全員集合
全員集合であります。
「ねぇ~エデンの園ってどこ?」
「もうすぐですよ」
「あたし、お腹がすいたよ~」
「アズキさん、さっき食事をされたばかりではないですか」
「しょうがないじゃん、だって減るんだもの」
「食べ過ぎは身体に毒ですよ」
「お腹減ったよ~。 アンズーは何か持ってない?」
「何も持ってません」
「じゃあそのカーバンクルくれない?」
「ニャンは友達です。 非常食じゃありません」
「ちぇっ、けち」
「けちで結構です」
「お二人とも着きましたよ」
――二人とも素通りしてしまった。 だってアリエルさんが指差している目的地は木なんだもの。
――突然アリエルさんが木をノックし始めた。
「リリアーヌさん、いますか?」
「あ、アリエルちゃん、久しぶりなの~。 アンジェリカには三日前に、アイン君とアンネちゃんとはさっき会ったの」
「ワープストーンは何処ですか?」
「今日はあの木の中にあるの~」
「ありがとうございます。 これお土産です」
「あ、老舗蜂蜜店ゴールデンビーの最高級蜂蜜なの~。 ありがとうなの~」
「それでは行ってきます」
「気を付けてなの~」
「アリエルさん、さっきの方は……?」
「さっきの方はリリアーヌさん、この辺りの森に昔から住むドリュアデスです」
「ドリュアデス?」
「木に住む精霊です」
「アンズー、私もう駄目、カーバンクルちょうだい」
「駄目で――」
「お二人とも着きましたよ」
目の前にただの木がある。
「この木に触れて転送魔法を発動するとエデンの園に行けます」
「よし、早速行こう。 ご飯♪、ご飯♪」
「あの~私はどうしたら」
「アンズーって魔法まだ習ってないんだっけ?」
「はい」
「それじゃ、あたしの手を握って」
「こう……ですか?」
「握手♪、握手♪」
「あの~これって意味があるんですか?」
「目をつぶってね。 転送!!」
「えっ!?」
私は急いで目を閉じた。
――次の瞬間、身体が宙に浮いたような感覚になり、その次にジェットコースターを100倍にしたような感覚が襲ってきた。
――私は目を閉じるのに集中した。 たぶん、目を開ければ確実に酔うだろう。
「とうちゃーく」
その言葉を聞いてから私は目を開けた――すると、
「ええーー!!」
目の前に想像を超えた光景が広がっていた。 さっきまで森にいたのに、目の前には超高級ホテルのロビーのような空間が広がっていた。
「ようこそエデンの園へ」
黒衣で長身の青年が話しかけてきた。 歳は私とあまり変わらなそうなのだが、纏っているオーラが全然違う。
――彼の隣から殺気を感じた。 殺気の主は銀髪で眼帯をつけた美女だった。 私みたいな一般人でも感じられるんだから二人は圧倒的な力を持っているんだろう。
「二人ともやめな!、彼女が怯えてるぞ」「すみませんアンジェリカさん、魔力を感じとれるのかテストしてみたんです」
そう言ってから青年はオーラを消した。
「アンネローゼ、客が怯えてるから、早くその殺気を消せ」
「これは生まれつきだ」
「だけど消せるだろう?」
「了解」
殺気が消えた。
――だがオーラが消えた瞬間に二人とも物凄く影が薄くなった気がする……。
「自己紹介がまだでしたね。 僕はアイン。 彼女がアンネローゼ。 ――そして」
「私がここの代表をしているアンジェリカだ」
「は、初めまして。 杏と言います」
「そんなに緊張するな、ここが今から君の家になる」
「――ええ!?」
「よろしくお願いします。 杏さん」
「よろしくアンズー」
「よろしくお願いします。 さっきは怖がらせてしまったみたいですみません」
「よろしく」
「――という訳で今から杏もここの一員だ。 よろしく頼むぞ」
「は、はい。 よろしくお願いします」
……こうして私のエデンの園での生活が始まった。
次回はエデンの園を案内します。