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第19話

「皇甫嵩将軍!何故、漢に謀反を起こした人がここにいるのですか!私、納得できません!!」


劉備の声が軍議場に響き渡ると皇嵩甫が劉備に


「貴女、私がこの件について皆を集めて説明したのを忘れたの!」


皇嵩甫は一刀たちが援軍として来る事について各将を集めて事前に事情説明していたのであるが、漢王朝の元で「民を苦しみから救い、皆が笑い合えるような、そんな明るい国にしたい」と旗印に掲げていた劉備に取って一刀は憎しみの対象になっていた。


というのは、当初劉備は一刀たちが「天の御遣い」としてこの大陸に舞い降りたという噂を聞いた時、一刀は何れ漢王朝を救い平和をもたらしてくれるとそう信じていたが、一刀が漢王朝に対し反乱を起こしたという話を聞いて劉備は信じられなかった。劉備は漢の王室中山靖王の末裔を名乗っており、その事に誇りに感じており何れは漢の国の為に役立ちたいと思っていた。


だからこそ漢に対して反乱を起こした一刀は劉備に取っては最早救世主ではなく敵だと思い、更に和睦の為に白湯が一刀に降嫁したことについても一刀が白湯を無理やり奪ったものだとそう思い込んでいた劉備は一刀に対して糾弾したのであった。


一刀と紫苑は劉備の言葉を聞いてただ呆れるしかなかった。


「止めなさい、劉備。貴女がここで吠えても何も変わらないわよ」


曹操がこれ以上、場を荒れない為に劉備を制止しようとするが、劉備はそれでも話を続ける。


「でも…私、この人が信じられません。漢に謀反を起こした人が同じく漢と敵対している黄巾党を討伐してくれるとは、もしかして敵と組んで私たちを…」


「やれやれ……証拠も何も無いのに君の訳の分からない理由で謀反人扱いされるとは思ってもみなかったよ。それこそ君は俺と漢王朝の仲を切り裂こうとしている獅子身中の虫ではないのか?」


「……いいえ、ありません」


一刀は劉備の話に流石に付き合いきれなくなり反論する。勿論劉備は一刀と黄巾党が手を結んでいる事実がないのだから先程と違い小声となり意気消沈となる。


「やれやれ……証拠も何も無いのに君の訳の分からない理由で謀反人扱いされるとは思ってもみなかったよ。それこそ君は俺と漢王朝の仲を切り裂こうとしている獅子身中の虫ではないのか?」


「き、貴様!!桃香様に無礼な!!」


一刀の言葉を聞いて関羽が手に持つ得物を一刀たちに向けようとするが


「止めなさい!その刃誰に向けるつもり?それで私たちを斬ってその功を誰に誇るつもりなの?」


紫苑の指摘を聞いて関羽は悔しそうな表情しながら一刀と紫苑を睨み付ける。


「君が俺の事をどう思っているか分からないが、俺と漢王朝とは既に和睦しており、今後お互いの仲を深める為、劉協様を迎え入れた。それについて異を唱える権利は君には無い」


一刀と紫苑はもうここの愛紗と朱里は過去の外史の愛紗では無いと割り切ると、一刀は劉備に対し強い口調で反論する。


「でも…」


「テメェ、いい加減にしやがれ!!この俺様にも喧嘩売っているのか!!」


尚も反論しようとする劉備に孫堅が切れてしまった。一刀が漢に反乱を起こしたのであれば、孫堅も以前に朝廷から派遣されている荊州刺史の王叡を殺害して朝廷といざこざ起こしている点では一刀と同じだと考えているので、劉備の一刀への言い掛かりとも言える因縁に怒りを爆発させた。


「駄目です桃香様、愛紗さん!!これ以上は言ってはいけません!!」


これ以上事態が悪化すれば自分たちの居場所が無くなると判断した諸葛亮が2人を止めようと声を上げる。


バン!と机を大きく叩いた音が鳴り響く。


皆、音がする方向を向くと総大将の皇甫嵩が怒りの表情をしていた。


「劉備!貴女は風鈴(盧植の真名)の教え子として目に掛けてきたつもりだけど、これ以上騒ぎを起こすのであればここから出て行って貰うわよ!」


これ以上、劉備の失言で官軍全体の和を乱す事に我慢出来なくなった皇甫嵩は劉備に最終通告を告げる。流石に総大将からそう言われると劉備も大人しくするしか無かった。


軍議が始まり、気を取り直して一刀が皇嵩甫に質問をする。


「今回の首謀者である、張角たちは此処に居るのは間違いないのですか?」


「……それが未だ分からないのよ。どうも本拠地を移動して撹乱しているのか、また影武者とか居る噂もあって正確な情報がないの、ただここに多くの軍勢が集まっているから、張角が居る可能性が高いかもしれないという話なのよ」


皇嵩甫は未だに首謀者である張角の正確な情報が無い事に落胆の色を浮かべて説明する。


そして各軍の配置があったが、一刀の軍勢は遠征軍で疲れもあり後方待機となり、曹操軍や孫堅軍も切り札的な存在として温存されることとなり、そして劉備軍は兵力が少ない事からこちらも後方待機となった。


「今日も落ちなかったようだね」


「はい、ご主人様。どうも各諸侯の足並みが揃ってないようで…しかも袁術軍などは明らかに兵力の温存の姿勢が露骨過ぎて皇嵩甫将軍から叱責を受けたとか…」


軍議から翌日城攻めが始まり、既に3日が経過したが一向に城が落ちる気配が無く、一刀たちや曹操、孫堅が欠けた諸侯の攻撃に迫力が無いのもあるが、黄巾党の必死の抵抗もあり城が落ちる様子が無かった。それを紫苑から改めて報告を受けると一刀は


「そろそろ…出番があるかもしれないね」


「そうですわね。これだけの軍勢を揃えて何の成果もないとなればそろそろ軍勢の配置換えがあるかも…」


そして皇嵩甫は紫苑の言葉通り、軍勢の配置換えを決断し後方待機となっていた一刀たちに出陣命令が下る。


「申し上げます、張梁様!敵軍に新たな動きあり、西城門に新たな軍勢が、その旗印は○に十文字!今まで見た事がない旗印が!」


見張りの兵士からの伝令に張三姉妹の三女、張梁の顔が強張る。


「やはり来たわね…噂の『天の御遣い』。でも私たちが助かるにはこれしかないのよ…」


一人呟く張梁の表情にはある事を決意していた。


その日の晩、軍勢の配置換えを終え、一刀と紫苑のところに翠がやって来たがその表情は普段より緊張していた。


「ちょっとご主人様、話があるんだけど…」


「どうした、翠?」


「いや…かなり重要で内密な話なんだ。ご主人様ちょっと耳貸してくれないか?」


「それは紫苑にも話せない事か?」


「後でご主人様から紫苑に教えてもいいけど、声を出して言えない話なんだ」


翠からそう言われると余程重要な話だと覚悟した一刀は翠から話を聞く。


そして翠が小声で話をすると一刀は顔色を変える。


「その話、本当か?」


「私も今まで見たことがないから本物かどうか分からないけど、ここに来た本人がそう言ってご主人様に会いに来たと言ってるんだ」


「それもそうだな…」


「それで、どうする?」


「まずはここに連れて来てくれないか?それとその人と会った兵士には必ず口止めすることを忘れずに」


「ああ、分かった」


翠は再び天幕の外に出ると、紫苑が一刀に尋ねる。


「どうかなされましたか?」


「ちょっと声を出して言えない内容だから、紫苑耳貸して」


一刀はさっきに翠から聞いた内容を紫苑に告げる。


「それは本当ですか?」


紫苑も驚きを隠せず一刀と同じ様な言葉を出す。


「ですがどうして…」


「それは俺も分からない。でも何かあると思った方がいいだろうね。それと鶸と雪蓮も連れて来てくれないか?」


「雪蓮さんもですか?」


紫苑は重要な話なので、鶸はともかく客将である雪蓮を呼ぶことに戸惑いを見せるが一刀は


「ああ雪蓮にも立ち会って貰う。紫苑が言いたい事は分かるがこれから雪蓮はずっと味方になるかもしれないんだ、できるだけ隠し事は無しで付き合って行くつもりだよ。まあこの話については口外しない事を条件にするけど」


一刀からそう言われると紫苑はやはり一刀は君主としての器は自分より上だと改めて感じた。自分であれば同盟しているとは言え、流石に立ち合いさせず精々で後で話をするくらいしかできないからだ。


紫苑は翠より先に戻り、一刀は鶸と雪蓮にそれぞれ翠から聞いた話をする。


二人は驚きを隠せなかったが、雪蓮は


「この話、私にしても良かったの?もしかしたらお母様に話すかもしれないわよ」


「それはまだ困るな。決まれば炎蓮さんにも話をしてもいいけど、今はどうするか分からないからね」


「冗談よ、冗談。一刀は私を信じて話をしたんでしょう。私も一刀が良いというまではお母様たちには黙っておくわ。でも一刀、この話を私にするということはもしかして助けるつもりなの?」


「それも含めて白紙の状態。雪蓮、でも今回の乱の原因って分かる?」


「それがはっきりと分からないのよ。最初小規模だった反乱が何時の間にか大規模な反乱に発展して手が付けられない状態になっていたという感じなの」


「なるほど…取りあえず会って話を聞いてからだね」


すると翠は1人の女の子を連れてやって来た。


「ご主人様、連れて来たぜ」


その女の子は一刀の前に立つと


「はじめまして『御遣い様』。私は今回の乱の首謀者と言われている張三姉妹の三女、張梁と言います。『御遣い様』にお願いがあって来ました」


何と張梁は単身、一刀のところにやって来たのであった。その張梁を見て一刀たちは驚きを隠せなかった。どっからどう見ても反乱を起こす様な首謀者には見えず、普通の可愛い少女にしか見えないからだ。


「お願いとは…」


一刀はまずは張梁の話を聞くことにした。


「はい…私たち三姉妹や女子供などの非戦闘員は降伏しますのでお願いです。私たちを『御遣い様』のところで匿って貰えないでしょうか」


張梁の言葉を聞いて一刀たちはただ驚くしかなかった。


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