白銀の戦乙女
惚れ薬って本当にあるんですかね?
一人の女性がいる。
白銀の長い髪と左目の眼帯が特徴的で容姿はすれ違った人が皆振り返る程の美貌。 ――だが身に纏っているオーラは周りの物を全て凍てつかせる程に冷たく、全ての物に対しての殺気すら感じられる。
彼女は〈アンネローゼ〉
アインの最初の仲間の一人にして、アインの嫁(自称)である。
彼女は待っていた。 ――約束の相手を……
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アインとアズキはエデンの園を目指して歩いていたのだが――
「アズキ」
「な、何アイン?」
もしかしてこ、告白!?
「――約束を思い出したから、アズキはアリエルさんと合流してくれない?」
「えっ……」
アズキの期待は儚く崩れさった。
「それじゃあ、よろし――」
「待って」
「何?」
「約束の相手はだ、あ、れ?」
「ア――」
「アンネローゼ!?」
「そ、そう」
「駄目よ行っちゃ」
「何で?」
「不幸になるわよ」
「ならないよ」
「お菓子あげるから行かないで」
「釣られないよ」
「お、ね、が、い行かないで」
「行くよ」
「結婚してあげるか――」
「グリフォンお願――」
「行ってらっしゃい。 気を付けてね」
「行ってきます」
アインとアズキはいつもこんな感――(以下略)
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「――遅い」
「――遅い」
「――遅い」
「――遅い」
「遅――」
「待った?」
「待ってない」
「それじゃ行こうか」
「ええ」
――アインとアンネローゼはいつもこんな感じである。
「――で何の素材が必要なの?」
「一角獣の角とミュルメコレオンの蟻酸とアムフィシーンの竜牙だ」
「何を作る気?」
「秘密だ」
「武器じゃないよね」
「そうだ」
――今回の約束の内容は《惚れ薬》を作る為の材料を集める事である。 ……もちろんアインに知られてはいけない。
「その材料だと薬品だよね?」
「違う」
「じゃあ何?」
「……お守り」
「……そうなんだ」
――ちなみにアンネローゼが見た禁忌薬学の本のページはアズキが作った偽物である。 ――つまり本当の材料はアズキと本の持ち主であるアリエルしか知らない。
「ユニコーンの角ならエデンの倉庫にあるし、アムフィシーンの竜牙も僕が持ってるよ」
「あとはミュルメコレオンの蟻酸だけだな」
「ミュルメコレオンならこの前砂漠で見たよ」
「すぐに行くぞ」
二人は砂漠に向かった。
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「そっちに行ったよ」
「任せろ」
アンネローゼがブロードソードに冷気を纏わせミュルメコレオンの腹部を突く。
ミュルメコレオンは上半身がライオンで下半身が蟻という奇妙な姿をした幻想動物で、砂漠に棲むため冷気に弱い。 アンネローゼの基本属性は氷なので相性が格段にいい。
「これで終わりにする」
ミュルメコレオンの放った蟻酸を上手く瓶に入れ、アンネローゼは退避する。
そしてアインが『重力制御』の魔法を発動し、ミュルメコレオンを重力によって絨毯にしてしまった。
「流石アインだな」
「アンネローゼも流石だね」
「帰ろうか」
「そうだな」
――その後、アンネローゼは偽惚れ薬を作りアインの食事にこっそりと入れた。 するとアインは酔っ払って倒れてしまった。
――この事件の後アズキが部屋で大爆笑しているのが確認されている。
次回はエデンの園に全員集合する予定です。