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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
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10/97

決闘!

  俺はベットで目をさます。


  「…」


  俺は黙ったまま考えていた。



 ♢ ♢ ♢



  夢を見た。相手の顔は見えない。

  不意にそいつが俺に向かって駆ける。そして俺にオノのような巨大なものを振り下ろす。


  俺は剣で防ぐがそいつの動きが早すぎて防ぎきれずに少しずつ斬られる。


  「うっ!」


  俺はそいつから距離をとって片膝をついてしまう。

  だがヤツの攻撃は止まらない。


  次々と迫る攻撃に耐えられず


  「うわぁああああぁぁぁぁあ‼︎」


  俺はそこで飛び起きた。


  「はぁはぁはぁはぁ……」


  そして今に至る。


  いくら死なないとはいえ、圧倒的大敗の実力だっ

 た。


  だが、負けるわけにはいかない。


  俺は勝つために行動を起こしていた。



 ♢♢♢


  朝のホームルームで


  「お前ら、今日相馬が模擬戦するから応援してやるように」


  と最後に言い残し去っていった。

  別に言わなくてもいいだろ。


  注目が一斉に俺に向く。


  「そうなの相馬くん?」

 

  カレンが代表して聞いてくる。別に相談して彼女になったわけではないが一番彼女が俺に対して裏表なく聞いてくれる。


  「あぁ、そうなっちゃったんだよ」

  「へぇ〜、相手は誰なの?」


  「ええと、それが…分からないんだ」


  俺は手を横に出し、それを上げたり下げたりする。


  「えー、誰かとわからない人とやるなんて!」


  みんなは俺に心配になってくれる。ありがたいことだ。

  だが、それ以上の重みがこの戦いにあるのは言うべきではないだろう。


  「みんな、ありがとう。応援してくれると嬉しいよ」


 

  その後、俺はある個室に向かう。


  「…」


  その部屋で少し時間を置いてそれから扉を開ける。


  「あっ、相馬くん」


  「ど、どうもわざわざ来てくださってありがとうございます」


  この人はクレーユ・サーモス先生。転入生の俺の為に補習をやってくれている人だ。


  「いいえ、それで…何がお聞きになりたいんですか?…と言っても大体は予想がつきますが…」

  「決闘のルールについてなんですが?」

 

  そう言うと先生は首を縦に振り「そうですよね」と頷いてから


  「まず決闘はいわば学校のランキング戦みたいなものだと思ってもらって構いません。ですが…1年生でもう既にランキング戦に出ている人はほとんどおらず、2年生に上ってかつ魔法科を選んだ場合にのみランキング戦への出場義務が発生します。それ以外の科の人は任意参加となっています

 でも、今はランキング戦の期間では無いのでこの勝敗で順位の変動は無いはずです。ただ、ランキングには影響はなくとも生徒同士の果たし合いの場合に決闘が行われることがよくあります。今回はその類なのでしょう」


  と、先生が推測を並べて問うたのだが、そこは言えないのでスルーした。


  「そうですか、それで勝利条件は何ですか?」


  先生は知りたかったのだろうがやれやれといった感じで言及されなかった。


  「勝利条件は基本的に相手を戦闘不能にすれば勝ちです。ただ、擬似空間(アストラルカーディガン)の外であれば出せる技に制限がかかります。その場合、相手への深刻なダメージのなる技は禁止発動してしに至らしめた場合は殺人と同じかそれ以上の罰が下されます。それではあまりフェアではなくなるかもしれないので擬似空間を作ったというわけです」




  クレーユ先生から話をして俺は決闘の場である闘技場に来た。

  正直なところまだ魔法を使ってほど無い俺にいきなり決闘なんかやってって言っても勝てる気がしない。さらに、俺の勝敗による影響が重すぎる。

  初めての感覚に足がすくみそうになる。普通の人間でやってた時でさえここまでのプレッシャーのある場面にはあったことが無い。それでいて逃げられない。


  本当にこんな決闘が嘘であってほしいと今この観客席に募った生徒を見た後でさえまだ思っている


  こんな時に力が出せない。俺はプレッシャーにはとことん弱かった。本当に自分に情けない。


  いざという時何も出来ない。俺は負けた時のリスクを脳裏に浮かばせてばかりいて一歩が踏み出せない。


  「何、やってるんですか?悠人」


  俺は後ろを振り返る。アーニャがいた。今まで姿を見てなかったが。


  「あなたは一人じゃ無いじゃ無いですか。少なくとも私がいます」


  と、背中を押してくれる。俺は今、とても幸せだと感じた。普通の人間だった時はこんなことあっただろうか。俺は意志が弱いなと笑う。

  俺は背中を向けてキザに手を挙げるだけにして、スイッチを切り替えた。


  俺が舞台に上がる。より一層観客の声が聞こえる。

 

  「では決闘を始める」


  アイナ先生が舞台から降りて下にある機会に両手を合わせる。

  手から青い粒子が出現すると舞台が青い膜のようなもので覆われた。

 

  (これが擬似空間(アストラルカーディガン)か…)


  触れてみても波紋が広がるのみで押してもビクともしなかった。


  だが、舞台にいるのは俺一人で対戦相手がいないのだが…。

  なぜかとても不吉な予感がした。すると外からアイナ先生の声が聞こえる。


  「じゃあ、準備はいいか?」

  「え…」


  「はじめ!」


  俺の声など聞こえなかったかのようにアイナが号令をかける。

  その瞬間いきなり殴られた。


  「よぉ〜、殴られたきぶんはどうだ?」


  不良の首から上だけが見える。俺はその顔を睨みつけてやる。


  「うおー、怖いねえ」


  また外から腹に一発くらう。


  「うっ」


  不思議だった。相手の顔は見えている。それから、どこまでが体なのか予想できた。だからこそ殴られない距離をとったはずなのに。

  俺が不思議がる表情を読み取ったのか「ハハハハハ………」と笑って。


  「誰が決闘が一対一だと言いましたか?ああん」

  「何、汚いぞ!不良ども」


  俺が文句を言うと、さらに四方八方から殴られたのであろう痛みが走り、倒される。


  「う、くっ!」


  (見えない敵にどう対応すればいい?炎をぶっ放せばいいのか?何でもいいとりあえずやってみるか)


  俺は集中して炎の呪文を頭の中で唱える。


  ドォーンと爆発が起き不良たちが煙によって輪郭だけ見えるようになる。

  俺はその1人に向かって拳をくらわす。奴らは硬くて逆に俺が痛い。


  「いってぇ!」


  周りから見えない嘲笑が聞こえる。


  (くそったれ!やっぱりダメなのか?俺ではダメなのか?)


  俺は意識が《一瞬》飛ぶ。




  『ねぇ、このままじゃあやられちゃうけど…いい

 の?』

  「いいわけねぇだろ!」


  話しかけてきたのは子供だ。

 

  (こいつ…なんか気にくわねぇ。だが…しのごの言ってる場合じゃねぇ)

  「なんかいい案があんのかよ」


  俺はとてつもなく嫌そうにしながら、仕方なく聞

 く。


  『あるよ。でも…そうだなぁ…。今の君には決定的に自分の性質が理解できていないんだよ』


  子供が相変わらず上からで話す。


  「…どういうことだ?」


  俺はこいつの態度が気に入らないながらも聞く。


  『そう。君はあくまで人間だ。それを忘れてはダメだよ。人間は何を長所に発展してきたか…それが分からないといつまでたってもダメかなぁ』

  「ヒントは無いか?」

  『うーん、そうだなぁ…。例えば人間が作り出した技術とか物っていうのはどういうものが起源にあるか…。それが分かればそれを使って勝利できるはずだよ』


  この子供の回りくどく、かつ分かりにくいヒントが妙に頭にくるがそこはグッと堪える。


  (人間が作ったものにどんなものが始まりか、か…おそらくそれがあればいいな…的な状況でその物が《思い》ついたんだろうな…。思いつくために何が必要か…)


  『ふふふ、もう分かってるじゃないか。じゃあ、あとは頑張るだけだね』


  と、少年の笑い声が遠ざかっていく。


  「お、おい!待て!」


  叫んだが遅かった。なんか子供の口が動いたような気がしてそれに集中した。

  目を見開く。


  意識が戻った。が、痛みも一緒に出てきた。


  「くっ!」

 

  俺は立ち上がる。


  「お前は諦めが悪いな。そんなに死にたいのか。肉体は死なないがな。ハッハッハ…!」

  「…バカじゃねぇの。死ぬのは…お前らだ」

  「そんな満身創痍で言われても何の説得力も無いけどな」


  と、不良どもが《笑っている》のが分かる。


  「こい!俺の居場所を守るために!」


  俺は右手でポケットからキーホルダーを取り出し、左手を片方のポケットに入れる。

  そして、力を込める。

  キーホルダーが剣の形に変わる。


  剣は悠人の右手に収まる。それをヤツに向ける。


  「そうか…それがお前の切り札か。…面白い。じゃあこっちもいかせてもらうぜ」


  と、見えないながらも武器をとったようだ。


  「これでお前の死は確定だ。うおりゃ!」


  武器らしきものは俺の首を正しく狙って振り下ろされる。それだけでなく、他の奴らの武器も四方から飛んでくる。

  俺は剣を回転させて、風圧を共に向かってくる全ての剣を当てて吹っ飛ばした。

  有象無象の不良たちが擬似空間(アストラルカーディガン)がつくる壁に叩きつけられているであろう音だけが聞こえてくる中、首から上だけが見える不良だけは飛ばされたが、壁にぶつかりはせず持ち堪える。


  「フン!今頃になって調子こいたって遅ぇんだよ

 !」


  不良のリーダーが俺に襲いかかる。さっきまでは手加減してたようだったが今、向かってきてる顔で本気できていると分かる。

  俺は逆に冷酷な目で俺に襲いかかるヤツを見た。


  ヤツが斧を振り下ろす。

 

  俺はその一撃を剣で受け止める。

  ヤツは連続で俺に向かって斧を振る。

  横、縦、斜め、などを変則的に振り下ろされる。しかも、受け止めるごとに斧を振る速さが徐々に早くなる。


  「………」


  俺は相手の攻撃を受け止めながらどこか上の空だった。というのも、一種のデジャブのような違和感があったからだ。

  しかし、何であったかは思い出せない。

  もう外からは何がどのようになっているかわからないほどこの攻防が続いている。


  俺は受け止めながらこのデジャブを何とか思いだそうとするが思い出せない。そもそも思い出せないからデジャブなのであるから当然、「あっ!」ということは起きない。


  ヤツが斧を振るリズムをもずらして攻撃してくる。


  「!」


  俺はかろうじて受け止めたものの、あまりの速さに剣と一緒に飛ばされる。

  そこで俺は剣を離さなかった。


  俺はヤツのいたところから5メートル飛ばされる。


  「今度こそ終わりだ」

 

  ヤツはニヤと笑って、俺に渾身の力で迫る。


  「オラァー!死ねー!」


  俺に向かって斧を振り下ろす………はずがヤツがピタリと硬直する。

  今度は俺が下を向きながらニヤリと笑みをつくる。右手は上げたままにして。


  「かはっ!」


  ヤツがおそらく感じたことのない痛みで倒れる。


  「勝者、相馬悠人!」


  とアイナが宣言した途端割れんばかりの歓声がいきなり聞こえてくる。

  俺もホッとして地面にへたり込む。


  アイナ先生が寄ってきて「よくやった」と小声で言った後、倒れた奴らの処理の指揮に向かった。


  俺は剣を“しまう”。そして舞台でクラスのみんなに手を振る。


  歓声が鳴り止まぬまま舞台を後にするとアーニャが待っていた。

  少し目の当たりが赤く見えるが………かなり殴られたから見間違いかもしれない。と、思ったが抱きつかれてそうでもないなと分かる。


  「心配かけたな。悪い」

  「そうです……とっても…心配してたんですからぁ…」


  と、再び泣かれる。


  (誰かにここまで心配されたことはあっただろうか…)


  俺はアーニャの背中をさすりながらさっきまでの決闘を振り返り、実に俺らしい地味な勝ち方だったなと笑った。


  《ただ、剣を“本来の長さ”に伸ばしただけなんて》


 

 




 

 

いつもお読みになって下さってありがとうございま

す!伏してお礼申し上げます。


やはり問題は最初の振りがどうかでしたね〜。今回も長めの構成にしました。…理由はわかってもらえると思います。


逆にここで止められたのがすごいと自分で思っています。皆さんに早くお見せしたいんですが、ここはぐっと堪えていただきたいと存じます。ぺこり


笑えるところが少なくてつらい

小椋鉄平

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