第三章 第四話 ~寄り道ラスベガス二日目~
そして翌日。
再び蒼い月のメンバーは個人行動になっていた。
実際には、ミネアは冒険者ギルドが一般向けに開放している訓練場に行くグランスの金魚のフンになっていたし、当面は生産スキル担当のマージンも一人ではなかった。なので、結局個人行動になったのは共用鍛冶場で武器や防具の修理の訓練をする予定のレックと、昨日見つけた銃器店で銃の手入れや簡単な部品の製作を教えて貰う予定のクライストだけだったりする。
「じゃ、その用事を先に片付けたら、武器探しやな」
「うむ。それで頼めるかの?」
「問題あらへん。リリーもそれでええな?」
「うん。いいよ~」
ホテルを出て、歩きながら予定を確認するマージンとディアナ、それにリリー。
マージン達の予定は、まず昨日、ディアナ達が見つけてきたあるお店に行って、マージンが生理用品の作り方を教えて貰うことから始まる。無論、これは出来る限り早く、使用する本人達が作れるようになる予定だった。「そうしないと女の尊厳に関わる」とは誰が言ったのだったか。
その後、クライストが行っているはずの銃器店に立ち寄って、やはりマージンが銃やその部品、弾薬の作り方を教えて貰う。リアルなら一日どころか、数日がかりで覚えることでも、スキルの生産可能アイテムに追加するだけならほんの数分で事足りるのは、やはりVRMMOならではである。目に見えないスキルの熟練度が足りてなければ、覚えられないが。
最後は、ディアナの槍の調達である。ちなみに、リリーもパチンコと短剣だけでは、あまり戦闘の役に立たないと思っていたのか、いい武器があるかどうか見てみたいとついてきた。
そして、最初の店に向かう道すがら。
両手に花でテンションが上がってもおかしくなかったマージンは、逆に非常に気まずい思いをしていた。無論、残る二名も同じく、であるのだが……まあ、最初の目的が全ての元凶である。
店の場所を聞くまではいいのだが、そこで会話が途切れた。
どういうものを作ることになるのかとか、昨日はちゃんと手に入れられたのかとか……後者は兎に角、前者はマージンとしては割と気になるのだが、異性に訊けるようなものではない。でも、この後行く店が店だけに、どうしてもその手のことがすぐに頭に浮かんでくる。
ディアナとリリーも似たようなもので、店に着く頃には、一日でも早く自分たちで作れるようになろうと固く決意していた。
「まあ、確かに男性でも作り方を教わりに来る人、いるけどね。やっぱ、珍しいわよ?」
マージンの予想に反して、件の店は一見、ごく普通の衣装店だった。
その店のカウンター越しに、マージンを見ながらクスクスと笑ったのは、ラスティ。ウェーブがかかった金髪に茶色の瞳の彼女こそが、この服飾店の主人であり、商品の大半を自前で作っている裁縫職人でもある。ちなみに、かけているかわいい系のエプロンも自作だそうである。
そんな彼女がナプキンに手を出した理由は、自分で必要だったからだった。
「で、どっちが本命なの?」
顔を近づけて小声でそう訊いてくるラスティに、
「いやいや。同じクランの仲間っちゅーだけやから」
とマージンは首を振った。からかわれているだけと分かっていても、目的が目的だけにどうにも分が悪い。
ちなみに、ディアナとリリーはラスティにマージンを紹介すると、昨日の経験からさっさとカウンターから逃げ、少し離れたところで、気に入った服を漁っている……振りをしていた。
「ふ~ん。あんな美人と可愛い娘を両手に花でね~?ひょっとして、あなた、不感症とか?」
「いやいや。そんなことはあらへんって」
カウンターでなされているそんな会話を耳に挟みながら、ディアナとリリーも、
「私が美人、の方かのう?」
「じゃ、あたしが可愛い方?」
と、小声でこそこそ話している。ちなみに、二人とも耳はカウンターでの会話を聞き逃すまいと、最高感度で稼働中だった。恋バナやそれに類する話に興味津々なのはさすがに女の子(?)ということらしい。
そのことは百も承知で、ラスティはマージンをいじっている。無論、マージンも聞こえていることくらいは承知していて、下手な答えを返すつもりは全くない。地雷原に誘導される恐れはあったが。
「じゃ、リアルで彼女がいるとか?」
「いや、おらへんけどな?VRMMOに彼女探しに来とるわけちゃうし」
「でも、こうも長引いたら、こっちで彼女作っちゃおうとか思わないわけ?私の友達とか、こっち限定の彼氏作っちゃった子もいるよ?」
この台詞に食いつきはしなかったものの、ディアナとリリーはその台詞をしっかり脳内に記録した。
「まー、あれこれできるみたいやしなぁ……。つか、もう、ここがVRMMOの中なんか、リアルなんか、分からんようなってきとるしな」
「それはあるね~。だからかな。友達も最初は相手のリアルの容姿気にしてたみたいだけど、いつの間にかアバターの容姿でいいやとか言い出しちゃっててね。で、アバターの容姿って大抵いいじゃない?そしたら、後は性格と相性さえ良ければで、一気に行くところまで行っちゃったわねー」
だんだん店内の一角に、不穏な空気が漂い出す。
「で、あなたはそーゆーことになったりはしないの?」
「忙しくてそれどころちゃうしなー」
そろそろ地雷原突入か!?と、冷や汗が出そうなマージン。
「でも、昨日来てたミネアさんといい、あなたのクランっていい子が揃ってると思うんだけど?」
「あー、ミネアはうちのマスターに惚れてるっぽいから、ないわ」
「ほほー。そうなんだ?で、どんな感じなの?」
地雷原脱出成功。店内で稼働していた恋愛センサーの稼働率が急激に落ちていくのを感じ、マージンもホッと一安心である。というか、そろそろ用事を済ませて逃げ出したい。しかし、なかなか言い出せず、
「そやなー。片思いっぽいな。マスター、そういうの鈍そうやしな。おまけに忙しすぎて、色恋沙汰に気づく余裕あらへんのちゃうかな」
「む、それは勿体ないことしてるわね~」
「そうなんかな?」
話が盛り上がらないように、ぼけてみるマージンだが、
「絶対そうよ。確かにミネアさんは人見知り激しそうだったけど、でも、その分惚れた相手には尽くすタイプよ。絶対お買い得物件だわ」
いまいち効果がない。それどころか、
「お買い得物件と言えば、美人のお姉様タイプのディアナさんと、可愛い小動物系のリリーちゃんもお買い得よね。どっちが好みなの?」
「いや、好みとか言われても、そういう風に見たことあらへんし……ちゅーか、作り方教えて貰いたいんやけど……?」
このままではいつまでも話が終わらないどころか、いろいろ余計なことを暴露する羽目になりそうだと、マージンは無理矢理話を切り替える。
「あー、そういう用事で来たんだったっけ」
すっかり忘れてた、と手をぽんっと打つラスティに、心の中でホッと息をつくマージンだった。
「疲れた……。一軒目でもうばてばてや……」
こちらが旅人と分かっているのか、また来てね~という挨拶は無かったのが、マージンにはせめてもの救いだった。
「まあ、次に行こ、次に」
何故助けてくれなかったと恨めしげに見るマージンの視線を誤魔化そうと、明るく先を行くリリー。
「そうじゃな。昼までには武器を決めてしまいたいからのう」
それに便乗するディアナ。
正直、一言もの申したかったが、リリーは兎に角、ディアナにどう言いくるめられるか分かったものでもなく、マージンは泣く泣く追求を諦めた。
「おー、よく来たな。って、マージン!?何でそんなにばててるんだ!?」
次の目的地、裏通りの目立たないところにあったマーシャル銃器店でマージン達を出迎えたクライストは、マージンの様子に驚いたようだった。
「まぁ、いろいろあったんや……」
そう答えるマージンと、素知らぬ顔をするディアナ、リリーの様子に何となく察したのか、冷や汗を垂らしながら、「そ、そうか」とクライストは言うのが精一杯だった。
「クライストさん、そちらが例の?」
そこに出てきたのは、銀髪黒瞳の、口の上に少しばかりの髭を蓄えた小柄な男だった。
「ああ、マーシャルさん。そうです。うちの生産担当のマージンです。こちら、マーシャルさん。この店の主人だ」
「うちのが世話になっとります」
そう挨拶するマージンと握手をしながら、ちらちらとディアナとリリーにも視線が行くマーシャル。
その視線に気づいたわけでもないだろうが、
「で、そっちの二人がクランメンバーのディアナとリリーです」
と、クライストが女性二人も紹介する。
ちなみに、二人は軽く頭を下げはしたものの、ディアナしか握手には応じず、マーシャルがどことなく残念そうだった。
「で、銃のメンテは終わったん?」
店の外で待ってるからとそそくさと退場していったディアナとリリーの後ろ姿を見送ったマージンに訊かれ、クライストはアイテムボックスから銃を取り出した。
「ご覧の通り。全部完璧だぜ」
「……いや、いくつ持っとったんや」
手近なテーブルの上に並べられた8丁の銃を、呆れたように見やるマージンに、
「結構故障したりするからな。2丁だけだと、いざという時に困るんだよ」
「銃は精密機械ですからね」
クライストの説明に補足を入れるマーシャル。
「あー、なるほどなー」
マージンは何となく納得した。
剣や斧、弓といった武器と違って、銃は小さい部品を多数組み合わせて作られている。それだけに、クライストの言葉通り、すぐ故障する。だからこそ、いくつかの予備を持っておく必要があるのだった。
「しかし、最近は銃を使っている人が減ってしまって、寂しかったのですよ」
それだけに、クライストが来てくれて嬉しいと、マーシャルは言う。
銃は対人には向いているが、対エネミーでは相手の体が大きいとそれだけで威力が不足し、さらに相手の攻撃を受けることも出来ない。加えて、銃を修理したり、弾薬を補充できる場所が少ないこともあって、ただでさえ殆どいなかった銃を使っている冒険者プレイヤーは全滅寸前なのだった。
「にしても、随分と種類があるんやなー……」
店内の壁一面に飾られている(と言うのが相応しい)銃の数々。種類も豊富で片手で持てるようなハンドガンや拳銃の類から、散弾銃にライフル、何故か火縄銃まである。
「ガトリングガンも現在開発中です」
「いや、そんなん作ってどうするねん」
「ロマンですよ、ロマン」
実に嬉しそうに言うマーシャルを見て、こいつは銃オタクだとマージンは確信した。
そして、ふと別のことが気になる。
「そういや、銃を扱う店って、どのくらい残ってるんや?」
「ん~、片手の指で数えるくらいしかないはずですが。ラスベガスですらうちだけですし」
「なるほどなー。ちなみに、お宅は銃を欲しがる人には誰にでも売っちゃってるって事は……?」
「見るからに危ない人以外には売ってますが何か?」
「ついでにもう1つ。『魔王降臨』以降、何人に何丁売ったか分かるか?」
「お恥ずかしい話ですが、あれ以降、10人くらいしか客が来てくれてないんですよね。売れたのも20丁に満たず、正直食費が……」
それを聞いて、ホッとしたマージンだったが、
「マージン、何でそんなことを訊くんだ?」
微妙に機嫌を損ねたクライストに詰め寄られた。その様子を、よく理解してない様子でマーシャルが見ている。
「簡単なことや。銃は確かに強いエネミー相手には役に立たんかも知れん。けどな、対人での威力が変わったわけちゃうねん」
銃作成の腕前は知らないが、マーシャルには気をつけて貰わなくてはならないと、マージンは説明を始める。
「それは分かってる。俺が訊きたいのは……」
「だから、その説明をしとるんや」
さらに詰め寄ろうとしてきたクライストを抑え、マージンは説明を続けた。
「今、大陸会議が管理できとらん町の治安が悪化しとるんは知っとるな?」
その確認に、素直に頷くマーシャルと渋々頷くクライスト。その様子を見ながら、マーシャルとよっぽど気があったんだろうなと考えつつ、マージンは説明を続ける。
「で、治安を乱しとる悪党共に銃が行き渡ったらどうなるか。想像出来るか?」
その言葉で、クライストは瞬時に真っ青に、マーシャルもワンテンポ遅れて青くなった。
「そう言うことや。銃弾は速すぎて、余程のプレイヤーでもない限り避けられん。つまり、悪党共には実に相性のいい武器ってことや」
「じゃあ、もう銃は売らない方が……?」
おそるおそる訊いてくるマーシャルに、しかしマージンは首を振った。
「逆に、治安を維持する側に持たせれば、治安維持が簡単になるやろうな。要するに、売る相手を選べばええと思うわ」
「ってことは……?」
「軍に売るのはありかもしれんな」
本当は恐怖政治が始まったりすると面倒だと思いつつ、大陸会議がそうするつもりなら銃の有無は関係ないだろうと、マージンもそこまでは口に出さなかった。
「ちゅーわけで、クライスト。グランス捕まえて、一緒に大陸会議にこの件を伝えてきてくれへんか?マーシャルはんの様子から見て、銃の流通管理とかされとらんみたいやし、早めにやってもらっといた方が安心や」
「ああ、分かった。他に伝えることは無いのか?」
「微妙な問題やけど、軍に銃を配備することは提案してもええかもしれん。その辺はグランスの意見も聞いて判断してくれへんかな」
「そうだな。そうするぜ。じゃ、マーシャルさん、また後で!」
そう言って、店を飛び出していくクライスト。
店の外にいた二人が何事かと訊いていたが、夜に説明するとか何とか言って、クライストはそのまま走っていった。
「と言うわけで、出来ればあまり強力すぎる銃は、仲のいい相手以外には見せるのも遠慮してもらえんかな?」
クライストを送り出したマージンは、半ば呆然としていたマーシャルにそう話しかけた。
「ん、ああ。そうしますよ。でも、銃の販売まで止めると食べていけなくなるんですが……」
「軍の専属になれば多分食べていけると思うで。まー、窮屈になるかも知れへんけどな」
「そうですね。考えてみますよ。それでは、マージンさんの本来の用事を済ませましょうか」
「そやな。頼めるかいな?」
「ええ、それでは端末を出してください……人を撃ったりはしませんよね?」
「クライストは、正当防衛以外では撃たんやろ」
「ですね。では」
そう言うとマーシャルも自分の個人端末を取り出し、マージンのそれと接触させた。そのままコマンドを操作し、生産可能アイテムの複写を行った。
「やっと、武器屋巡りじゃのう」
「いい武器見つかるかな~」
銃器店での話が長引いた理由をマージンに問いただした後、ディアナとリリーは足取りも軽く、武器屋目指して歩いていた。
ちなみに、その後ろをついて行くマージンは、
(ひょっとして、買うだけならわいがついて行く意味あらへんのじゃ……)
などと思っていたりもする。
ちなみに、銃器店のような需要の少ない店と違い、普通の武器屋は結構な数がラスベガスにはあった。小さい町や村――村と呼べるような集落は、基本的に全てプレイヤーが撤収し残っていないが――なら兎に角、大きな町には同じような店が複数あるのが普通なのだが、やはりラスベガスは別格である。武器屋と言っても、鍛冶武器専門店、木製武器専門店、あるいは剣専門店、メイス専門店、弓専門店、のように人気のジャンルごとの専門店まで存在している。防具屋も同様で、各種専門店が何軒もある。
実際には、『魔王降臨』以降、職人が不足してあらゆる種類の装備を用意しておくことが出来なくなったための苦肉の策だったのだが、その分、専門店で扱われる装備は質のいいものが多くなり、それなりの成功を収めていた。
なお、3人の今日の目的は鍛冶武器限定である。やはり、威力は金属製の武器が一番高い。もっとも、鍛冶武器限定の理由は、ディアナの新しい武器の候補が槍であるからなのだが。
「リリーはどんな武器を見てみたいのじゃ?」
「やっぱ、みんなと違う武器目指してみたいかな?」
てくてくと通りを歩きながら、ディアナとリリーが楽しげに話している。マージンはその後ろを一歩遅れてついて歩いていた。
「と言うことは、剣や斧、弓、槍以外じゃな」
「うん、そうなるね~。あ、でも、メイスみたいなのも勘弁してね」
「短剣は今使っておるしのう。銃もクライストがおるな」
「ブーメランは?」
「あれはかなりの腕力がいると聞く。腕がむきむきになってしまってもよいのかの?」
「ごめんなさい。諦めます」
ディアナの脅しにリリーは即刻ブーメランを諦めた。
「後は何があったかのう?」
と、そこでディアナは後ろを向いて、
「マージン、他に何かあるか分かるかの?」
「棍とかロッド、鞭かな。ハンマーはメイスみたいなもんやし、却下やろ?」
「そうね、ハンマーはちょっとね」
ハンマーを持っている自分を想像したのか、リリーは悩むこともなくそう言った。
「あとロッドも、単なる金属の杖やから、止めといた方がええやろな」
「じゃのう……」
自分が槍に切り替えることにした理由を思い出し、しみじみ頷くディアナ。
「徒手空拳用の手甲の類とかも、腕力いるし、使いづらいやろな。いっそのこと、素直に剣にするのもありやし。レイピアとかは誰も使うとらんしな」
「レイピア?」
「そや。刺突重視型の細い剣や。重量も軽いから女性でも扱いやすいで。……威力もないけど」
首をかしげたリリーにマージンがそう説明すると、
「威力がないのではのう……せめて、防御性能が高いとか無いのかの?」
「今挙げた中で防御性能なら棍の類やな。両手でこう持ってな、敵の攻撃を受けたりも出来るで」
と、自分のツーハンドソードで実演してみせるマージン。それを見たリリーは、
「なんか、拳法っぽいイメージがあるね」
「……スカートの中が見えそうじゃな」
「…………」
「…………」
ディアナの指摘に、マージンはさっと視線を逸らし、リリーはそんなマージンを睨み付けた。
「まあ、スパッツとかはけば良かろうよ。いっそのことショートパンツなんかにするのも良かろうな」
「……考えてみる」
ディアナのフォローに、とりあえず選択肢として棍は残ることになった。
「まあ、わざとやないし、堪忍してや」
「…………」
「…………リリー、ホテルでじっくり問い詰めれば良かろう」
ディアナのフォローは、マージンにとっては全くありがたくなかった。そもそも、武器の種類を挙げていくだけでこういう目に遭おうとは、である。
「で、鞭はどうなの?」
「女王様じゃな」
「…………」
再び黙り込むリリー。その冷たい視線はマージンを捉えて放さない。
「いや、わざとやないし!!訊かれたから、思いついたのを言っただけやし!!」
必死に無実を訴えるマージン。
それでも変わらないリリーの視線に、
「そもそも、鞭は武器として使うのは大変なんや。勧めるつもりは全くあらへんかったんやで!」
「まあ、鞭の方はわざとじゃあるまいよ。私も言ってみただけじゃ」
今度はフォローをちゃんと入れるディアナだった。が、
「棍の方の言い訳は楽しみじゃがのう」
そう言って、クックックッと実に悪く笑った。
そんなディアナの様子を見ていたリリーは、
「……どっちにしても、スパッツとかも探してみる。激しく動いたら見えちゃいそうだし」
そこでマージンをじろりと睨んで、
「そっちの代金は出してよね」
「いや、そんな理不尽な………………分かりました」
抵抗むなしく、リリーの服の代金を出すことを了承させられたマージンだった。
その後、2軒目に回った鍛冶専門店で、ディアナは槍を、リリーは木に鉄芯を仕込み、両端に鉄板を巻き付けた棍を買った(全部鉄製だと重すぎた)。さらに近くにあった衣装店でリリーは、ショートパンツを7つほど、マージンの財布で買い漁った。
ディアナもどさくさに紛れて何か買おうとしていたが、それはマージンに拒否されたのは余談である。
そして、その数日後、
ラスベガスでの用事を済ませたレック達は、キングダムへと向けて出発した。