第四章 第八話 ~暗い部屋の中で~
その部屋にはロウソクしか明かりがなかった。
部屋の窓には全て分厚いカーテンが掛けられ、外の光を完全に遮っている。
そこで、ローブに身を包んだ男とも女とも分からぬ複数の人影が、ロウソクが立てられたテーブルを取り囲み、ぼそぼそと話をしていた。
「報告では、彼らがついに精霊の筺を求めてロイドの元を発ったそうだ」
「では、そちらは順調ということかな」
「如何にも如何にも。しかし、そうすると例の案件を処理する時間が限られてしまうな」
「うむ……。精霊の筺が解放されてしまえば、我々が奴ら目を監視する主要な手段が失われてしまう」
「だが、例の案件を処理する時間を確保するためだけに、本来の予定を遅らせるわけにもいかぬだろう」
「しかし、その案件も放置はできまいよ」
「その通り、放置は出来ない。……魔術師にとって、真理の究明、力への渇望は本能そのものだ。放置すれば、必ずや良くない事を引き起こすだろう」
「追跡は進んでおるのか?」
「幾つかの痕跡は見つけたが、当人達を見つけるには至っておらぬ」
「……徒党を組まれると厄介だが」
「機能を停止しつつある監視プログラムでは追跡にも限界があるな……」
「だが、あれ以上の手段は今のところないからな……」
「精霊の筺が解放され、本来の役割を果たすようになる前に、何とかしなくてはなるまい」
「動かせる人員を確保しなくてはなるまいが……」
「冒険者ギルドとやらを利用してみるか?」
「ふむ。事情を上手く隠すことが出来れば、大いに役に立つだろう……」
「それはそれとして、最悪の事態は想定しておくべきだろう……」
「如何にも。幾つかのシナリオを想定して、対策を用意しておくとしよう」
「我々もそれに協力しよう」
「では、我々はギルドへの依頼について準備を進める……。計画ができあがったら、一度持ってくる」
「我々は引き続き奴ら目の追跡を続けることにする……。冒険者達の力を利用するにしても、情報は多い方が良い」
とんとん拍子にいろいろな事が決まっていき、やがて人影は1つまた1つと部屋から消えていく。
そして、最後に残った影は、
「これも全てはあなたの予言の範囲内なのだろうか……予言者よ」
そう言い残して、消えていった。
これにて第四章終了です。
心理描写を入れてみようと四苦八苦してますが、難しいですね。
主人公達は無双できそうな下地が着々と……ですが、今ドラゴンに襲われたら、主人公達は一分持ちません。というか、戦闘成分少ない気がするな……
ネタバレもそろそろ始まってるんじゃないかと思いつつ……ばれてもいいような展開でも面白く話を進める事が出来る力が……あるのか?自分?とか自問自答中です。
そう言えば、この第四章の途中でとうとうお気に入りが三桁になりました。
ありがとうございます。
では、次は第五章になります。脳内プロットの作成作業があるので、少し間が空くと思います。
2012/1/19 sularis