毒の可能性を考えてなかった………)


「くっ……すばしっこい! もうさっさと私にやられなさい。ここまで私とやれる貴方は十分に素質があるわ。だから………!」


 そんな事に耳を貸せるほど余裕も無いし、情も持ち合わせていなかった。

 しかも、火炎攻撃からけ続けている時点でラネイシャと会話する時間的余裕も無い。


 と、不意に先程までほとんど間髪入れないで放たれていた火炎攻撃が止む。


(今こそ、好機…です!)


「ど、どうした⁉︎ まさか……息切れ?」


「展開! 過去の契約者との記憶から検索、コピーしてイメージ記憶として維持。今度こそいきますよー!」


 ラネイシャが悔しさに満ちた表情で“悠人”をドラゴンの上から見下ろす。

 その構図ははたから見れば、立場が見た目と状況からでは、今のところの上下関係が真っ向から反対した。


「私の、今ある、魔法容量キャパで………創造クリエイト!」


 魔法発動に気を向けたせいで声が戻ってしまう。ついでに姿も今にも崩れてしまいそうな、アナログテレビのよく写らない感じのようにぐにゃっと左右にぶれている。

 だが、そのおかげで、大砲は完成した。大砲と、ドラゴンが同時にいると闘技場が狭く感じるほどの大砲の大きさだ。


「……対巨大障害用大砲……主には悪いですが、僭越ながら名をアメドシスと名付けておきます」


 ぼそっと独り言のように呟く。

 ラネイシャはその大きさ、しかも、距離的に避けることの出来ないこの状況に悔しさと恐ろしさを感じる。

 あろう事か足がガクガクと震えてくる。


 悠人(キレキレ映像)の姿をしたアーニャは最後の魔力を弾として装填する。その後、見えないがゴーグルをかけて急所に狙いを定める。


「いきます。………発射フャイア‼︎」ーーバァーー‼︎


 アーニャの放った魔力砲がドラゴンの胸から上を貫通する。

 ドラゴンは大きな地響きを残して倒れた。

 そして、紫の煙を吐きながら消えていく。


「うぐっ………くそっ!」


 どうやらドラゴンが死んだ時のことは考えていなかったようでラネイシャ自身もその煙を吸ってしまう。

 アーニャよりも大量に吸ったため、毒の回りが早く、すぐに苦悶の表情になる。


 だが、アーニャの姿は見当たらない。

 時期に魔法で造った大砲も虹色の光の粒となって消えていく。


(ああ、やってしまいました……私、勝てませんでした……)


 アーニャは魔力量が尽きた為知覚されなくなっていた。意識しているラネイシャともう一人を除いては。

 涙が流れる。精霊に感情はあるかと問われれば無い、と答えるのが普通なのだ。


 故にアーニャは特殊でありかつ悩みでもあった。


(私……泣いてる……この感情でさえ悠人から貰ったものなのに……)


 一方、ラネイシャは【魔力不全】により、魔法容量が無い分、アーニャを完璧に知覚できない。

 せいぜい、透明な輪郭がうっすらと見えるだけだった。


(あいつは精霊だって言うのか? 人間ではなく……?)


 ………………。


 …………………………。


 …………………………………。



「はぁ、はぁ……」


 俺は歓声の聞こえるところに向かって、全力で走っている。少し鍛えたせいか、そこまでのキツさを感じない。

 今はそんな事を考えている暇など無いからだろうか?


 俺は手に持っていた増幅器ブースターをポケットに入れ、逆にそこからいつものキーホルダーを取り出して予め、具現化させておく。


 だんだんと、声が大きくなって聞こえてくるのが分かる。

 どうやらまだ決着はついていない様だ。


 焦る気持ちを抑えられない。こんなことなら、ローレラに控え室に転送してくれる様にお願いすれば良かったと思う。


 俺が控え室に汗をダラダラにかきながら着くとアイナ先生の後ろ姿があった。

 先生は後ろに振り向く。


「お前の精霊、なかなかやるな。ラネイシャのドラゴンを倒しちゃうなんてな」

「もちろんですよ。アーニャは俺よりも数レベルは上です」

「それよりも、魔力切れだ。……早く行ってやんな」


 と道を空けてくれる。


 俺は会釈だけにして、ぜーはー肩を上下させながら舞台に向かうが。


「……それよりも、どうやって行ったらいいんすかね?」

「さぁな、自分で考えろ」


 そこは全く考えてなかったという顔をして先生と見合ってしまった。













































いつも読んでいただいてありがとうございます!


やっと、決闘の部分に入ることができました。みなさんには長らくイライラさせてしまったかと思います、申し訳ございませんでした。


まだ前編ですので後の展開を予想していただきまっていただけたらなと思います。


ではでは……


小椋鉄平

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