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アンネローゼ改造計画 後編

 「次は髪型よ」

「分かった」


 私達は今シャンゼリゼ通りを歩いている。

 「あの至高の存在~♪」

「「黒蜜と小豆のハーモニー~♪」」

「「あんみつは皆の宝~♪」」

「……アンネも歌詞知ってるんだ」

「……もちろんだ」


 二人は何気なく歌ったつもりだが、その美しい歌声とハーモニーに道行く人は皆酔いしれた。


 「あった美容院」


 美容院の名前は『ブロー』だった。


 「ブローってシャンプー&ブローのブローかな?」

「フランス語で『処刑人』」

「ほんとに!?」

「本当」


 少し前に見た悪魔の理髪師の映画が頭に浮かんだ。


 「ここやめない?」

「大丈夫」


 ――私はアンネに引きずられて美容院に入っていった……。







 「いらっしゃ――」

 「久しぶりだなミハエル」

「ア、アンネローゼじゃないか。 久しぶり……」

「髪を頼む」

「えっ!?」

「今は客だ」

「わ、わかったよ」









 「――終わったよ」

「ああ」

「5000Gです」

「分かった」

「アンネローゼ、ねえさんによろしく……」

「分かった伝えておこう」


 そういうとアンネは店から出てしまった。 私も急いでついていく。


 「さっきの人は?」

「ミハエル、私のこの世界での許嫁『だった』男だ」

「だった?」

「私がイレギュラーだと言ったら驚いて逃げていった」

「そ、そうなんだ……」

「あいつはああ見えてもアンジェリカの義理の弟だ」

「ええーー!!」

「ルクセンブルクに帰っていないということはアンジェリカには私から逃げた理由を言えないんだろう」

「なんで言えないの?」

「アンジェリカもイレギュラーだからだ」

「そっか!」

「本当にあいつは何をやっても駄目だな」

「でも、美容師としての腕前はいいみたいね」

「何!?」

「その髪型凄くかわいいよ」

「そうなのか?」

「今のアンネを見たら誰だって振り向くと思うよ」


 ――私の言った通り、すれ違った人はみんな振り向いた。


 「あとは……そのしゃべり方かな」

「喋り方?」

「もっと普通の女の子みたいに話そうよ」

「私はこの世界に来てからずっとこの喋り方だ」

「ということは現実世界だと違ったの?」

「ああ」

「それじゃあその時のしゃべり方に戻せばいいじゃん」

「無理だ。 700年もこの喋り方をしているから戻せない」

「やっぱりだめか~」

「だが努力はしてみよう」

「その心意気が大事だよ」

「ああ」





 靴が欲しくなった私達は次に靴を買いに行ったのだが……。


 「私はこんな物は絶対に履かない!!」

「なんでよ!?」

「こんな物は靴とは認めない」

「かわいいじゃん」

「可愛くなどない」

「履こうよ~」

「履かない」

「履いてよ~」

「履かない」

「履いてよハイヒール」

「これの何処が靴だと言うんだ。 戦闘はおろか、通常生活にも不向きな形状をしている」

「でも、足を綺麗に見せるんだよ」

「私は戦闘用の物しか買わない」

「じゃあ何でワンピース買ったのよ?」

「戦闘用特殊素材が使われているからだ」

「そんな理由で選んだんだ……」

「ん?」

「どうしたの?」

「あれは靴なのか……?」

「どれ……えっ!?」


 アンネの指差す先にあったのは……





 「植物!?」


 靴の形をした植物が店の奥の方にひっそりと存在していた。


 「……杏、あれは本当に靴なのか?」

「た、多分……」


 分からないのでエルフの女性店員に訊いてみた。


 「あれは……靴ですか?」

「はい。 百種樹から作られた行きた靴です」

「「生きた靴!?」」

「そんな物が700年の間に出来たとは……」

「どんな靴なんですか?」

「履く人や環境に合わせて様々な形状に変化する靴でございます」

「ということは戦闘用にもなるのか?」

「はい。 戦闘用にもデート用にも、普段靴としてもお使いいただきます」

「買おう」

「あ、ありがとうございます」

「いくらだ?」

「5280000Gでございます」

「分かった払お――」

「ちょっとアンネ、ストップ! な、何でそんなに高いんですか?」

「この靴は百種樹研究所が作った試作品だからです」


 ――百種樹研究所とはマヤが勤めている研究所である。


 「マヤさん達が作った靴なんだ……」

「これが代金だ」


 アンネの手にスキル『所持金』から取り出した札束が乗っていた。


 「い、一括でございますね」

「ああ」


 店員も一括で払われるとは思っていなかったのだろう。 相当焦っていた。 ――ちなみに1Gは一円相当である。







 「「「「あ、ありがとうございました!!」」」」


 店長含む全店員に深々とお辞儀されながら私達は店を出た。


 「早速履いてみよう」


 アンネが履くと次の瞬間にはピッタリフィットしていた。


 「凄いね!!」

「これは普段用の形体だ。 次はデート用にしてみよう」


 アンネが『以心伝心』で靴に「デート用」と伝えると、たちまちかわいい花が表面に咲いた。


 「かわいい!! 私も欲しいな~」

「試作品だから一足しかない」

「物をコピーするスキルないの?」

「コピーは禁止されている」

「ちぇっ、けち」

「けちで結構」

「――そういえばさ〈アンネローゼさん〉はいくら持ってるのかにゃ?」

「何の事だ?」

「もう~とぼけちゃって、ゼニですよゼニ」

「ああ、金か。 10000000G位は普段から持ってるぞ」

「………………」

「どうした?」

「少しちょうだい」

「断る」

「けち」

「イレギュラーになれば大金が入るぞ」

「イレギュラーってなれるの!?」

「試験を受ければ誰でもなれる」

「私なる!!」

「駄目だ」

「何で?」

「魔力が最低でも100000はないと受けられない」

「ガーン…………」


 ――ちなみに杏の魔力は250である。

 次回はデートだにゃ

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