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第4話

一刀たちが西涼に来て三月が経っていた。


「紫苑たちが来て本当に助かったよ」


「本当です。紫苑さんたちが来てくれたお蔭で、前と比べて仕事がやりやすく、規則正しい生活ができるようになりました!」


この部屋にいる紫苑に、そう言って喜んでいるのは碧と鶸であり、以前と比較して書類の量については新規事業等をしていることもあり、量的には変わっていないが、一刀や紫苑は書類の一環として、書類の分類をちゃんとしたり、文章の簡素化をするなどして、以前よりも仕事がやりやすくなり、文官たちにも好評であった。


「いいえ、それは碧様や鶸ちゃん、それに皆が頑張ったからであって、ご主人様や私は案を出しただけですから…」


「何、言ってるんだ。今までここで暮らしてきたけど、今まで民たちは生きる事で精一杯で明日の事など分からない生活を送っていたのに、三人が来てからあれだけ民たちの嬉しそうな顔見たことないよ」


「お母様……」


碧の言葉には民の生活が以前より少しよくなった半面、それが今までできなかった悔しさが出ていた表情を見て、鶸も母親の悔しい気持ちが少し分かった。


碧たちは貧しい西涼を少しでもよくする為に頑張ってきたが、如何せん頭脳となる人材が不在で意志があれど、その方法が思いつかなかった。


一刀たちは最初、街や村を見て回った。


これは西涼の街並みや風土、そして人々の暮らしを直接肌で感じ取りたかったからだ。


以前の外史でも視察等をして、様々な提案を行ったが、結果的に現状にそぐわない事が多く、提案の修正がよく行われた。


前は君主だから良かったが、今回は協力関係とは言え配下の身、提案をするにも相手を納得するな内容にしなければならかった。


そして色々と調べた結果、西涼は元々の農地が少なく開墾等するにも時間が掛かる為、まずは何らかの形でお金の確保を優先することにした。


まず一刀が提案したのは交易をすることであった。幸い西涼は西方交易の中間点に当り、西国の品々をこちらから長安、洛陽に持って行けば向こうの商人たちの買い付けの手間も省けることができるし、その分こちらが商品の値段を上乗せしても十分利益はある。


それを精強な西涼兵を護衛に付け、商品を持ち込んで商売をする。更に一般の商人にも一定の金額さえ払えばこの商隊に参加でき、態々護衛を雇う必要もなくなるし、持ち込む量も多くなる。


屈強な西涼兵に襲い掛かる賊は少ないが、だが兵たちには訓練よりも何時賊が出るかもしれないという緊張感がある為より実践的訓練の場となり、そして出動の間の給金も増えるということも利点に上げる。


そして洛陽滞在中に東にある珍しい品々を持ち帰り、これを武威や敦煌あたりで売ってまたお金にする。


更に洛陽にいる間、細かい情報は無理にしても何らかの情報を手にすることができるという利点もある。


という一刀の提案に紫苑や璃々以外、皆が驚いた。この時代のあまり商人の地位は高くなく、自分たちが商売してお金を稼ぐ事に碧たち全員、違和感はあった。だが一刀は言葉を続ける。


「土地から上がる祖は天候や世が安定していれば問題はないけど、それが悪天候で不作になったり、戦乱が起これば、それが入らなくなる。だがお金さえあれば色んな事に対応できる」


一刀の言葉に、まずは碧が実験的に商隊を洛陽に送り込んだ。そしてその結果、予想以上の利益を持ち帰ると碧は驚き、更に交易の拡大を決め、


そして紫苑は新たな特産品を作る事を提案。それは紫苑が現代に行ってから始めたガラス作り(ガラスアート)である。紫苑は学校では何でも教える事ができたが、主に美術を担当しており、元々紫苑がガラス作りを習い始めた理由は、見た目が綺麗で美術の教養を深める為、それに弓における集中力を更に高める為に覚え始めたのだが、段々趣味が高じてガラスランプ等も作れる様になった。


ガラス作り自体は古代エジプトでも作られているので、作り方さえ分かれば生産は可能なので試しに紫苑が幾つか作ると直ぐに売れ、この結果を見て工房を作り生産を開始。そしてガラスは見た目の美しさもあり売れに売れ生産が追い付かない状態となった。


璃々は西涼が牧畜が盛んで、大量に生産されている乳はあるが量が多すぎて使いきれない現状を踏まえ、少しでも日持ちする様にクッキーやパンケーキを作り出した。璃々は現代で一刀や紫苑が仕事で忙しい時、紫苑に代わって夕食など作ったりしており、余暇などケーキ作りなどをして料理の腕を上げていた。そして子供や女の子の観点から安価で皆に好まれる物を作り、これも子供や女の子だけで無く、大人からも好評を得ていた。


三人の提案はこれだけでは無く、色んな分野でも民に益を齎し、徐々に暮らしがよく目に見えて明らかであった。


「だけど他のところはまだまだだからね…私たちも紫苑たちに負けてられないわ、頑張るよ、鶸!」


「はい!」


確かに民の暮らしがよくはなっているが、まだそれが全部に行きわたっている訳ではない。しかし以前と比べ光明が見えている気がしたのか、碧の表情は笑みを浮かべていた。


その頃、調練場では


「キャ!」


「勝負ありですね。璃々様」


「ハァ…やっぱり強いね、渚(龐徳)さんは」


璃々と渚が勝負をしていたが、力及ばず璃々の負けであった。


「何をおっしゃいます。弓では私より上で、これで簡単に負けてしまったら、鶸様たちに教えている私の立場がありませんよ」


「そんな弓は弓でも騎射だったら、完全に私の負けだよ~」


「ですがこちらに来た頃に比べれば、馬の乗り方もかなり上手くなられましたよ」


「それは翠お姉ちゃんや鶸ちゃんたちが手取り足取り教えてくれて、それにご主人様が鐙を作ってくれたからね♪」


「鐙は助かりますね。あれが全部隊に回れば皆、騎射くらい出来るようになるでしょう」


璃々の現在の武の腕前は、接近戦では鶸たちと同等で、弓においては紫苑の次の実力を持っているが、騎射となれば乗馬に不慣れな為、一刀が璃々の為に鐙を作ったが、流石に馬の扱いに長けた渚に及ばない状態であるが、その差は確実に詰まっていた。


それを見た碧は鐙の生産を命じたが、流石に生産が追い付かず全部隊に回るのはもうしばらく時間が掛かりそうであった。


「それで、まだご主人様と翠お姉ちゃんとの勝負続いているのかな?」


「ええ、まだやっていますわ」


璃々たちが一刀と翠の方を見ると二人の勝負はまだ続いていた。


そして一刀と翠を見るとお互い一言も言葉を発せずに打ち合い、見物人である蒼や蒲公英も茶々を入れずに見守っている。


「うおおおおおお!」


翠が渾身の一撃を一刀にぶつけるが


“ガキィン!”


お互いの武器の金属音が鳴り響き


「あっ!」


翠の訓練用の槍を空中高く跳ね上げて、模擬刀を翠の首筋に当てる一刀。


「勝負ありだね」


「クッ…」


翠は負けた顔を妹たちに見せるのか辛いのか、俯きながら悔しがる。


「あはは、お兄様強いね~」


「お姉様、絶対に今度こそ負けない豪語していたのに、蒼ちゃんこれで何勝何敗だっけ」


「え~っと、確か翠お姉様の2勝5敗かな?」


「うっせぇ!次こそ絶対に勝ってやるからな!!」


負けても尚も意気軒昂な翠を見て、一刀は苦笑いを浮かべていたが、すると慌てた様子の兵士が調練場を通り、城内に入って行くのを見た。


「あの人凄い慌てていたね…」


「何かあったのかな?」


蒼や蒲公英の疑問に渚が答える。


「あの様子を見る限り、恐らく何らかの変事があったかもしれませぬ。翠様、ここで稽古を止めた方がいいかと」


「そうだな…直ぐに片付けて、お母様の所に向うぞ」


翠はそう指示すると、直ぐにその後に別の兵士が現れ、碧のところへ来る様に言われると碧の執務室に向った。


一刀たちが部屋に来ると碧や紫苑、鶸が既におり、そして碧は全員揃ったことを確認すると、苦虫を潰した表情をして


「五胡の連中が現れたわ」


碧の一言を聞くと翠や鶸は勿論、掴み所のない蒼や悪戯好きの蒲公英、渚たちの目の色が変わる。


「それでお母様、奴らの兵はどれ位いるんだ」


「報告では3万よ」


「厳しいね…まだ向こうは本気じゃないと思うけど、こちらは直ぐに動かせる兵は1万5千、苦戦は免れないよ」


「何、言ってるんだよ、鶸。兵が足りない分は、気合と根性で補えばどうにかなるって」


「ハァ…翠お姉様、幾ら何でも足りない分をそれだけで補うというのは無理でしょう」


「翠お姉様…あんまり馬鹿な事言っているとお兄様に嫌われてしまうよ~」


「もう相変わらずお姉様って、脳筋的発想なんだから」


妹たちは翠の発言に呆れ帰り、容赦無い発言をする。


「翠…貴女もう少し頭を使って頂戴、このままだと私、心配で隠居する前に貴女の事が心労で倒れてしまうわ」


「お母様、それどういう意味だよ!」


碧は翠の話を無視して、少し考え一刀に話を振る。


「それよりも一刀さん、紫苑、璃々ちゃん。あなたたち今回出陣して欲しいの」


「俺たちですか、別にいいですよ」


一刀たちは遂に戦いの時が来たかと思い、気を引き締める。特に今回は璃々が初陣という形になってしまうからだ。更に碧は言葉を続ける。


「それとあなたたちの「天の御遣い」という肩書を今回利用させて貰うわよ。それがあれば兵の士気が上がるし、勝った時、今後五胡に与える影響が大きいから」


碧は自分達を有利にするためには何でも利用する。そうすることで兵数の差を少しでも補おうという狙いがあった。


だが、碧のこの決断は、結果的に良い結果と最悪な流れを産む事はこの時点では誰も分からなかった。


一刀たちにしたら、碧たちに助けてもらったという事実があり、そして自分たちがこの世界で何の目的で来たのか分からない今、まずは愛する紫苑や璃々を守る為に戦い、そして助けて貰った碧たちの為に戦う。恐らく二人もそう思っているだろうと。


取り敢えず今、集められる兵だけ集め、翌朝に出陣することが決まった。


その日の夜、璃々は中庭で夜の素振りをしていた。手にはこの世界で作られた愛刀「秋桜」が握られており、またこれとは別に弓「飛鵬」も作られていた。


すると一刀が現れ


「璃々、眠れないのか」


「うん…明日、戦いと聞くとね。流石に緊張して…」


普段、明るい璃々も流石に初陣ということもあり、緊張して表情も硬かった。そんな璃々に一刀は少しでも張り詰めた気を少しでも気が解れる様にという感じで話しかける。


「璃々の気持ち、俺にも分かるよ。俺の場合、昔、皆の後ろに居ることしかできなかったからな…」


「でもあの時、ご主人様が一番上だったのでしょう?トップが一番前に居たらそれこそ迷惑だよ」


「確かにそうだけど、皆に戦わせて、立場的に自分は後ろに居なければならないというのは理解できたけど、最後まで慣れなかったし。悔しくもあったんだ。どうしてあの時までに、もっと鍛えておかなかったのかとね。だから3人で向こうの世界に戻った時にこれじゃ駄目だと思い、遅まきながら剣の練習に一生懸命したんだ」


「だけどまさか、ここに来てこれが役立つとは思わなかったけどな」


一刀が一生懸命練習していた姿は、璃々はずっと見ていた。昔は愛紗たちに完膚無きまでに叩きのめされたことが多々あったが、懸命に努力した結果、今はこの世界の翠に勝つまでになっていた。だけど一刀がここまでして何故強くなりたいのか璃々は聞いてみた。


「どうしてご主人様は、ここまで強くなりたいと思ったの?」


「強くなりたい理由ね……それは大切な人を何がなんでも守ること。そしてあんな思いを二度としたくない為。それが、俺が強くなりたいと思った理由かな」


あんな思いとは、一刀と紫苑が引き裂かれようとなった以前の外史の事を言い、璃々もこの話は二人から聞いていた。その時の璃々は別の場所にいたが神隠し的な事をされ、結果的に一刀たちと一緒に現代に来たという経緯があったから、一刀の言いたい事は分かっていた。


「だから俺は大切な人、紫苑や璃々を守るためなら何だってやるよ……それこそ人を殺してでもね」


「ご主人様……」


一刀の言っていることはかなり過激であるが、そこまでして守りたい中に自分が入っていることに内心嬉しく思っている璃々。


「それと…強くなりたい思った理由、実はもう一つあるんだ」


「えっ、何々教えてご主人様」


「ああ…実は昔、紫苑と約束をしたことがあるんだよ。紫苑が俺に身も心も全てを捧げて仕えると宣言した時に俺も紫苑にこう約束したんだ。『今よりもずっと良い男になる。紫苑が言った言葉を絶対に後悔させない』とね」


「それでおか…お姉様は何て言ったの」


璃々は早く一刀の答えを聞きたくて、紫苑の事を癖で「お母さん」と言いそうになるが慌てて訂正する。


「ああ頭を深々と下げ笑顔でこう言ってくれたよ。『期待しておりますよ。愛しい私のご主人様』ってね。だから、紫苑の横に並んでも恥ずかしくない男になりたいと思っているけど、まだまだ紫苑に追い付いていないかもね…」


璃々は、一刀の言葉には男としてのプライドというか意地という物を感じ取っていたが、最後の言葉について疑問を覚えた。


だが一刀が自虐的な言葉を吐くのには理由があった。自分は努力して成長をしているが、紫苑も現代に来てからこちらの生活に慣れようと今だ努力し続けていて、若しかして自分はまだ紫苑の横に追い付いていないのではないかと。


「そんな事ないよ、ご主人様。ご主人様が今までどれだけ努力してきたか、私は知っているし、お姉様も分かっている。それが分かっているから、ご主人様に付いてきたんだよ。そしてこれからも私たちはご主人様に付いて行くから」


「璃々…」


「だから、自信を持ってご主人様♪」


璃々は笑顔で逆に一刀を激励する。


そして璃々は頭を下げ、改めて宣言する。


「ご主人様、私、北郷璃々は、“全身全霊”を持ってご主人様にお仕えする事を誓います。これはご主人様たちが何を言おうともこの決意を変えるつもりはありません」


璃々の決意を聞いて、一刀は璃々の意志がもう変わる事が無いと諦めの心境になっており、紫苑と同じような事を宣言したことには、紫苑に負けたくないという意志の表れかもしれないと思っていた。


「ハァ…本当、璃々は誰に似たんだろうな」


「ご主人様、それは聞かなくても分かるでしょう」


「確かに」


「あら、璃々。一体誰に似ているのかしら♪」


「紫苑!」


「えっ!ちょっと私たちの話、聞いていたの!!」


「ええ、それは二人の話、ちゃんと聞かせて貰いましたわ」


「因みに何処から聞いていたの…」


「フフフ、璃々が眠れないところからですわ」


「最初からじゃないか!」


「最初からなの!」


紫苑の回答に二人は突っ込みを入れる。


紫苑は、二人の突っ込みを聞き流し、璃々に先程の決意の再確認を行う。


「璃々、貴女の決意さっき聞かせて貰ったわ。引き返すのなら今の内よ」


紫苑は璃々の決意が固い事は分かっているが、形式上敢えて聞いてみた。


「今だけお母さんと呼ぶよ。お母さん、私の決意を甘く見ないでね。それにご主人様と私を結ぶことを容認していたのはお母さんだよ」


「ええ分かっているわ、璃々。私が聞きたい事はそんな事じゃないわ、貴女、ご主人様が他の女性を愛する事を容認できるかどうか、それを聞きたいの」


紫苑は璃々に更なる覚悟を求めた。この世界に来てから既に蒼や蒲公英のアプローチは来ているが、今のところ二人は翠を気遣って行動には移していないが、今後どうなるか分からないし、場合によっては政略関係でそういった問題が出てくるかもしれない。だから後になって話が拗れる前に璃々に改めて確認したのだ。


「う~ん、ご主人様が昔から気の多いことは分かっているよ。だからね、せめて手を出すにしても私たちが認めた相手だけにして欲しいという気持ちかな…」


璃々は、複雑な表情をしながら答える。だが璃々の答えでも現代人の感覚からすれば斜め上の答えでもあるが。


「あらら、璃々。貴女も昔、私が言ったことと同じ様な事を言っているわね」


「えっ?どういう事」


紫苑は璃々に以前の外史で似た様な場面があり、璃々のその時に言った内容を教えると璃々は納得した。


「それと璃々、貴女にもう一つ言っておくわ。今後、ご主人様を巡って対外的な関係も出てくる可能性があるの、下手をしたら軋轢を生む場合があるわ。だから…」


「いいよ。お母さん、私、序列なんて気にしないから。それにあっちじゃ仮にご主人様と結ばれたとしても正式に嫁にはなれないからね」


「だから嫁に慣れるだけまだマシだもん。それに極端な話を言うと、順位なんて小さいことを気にしてたら、浮気性のご主人様に付いていけないよ」


「浮気性って、璃々…酷くないかそれ」


「あら、璃々が言った事が間違っているとでも」


「……」


一刀の女性関係を全て把握している紫苑の一言に言い返せない一刀。


「あと、ご主人様。さっきご主人様が私に追い付いていないと仰りましたが、そんな事ありませんわ。私の期待を遥かに超え、期待以上になりました」


「確かに武力という点だけを見れば私の方が上かもしれません。しかしご主人様は、元々力や知識だけで皆を纏めた訳じゃないでしょう。皆を正しい道に導いてくれる太陽な様な存在なのです。だから私は愛して付いてきたのです。だからご主人様には何時までも変わらずそんな存在で居て欲しいのです」


「そうか…ちょっとは気が楽になったよ」


「良かった、ご主人様。元気になって、まずは私たちを平等に愛してね♪」


璃々が一刀の腕を取ると


「お母さん、こっちも空いているよ」


璃々はもう一つ空いている腕に紫苑に腕を絡める様に進める。


「あら、璃々気が利くわね♪」


「ちょ、ちょっと待て、二人とも!!」


二人の異変に気付いた一刀は、この場から戦略的撤退を図ろうとしたが、そうは問屋が卸さない。既に、一刀の体は二人によりがっちり掴まれており、一刀はここから逃げ出す事が出来なくなっていた。


「あれ~ご主人様。親子丼が御所望と聞いていたんだけど」


「ちょっと待て、璃々。それ誰か聞いたんだ…と言っても答えは一人しかいないよな」


一刀は当事者である紫苑の方を見るが、紫苑は一刀の視線を無視して逆に璃々に確認する。


「私は良いけど、璃々、貴女はそれでいいの?」


紫苑も璃々の“最初”なので流石に遠慮しようと考えていた。


「うん…私も最初はそう思ったけど、やっぱり二人仲良くしているところを見て研究したいな~と思って」


「流石、私の子ね♪」


「知らないぞ、もう…」


璃々の言葉を聞いて、改めて流石に性に貪欲な紫苑の子である感じた一刀は、最後にこんな言葉しか出すしかなかった。


翌朝、歩き方が変な璃々を見つけた翠であるが、最初怪我でもしたのではないか心配していたのだが、すると蒼や蒲公英は璃々の歩き方の原因に気付いて、これを翠に教えると


「★■※@▼●∀っ!?」


「出陣前に何やってるんだよ!このエロエロ魔人が!!」


赤面になりながら、一刀に鉄拳制裁をしたことは言うまでも無かった。


「翠ももう少し、璃々ちゃんみたいに積極的になればいいのだが。ハァ…私の孫が見られるのは何時になるやら、こうなったら蒼や蒲公英にけしかける事も考えないとね」


これを見ていた碧は、翠の奥手に歯痒さを隠せず、蒼や蒲公英を唆せる事と考えたが、まずは五胡との戦いに集中することに意識を切り替え、出陣したのであった。





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