俺のシェルター
俺はシェルターの最後の部品を埋め込む、これでやっと俺のシェルターが完成したのだ。
「少佐、お疲れ様でした。ご飯の準備が出来ました」
「うむ、ご苦労」
俺は頷くとのっそりとシェルターからはい出る。途端、冬の風が容赦なく俺の体から体温を奪っていく。
「それにしても、やっと完成したんですね」
「ああ、これでしばらくは安泰だ」
俺達は部屋に戻ると、ポタージュとパンの置かれた席へと着席する。
「そういえば、君は俺のシェルターをどう思うかね」
「ふふ、少佐。今回のは凄く良いと思います、何がやってきても壊れませんね」
予想よりも高評価をくれた事に俺は気を良くし、食がいつもよりも進むのであった。
「そんなに慌てないでも、ほら」
口の端っこから滴り落ちたポタージュを拭いてくれる、相変わらずお節介さんだ。
「すまんな、汚してしまって」
「良いんですよ少佐、でももうちょっと食べ方綺麗にしてくださいね?」
「ああ、わかったよ」
俺達は昼食を終えると、シェルターへと再び戻る。シェルターの中は中々に温かく、今回の出来は上々だと自分自身を褒めたくなった。
「そういえば、シェルターの中で食べる飯は美味いんだよな」
「少佐、今夜にでも試してみますか?」
「えっ、良いの?」
「ふふ、確認しときますね」
何という事だろう、俺は初めてシェルターでの食事を取ることが出来るかもしれないのだ。今夜が俄然楽しみになってきた。俺達はシェルターと外を何度も往復してはクタクタに疲れ、部屋へと戻って休んでいたら慣れ親しんだ声が聞こえて来る。
「ただいまー、あれ凄いわね」
「おかえり母さん!」
「おかえりー!」
俺達の声が同時に部屋の中に響き渡る。
「お母さん、しぇるたーで夜ご飯食べたいの!」
「ダメよ、夜は寒いでしょ?」
「ぶー、いじわる!」
俺の元へやってきたコイツは悲しそうな顔で報告してくる。
「少佐、作戦失敗であります」
「そうか、俺も悔しいぞ……」
俺達が泣き真似をすると、ポカンと頭を小突かれる。
「あんた達、いい年して何やってんの。晩御飯の準備手伝いなさい」
「「はーい」」
俺達は素直に晩御飯の手伝いを始める。
「母さん、俺の作ったシェルター凄く大きくていいだろう?」
ジャガイモの皮をむきながら母親に尋ねると、何いってんのよとあきれ顔で一言。
「確かに今までで一番大きいわね、凄いわ」
やった、と俺は笑みを浮かべる。
「舞ちゃん、あなた無理してお兄ちゃんに付き合わなくていいんだからね?」
「はーい」
「おい舞、薄情な!」
「お兄ちゃんばっか偉いさんの役なんだもん、私も少佐やりたいー」
「ばかっ、兄ちゃん頑張ってシェルター作ったんだぞ!?」
ポカっと母親の拳骨が舞い降りる。
「妹にも譲ってあげなさい、お兄ちゃんでしょ?」
「うー、だってー」
再びポカリと拳骨がおち、俺はグゥと唸る。
「男の子がだってじゃないです、それにあんたねぇ」
ため息交じりにエプロンで濡れた手を拭い、俺の顔を覗き込んでくる。
「あんたね、あれはシェルターじゃなくて『かまくら』っていうのよ」
「「知ってるよ!」」
俺と舞の声が部屋の中で響き渡る。
明日も俺達のシェルターごっこは続くのである。