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『うちの旦那は…』  作者: 【Farfetch'd】ネギ愛好家
一章 「うちの旦那は…」
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「ハニートラップに沈む豚のような何か」

 うちの旦那は、お酒のお供にケーキを食べる。

 これはそんな旦那が甘い罠にはまった話である。


「これはどういうことかな?」

「えっと……」

 私は旦那に向かって一枚の紙を突き出した。旦那のお弁当箱を回収しようとカバンを開けたら出てきたのである。

「怒らないから正直に言いなさい、これはなに?」

 誤魔化そうにも決定的な証拠をこちらは握っているのだ。言い逃れは許さない。

「もうすでに怒ってるじゃん」

「つべこべ言わないの」

「ひっ……」

 旦那は私の本気さが分かったのか、謝った後にこう懺悔した。


「ご、ごめんなさい。食べ過ぎました!」


 私の手にある紙にはこう書かれていた。『健康診断結果表』と。


 あれは一緒に住み始めたころのことである。

 旦那はお酒のお供にケーキを食べる。ビールを飲みながら、ケーキをおいしそうに食べる旦那の姿は、何かが違うだろうと突っ込みを入れたくなってしまうものであった。

「僕は枝豆が好きじゃないからね」

 そう言いながら、ケーキを食べているが、他に良いつまみはあったはずである。ビールにケーキなんて、おっさんなのか女子なのかどっちなのだろうか。

「それにしても、夏くんなんか最近贅沢多くない?」

 結婚して引っ越してから、旦那は夕食でお酒とデザートを良く食べるようになった。実家暮らしだったころは、お酒は飲んでいても、ケーキまでは食べていなかったようである。おそらく親元を離れた後の贅沢というものであろう。

「どっちも糖質が多くて、私が同じことをしたら、体重が一気に増えそうだよ」

「僕は食べても太らない体質だからね!」

 とドヤ顔で言ってきた。実際旦那は細く、食べても筋肉も脂肪もつかなかった。

「そのまま続けていたら、絶対に太るからね」

 と、忠告するも、その食生活は一年以上続いていた。


 その結果がこれである。

「あれだけ、偉そうに言っていたのにこのざまですか…」

 健康診断の結果によると、旦那の体重は昨年より六キロも増えていた。おまけに心臓も、急激な体重増加に耐えきれずやや異常の数値を示していた。すぐさまの治療が必要な状態ではないのが、忌々しき事態である。

 私は心配で怒っているのだが、当の本人は、

「贅沢しすぎて、贅肉がついたぉ……」

 なんて、ほざいていた。さすがに頭に来た。

「今日からお酒とケーキの制限と、寝る前にダイエットするよ!」

「えぇぇぇっ!」

 旦那の泣きそうな悲鳴が聞こえた。

 私は旦那と一緒にダイエットを始めることにした。


『さあ、みんなメラメラ燃えてきてるかな?』


 そう、画面の中ではほっそりとしたシルエットのお姉さんが身体を動かしていた。最初はゆっくりとした動きであったが、徐々に激しい動きになってきていた。

「ほら、夏くんも真似をして」

 それにマネするように、私は画面の中の女性と同じ動きをした。

「ええ……」

「夏、くん……?」

「は、はい」

 旦那は往生際が悪く、いまだに渋っていた。そう、これは巷の女性に人気なダイエット体操である。十分間、同じ体操をすることで脂肪を燃やし美しいシルエットを作れると評判のアレである。実はこんなこともあろうかと、買っておいたのである。


『1.2.1.2』


 旦那もとうとうあきらめたのか、一緒の動きを渋々し始めた。予想はできたが、旦那の身体は固く、動きもぎこちなかった。

「はぁはぁ……」

 そして、すぐに息が荒くなっていた。

「夏くん、やっぱり運動不足だったんじゃ」

「うるさい!」

 負けず嫌いの旦那はそういうと、より動きを早くしていった。

「体操をしたら、骨が軋む……。主に、肋骨のあたり」

 何か旦那が自分の身体の異変を実況し始めた。


――十分後


「あー、気持ちよかった!」

 私は全身に心地よい疲労感を感じていた。学生時代ダンスをしていたためか、こういった動きに違和感を覚えなかった。これくらいの運動であれば続けていれば効果がありそうである。私はやる気に満ちていた。

一方旦那はというと。

「はぁはぁ、もうダメ」

 ソファーに座り込んでおり、汗だくで肩で息をしていた。おいおい、男子のほうがばてていてどうする。本当にうちの旦那は運動不足である。

「良い運動になったみたいだね。お疲れさまだね、夏くん」

 と、冷蔵庫からお茶を取り出し、旦那に渡した。

「ありがと」

 それを旦那はおいしそうに飲み干した。

「そうだ。ねえねえ、れな」

 飲み干した旦那が、ソファーに座ったまま訪ねてきた。

「ん?」

「あのDVDいつ買ったの?」

「えっと、先々月くらい、かな?」

 そう伝えると、旦那がにやりと笑った。嫌な予感がした。

「実を言うと、れなも太った?」

 図星である。なかなかに鋭い。

「ハハハ……」

「……」

「そ、そんなことないよ?」

「……(ジー)」

「ほ、本当だって」

 本当は一人でこれを踊るのが恥ずかしくて、一緒にやってほしかっただけだなんて、絶対に言えなかった。とりあえず、今日から二人でのダイエットが始まった。


【読了後に関して】

感想・ご意見・ご指摘により作者は成長するものだと、私個人は考えております。


もし気に入っていただけたのであれば、「気に入ったシーン」や「会話」、「展開」などを教えてください。「こんな話が見たい」というご意見も大歓迎です。


また、なにかご指摘がございましたら、「誤字脱字」や「文法」、「言葉遣い」、「違和感」など、些細なことでも良いのでご報告ください。


修正・次回創作時に反映させていただきます。

今後とも、【Farfetch'd】をよろしくお願いします。

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