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第21話

皇甫嵩から非戦闘員の避難と受け入れが認められたので、一刀たちは行動を開始する。


まず避難する非戦闘員には武器等の所持を禁じ、生活道具等の持ち込みだけしか許さず、みだりに騒ぎを起こす者には厳罰に処すという指示を出した。


「全員よく聞け!大人しく従う者には本陣にて食糧の用意がある!だが、指示に従わない者や抵抗する者は容赦なくぶっ殺す!!」


そして翠が物騒な発言を大声にして言うが、それよりも食糧と言う言葉に目を輝かせた非戦闘員は我先にと腰を上げて翠の指示に従い、きびきびと動き出す。


そして本陣では鶸が炊き出しの準備をして非戦闘員の受け入れを行っていた。


城内では何とか食事が取れていたものの量が少なく、食料の枯渇も時間の問題であった。だから主戦派の兵の中には食事が取れるという事で一部の者は武器を捨て、非戦闘員と共に避難する者も居た。


そんな中、一刀と紫苑は無事周泰の護衛の元、城外へ脱出できた張三姉妹と共に非戦闘員たちの指導者の者たちと面会していた。そんな中指導者の中の最年長と思われる者が


「三姉妹を保護していただき、そして我らにも食事さえちゃんと頂け、人間らしい生活を送る事が出来れば我々皆、『御遣い様』の下に降りましょう」


指導者たちは既に張三姉妹の処遇については聞いており、非戦闘員たちの処遇についても聞いてはいるが指導者たちは一刀の口からその処遇を直接聞きたかった。


「あなた達には涼州で三年程の開墾や内職等の労役を科し、その間に問題を起こさなければ死罪を免じます。勿論その間、労働への対価として賃金や食料を渡すつもりでいます。そして罪を償い終われば開墾した農地を今後の生活の為、田畑の割譲をする事を『天の御遣い』として約束しましょう」


一刀は敢えて『天の御遣い』と言う言葉を使った。一刀たちは漢との和平で『天の御遣い』の使用を暗黙の了解という形で認められていることから、ある意味皇帝と同等とも言える立場である。だからこそその言葉は非常に貴重であり重要であった。


そしてこの言葉を聞いて指導者たちは一刀たちに平伏し


「我ら黄巾の者、姉妹を保護していただいた証として、これからは『御遣い様』の下で力を尽くします」


この話は黄巾党が『天の御遣い』に降ったという事で話が広がり、これ以後各地の黄巾党の残党は官軍に討伐を受けた者を除いて、涼州へ出向き降伏する者が相次ぎ涼州の人口増加の切っ掛けを作った。


そして張三姉妹はしばらくの間、非戦闘員と共に生活することとなった。


一方、城攻めは非戦闘員の避難後行われたが城内の兵たちは逆に非戦闘員が居なくなった分、漸く食事の量が増えていつもより意気旺盛になっていた。ただ既に城内から張角たちが居ない事に気付かないままに…これについては元々張角たちが度々隠密行動を取っていたため所在が明らかになっていなかったのと主戦派は自分たちが好き勝手に行動していたため、首領である張角らを放置していたこともあり簡単に城外へ脱出できたのであった。


一刀たちは保護した張角たち並びに非戦闘員については紫苑と鶸に任せて、翠と雪蓮を引き連れ炎蓮の陣に向かう。


「遅くなりました、炎蓮さん」


「やっと来たか、アンタたちが来るのを待っていたよ」


そして城攻めは総攻めで行うが、城門の一つについては炎蓮が受け持つこととなりそのバックアップとして一刀たちが付く。


「聞け!我が孫呉の精兵たちよ!!あそこに残っている黄色の蛆虫どもの命を食い散らかせ!そして“張角”どもぶっ殺せ!!総員、鬨の声を挙げよ―――――!!」


「オオオオオォォォォ―――――!!!!!」


炎蓮の殺気が籠った檄は兵士たちの士気が上がり早速攻撃を開始する。


攻撃と同時に城内から火の手が上がり、城内の兵士に動揺が見え城壁にいる兵士たちが右往左往する姿が明らかだ。


勇猛果敢な孫堅軍はあっという間に城門を打ち破る。


そして予定通り城主の間に行こうとするが、東門を攻略していた曹操軍がこれまた城門を間もなく打ち破ろうとしていた。


これを見た翠が


「不味いな、ご主人様。このままじゃ曹操軍と競争になってしまうぜ」


翠が言った通り、このまま曹操軍が城内になだれ込めば張角らの首級を奪う為の競争となり、炎蓮らが予定通りの行動を取れない恐れがある。


「こうなったら一刀、黄巾党の奴らを追い掛けて曹操軍と一緒に巻き込めば」


「そうだな、よし!敵兵を逃がすな!もっと追い詰めろ!!」


雪蓮の助言で一刀は敵兵を追い込み曹操軍に押し付ける策を取る。


曹操軍は城門を突破するも一刀たちの軍が敵兵を追い込んだ為、混戦状態になっていた。


「曹操様!城門を突破できましたが、先に城内に侵入していた孫堅軍と北郷軍が東門まで敵兵を追い込んだため乱戦状態となり、このままでは我が軍の兵も城内に入れば同士討ちになってしまいます!!」


「先に孫堅軍が入っていたとはね…」


伝令の報告を聞いて曹操は先に孫堅軍が城内に突入されていたことに残念な表情を浮かべていた。


「華琳様、ここは私が突入して道を切り開きましょう!」


「それは無茶だ姉者、それでは味方である孫堅軍や北郷軍までも巻き込んでしまう可能性がある」


「それじゃ張角たちの首をみすみす孫堅軍に取られてしまうではないか!」


兵の報告を聞いて、姉の夏候惇が何とかしたいと焦るのを妹の夏侯淵が何とか宥めようとしている。


「……仕方ないわ。桂花」


「はい、華琳様」


桂花と呼ばれた少女は名を荀彧、字を文若と言い曹操軍の軍師を務めているが男嫌いが酷く、現在陳留で留守を務めている曹洪(真名を栄華)と共に曹操軍の男嫌いの二大巨頭と言われ曹操軍の男性陣からはかなり嫌われていた。


「仕方ないわ。取りあえず城外に部隊を配置して、城外から逃げ出そうとしている将らしき者を捕らえなさい」


曹操は流石に乱戦になっている状況では城内突入を諦め、張角たちが脱出することを想定して荀彧に指示を出したが結果的には無駄であった。


孫堅軍は炎蓮が“張角”、祭(黄蓋)が“張宝”、程普(粋怜)が張梁を討ち取り戦いを終えた。


孫堅は“張角”らの首級を持って皇甫嵩の陣に向かう。そして一刀ら各諸侯も同じく皇甫嵩の陣に向かった。


そして炎蓮が皇甫嵩に“張角”らの首を差し出すが、官軍内でも張角らの顔を知る者が居ない。そこで一刀が非戦闘員の中で“張角”らに無理やり歌わされていたという少女3人が居るので、その者に確認させることを提案すると直ぐに承諾され、紫苑に連れられ天和ら(名を捨てた為、ここから真名のみ)が登場。流石に3人は観客等の視線で場慣れしているので、迫真の演技で諸侯たちにばれないよう


「この3人たちに私たちは…無理やり歌とか歌わされ、そして酒の席での酌とかさせられました」


「そして夜の相手をしろと無理やり襲われそうになって…」


「それを断って、非戦闘員のところ紛れて逃げ出してきたのです」


炎蓮らが首級を上げた“張角”らの人相の悪さや人和らの証言もあり、張角らの顔を知らない皇甫嵩や他の諸侯たちもその言い分を信じるしか無かった。


ただこれを見ていた曹操は今回の一刀と孫堅らの手際の良さに疑念を抱いていたが、流石に反論するだけの証拠も無いので黙るしか無かった。だがそれよりも一刀と孫堅が既に手を組んでいた事にも驚いていた。何故誇り高い孫堅がどうして一刀と手を結んで行動しているのかと、これを見て曹操は一刀と孫家について今後の方針を練り直す必要があると感じ取った。


一方、官軍は黄巾党により荒廃した民心を安堵させる為、しばらく慰撫する必要があったため軍勢を留め事後処置に当たっていた。


その間、一刀たちは降伏した黄巾党の非戦闘員を涼州に送り込む準備を整えていた。一刀、紫苑、翠、雪蓮は黄巾党討伐の褒賞を貰うため洛陽に行くこととなったが、そうなると涼州に帰る将が鶸1人になり、流石にそれはきついため応援として涼州から渚(龐徳)を呼ぶことにしていた。


因みに非戦闘員の食料については孫家の家臣である魯粛の実家が商家であったので、前借りという形で確保出来ていた。


そして今日、渚が到着する予定なのだが…


「ご主人様、もうすぐしたら渚が到着するけど…ご主人様、ここに渚と共に璃々呼んだか?」


「いいや、呼んでないけどどうして?」


「おかしいな…さっき帰って来た者の話だと璃々を見たと言ってるんだよ」


「はぁ!?」


翠から話を聞いて一刀は驚きの声を上げ横に居た紫苑にも事情を聴く。


「紫苑、璃々がここに来る話聞いてる?」


「いいえ、私も今聞いて驚いていますわ。でも…」


「でも…、何か心当たりあるの?」


「もしかしたら、あの子ご主人様に会いに来たかも…」


「えっ~~~!」


紫苑の指摘に一刀は再び驚きの声を上げる。


「何で…」


「あの子、ご主人様と出会ってからこんなに長く離れた事がなかったから……」


「ハァ…なるほどね」


紫苑の話を聞いて漸く一刀は理解したが、流石に命令違反について看過することができないが、取りあえず渚の軍勢が来るのを待つことにした。


そして半刻後(約1時間後)、渚の軍勢の中にやはり璃々の姿があった。


流石に兵たちが居るので、兵の前で璃々を説教する訳にも行かず、一刀は渚に労いの言葉を掛けた後


「璃々、ちょっと来なさい」


翠と鶸に後を任せ、一刀と紫苑は璃々を別の所に連れて行く。


「璃々!どうして仕事をほったらかしにしてここに来たんだ!!」


「だって…ご主人様に会いたかったんだもん!」


璃々のストレートな返答に一刀と紫苑は空いた口が塞がらない。


「それでも…少し我慢すればいい話だろう!!」


「だって~」


「だってじゃありません!本当に璃々は…誰に似たんでしょう」


「それはお母さんだと思います」


紫苑の呟きにこれまたストレートに返事をする璃々。


「そうよね…」


璃々のストレートな回答に思わず納得する紫苑。


「失礼します。渚ですが入ってもよろしいでしょうか?」


一刀は渚の入室を許し、今回の経緯を聞くことにした。


渚の話では何と璃々が渚の軍勢の兵士としてなりすまして加わっていたが、行軍途中で碧と真里の書状を持った使者が現れたことにより璃々が軍勢に加わっていた事が発覚したが、碧が事後承諾という態を取りそのまま璃々は渚と共に来たのであった。


「そして一刀様、碧様(馬騰)と真里(徐庶)から手紙を預かっています」


一刀は二人から書状を見たが大まかに言うと現在、五胡については一刀たちを恐れ出兵する可能性がほとんどないということと真里が怒り心頭で璃々が涼州に帰った時は馬車馬の様に扱き使う事が書かれてあり、なし崩し的あるが璃々をそのまま一刀たちと同行する事について承諾した内容であった。


一刀は溜息をつきながら


「ハァ……璃々、取りあえず同行することを認めるが、この罰については涼州に帰ってから言い渡すから」


「え~~!」


「え~~じゃありません!璃々!!また同じ様な騒ぎを起こす様だと…ご主人様とは別に罰を与えるわよ」


「えっ…罰って、何なの?」


紫苑のどSっぽい表情が璃々の不安を煽る。


「一月間、ご主人様と同衾させない刑よ!!」


「えっ!!」


一刀大好きである璃々にとってはショックな事で、まるでムンクの『叫び』の様な仕草をしたまま固まり


「ご主人様~~助けて~~」


璃々が再び意識を取り戻した時には一刀に助けを求めていたのであった。


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