試合(前編)
入学式。それはこの学校の大型体育館でおこなわれている。3階建てで2階と3階は観客席である。この体育館の許容できる人間は何人かは予想も出来ない。
この学校の名前は天龍院学園。この学校は様々な能力の開発、育成のための学校。中等部、高等部、学院部があり、学科は『魔法』、『科学』、『霊能力』に分かれている。精鋭を作り出すこの学校。俺達はここで異世界らしい学園生活を送ることになる。
2時間もかかる入学式が終わり、新入生が移動を始める。どうやら試合会場に行くようだ。
試合会場は少し歩いた所にあり、噴水や電灯、松明などがある。どうやら、超能力や霊能力で使う物が一通り揃っている。
ここで少し説明だが、魔法は使用するのに杖か魔道書が必要になる。後、呪文の詠唱も必要となる。まあ、それらの道具を使用しなくても使える魔法はある。例えば俺の紫電と蒼炎だな。道具のメリットとデメリットとしては、杖は杖自体が魔力を持っており、使用者関係無く強力な魔法が使える。デメリットは基本的に一つの杖に一つの属性しか無いのと、壊れる、魔力の供給が必要になる。杖で複数種類の魔法を使おうとすれば複数の杖が必要になる。
魔道書は複数種類の魔法が使える。さらに杖みたいに魔力の供給や壊れる事が無い事だ。デメリットは魔力が完全に使用者に依存するため、強力な魔法を使おうと思ったら使用者自身が鍛錬を積まないといけない。
この二つ以外に魔導装飾品という物があり、これは二つと全然違うため、説明は省く。
次に超能力と霊能力の説明だ。
超能力は呪文の詠唱や道具を必要としないが、使用には演算と集中を必要とする。それらがあるとしても、実戦ではかなり使える部類である。
霊能力は術式という特殊な絵が描かれた札を必要とする。霊能力は事前準備が面倒なだけで、詠唱の必要がないしそこそこ強力な物である。
こうして見ると魔法が弱く感じるが、条件さえ整えば1番強力である。魔法の中には世界そのものを魔法陣として使う天文魔法があるし……。
さて、試合の対戦表が発表される。俺の相手、試験で1位の魔法使いじゃねか。これは面倒だ。(ちなみに俺は3位。アミは12位。咲は47位。魔法学科の人数が500人だからかなり優秀な方だと思う。)
アミと咲がこっちにやって来る。どうやら対戦相手が決まったようだ。
「ご主人様。私の相手は超能力学科4位です。必ず勝利を納めて来ます」
「お前、魔法学科12位だろ。勝てるのか?」
「あの様な男に負けていては、ご主人様のメイドは務まりません。必ず勝ちます」
凄え自信だな。まあ、大丈夫か? 咲にも聞いてみるか。
「咲の相手はどんな感じだ?」
「私の相手は霊能力2位の女の子だね。これって勝てるのかな………」
咲が少しびびっているな。確か咲は47位だしな。元気付けとくか。
俺は咲に耳打ちする。
(この学園にお前の姉さんがいるんだろう。お前言ってただろう。お姉ちゃんみたいな凄い魔法使いになる!って。だから、自信持てよ。負けたら慰めてあげるからな)
(ショウちゃん………。そうだよね。私頑張るよ!)
咲がいつもの調子になってきたな。これで大丈夫だろ。少し試合まで時間があるな。適当に時間を潰すか………。
「アミ・ホワイト! 試合の準備を開始しろ!!」
アミの名前が呼ばれたな。アミが準備室に向かう。
「アミ、俺の専属メイドとして悔いの無い戦いをしろよ」
「アミちゃん頑張って!」
アミは俺達の方を向く。
「ご主人様、咲様、行ってまいります」
アミは軽く頭を下げて、準備室に向かう。その背中は闘志に溢れていた。
(あの背中、何処かで見たな)
俺は自分の師の背中とアミの背中を重ねた。下手したら俺より強いかも知れないな。
「試合の説明だが、試合は基本的に自分の学科以外の武器や道具を使用していい。首にかけたペンダントを取った方が勝利だ。銃類は模擬戦用のペイント弾を使用。質問はあるか?」
「ありません」
私は教師にそう言って、渡されたペンダントをつける。準備室にはペイント弾が入ったマガジンや支給用の杖や魔道書、札、魔導装飾品などがある。
支給用の装備は性能が良くないから無視ね。
私は服の袖に隠してあるマシンピストルを取り出し、ペイント弾を装填する。私の準備はこんな物ね。さて、ご主人様のメイドとして相応しい戦いをしましょうか。
私はそう思いながら、試合場に向かう。
試合場はまるでコロシアムみたいなところね。広めだし、超能力、霊能力用の噴水、松明、電灯があるわね。
相手がこっちによってくるわね。
「君みたいな綺麗な女の子と戦えるなんてね。楽しく、華麗に互いのベストを尽くそうじゃないか」
ご主人様なら、顔が地味にイラつくわね。俗に言うチャラ男ね。叩き潰してあげるわ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
私はそう言って、試合の開始位置に向かう。向こうは舌打ちいてから向かったわね。
『試合開始!!』
試合開始の合図がする。敵の名前、え〜と。あった。神居 海斗って言うのか。分かっていることだけどアミが不利だな。
俺は観客席でそう思いながら見ている。神居は開始の合図と共に動き出したがアミは動かないな。なんだ? 舐めプか? それとも別の考えがあるのか?
(動かないだと……!! 舐めやがって!!)
松明から龍の形をした炎が噴水から龍の形をした水が出て来る。更に、神居は手を前に出して、衝撃波を出す。3つの攻撃がアミを襲う。アミの口が動く。呪文の詠唱をしている。杖や魔道書は持っていない。アミを中心に爆発が起きる。神居の攻撃はかき消される。
そういえば、アミも俺と同じ種類の杖や魔道書を無しで使える魔法がある。確か『王者の爆弾』(キング・ダイナマイト)。簡単に説明すると範囲は半径500mで任意の場所に爆発の威力、範囲、爆発の仕方などが自由に設定出来る魔法。もう一つあるが、それは使用した時にでも。こうして見るとちょっとしたチートだな。呪文の詠唱も長い方じゃないし。
試合場は煙に包まれる。どうやらアミは、煙が多く出るよう爆発させたらしい。ちなみにキング・ダイナマイトは煙まで設定出来る。有害か無害か。そんなところだろ。
(くそ! 何処に消えやがった!! 煙のせいで集中力が持たねえ!!)
さっきから神居は集中出来なくなっている。どうやらこの煙が原因のようだ。煙のせいで視界も悪い。さらに音もあまり聞こえない。
「そこまで、必死に煙を払おうとしなくてもいいですよ。勝負はつきましたから」
煙が払われる。どうやら目の前の女がやったようだ。彼女は笑顔で俺の目の前にいる。手にはペンダントが握られている。
『試合終了!! 勝者アミ・ホワイト!!』
アミはそれを聞いたら、試合場の出口に向かう。
まあ、これくらいでいいでしょう。これでご主人様が満足してもらえるといいですが………。
俺は観客席から見ていて、アミの凄さを確認する。少しざわついたな。まあ、あんなに流れるように勝負が決まったらこんなにもなるよな。
「一条 咲!! 試合の準備をしろ!!」
咲が呼ばれたな。俺は咲に声をかける。
「咲! 頑張れよ!!」
咲が振り向き言葉を返す。
「行ってくるよ!! アミちゃんに負けないようにしないと!!」
咲はそう言って、準備室に向かう。