第十節:Coeur de émiettage
「起きなさい。部屋を掃除して。その後は上級生の部屋の掃除も待っているわ」
上級生で監視役である女性、エレザ・クラヴィアの淡々とした命令が次々と飛んでくる。
「ハイブライトの慣習が講義である日よ。ダンスも練習しないといけない。急ぎなさい」
きびきびとした声と容赦のない命令を受け、レディシア・キースは必死に布団を畳み、シャール・レイモンドは講義に行く準備をしていた。
それを見たエレザは直ぐ様シャールに新たな命令を下す。
「……シャール・レイモンド、貴方が布団の片付けをやるべきよ」
「……はい」
相変わらず淡々とした抑揚のない声だが刺は先程とは違い、あまり感じられない。
勿論、そんなことを気にする余裕はシャールにはなかった。
目を伏せ、どこか粗末な布団を畳む。
作業の最中、視界に入るレディシアが眠る布団。
ふかふかとしていて気持ち良さそうだ。
自分の布団は固い。寝床があるだけ良いのだろうがレディシアとの差を意識してしまった。
──キリキリと心が軋む。
エレザが見ている手前出来ないが、レディシアに全て押し付けてしまうだろう。
元々彼は積極的に身の回りのことを片付けたりしていたのだが。
「レディシア」
「は、はい!」
シャールが物思いに耽っているとエレザがレディシアを呼び、彼が慌てて反応したのが聞こえた。
エレザが「レディシア」と呼んだことに疑問も持たなかったのだが。
「……レディシア、後で来てくれる?」
「ぼ、ぼくですか?」
シャールは我に返り、またしても差を目の当たりにする。
優しげに笑うエレザ。
地位の確立された両親にしっかりと守られたレディシア。
疎ましい、恨めしい、憎い。
──壊したい。
沸き上がる破壊衝動を抑えながら、必死に目の前の雑用をこなしていた。
「レディシアに話したいことが、あるの……」
エレザはシャールの様子を窺うようにチラチラと彼を見る。
だが、彼女は無念そうな表情を肩を落とし、レディシアに来るよう促した。
二人が歩き、扉が閉まる音。
「……一人」
残された彼はポツリと呟き、悲しそうな目で畳まれた布団を見る。
「そう言えば、あの人、レディシアのことを『レディシア・キース』って呼ばなかったな」
一人になるとゆっくりする時間も生まれ、エレザの些細な違いに気付いた。
いつものような淡々とした声ではなく、親しみを込めたような優しいものだったが、彼はそこで首を振る。
「あの人もハイブライトの人間なんだ、幸せを平気で壊すハイブライトの……そうだろう?」
エレザに一瞬だけ心を寄せたいと思うシャールだが、脳裏に浮かぶのは幼し日の朝。
頭を撫でた父の手と『レディシアの兄になるように』と言う約束事。
これが、父との最後の記憶。
ハイブライトにいるうちに何かに追い詰められたのだろうが、色々なことが交じって言い表すことのできない濁った色と化す。
分からない、飲めない、飲み込めない、消化できない、出せない。
だから怒りだけが残る、何もないと言う事実に対する怒りだけが。
「父さん、どうしていなくなったの? 俺のことが嫌いだから?」
返ることのない問を呟き、ふと、シャールは立ち上がった。
エレザのところに行こうと思ったのだ。
理由はないが、彼女のことが気になったのだろうか。
とにもかくにもシャールはエレザの居場所を求め、部屋を出たのだった。
****
彼女の口から今日の用事を言われたのに、どうして呼び出したのだろう。
首を傾げるレディシアにエレザは歩きながら答えた。
「あれは、警告のようなものよ、今日は何もない。でも言わないと彼はレディシアに全て任せてしまうでしょう?」
苦を至るところに滲ませながらエレザはレディシアに話す。
自分の思考の及ぶ範囲を遥かに越えた言葉にレディシアは肩を落とす。
「でも、僕は、それしかできない……」
「だめよ、レディシア。呑まれちゃだめよ」
シャールの言うことを聞くしか出来ないと否定するレディシアにエレザは彼の悲しそうな顔を、同じ目線で見て、まだ小さな両肩をしっかりと掴む。
「彼の悲しみは深い、彼自身でさえ何もできない、そうなったらアクロイド様のようになってしまう」
アクロイドの名前が出た瞬間、レディシアの心臓は大きく跳ね上がる。
「アクロイド様を、知ってるの?」
今度はレディシアがすがるように言った。
「……知っているわ」
先程までの覇気は失われ、彼女は途端に迷いを見せる。
だが、レディシアはこれ以上エレザに詰め寄ることはせず、彼女が口を開くのを待っていた。
厳しい印象を与える彼女ではあるが、嘘はつかず、隠すことはしないだろう。
容易く信用しすぎると言われたらどうにもならないが。
「彼は」
ずっと自分の言葉を待つレディシアにエレザは覚悟を決めたのだろうか。
深呼吸をして、話を切り出す。
「彼は、哀れなくらい優しい人だった、正義感と誇りを持った、穢れを知らない人だったわ……」
語ったのはアクロイドの人柄だった。
「シャール……」
「彼は、シャールは、アクロイドによく似ているわね。純粋で真っ直ぐなところが……だから、許せないのかしら。父を汚したハイブライトの全てが、全てを奪ったハイブライトが」
エレザは初めてシャールを見た時の彼の印象を思い出しながら染々と言葉を紡ぐ。
純粋が故に受け止められない事実。
真っ白な故に認められない劣等感、どう足掻いても埋まらない虚無。
「……どうしたら、どうしたら、いいのですか?」
アクロイドを失ってからのシャールの危うさと狂気を、上手く表現できないがレディシアは何とかしなければと本能で思う。
自分よりも遥かに色々なことを知っているエレザなら、きっと教えてくれるだろう。
「……僕は、なにもできない」
シャールを救う方法も分からない。
慰める言葉の意味も分からない。
「シャールの言うことを聞くことしかできないんです、しらないから……」
彼が泣きそうな顔をしているのは分かるが、それを笑顔に変えることができない。
「だから、シャールの言うことを守らなきゃ、いけないんだ」
「だめ、だめよ、レディシア。呑まれちゃだめ」
思い詰めるレディシアの小さな肩をエレザは強く掴んだ。
この子はシャールの狂気を受け入れようとしている。そうなればまたシャールが落ちていく。
あの憎悪は底無しで、激情のままに取り返しのつかないことをする。
そんな非現実な想像がエレザの頭を掠めた。
「じゃあ、どうしたらシャールの力になれるの? おしえて、おしえてよ。シャールの力になりたいんだ」
レディシアは小さな手でエレザの腕を掴んだ。
救いたい、支えたい。
ただ、それだけだった。
どうしたらできるのか、教えて欲しい。どうしても。
身体を震わすレディシアをじっと見たエレザは彼の両肩から手を離し、小さな手を握る。
優しく微笑んでいた。
「レディシアは、シャールのことが好き?」
「? うん」
一瞬だけ首をかしげたが直ぐに頷いた。
「そばにいたい?」
「もちろん!」
何の躊躇いもなく頷いた。
シャールのことが好きなのだ、愛しているのだ。
「それで、十分よ。レディシア」
「……エレザ、さん」
レディシアはこの時初めてエレザの笑顔を見た気がしたのだ。
だが、彼女の顔は徐々に苦痛の色を滲ませて、自分を見つめるのが彼の瞳に映る。
綺麗な笑顔が、見えたのに。
「……どうしたのですか?」
心配になったレディシアが恐る恐るエレザを気遣うような言葉をかける。
何故か放って置けなくなる。胸がズキズキと痛むのだ。
「レディシア、あのね……」
バン!
──怒りを露にした音が、耳に突き刺さる。
「どういうこと……」
静かに、抑揚のない、純粋な怒りだけを表現するように。
「シャール……」
エレザは悲しげな瞳をシャールに向ける。
「どうして、俺には話さないの?」
シャールも苦しそうだった。
恐らく、レディシアがエレザに連れていかれたのを心配して後を追いかけたのだろう。
そうしたらアクロイドの名前が出てきたので驚いたに違いない。
「何故、何故、教えてくれない。父も話してくれない、母も話してくれない、レディシアには何でも話すくせに……! どうして、どうしてなんだ!」
苦しい、悲しい、憎い、恨めしい。
誰も、教えてくれないことが。
シャールは声にならない声をあげて泣き崩れ、エレザの懐に倒れ込んだ。
「どうして、父さん、どうして、どうして!」
譫言のように繰り返す、父への問い掛け。
返る言葉は、ない。
「……ごめんなさい、シャール」
代わりに返ってきたのは、エレザのか細い謝罪の声だった。
****
「落ち着いた?」
幸いなのがエレザの部屋の中だった。
「……すみません、エレザ様……」
あれからシャールは長い時間、エレザの懐で泣いていた。
思いきり泣いたら案外すっきりしたのか、彼女の服が自分の涙で濡らしていたことに気付き、恥ずかしそうに謝罪する。
「ごめんなさいね、私から……私から、シャールに話してもいいのかって、迷ってて」
木製のコップにミルクとひときれのパンをシャールとレディシアに渡す。
「こんなものしかないけれど、許してね」
申し訳なさそうに俯くエレザに二人は慌てて首を振る。
ミルクはすんなりと胃の中に入り、身体を温める。
しんみりとした空気ではあるが、気持ちが落ち着いていく。
「……あ、あの、エレザ、様」
毛布にくるまりながらエレザにそっと問いかけるシャール。
穏やかな、少年らしいあどけない顔を見せた彼に、エレザは漸く話し出した。
「アクロイド様は、私の知らないこと、忘れていたこと、知るべきこと、全部教えてくれたわ。ハイブライトだけが全てで、そこにある決まりだけが全てだった私にとって彼は眩しかった」
昔と言ってもまだ数年間。
だが、エレザにとっては昨日のことのように感じていた。
「貧富の差が激しくて、私たちは文字を書くことも歴史を知ることもままならなかったの。そんな時に、ハイブライトが使いを募集しているのを知って、私は売られたわ」
「……えっ」
そこでシャールが初めて声をあげる。
「皆が皆、此処に望んで来たわけじゃない。身売りって言って、男の人に身体を売るの。たくさんお金が貰えるし、気に入って貰ったら嫁にも貰えるし、私にとって、それが希望だった」
知らなかった決まりと、誰も、どうすることも出来ないことだった。
「で、上級生に上がった時ね。アクロイド様は来るなり私たちに、パンとミルク、少なかったけど服をくれて、それを見たアイシア様とセイシェル様が本をくれた。それと一緒に、段々歴史を知って……」
そこで、エレザはシャールに視線を向けた。
「シャールのことを、話してくれたわ。ずっと、ずっと、口を開くとシャールのことでね、ああ、この人は子どもを愛してるのねって思った」
そこで、エレザは一旦話すのを止め、用意していたお湯を木製のコップに注いで、口に含む。
生まれて初めて触れた優しさだった。それまでは諦めで生きてきた日々で、覚えていない。
アクロイドから貰った服とパンとミルクから、彼女の人生は始まった。
「一番好きだったのは、彼がライハードのことを話す時だったわね。それまではライハードって城も持たない、商売人が荒稼ぎし合う治安のない国って教えられていたから」
「あ、それ、知ってます」
ライハードの名前が出て、立ち上がるように勢いを増した声を出したのはレディシアである。
「母が言ってました、イザベラ様がアクロイド様に告白したとか」
「母……そうよ、レディシアのお母様ってヘレン・ルノーア様よね」
「えっ!」
思い出したように声を発したエレザに、二人は衝撃を受けた。
「アクロイド様とヘレン様って姉弟で。昔はライハードがハイブライトと交流する機会があって、イザベラ様とアクロイド様はそこで出会ったって言ってたわ。最も、アクロイド様にもイザベラ様自身にも地位がないからイザベラ様方の祖父母様? アーウィナー・レイモンド様が二人を引き取って、レイモンドと名乗るようになった。もうレイモンド様はいらっしゃらないけれど」
そこで、エレザはコップを置いて立ち上がる。
二人に向き直った彼女は優しい笑顔をかき消し、監視役としての厳しい顔に戻る。
「懐かしい昔話はこれまでよ、ここから先は更に過酷な話。二人の未来にも影響を及ぼすかもしれない話になるわ」
彼女のこの言葉は覚悟を問う。
彼女自身、迷っていたのはこのことだ。まだ、彼らは幼く純粋だ。
「……行くの?」
レディシアはこっそりとシャールに話し掛けた。彼は、不安そうだ。
「うん、俺は行くよ。でも、レディシア……君は」
シャールは動揺する。
自分の事情でレディシアを巻き込むことになる。
無言になるシャールにレディシアは首を横に振って、エレザに言う。
「もう少し詳しく話が聞きたいです、エレザ様」
「レディシア!」
驚いたように声をあげるシャールを余所に彼はエレザについて行こうとする。
それだけではない、彼は真っ直ぐな笑顔を向ける。
「行くよ、シャール」
曇りのない意思はシャールを圧倒させる。
「……うん、レディシア」
迷っていたシャールだが、そんな彼を見てシャールは漸く頷き、扉の前で待つエレザの元に向かって歩き出した。
****
エレザの部屋を出て、二人は早速口を開いた。
「何処へ行くんですか?」
怯んでいた時とは違い、子どもらしい無邪気な声だった。
「リデルって知ってる?」
それに対し、エレザも自然体で答える。
「リデルさん! ラルクさんと一緒にいた」
リデルの名前が出た瞬間、シャールは直ぐに思い出した。
彼にとってもリデル──リデル・オージリアス・マクレーンは忘れられない存在でもある。
「父の死を知らせに来た人で、ラルクさんと親しい人だ……」
一見、胡散臭い雰囲気を漂わせる人だがお人好しの代名詞とも言えるラルクが素をさらけ出してリデルを呆れさせていた場面が真っ先に思い浮かぶ。
「知っているなら話が早いわね。今日は自室にいるみたいだし、私がいれば大丈夫よ」
そこで、彼女は不敵に笑う。
「無理に行くけれど、ね」
クスクスと、控え目に笑うエレザ。
彼女は色々な表情を自分達によく見せる--と、二人は思うが、この笑顔を見て抱いた感想。
(この人は絶対に怒らせてはいけない)
「ぶっきらぼうだけど」
「は、はい!」
彼女の笑みに震え上がっていた二人にエレザが突然声を発したので、驚きで声が上擦ってしまったのだ。
「まあ、やだ。緊張しなくていいのよ。リデルはぶっきらぼうだけど、悪いようにはしないわよ。したら私が許さないけどね」
再び彼女はクスクスと笑った。
今度は少し動作が大きくなっている。
エレザの動作を見ると、本来は明るい性格なのだろうか。
そうなると、日常で見せる淡々とした表情が哀しく感じるのは何故だろうか。
複雑な感情を抱いたまま、三人はリデルがいるであろう部屋に近付いていたのであった。
****
エレザ達が散々噂にしていたリデル・オージリアス・マクレーンは同級であり親友でもあるセイシェル・ハイブライトと共に自室で寛いでいた。
机には緑と青の洋書が開かれないまま置かれており、紅茶も一口も含まれないままだ。
「今日は下級生がいないからゆっくり出来ますねえ。警備もお休みですし安心しますとも」
欠伸を堂々としながら眠たそうに喋るとセイシェルは苦笑気味に答える。
「でも、ティアとエレザが来るんじゃないか? ほら、エレザはシャールと一緒だろう」
「そうしたのは貴方ですよ、セイシェル。ティアは、今日は来ないでしょう……」
「それは残念だな。ティアはお前に心底惚れているというのに」
「止してくださいよ。言い返しますけど、カインとイリアは貴方に心底惚れていると私は思いますがね」
「それこそ止すべきだろう」
そのあと二人は声をあげて笑い、自分達で入れた紅茶を飲む。
「薄いですね……」
「私のは濃い」
「交換しますか?」
「勘弁してくれ」
「ですね」
絶えない喋りとぴりりとくる毒の吐合をしながら、のんびりと昼を過ごしていた時であった。
「リデル、いいかしら……あら、セイシェル様!」
ノックもせず入ってきたエレザに二人は危うく紅茶を噴き出しそうになるが寸でのところで踏み留まる。
嫌な予感というのは、どうしてこうも見事に的中するのだろうかとリデルはげんなりとしながら考えた。
「シャール君に、レディシア君も……」
エレザの来訪だけでもリデルにとっては避けたいことなのだが、二人が一緒にやって来たということは重要な意味があるのだ。
「まあ、仕方ないか。エレザ、すまないな」
一方のセイシェルは表情を崩すことなく笑い、それをエレザに向ける。
「い、いえ、セイシェル様……」
突然のセイシェルの笑顔にエレザは照れ臭そうに焦りながら答える。
「……分かりやすいぞ……」
「何かしら、リデル?」
「いや、何でも……」
エレザが一変して彼をキッと睨むとリデルはやれやれと溜め息をつき、身を起こす。
「アクロイド殿のことだな」
「そうよ、物分かりがいいのね」
「そのくらい分かる、だがな」
そこで彼はふにゃりとした表情を消し、真剣な表情を二人に向ける。
「いったい……」
シャールだった。
彼が口を開き、勢いよく立ち上がる。
「いったい何があったんだ、いい加減」
「そんなに知りたいか」
「……セイシェル・ハイブライト」
怒りを露にした矢先、直ぐ様反応し、シャールに迫るセイシェル。
彼はシャールの怒りを嘲笑うように駆け寄り、顎を掴み、顔を近付ける。
「いい顔をしているじゃないか」
目の前──息が掛かるほど近い青年の顔だ。
シャールは抵抗することなく、彼を見返す。
──無意識に、後ろにいるレディシアを庇おうとしている。
「……アクロイドもそうだった」
そう吐き捨ててセイシェルはシャールを解放し、顔を歪めた。
「私にとっては母を引き離した人間でもある。だが、彼はハイブライトに翻弄される者達を見て、役人達が子どもを売買するのを見て、心を痛めていたのだろう」
「ば……売買……?」
意味のわからない単語に幼い二人は首を傾げるばかりだ。
「子供を、売る? そんなことが」
「出来るさ、お前たちにハイブライトが課している金を払えるものか。できるとするなら身体を売って金を得るくらいだろう」
冷静に、顔色一つ変えないセイシェルにシャールは侮蔑の視線を浴びせる。
有り得ないことを、汚らわしいことを平然と言える彼に軽蔑さえ覚えた。
「だが、アクロイドはそれを拒んだ、と言えば察しがつくだろう」
そこで、セイシェルは黙り、残りの三人も顔を伏せる。
父は、誇り高い人物。
真っ直ぐで、シャールにとってはヒーローのような強さを持ち合わせた人だ。
「父は、それで」
「いや、それだけではない」
彼はそこで不敵に笑い、険しい表情で見つめるシャールに挑むような視線を返す。
リデルも、エレザも、シャールを見つめる。
出会うべくして、出会った者達。
異世界にいる、同じ心を持つ人々。
──彼らは、果たして、敵か、味方か。