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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
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16/97

アーニャの能力

 アーニャはこれで何とか助かった…ようだ。いや、普通は苦しそうにしているアーニャに魔力を注ぐのが普通だと思うが…なぜか、腑に落ちない俺がいた。


「それで、今回はただの魔力供給だったわけだが…本来ならどんな魔法が使えるんだ?」


 俺が聞くと、アーニャはキョトンとして「え?」と言ってくるので、もう一回同じ質問をする。


「いえいえ、ちゃんとは聞こえていますよ」

「何だよ。じゃあどういう事だよ?」

「さっき見せたじゃありませんか〜」

「………マジで、言ってんの?」

「マジのマジですよ、こっちは〜えへへ」


 俺はアーニャの頭にチョップする。アーニャは痛そうにしながら、「何するんですか〜」と抗議の声を漏らす。


「何だよ…お前…全然使えねぇじゃん」


 素直に声が出てしまう。だが、本当なら(助けた意味ねぇじゃん)も付け加えて言いたいところだった。


「え〜使えると思うんですけどねぇ〜。あっ、まだ私の姿しか見てないからですね〜」


 と、アーニャだけ勝手に納得して、片手を握り、もう片方の手を開いて、ポンっと開いた手に握った手を軽く叩いていた。


「だから、お前だけ勝手に納得するなよ」


 そう言うと、「えへへ〜早とちりが過ぎました」と、アーニャが舌を出して、おどけて見せて、


「では、外にでも出ましょうか」


 と言って、スタスタと外へ出て行く。


「お、おいちょっと待てよ!」


 と言いながら、慌てて外へ出る。が………


「あ」


 とアーニャと一緒にそこにいたのは…


「ローレラ⁉︎ あ、いや、こ、これはだな…」


 ローレラは一瞬こそ驚いていたものの瞬く間に冷静さを取り戻して、俺を蔑んだ目で見る。


「ねぇ、このヒトは? 見た事ないんだけど…」

「こ、こいつは……えっと…」


 俺は咄嗟に言い訳が思いつかなかった。

(この状況で、『実は俺の契約精霊なんです!』なんて言えねー。絶対信じてくれないだろ! いや、待てよ…嘘をつく必要性はここではないだろう。だったら……)

 俺は意を決して、ローレラと向き合う。


「こいつは、俺の精霊なんだ」と、真顔で真剣な事を表現する。


「でも、ヒト型の精霊なんて…聞いた事ないわ」


 ローレラはアーニャの顔をまじまじと見ながらそう呟く。


「信じれないかもしれないけど、本当なんだよ!」


 俺は必死に訴える。

(ここは、これで押し通すしかない…!)

 そう思っていたが、ローレラが何か気づいたような表情をしていた。


「まさか……あなたが……?」

「ええ、私がそうですよ。ふふふ」


 何やら2人だけで会話が成り立ってるが、俺には訳分からない。

 今度は俺が質問する側に変わる。


「なぁどういう事だよ?」

『なんでもないわ(でーす)』


 2人にそう言われてそれ以上踏み込めなかった。

 結局、ローレラも見たいと言って、ついてくる事になった。

 そして、俺たちは寮のすぐ側の空き地に来ていた。


 寮の周りは田んぼだらけになっており、そういったもので、食のやり取りをしているらしい。

 そのところでも、唯一、何もされていない空き地のようのものがあった。


「それで、何をするんだ?」

「そんな焦らないで下さい。もうすぐですから」


 俺はそれ以上は何も言わない。


「では、私と距離を取ってください」


 俺はアーニャと向き合う形にして立つ。


「では、戦いましょう」

「は!?」


 俺はポカンとしてしまう。当然だと思う。さっき、アーニャが見せた魔法はただ実体化しただけだった。


「し、知らねぇぞ」


 と、断ってから、ポケットからキーホルダーを取り出して、剣を出現させる。


「では、いきます! 悠人、私を使ってください」

「どうやってやるんだ?」

「私に魔力を注いでください」


 今度はさっきのような方法ではなく、念じるようにする。


「え、こんなに…? でも、これさえあれば完璧に………すぅー、能力(アビリディ発動!」


 アーニャの周りに水色の淡い光が輝いている。


学習ラーニング、過去データと照合……一致。出力アウトプットへ移行」

「………」


 俺は黙って見ているしかなかった。

 すると、終わったのか俺の方にアーニャが向き直る。


「終わったのか?」

「ええ、行きますよ。構えてないと死ぬかもですよ、てへっ」


 ローレラは俺たちの会話を外から見てた。よく見るとローレラは目を見開いていた。よほど驚きなのか。


創造クリエイト!」


 アーニャが入った途端に俺の足元の地面が盛り上がる。


「うおっ!?」


 咄嗟にその場から離れる。


「まだまだですよ」


 今度は炎の玉が俺に向かって放たれる。


「くっ……!」


 俺は横に流れて躱すが、間髪入れないでくる炎の塊に避けきれず、最後だけは剣を振る。


「甘いですよ。こっちが本命です。てやぁっ!」

「嘘だろっ!」


 その顔からは全く想像できない動きに驚くが、


「はあっ!」


 アイナ先生との戦いで編み出した高速の逆切りで、アーニャの剣に当てる。

 ここが、地面だったせいか、土煙が上がる。


「速すぎて、見えない」


 ローレラは土煙に目を手で遮りながら、悠人たちを探すために首を振る。


 俺はアーニャの剣と鍔迫り合いになっている。だが、俺は押し返そうと真剣になる顔ではなく、とても信じられないといった顔をしている。


「くすっ、わかります?」

「俺と……同じ剣? 2つあるのかこの剣は?」

「まだ、分かりませんよね〜じゃあ、次行きますよ」


 アーニャは不意に鍔迫り合いにした剣を外し、土けむりの中に消える。


「はぁっ!」


 俺は高速の回転凪ぎで自分の周りの土煙を払う。土煙を払って視界が晴れた俺の目に飛び込んできたのは…。


「嘘だろ……!」

「えっへん、これで終わりです」


 巨大な、見たこともない大砲だった。

(いや、この形は……)

 この形状の大砲に違和感を覚える。妙に現実逃避感のある大砲は“昔いた所”にもないはずだ。

 しばらく、考えに耽るように黙っていると、


「じゃあ、撃ちますね〜」


 というので、


『ええっ⁉︎』と、ローレラとハモってしまう。


 ここで、俺は撃たれるのかと覚悟する。

 そこを…。


「あなたどういうつもりなの? このヒトがいないとこの厚生荘が成り立たなくなるのよ。それでも良いのあなたは!」


 と、ローレラがいつにもなく必死に訴える。あんなローレラは見たことなかった。いつも興味なさげにしていただけあってこの振る舞いに俺も驚く。


「いえ…殺しはしても決して消すつもりはなかったのですけど…」


 と言って、どデカイ大砲を消してくれる。光の粒が霧散して消えていく。


 おそらく、アーニャは俺を殺しても、あくまで一時的であって、本当に消すつもりはなかったらしい。

 ローレラが、さも珍しく溜息をつく。

 ローレラ的には余り、俺の生死には関係がないと思ったが…そんなことがあったのかと納得した。


「それで、悠人、 分かってもらえました?」


 アーニャがとてもニコニコして俺を見上げてくる。

 俺は両手を横に広げて、降参して、


「アーニャがとても有能だということはよ〜く分かった」


 と言って、「疑って悪かったな」と、頭を撫でてやる。


「えへへ〜」


 アーニャは顔がフニャけていた。

 まるで、その表情はペットのような感じがして、俺にも自然と笑みが零れる。


「えー、こほん。それで」

「それで、なんだよ?」


 アーニャと俺は撫で、撫でられるのを止めて、ローレラへと視線を向ける。


「あれは何だったの? 見たところ、とても強力な魔法だったみたいだけど?」

「ああ、あれはコピーですよ」

「コピー?」


 ローレラが再び問いかける。

 アーニャは、はい、と頷いて、


「あれは、契約したヒトとしか出来ないものですけど…契約者の主の能力(アビリティを学習してフルコピーして使えるようにする魔法です」

「え、って事は……」


 俺は察した。そして確認のために言おうとした事をローレラに遮られる。


「あれは、文献で見た魔法とそっくりだわ。百年前の文献よ。それは誰にも継承される事はなかったとあったわ…それが何故…?」


 それを聞いたアーニャはとてもニコニコして俺たちを見ている。


「まず、悠人の疑問からですが、そうですと答えておきます」


 それだけかよと言いたい心を留めておく。ここでは、魔法の詮索はタブーだからだ。自分の力で他のヒトの魔法を真似できるのなら良いのだけど…。


「そうですね、確かに誰にも継承されませんでしたね〜。でもその使用者本人の顔はありましたか?」

「………」

「無かったと思います。私はその方と契約していましたが、一度もお顔を見た事はありませんでした」

「そう…」


 ローレラは腑に落ちないといった顔をしているが、自分で丸く収めたようだ。

 アーニャは再び双方の顔を見て、何が嬉しいのかわからないが、とてつもなく笑顔を放っている。


「さぁ、では遅いですしそろそろ帰りましょうか」


 アーニャが促して、3人は寮に戻った。


 俺はアーニャと一緒に自分の部屋に帰って寝る準備をして、ベッドに横になる。

(今日はとても濃い1日だったな…)


 ベッドの上で、今日の事を反芻する。と、あることに気づいた。

(そういえば、アイナ先生に渡された本があったんだ)


 と、カバンから例の本を取り出す。


 その本は文庫本のような大きさで、中に挿絵もちょくちょく入っていた。

(へぇ、ラノベっぽいな…)


 素直にそう思い、ページの最初に戻り読み進める。と言っても、今日中には読みきれるものではない事はよくわかっていた。


 ………ーある日、一人の少年いたり、その少年、魔法力なかりけり、ー………


(読み辛いな………)と思いながら進めていく。


 ーそのシスターはその子に四角い箱を持たせ、捨てた。純粋無垢な少年はその箱で遊ぶー


 俺は自分に似たヒトに少し興味を持った。


 ーその周りには、常に噴火のような地響きが鳴り渡り、ヒトビトは恐れる。ー


(これも似てる………)


 ーしかし、ある日ポツリと途絶えてしまった。ヒトビトは安堵し、その場に神殿を建て、再び災いが起きないようにと祈祷した。ー


 今日はこれくらいにしておいた。

(いつまでも必要だとか、アイナ先生言ってたもんな…)


(さぁ、寝るか…)


 明日のことなど既に頭の隅に追いやられていた。















いよいよここまで来ました!お待たせしてしまって非常ーーーにもうしわけございませんでしたーーー‼︎


ついに次回にですね、ラネイシャとの決闘を出せると思います。いえ、これは絶対です!


さて、いつも通り休みを満喫している私ですが、いよいよ明日は現実と向き合わなければなりません。しくしく(涙)

何かは聞かないで下さい。色々あるんです大学生にも…。無理矢理の課金ゲーが。


…まぁ、勉強しない私めが悪いんですけどね。


それでは、いつも読んでくださってありがとうございます‼︎


ラネイシャは2つ前の話にチラッとだけ書いてあるので、ちょっと想像してみてください。


ではでは……


小椋鉄平

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