『私』と〈私〉
赤く燃える暗闇の森で二つの閃光がぶつかりあっていた。
「くっ……」
アンジェリカは圧されていた。
「覚醒もしていないのに何故お前が力を持っている!!」
「…………」
「答えろぉぉ!!」
アンジェリカが巨大化ビームサーベル(ビームザンバー)を杏に叩きつける。 だが杏は避けようとせず、ビームサーベルで受け止めた。
現在の杏の魔力は軽く10000000を越えていた。
「……分かったからよ」
「!?」
「私が本当にしたい事が分かったからよ」
「そんな事で強くなれる訳は無いだろぉぉ!!」
「なれる!!」
「何!?」
「仲間を、愛する人を守る力が欲しい。 そう願っていれば最後には必ず優しい力が手に入る!!」
「嘘だ!!」
「嘘じゃない!!」
ビームザンバー発生装置を切り落とす。
「あなただって優しい力を必ず手に入れられる!!」
「何故だ!?」
「――私は杏、あなたはアンジェリカ。 元は同じで違う道を辿ったのだとしても、あなたにも私と同じ優しい心があるはず!!」
「!?」
杏が手を差し出す。
「みんなでいっしょにがんばりましょう」
「あ……ああ……うっ!!」
「!?」
「うわぁぁぁぁ!!」
アンジェリカの体から邪悪な黒い何かが苦しみながら現れた。
「…………!!」
それは黒い不定形の化け物だった。
「な、何!?」
その時アリエルから『以心伝心』で通信が入った。
「杏さん撤退して下さい」
「でもアンジェリカさんが!!」
「アンジェリカさんは私が命に変えてもお守りいたします」
「で、でも」
「私なら大丈夫です。 さっき貴女が言ったではありませんか?」
「で、でもやっぱり」
「杏さん!!」
「な、何ですか?」
「アイン様が真実を知っています」
「えっ!?」
「ですから早く行って下さい」
片腕のアリエルがガトリングガンで化け物を牽制する。
「早く!!」
「は、はいアリエルさんもご無事で」
私はアイン君達の元へ急いだ。
「[アザトース]、あなたに仲間をやらせはしません!!」
アリエルは傷ついたボディで最後の抵抗を開始した。
――愛する仲間を守るために……。
☆★☆ ★☆★ ☆★☆ ★☆★ ☆★☆
「アズキー!!」
「アンズー無事だったんだね」
「早くここから離れて!!」
「わ、分かった」
私達はリリアーヌさんに手伝ってもらって怪我人を回復させ、森から脱出した。
「ア……アズキに背負われる日が……くるとは……」
「はいはい、怪我人は黙っててね」
アズキがアインに睡眠魔法をかける。
「す……すまな……いな」
「アンネも少し休んで」
「あぁ……」 アンネにも睡眠魔法をかける。
アズキは道中何も訊いてこなかった。 彼女なりの配慮らしい。
「アズキ」
「何アンズー?」
「私は――――」
その時、ドーンという轟音と共に巨大な火球がリリアーヌの森の方で形成されていた。
「あれは森の方!!」
「そ、そんなあれは……」
「アズキあれは何!?」
「……アリエルの自爆用反応弾……」
「そ、そんな……」
その時、目の前に一人の女性が転送されてきた。
「アンジェリカさん!!」
意識は無いようだが、生きていた。
「アンジェリカも……連れて……行こう……」
アズキは泣いていた。
「……アリエルさん、あなたは仲間を最期まで守ってくれたんですね。 ありがとうございました……」
私の目からも涙が零れていた。
――続く――