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第25話


「炎蓮さん、呉郡太守就任おめでとうございます」


炎蓮は黄巾党討伐の褒賞として呉郡太守就任が正式決まり、その祝いとして一刀と紫苑は炎蓮が宿舎している屋敷に祝いの品々を持参してこうして祝いの言葉を述べていた。


「ありがとうよ。でもよ、張角たちの首を取った褒賞としては少ないと思うが、まあ今迄の印象が良くないからこれも仕方が無いか」


炎蓮の愚痴が分からない訳でも無いが、炎蓮のこれまでの行為(荊州刺史王叡の刺殺)や一刀討伐の失敗もあったため、今回の褒賞が低く抑えられたという感はあった。しかし孫呉の故郷の地でもある呉郡に錦を飾って帰れる事もあって褒賞の少なさも我慢できる範疇であった。


「それでどうだった、陛下の会談は?」


「取り立てて変わった話はありませんでしたよ。敢えて言えば劉協様の行方について心配していましたが…それで他の方の褒賞はどうでしたか?」


「ああ、曹操が陳留太守で、それであの劉備という一刀に因縁付けた女がいただろう」


「ええ覚えていますよ。その劉備さんがどうかされましたか?」


「あの女が、陛下に一族の末裔として認められた上『宜城亭侯・平原郡の相(相は諸侯の領地を治めた宰相を指すが、地位職責的には郡太守同様)』を授けられたぞ」


「えっ?確か劉備殿は炎蓮殿や曹操殿と比較しても大した武功は上げていないはず、余りにも破格な褒賞ですわ」


「確かに紫苑の言う通りです。炎蓮さん一体どういう事ですか?」


紫苑と一刀は劉備の破格な褒賞に何か裏があるのではないかと疑問の声を上げる。


しかし炎蓮の口から予想外な言葉が出る。


「ああ、あれは陛下の思い付き人事だな」


「えっ?陛下のお声掛かりの人事ですか?」


「説明するぞ…」


炎蓮は劉備の褒賞の経緯を説明する。

<pf>

~洛陽・謁見の間~


『ご尊顔を拝し奉り、恐悦至極にて御座います。私の名は劉備、字を玄徳と申します』


劉備の師匠である盧植から、劉備が義勇軍を立ち上げ今迄の功績及びそして劉備の愛剣である『靖王伝家』を劉宏に差し出す。


劉宏もある程度宝剣等の見る目があるからじっくりと眺める。


『ほう……美しい剣で可也の業物じゃのう。それに中山靖王の刻印もされているではないか!』


「はい陛下、私が調べたところこの『靖王伝家』は確かに中山靖王が所持していた記録が残っており、この剣を所持していることから劉玄徳が中山靖王の末裔である事の何よりの証かと存じ上げます」


盧植は将軍でもあるが学者としても見識が高いので、彼女の言葉を聞いて皆、納得し掛けたが…


「ちょっとお待ちを陛下。確かに剣は本物かもしれぬがこの娘自身が中山靖王の末裔という証明するものが無いではないか、もしかしてこの娘が何処からか奪い取って来て自称しているかもしれませんぞ」


反対の声を上げたのは何進であった。何進は自分の姪の劉弁を即位させる為に例え傍流でも皇族が増えるのを嫌って反対の声を上げる。


「何大将軍、これは異な事を。そのような盗人であればわざわざ義勇軍など結成せずとっとと剣を何処かで売り飛ばしていますわ」


何進の意見から真っ向から反論したのは盧植である。


このまま二人が口論するかと思われたが、思わぬところから声が掛かる。


「劉玄徳よ」


「はい」


「そちは何故義勇軍を立ち上げたのじゃ」


「はい!漢王朝の元で民を苦しみから救い、皆が笑い合えるような、そんな明るい国にしたい為に義勇軍を立ち上げました!」


劉備は自信満々に告げる。劉宏はそんな劉備の姿を見て、皇帝に即位した当時の自分と重ね合わせていた。


それは劉宏が純粋に国の事を思い自分の力で漢という国を立ち直らせようとしていた時と今の劉備がよく似ていたからだ。


(「この娘、まるで昔の朕を見ているみたいじゃ。その理想どこまで貫けるかやってみるが良い。しかしこのままではこの娘の理想に辿りつくまでに時間が掛かり過ぎる。しかし地位を上げることによって自分の私利私欲に変わればそれまでの事」)


そんな劉備を見て劉宏は決断する。


「よし!今回の褒賞として劉玄徳を漢の血筋に相応しくあるべく、そちを宜城亭侯に封じ、そして平原郡の相に任ずる!!」


「へっ!?」


「ちょっとお待ちを陛下!そんな戯言を信じるおつもりですか!?」


「陛下、まだ結論が出ぬ内にこのような褒賞を与えずとも、まずは恩賞として何処かの県令に任じ、それから結論を出しても遅くはないですぞ」


劉備は驚きの声を上げ、何進と張譲は反対の声を上げるが


「黙れ!何進、張譲!!これは劉玄徳がれっきとしたとした漢の宗室の末裔でありがながら、長きの間不憫な思いをしたにも関わらず、漢のために義勇軍を立ち上げたその心、立派では無いか!それに対して今迄何もしなかった朕からの僅かながら罪滅ぼしじゃ!!劉玄徳どうじゃ受け取ってくれぬか」


何進、張譲らは劉宏からそう言われると引き下がるしか無く、そして劉備もこれを受けるしか無かったのであった。


という内容であった。


これを聞いて一刀と紫苑は劉宏の胸の内が分からないので返答しようが無かったのであった。

<pf>

「そこで一刀、話がある」


「何ですか?炎蓮さん」


「今回の褒賞で私たちは呉郡に本拠地を構える。そこで呉郡に入る際雪蓮も一緒に連れて行きたい」


「あっ…なるほど炎蓮さんの後継者である雪蓮さんを今回呉郡の有力豪族や民に見せる必要がある訳ですね」


「その通り、勿論その時にはこちらで預かっている蒲公英も当然そちらに帰すつもりだ」


これから孫家は呉郡で新たな勢力を築く必要がある。そのためには人手が1人でも欲しいところなので雪蓮の帰還は当然の話だ。


「ちょっと待ってお母様、そんな話聞いてないわよ!」


「当たり前だ。今、初めて話をしたところだ」


雪蓮は突然の帰還命令に驚きの声を上げるが炎蓮はそれを一蹴する。


「それで雪蓮、一刀の子種を貰う事はできたか?」


「ゲボっ!」


「ちょ、ちょっとお母様!な、何言っているのよ!!」


炎蓮の発言に一刀は咳込み、雪蓮は明らかに動揺の声を上げる。


「何だまだか…雪蓮も意外と奥手だったとは…」


「炎蓮さん、同盟したとは言えそれは不味いでしょう。婚姻前の娘さんを傷物にはできないですよ」


炎蓮の発言に一刀が窘める。


「炎蓮さん、確かに私たちは同盟を結びましたが流石に雪蓮さんと婚姻するなら兎も角、今回様子見だけの現状では無理がありますわ」


正妻の紫苑にそう言われると炎蓮も紫苑の承諾無しに無理強いはできない。


「フン…それでは今回は仕方が無いな。それで雪蓮、お前の見立ては一刀はどうだ?」


炎蓮は残念そうな表情をしながら雪蓮に一刀の人物評を聞く。


「そうね…お母様。これが答えよ」


雪蓮はそう言うと行き成り一刀の顔を両掌で掴んで口付け…否、雪蓮は自ら舌を入れて一刀の口腔内を貪る。


「ほう…」


「まあ…」


それを見て流石の炎蓮と紫苑も驚くしかない。


そして雪蓮の口が離れる時も惜しむ様に一刀の舌を吸い続けた。


一刀の顔は雪蓮の口が離れた後でも今にでも目玉が飛び出しそうな驚きをしており、そして一刀の唇には雪蓮の紅がべっとりと残っている。


雪蓮はまだ鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている一刀と紫苑の表情を見て満足な表情を浮かべる。


「これが答えよ。お母様」


「ワハハハ!!」


雪蓮の実力行使の答えに炎蓮は笑いが止まらず、笑いが収まると


「流石俺の娘だ。あっ、そうだ。蒲公英を帰す際に俺の次女か三女をどちらか付けて送る。この二人もよく吟味してくれ」


炎蓮は笑いながら言うと、紫苑も漸く我に戻り


「ぜひお待ちしていますわ」


正妻としてのプライドか怒りもせず穏やかに返事をしたのであった。


「今度は、一刀が江東まで来てね。その時は“隅から隅まで”案内するわ♪」


雪蓮の言葉に一刀は返す言葉が無かった。


そして1週間後、それぞれ洛陽を離れ一刀たちが西涼に(洛陽在住の流民込みで)、炎蓮たちが呉郡にそれぞれ帰還した。


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